No.380966

真・恋姫†無双 武と知の2人の御遣い伝 第45話

黒山羊さん

エルビーの110円の『濃いお茶』にハマっている黒山羊です。
このSSも初めて1年が経ちましたね。
ホンマ気が付いたら1年経ってたって感じですね。
これで45話ってことは8日に1話更新してきたわけですか。途中桔梗√を頑張っていたこともあって、結構なスローペースになっていましたね。1階の文章量が少ないのにこの速さでごめんなさい。

続きを表示

2012-02-20 20:20:25 投稿 / 全14ページ    総閲覧数:2640   閲覧ユーザー数:2330

この物語は真・恋姫†無双という外史に、

CRISIS CORE FINAL FANTASYⅦのジェネシス・ラプソードスが来たという設定です。

作者である私、黒山羊が原作を何度もやりなおし、登場人物を原作通りにしたつもりです。

ですが、解釈が幾らでも可能であるように、登場人物が皆様のご期待にそえるかどうかはわかりません。

まあ、CCFF7が分からなくても楽しめるように書いたつもりです。

また、作者は関西人なので、気をつけているつもりですが、セリフが関西弁臭くなってしまうかもしれません。

あらかじめご了承ください。

読者の皆様が楽しめたら幸いです。

 

 

 

 

視点:桃香

 

久しぶりに私はジェネシスさんの翼を見ました。

とても大きくて、とても力強い翼。私の憧れる翼がそこにはありました。

でも、その翼は同時にとても黒かった。何よりも黒く、何よりも暗く、なによりも闇に近かった。

まるで、人の汚い物によって染められたような色、人の業の色と言って良いかもしれない。そんな色でした。

だから、私はジェネシスさんの翼に憧れながらも、その翼の色を怖くも思っています。

 

そんな漆黒の翼を見た皆は目を見開き、吃驚しています。

月ちゃんも詠ちゃんも白蓮ちゃんも翠ちゃんも蒲公英ちゃんも桔梗さんも焔耶ちゃんも美似ちゃんも。

沈黙に染まる玉座の間にたった一つだけ音が、ジェネシスさんの足音だけが木霊します。

その音はとても重く、私には耐えきれそうにない音のように感じてしまいます。

 

「『深淵のなぞ それは女神の贈り物

  われらは求め

  飛びたった

  彷徨いつづける心の水面に

  かすかなさざなみを立てて』」

 

そう言うとジェネシスさんは真上に跳び、空へと舞い上がりました。

私はただジェネシスさんを見送り、その場で立ち尽くすことしかできませんでした。

少し経ち、私は振り返り、玉座の間に座りました。

 

「桃香様。一つ聞いてもよろしいでしょうか?」

 

「何かな?桔梗さん。」

 

「武の御遣い殿の真名に準ずる物があの翼なのでしょうか?」

 

「そうだよ。桔梗さん。」

 

「あの者は何者なのですか?」

 

「元の世界では神羅かんぱにーのそるじゃー・くらす・ふぁーすとっていう位の剣士で、この世界の下りた武の御遣い様と呼ばれている私の知っている限り最も強い剣士で、かつて人間を憎み人間を滅ぼそうとした剣士です。」

 

本当はジェネシスさん自身の口で話すべき内容なのでしょうけど、臣下を疑心暗鬼にさせないために口火を切った桔梗さんの想いに答えるために私はジェネシスさんのことを喋ります。

ジェネシスさんの生い立ち、自分の生い立ちを知り自暴自棄になって前の世界で世界を滅ぼそうとしたこと、でも本当は自分が死にたくて、誰かに殺されたかったということ、色んな事を話ました。

私の覚えていない所は星ちゃんや朱里ちゃんが助けてくれました。

 

「そんなジェネシスさんでもやっぱり平和を望んでいる。

もう、自分みたいに誰かに裏切られて、誰かの食い物にされる世の中が許せないって、あの人は誰よりも望んでいるんです。

だから、一緒に皆が平和になるような世の中にしようって誓いました。」

 

「「「………。」」」

 

再び、玉座の間が静寂に包まれます。私もそうでしたが、この話は重すぎます。

でも、やっぱりジェネシスさんが妖というのはよくない事実。皆の考えが、悪い方向に行っちゃうかもしれない。

一時の愛紗ちゃんみたいに皆が『ジェネシスさんは妖だから、この国に居てはならない。』って考えになってしまうかも。

何か喋らないと!でも何を喋ったら良いのだろう。私が一方的に喋ってたら、皆が不満に思うかもしれない。

そう思った時でした。

 

 

 

 

「私は武の御遣い様にはこの国に居て欲しいと思います。」

 

沈黙を破ったのは月ちゃんだった。皆の目線は一気に月ちゃんに集中します。

 

「私は十常侍の企みで、暴君董卓と言われ、袁紹さんに洛陽を攻められ、大事な詠ちゃんも華雄さん達も失うところでした。

でも、私は武の御遣い様に助けてもらいました。私も私の大事な友人も助けてもらいました。

だから、私はそんな武の御遣い様に恩返しがしたい。

武の御遣い様が妖でも、そんな優しい心を持っているのなら、救われても良いと思います。

だから、お願いします。武の御遣い様が蜀に居る事を認めて下さい。」

 

「月!………ボクからもお願い!」

 

そう言って、月ちゃんと詠ちゃんは皆に頭を下げてお願いします。

月ちゃんの正体が董卓だということがばれてしまった所為で、私は戸惑ってしまいます。

ジェネシスさんと月ちゃんの立場が悪くなってしまう。そう心配しました。

 

「桃香様、心配し過ぎです。」

 

「え?」

 

星ちゃんにそう言われた私は周りを見て気付きました。

私と月ちゃんと詠ちゃん以外皆笑顔だったのです。え?どういうこと?と私は一瞬戸惑いました。

でも、次の星ちゃんの言葉で戸惑いは安心へと変わったのです。

 

「『平和を望むのなら、平和の世で生きる権利は剥奪されてはならない』以前桃香様はそう仰られましたが、覚えていますか?

此処に居る皆もそう思っていますよ。だから、ジェネシス殿がどういう者であろうと平和を望むのなら、此処に居ても良いと思っているはずです。」

 

星ちゃんが皆の方を見ると、皆が頷いてくれました。

 

「政務をしないし、軍を率いていないし、林檎ばっかり食ってるだけのあの御仁がどういう立ち位置でどういう者か分かって、スッキリしましたぞ。なるほど。人の集合体である国が強固であるには統治者が強固なモノでなくてはならない。

そのうえ、あの御仁が統治をしてしまっては、民が『妖に国が操られている』と思わせてはならない。

故に、妖である己は怠けていた。気分でしか行動しないと。

そこまで考えていたとはどうやら、わしはあの御仁を見くびっておったようですな。」

 

桔梗さんが笑いながらそう言います。

どうやら、ジェネシスさんへの不信感が消えたみたいです。

良かった。良かったよ。ジェネシスさん。皆貴方を受け入れてくれるって。良かったよ。

ありがとう。皆。本当の意味で私は皆と心が一つになりました。

ご主人様が居て、愛紗ちゃんが居て、鈴々ちゃんが居て、朱里ちゃんも雛里ちゃんも居て、ジェネシスさんも居て、皆居る平和な国が出来る。ジェネシスさんが妖であっても、負い目を感じなくてすむ国が出来る。

私はこの時、そう信じて止みませんでした。

 

 

 

 

でも、数日後、そんな期待は無残にも砕け散ったのです。

 

 

 

 

視点:雛里

 

樊城の西門から脱出し、街道を通り、そのまま一気に成都まで逃げるつもりでした。

でも、西門の外には呂布さんの部隊が陣取ろうとしていたのです。そう少しすれば、完全に西門に取りついてしまいます。

どうやら、私達の動きがばれていたみたいで先回りされてしまいました。それだけではありません。

北から夏候淵さんと楽進さんの部隊が、南からは黄蓋さんと呂孟さんの部隊が迫って来ていました。合計は約8万。

錬度の高い呂布さんの部隊を相手するだけでも大変なのに、この数は多すぎます。

これでは西門から突破したくても、途中で兵が全滅してしまいます。

この城壁の上から攻撃して数を減らしてから、西門を突破と言うことも考えましたが、時間が足りなさすぎです。

西門の前を陣取っている敵兵を減らしている間に東門や北門、南門から敵兵が押し寄せて来てしまい、結局退路を断たれてしまいます。そうなれば、詰みです。

 

では、西門以外の所はどうだろうと私は考えました。

そして、呉と魏の将の強さ、西門の前を陣取っている敵を考慮した結果、南門からの突破が一番生き残れる確率が高いと私は判断しました。本陣での部隊の配置から考えて、北門からはおそらく『魏の大剣』と名高い夏候惇さんが来て、東門からは曹操さんと孫策さんの部隊が来て、南からは甘寧さんと周泰さんの部隊が来ると踏んだからです。

それに、そもそも南門からしか逃げる手はありません。なぜなら、成都へ行く為の道は西門と南門にしかないからです。

北門から無理矢理出たとしても。最終的に通るところは西門から成都に通ずる街道を利用するしかありませんし、途中には悪路があるので、かなり大回りしなければなりません。結果、西門に居る呂布さんと魏と呉の連合軍に挟み撃ちされてしまいます。

東門に戻って脱出する場合は下手をすれば、孫策さん、曹操さん、夏候惇さん、甘寧さん、明命ちゃんの部隊と正面衝突です。

よって、無事に此処から脱出する確率はとても低いですが、完全に詰んでいる訳じゃない南門を選びました。

華雄さんを回収した愛紗さんの部隊と合流できれば、合流できれば、何とか出来ないこともありません。

 

「雛里!待たせた!」

 

「愛紗さん!良かった。今から南門に移動して下さい。ここからの正面突破は無理です。」

 

「分かった。では、私が先行して、道を切り開こう。」

 

「ところで、華雄さんは?」

 

「すまない。命はあるのだが、私が見つけた時には戦闘不能だ。華雄の空いた穴は私が何とかする。」

 

「………分かりました。」

 

華雄さんが戦闘不能?私にとってまさかの事態でした。

いや、これは当然あり得た話。東門で華雄さんの副官が呂布さんと戦うと言っていました。

そして、その後呂布さんが目の前に現れたという事は、華雄さんは敗れたと考えるのは当たり前のこと。そして、敗れたなら、死んだか、捕まったと考えるのが普通で、呂布さんに負けた華雄さんを戦力として考えるのは当然軍師失格です。

なのに、戦力と考えていた私は自分の策に自身が持てなくなりました。

 

正直不安でいっぱいですが、でも、これ以上に良い策が私の頭の中には思い浮かび上がりません。

不安が更に増幅していきます。本当にこの策で良かったのか、何か見落としは無いのか、そもそも南門に来ているのが夏候惇さんだったら?孫策さんだったら、魏と呉の連合の部隊が私の知らない所で動いていて、裏を掛かれていたら?

そう思うと、更に自信を持てなくなってきました。

でも取り消そうとしても、他の策が思い浮かばないので、時間が過ぎてしまうだけで、結局は詰みになってしまいます。

どうすれば良いの?と錯乱しそうになった瞬間私はある物を持っている事を思い出しました。

 

私は帽子からそのある物を取りだします。真っ黒で大きな羽で私の大事なお守り。ジェネシスさんの羽です。

この羽は先日ジェネシスさんに振られてしまった日の夜、樊城の庭を散歩している時に空から降ってきたモノです。

本当にジェネシスさんの物かと他の人は思うかもしれませんが、私には分かりました。

だって、ジェネシスさんは世界で一番私の大好きな人だから。

このお守りがあったら、絶対ジェネシスさんが私を助けてくれるから、私はお守りを抱きしめて、自身にそう言い聞かせます。

根拠は無いけど、自分にそう言い聞かせたら、安心する気がしたからです。

 

もう一度、よく考えます。何か見落としていないか、何かもっと別の策は無いか、落ち着いて考えます。

そうすると、西門の前に居る呂布さんの武を考えていなかったことに気付きました。

一人で東門の扉を壊すような武を持っている事を考慮していませんでした。

 

そう、大丈夫。冷静になった私は蜀の最高の軍事策略家。朱里ちゃんにも詠ちゃんにも負けない最高の軍事策略家。

大丈夫。自分の考えうる最高の策を持ってして、相手と戦えば、絶対に負けない!

私はジェネシスさんも認めてくれた最高の軍師なんだ!

 

そして、次第に心を支配する感情は不安から、安心感へと変わりました。

 

「紫苑さんは西門付近の家屋を倒壊させて、火を放って下さい。

幾ら呂布さんとはいえ、行く手が火事で行けなかったら、私達が追撃される心配はありません。

住民は先に逃がしているので、油を撒いて、遠慮なくやって下さい。」

 

「分かったわ。」

 

「華雄さんの部隊は北門と東門に近い民家を焼いて下さい。」

 

「「御意!」」

 

これで、追撃の心配はありません。半刻以内にこの城を脱出できれば大丈夫です。

脅威となる呂布さんの部隊は西側が火の海、南側、西側、北側は魏と呉の軍勢が邪魔で身動きが完全に取れません。

樊城の内部も北側と西側は火の海、夏候惇さんや孫策さんや曹操さんが迂回してきても時間が掛かり過ぎる。

西側にある魏と呉の連合軍の本陣から軍を出したとしても今から間に合わない。

なんとか、ギリギリ南の街道を通って私達は逃げ切れる。

 

「後は南門に鬼が出るか、蛇が出るのか、です。」

 

そう、それだけは私にも分からない。周喩さんや荀彧さんが十分裏をかくことはありえるのだから。

私はそう願いながら、南門へと向かった。

 

 

 

 

視点:愛紗

 

雛里の指示通り、私は南門へと向かう。

私は軍略が分からないから、全て策は雛里と任せているのではない。私は雛里を信じているから任せている。

だから、華雄が戦闘不能だという事を伝えた瞬間、雛里は動じたが、その後、方針の変更の通達が無いという事はこの策で問題無いということだろう。雛里自身がこんな長い時間混乱したままと言う事は無い。

星やジェネシス殿にからかわれて動じることはしばしばあったが、すぐに立ち直っていた。

まあ、ジェネシス殿や朱里に慰められたということもあったが、先ほどの場に紫苑が居たことを考慮すると大丈夫だと考えた。

 

南門に着くと息を整えるために小休止を入れる。そして、紫苑と華雄たちの部隊も辿り着いたようだ。

雛里と紫苑と華雄が私のもとに来た。華雄は呂布との戦いで負傷しているため、副官の二人に肩を借りている。

 

「雛里。此処から先は正面突破でいいのだな?」

 

「はい。振りかえらず、立ち止まらず、真っ直ぐ前に進んで下さい。」

 

「任された。蜀の筆頭武将、関羽雲長。全ての敵を切り伏せ、成都へと皆を導こう。故、皆も私に力を貸してくれ!」

 

兵達は私の声に反応し雄たけびを上げる。

窮地に立たされた者は一致団結するという天の国の話をご主人様から聞いた事があったが、今の場面がそれと同じだろう。

 

「開門!」

 

私の合図で、私の部隊の十数名が南門の扉を押す。

そして、開き切る前に私は先頭に立って、目の前の軍に突撃する。

目の前には下駄を穿き、サラシを撒いた紫色の将が立っていた。その将は私と同じ青龍偃月刀を得物としていた。

そう、彼女の名前は張遼。元董卓軍の武将だ。どうやら、雛里の願望的な読みは残念ながら外れたらしい。

確か朱里の話では飛龍偃月刀と言ったか、私の武に憧れて、張遼は私の青龍偃月刀の模倣であるあの得物を持つようになったらしい。つまり、本物と模倣の戦いと言う事だな。

 

「見つけたで!関羽!ウチと勝負し!」

 

私はそのまま立ち止まらず、獲物を構え、張遼へと斬りかかった。この後も色々な敵が控えているだろう。体力温存の為に力を残しておく必要がある。最小の力で相手を切り伏せる為に、私は張遼の首筋を狙う。

だが、やはり張遼も一流の武人のようだ。そう簡単に死んでくれたりはしてくれないらしい。

私の攻撃を転がるようにして回避し、すぐに体勢を整えて、間合いを詰め、私と力比べとなった。

 

「いきなり、当たれば必殺の攻撃かましてくるっちゅ-ことはヤル気マンマンやな。良かったわ。

この大軍見て自暴自棄になったんか知らんが、絶望で脱力しとったら、消化不良になるんちゃうんかって心配しとったんや。」

 

「そんなことは知らんな。私の前に立つ者は何者であろうと叩き伏せ、私は私の君主桃香様の為に成都へ帰る。」

 

「へぇー、この大軍前に勝とうって?えぇーわ。やっぱりそれでこそ関羽雲長やわ。」

 

私はこのまま力比べを続けてもいたずらに体力を消耗するだけと判断し、力の入れる向きを変える。

その結果、張遼は前のめりと私の右側にこけようとしていた。

私はゆっくりとこけようとする張遼の左わき腹に渾身の蹴りを放った。

ジェネシス殿の蹴り技を見よう見真似でやってみたが、実戦での初発が此処まで上手くいくとは思わなかった。

蹴り技の入った場所はわき腹の肋骨の無いところだった。

張遼は私が蹴り技を持っていることが予想できなかったのか、防御の体制は取れていなかった。

どうやら、兵卒用の槍をもへし折る蹴り技を張遼はまともに喰らったようだ。張遼は2丈ほど転がり、その場で咳きこんだ。

私は張遼から目を逸らし、張遼の部隊へと突入する。だが、

 

「まだや!まだ終わってへんで!関羽!!」

 

右後ろの方からそんな叫び声が聞こえてきたかと思うと、私の部下をなぎ倒しながら、張遼が再び私に切りかかった。

跳躍し、ほぼ真上からの攻撃。私は咄嗟に右に避けると、張遼の斬撃は地面を陥没させた。

張遼はそこからゆっくり立ち上がると咳きこむ。どうやら、私の蹴り技が響いているみたいで、大きな衝撃によって激痛が走るのか、私が蹴りを入れた所を抑えながら、うめき声を上げる。

私は張遼との間合いを一気に詰め、蹴りを入れた所に青龍偃月刀を叩きこみ、峰打ちをする。

 

「ごフッ」

 

「悪いが、お前との一騎打ちに時間を割いている訳にはいかない。悪いが、また今度相手してやる。」

 

私は張遼にそう言い、青龍偃月刀を振るい、張遼を遠くへと飛ばす。

一回の将としては今彼女を殺しておくべきなのだろう。将来の脅威は増やすようなことはしてはならない。

だが、上官が殺されてヤケになる兵がいるかもしれないことを考えるとこの選択は間違っていないだろう。

その前に、私の深層心理の中では、一回の武人である私としては彼女を見ていて、彼女が今以上に強くなった姿を見て、戦ってみたいという欲求があったのかもしれない。だが、この切羽詰まった状況でこんなことを考えているという事は私の深層心理は十中八九間違っていないのだろう。

そもそも、こんなことを考えられるということは結構私に余裕があるのかもしれない。

とすれば、矛盾が生じるのではないだろうかと思ったが、人間は危機に瀕すると思考が速くなるという過去の私の経験を思い出した。だとすれば、危機に瀕して、思考が速くなり、少しばかり余裕が出来たということなのだろう。

なるほど。納得だ。私は目の前に広がる敵軍を見て、命の危機を感じているのか。

ならば、死ぬ気で生き残るという選択肢しか私にはないのだろう。

 

 

 

 

視点:雛里

 

愛紗さんが張遼さんを倒したので、このままいけると思った矢先のことです。

不運にももっとも恐れた状況に私達は陥ってしまいました。そう、私は囲まれたのです。複数の将に。

弱い将ならば、愛紗さんの力なら問題無いなかったのですが、将の面子が私達にとって最悪でした。

 

魏の大剣と名高い夏候惇、魏のからくり師李典、魏の鬼軍曹于禁、曹操の親衛隊の許緒に典韋。

更に、江東の小覇王の孫策、暗殺部隊の甘寧と周泰。そのうえ、曹操さんも孫権さんも此処に居ます。

おそらく、西門に当てた部隊を除いた全ての部隊が此処に集結しているようです。

要するに、私がもっともおそれた最悪の状況です。

 

ですが、此処で立ち止まるわけにはいきません。

だって、私は決めたんです。絶対に、ジェネシスさんに会うって!

 

会って、もう一度、会ってジェネシスさんに好きだという気持ちを伝えるって決めました

私とジェネシスさんが結ばれるまで、絶対に諦めないって、決めました。

 

そして、絶対にジェネシスさんを幸せにするんだって、私自身に誓いました。

悲しいあの背中を温めてあげるって決めました。それが押しつけがましいとしても、恩返しするって決めたんです。

 

だから、生きて帰らないと駄目なんです!

 

降伏は駄目。ジェネシスさんと離れ離れになっちゃう。いや!それだけは嫌です。

生きていれば、後で会えるとしても、いつになるか分かりません。それに降伏しても殺されるかもしれません。

 

だから、だから、だから、でも、どうしよう。どうやって?だから、此処から、だから、

 

ジェネシスさん会いたいよ。

 

 

 

 

その時でした。

 

 

 

 

敵軍の向こうから、雷を連想させられるような爆音が鳴り響きました。同時に、赤い水と敵兵と砂塵が舞い上がります。

いきなりのことで、此処に居る誰もが、音のする方を見ます。

 

この光景何処かで、見たことがある気が私にはしました。絶対に間違いない。私はこの感じ知っています。

 

そう、私が黄巾党の人に拉致されて、犯されそうになったあの時と同じ気がします。

私が張譲さんに人質に取られたあの時とも同じ気がします。他にも色々あります。でも、状況がその時と今は全く違います。

でも、私には感じるんです。あの人が来ているって!私を迎えに来てくれたんだって!

 

私だけの為じゃないのは分かっています。

でも、それでも私は嬉しい。私はあの人にまた会える、絶対にあの人は私を助けてくれる。

今まで助けられなかったことなんかないのだから。

 

「雛里。これはもしかして。」

 

「………はい。」

 

8度目の轟音の直後、空に上がった赤い点がこちらに向かってきます。

その赤い点がどんなに小さくても、私にはこの点の正体が分かりました。

そして、私達の前に、誰の耳にも届かないぐらいに静かに着地しました。でも誰よりもその人の存在感は強いです。

 

「俺の友人は、こういうときは決め台詞を言うとソルジャーらしいと、笑いながら言っていたな。

だから、俺の柄じゃないのは分かっては居るつもりだ。」

 

その人はゆっくりと静かに立ち上がります。

そして、そよ風に吹かれてサラサラの髪と外套を靡かせながら、曹操さんや孫策さんの方へと振り向きます。

その仕草に圧倒されてか、夏候惇さんや孫策さんは剣を構えます。

 

「こういうのは汗臭い奴らが言う事だが、」

 

その人は、誰よりも自分勝手で、お酒ばっかり飲んで、何処かにフラッと勝手に行ってしまうし、私に仕事を押し付けるし、誰よりも自分の好きなことしかしないけど………

 

「その記憶に俺の力を刻みつけるために、」

 

誰よりも優しくて、誰よりも強くて、誰よりも多くの誓いを守って、誰よりも辛い過去を持っていて、誰よりも私達の事を想ってくれて、誰よりも平和を望んでいて、誰よりも英雄と言う名前が相応しい、私の大事な…………

 

「あえて、名乗らせてもらおう。」

 

大事な大事な大好きな人。

 

 

 

 

「ソルジャー・クラス1st。ジェネシス、推参。」

 

 

 

 

ヒュッ

 

 

 

 

ジェネシスさんがそう名乗った次の瞬間でした。

私のすぐ横をすり抜け、一本の矢がジェネシスさんに向かって飛んでいったのです。

ゆっくり、矢が飛んでいます。これなら届くと思い、一生懸命、私は手を伸ばしたのです。

殺されそうになった時に見た走馬灯を思い出すような時間の流れ方でした。

ゆっくり時間が流れる中、私はその矢を止めようとしますが、私がいくら頑張っても、手は矢に届きません。

矢の速さがゆっくりなのに、それ以上に私がゆっくりにしか動けないので、届きません。

 

お願い!届いて!

 

その矢はもっとも最悪な事に敵軍からではなく、私達の方から飛んで行ったのです。

矢羽は蒼く、箆は竹で出来ていました。この矢は華雄さんの部隊の物でも、紫苑さんの部隊の物でもない。

そう、愛紗さんの部隊の物でした。

 

どうして?お願い!止まって!そっちに行かないで!

 

ジェネシスさんは気付いていないのか、避ける様子も、防ぐ様子も見られません。

『ジェネシスさん、危ない!』と言おうとしても、私の口はゆっくりとしか動かず、上手く声が出ません。

愛紗さんが遅れて、青龍偃月刀でその矢を叩き落とそうとしますが、それでも届きません。

 

もう、何もいらない!何もいらないから!

その矢を止めて!ジェネシスさんに会えなくなっても良いから!誰でも良いから!お願い!

 

私がどんな強く思って、どんなに手を伸ばしても、どんなに涙を流しても、矢に私の手は届かず、矢は止まりません。

そして、その矢は無情にも、吸い込まれるようにジェネシスさんの背中の中心に飛び込んで行き、刺さったのです。

 

いや!駄目!こんなの絶対に駄目!

 

そう、これはジェネシスさんにとって最悪最低の致命傷。

胸を射抜かれるという最悪の致命傷を受けた上に、『裏切られるという事象の発生』という最低の致命傷をジェネシスさんは受けてしまったのです。ジェネシスさんにとって体と心が壊れてしまう致命傷。

 

万が一、心臓にその矢が刺さっていなかったとしても、心が壊れてしまう。

助けたいのに、助けたかったのに、こんなに私はこの人を幸せにしたかったのに、どうして、神様はこんなに意地悪なの。

平和な世界で、笑顔で、皆で林檎を食べようって約束したのに………。

どうして!どう…し………て。

 

ゆっくり、最低最悪の致命傷によって、じわじわとその矢の刺さった場所から赤い血が滲み出て、赤い外套を違う赤で染めて行きます。そして、ゆっくりとジェネシスさんは崩れ落ち、地面に膝を付け、右手から剣を手放してしまいました。

 

 

 

 

「いやああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

どうも、黒山羊です。

二日続けての桃香は睡眠時間削っての執筆ですので、結構辛いですね。

 

さて、今回のお話はどうだったでしょうか?

 

ジェネシスの翼を知って、桃香がオロオロ。

でも、蜀の皆は国を平和にするために怠けていたジェネシスに納得。

雛里と愛紗達は脱出を試みるが、ピンチ!

でも、ピンチにジェネシス参上!

でも、いきなりジェネシスがピンチ!というのが大まかな流れでしたね。

 

三国志をよく知らないのですが、樊城の戦いと言えば、関羽の臣下が呉と内通していたことによって、関羽は窮地に立たされ、呉に降伏せず、討死したと記憶しています。とまあ、そんなシーンを今回、このような形で書かせていただきました。

でも、一番書きたかったこのシーンを書けたので、私は頑張ったかいがあったと満足しています。

此処は半年前から書きたくて書きたくて仕方が無かったのでww

まあ、あえて言うなら、もう少し私に日本語力があったなら、もっと、良い文章が書けたはずなのに、と悔しいです。

 

霞が噛ませ犬ぽかった?霞ファンの人マジごめんなさい。

ちょっと待って!俺にバームクーヘン投げる前に言い訳させて下さい。ドウドウ!ハイ、このミントティーでも飲んで下さい。

よし、言い訳させてもらいます!この噛ませ犬役…………アミダで決めました!

ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

冷凍して固くなったバームクーヘン投げないでください!マジで!痛いから!

ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

≪しばらくお待ちください≫

 

お待たせしました。

それから、よく、他の作品で雛里が出て時やTINAMIの雛里のラウンジでSieg Heil HINARIN( ゚∀゚)o彡°と叫んでいる所為か、よくジェネシスに私自身を自己投影しないようにして下さいというコメントがあります。

ジェネシスが私自身の自己投影にならない様に細心の注意を払いながら、書いたつもりです。

ってか、私GACKT結構好きですので、彼が演じたキャラのキャラ崩壊は出来るだけ防ぎたいと思っています。はい。

まあ、ジェネシスがSieg Heil HINARIN( ゚∀゚)o彡°と叫ぶことのないように頑張っていきたいと思いますww

 

それでは、最後のいつもの挨拶で終わらさせていただきます。

御唱和下さい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sieg Heil HINARIN( ゚∀゚)o彡°

 

あ!間違えた。まあ良いや。

 

 


 
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