No.380333

真恋姫無双二次創作 ~蒼穹の御遣い~ 第肆話 後篇

ども、峠崎ジョージです。
投稿78作品目になりました。
意見感想その他諸々、一言だけでもコメントして下さると、そのついでに支援ボタンなんかポチッとして下さるとテンションあがって執筆スピード上がるかもです。
では、本編をどぞ。

2012-02-19 16:35:51 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:8421   閲覧ユーザー数:7207

 

 

――――余韻が、感覚を満たしていた。

 

 

残響音はない。刃が触れ合う事は無かった。

たった一度、ほんの一瞬、わずか一合の仕合。全神経はおろか、己を構成する全てを込めての交叉。

 

「…………」

 

「…………」

 

既に、勝敗は決していた。

刃を突き付け合ったまま、微動だにしない二つの影。互いに一撃必殺の急所を狙った結末。

先にも述べた通り、刀同士の仕合は元来、長続きしない。力で削り合うのではなく、技で仕留め会う。故に、限りなく短期決戦。どちらかが力尽き、事切れるまで、正に光陰矢の如く。襲い来る殺気を突き抜け、迫りくる凶刃を掻い潜り、魂と言う繰り手の糸を断つ事で、肉体と言う人形は支えを失い地に伏せる。あっという間、という表現すら生温い。瞬く間と書いて『瞬間』。勝者と敗者を、生者と死者を分かつには、それだけで充分に事足りる。

そして、

 

「―――見事」

 

長い沈黙の末、放たれたそれは確かな厳刀の言葉。

その喉元、紙一重に迫る切先は、一刀の握る薩摩刀のそれであった。一刀の肩口を狙った刀身は逆立てた刃に流され背後に流されていた。

たった一度、ほんの一瞬、わずか一合の仕合。

だが、確かに、

 

「儂の、負けじゃな」

 

渦巻く、幾つもの心。

負けが齎すのは文字通り、その殆どが負の感情である。敗者に嫉妬、悔恨、時には怨嗟、殺意さえも抱かせる。

だが、決してそれが必然ではない。むしろ、全力での敗北から得るのは様々な成長の火種となる程に、感情に良い意味で作用する。そして、この敗北が厳刀に齎したのは、

 

「やれやれ、負けてやるつもりなど毛頭なかったんじゃがな……寄る年波には、勝てんという事か」

 

「歳のせいかよ」

 

弛緩する空気。構えを解き、刀を納め、脱力する。

 

「未だ精神に粗は残るようじゃが、鍛錬はちゃんと、欠かしておらんかったようじゃな」

 

「当たり前だろ。俺だって、本気なんだから」

 

「の、ようじゃな。言葉の上のみとはいえ、お前の大切なものを穢した事、深く謝罪しよう……」

 

膝をつき正座。刀を傍らに、額を床につけんばかりに下げて、

 

「済まんかったな、一刀」

 

「なっ、別にそこまでしなくても」

 

「いや、この程度はして然るべきじゃ。心にもないからとはいえ、婆さんを貶されたと思えば、儂ならば耐えられん」

 

厳刀の妻、一刀の祖母は既に死去している。幼少時代から別居していたので、抱いているのは一般の核家族と同程度の親愛だろうが、記憶に残る祖母の顔はいつも優しく、暖かく微笑んでいた。

 

「爺ちゃん……」

 

「お前の覚悟がどの程度か試す、そういう意図も確かにあった。じゃが、人の情は理屈ではない。理解と納得は違う事くらい、お前も理解しておろう」

 

「それは、まぁ」

 

「憤慨する程に、激昂する程に、大切なんじゃろう。ならば、これでも足りんわい」

 

「…………」

 

肩の力が抜ける。自分だけが立ったままというのも居た堪れず、膝を落として腰を据えた。

 

「頭、上げてくれよ」

 

「…………」

 

「顔見て話せないからさ、上げてくれって」

 

そこで初めて、厳刀はゆっくりと面を上げた。

 

「爺ちゃんに悪気がなかった事くらい、解ってる。多分、そうした理由も」

 

「…………」

 

「常在戦場。刀を手にし敵対したなら、例え盟友だろうと親類縁者だろうと一切躊躇うな、だったよな」

 

「……うむ」

 

それは、厳刀の教えの一つ。彼の経験から得た糧。

 

「戦場での躊躇いはいとも容易く命を奪う。降りかかる火の粉を払わんのは馬鹿のする事よ」

 

「うん。……でも、やっぱりいざとなると」

 

「じゃろうな。解っておった事じゃ」

 

「……え?」

 

「ある意味、それがお前がお前たる所以じゃ。恐らく死しても治るまいて」

 

「……それは、俺が馬鹿だって事?」

 

「じゃな。まごう事無き馬鹿じゃ」

 

「酷いな」

 

「……怖いか、人を斬るのは」

 

「……うん」

 

「儂は、何人も斬った」

 

「…………うん」

 

「十も、百も、もしかすると千も万も、斬ったかもしれん。解らなくなるほどの命を、儂は奪って生きてきた」

 

例えば、戦場で兵士に問うたとする。『危険だが敵を殺さなくてもいい任務』と『安全だが敵を殺さなければならない任務』、果たしてどちらに就きたいか。一度でも命を奪った経験のある者ならば、十中八九前者を選ぶという。それほどまでに、命を奪うと言う行為はストレスを貯め、神経を擦り減らす。

 

「儂かて、殺さずに済むに越した事はないと、思っておる。綺麗事。誰もが憧れる。現実にしたいともがく。……じゃが、残念な事に、世の中はそれだけでは罷り通らん」

 

人が集えば相違が生まれる。相違はやがて衝突に変わる。それが個人同士ならば『喧嘩』になる。派閥同士ならば『抗争』になる。そして、国家同士ならば『戦争』になる。

 

「どう足掻いた所で、価値観の違いは消えぬ。互いが歩み寄らぬ限り、摩擦や軋轢が消える事は無い。そして、決して己を譲らず、強固な壁で周囲を固める者も、決して少なくない。そういう者と共にある為には、一度は必ず衝突せねばならん。そして、自分の価値観を叩き込まねばならん」

 

握り拳と握手は出来ない。確か、ガンジーの言葉だったか。

閉じた拳を抉じ開けるか、あるがまま全てを受け止めるか、どのみち最低限の力が必要不可欠になる。

 

「そう、理解はしておっても、人の情とはままならぬものよな。兵士(へこ)は己の意志で力を振るえん。己の意志を尊重出来ぬ。互いが殺したくない、死にたくないと願っていても、それを曲げねばならん。自分が曲げなかったからといって、相手もそうとは限らんからな」

 

十人十色。千差万別。当然で、必然で、だからこそそれが残念で。

 

「お前は、剣を振るうには優し過ぎる」

 

「…………」

 

「お前の父もそうじゃったし、儂はそれが悪いとは言わん。この時勢、日々の平穏さえ保てれば良い。人殺しの術など、廃れても致し方あるまいと思っていた」

 

だからこそ、改めて問いたい。改めて、確かめたい。

 

 

 

―――――一刀。お前は何故に、力を望む?

 

 

 

 

「…………」

 

瞼を閉じる。

ぼやけてしまっていたけれど、歪んでしまっていたけれど、確かに蘇る、今は懐かしい声。

 

―――――一刀っ。

 

笑った声が、好きだった。

ふとした瞬間に表れる素の彼女が見れる度に、堪らなく嬉しくなって心が弾んだ。

 

―――――一刀ーーーーーーっ!!

 

怒った声が、好きだった。

何もかもを忘れて自分を追いかけ回す彼女を見て、申し訳なさと一緒に仄かな優越感を感じていた。

そして、

 

―――――……一刀。

 

泣いた声が、好きだった。

いつもよりずっと小さく見える背中が、堪えるように小刻みに揺れる肩が、隠し切れていない微かな震えを帯びた声が、その原因が自分にある事に大きな罪悪感を覚えると同時に、それほどまでに自分を想っていてくれた事に溢れんばかりの愛しさが込み上げた。

 

「……好きになった人がいるんだ」

 

何度も、何度でも、何度だって、言える事。

 

「守りたいって、一緒にいたいって、思える人が、出来たんだ」

 

恥も、外聞も、世間体も、全部を投げ出してでも。

 

「でも、俺は弱くて」

 

泣かせてしまった。

 

「情けなくて」

 

苦しませてしまった。

 

「そんな自分が嫌で」

 

だから、

 

「強く、なりたかったんだ」

 

今度こそ、本当の支えになれるように。

 

「物凄く、子供っぽい理由だけどさ、本気なんだ」

 

今度こそ、傍にいられるように。

 

「だから、爺ちゃん」

 

 

 

 

 

 

―――――俺、行くよ。

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

構成なんて欠片もない、ただ溢れ出た感情を羅列しただけの言葉。主語も、動詞も、修飾語も、副詞も、足りない単語だらけの虫食いの塊。

しかし、だからこそ、なのだろう。

 

「…………そうか」

 

厳刀の顔は、何処か清々しかった。

憑き物が落ちたような、溜飲が下がったような、爽快さを纏っていた。

そして、

 

「その刀、持っていくがいい」

 

「……え?」

 

「出来れば振るわずに済む事を願うが、そうもいかんのじゃろう?」

 

「それは、まぁそうだけど」

 

「くれてやる。儂からの餞別じゃ」

 

「爺ちゃん……」

 

「行け。時間がないんじゃろう」

 

最後、と言わんばかりに立ち上がり、踵を返して刀を戻しに上座へ。あれほど強く、逞しく見えた背中が、今はどこか儚げに、虚ろに見えた気がして、頭を振って色々なものを振り払った気になって、

 

「一刀」

 

「…………」

 

無言。相槌なと必要ない。ただ、一字一句聞き逃すまいと、耳を澄まして、

 

 

 

―――――死ぬなよ。

 

 

 

その四文字に、全てが詰め込まれていた。

例え、二度と会えなかろうと、

例え、誰かを殺す羽目になろうと、

お前は生きろと、

お前は死ぬなと、

今、この人はそう言ったのだ。

 

 

 

―――――……あぁ。

 

 

 

立ち上がって、振り向いた。左手に握る鞘は冷たくて、それが余計に心を凛と引き締めた。

一歩。また、一歩。進める度に遠ざかるのは、距離だけではなく。

出口。内と外の境界線。本当に最後のボーダーライン。

ゆっくりと、振り向いて、深く、長く、頭を下げて、

 

 

 

北郷一刀は、最後の別れを終えた。

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

「貂蝉、いるか?」

 

「いるわよ~ん? 待ぁちくたびれたわぁん❤」

 

「っ……一々身体をくねらせながら出て来るのは止めてくれないか? 正直、見るに堪えないんだが」

 

「んもう、辛辣ねぇん❤ で・も、ゾクゾクしちゃう♪」

 

「……はぁ、色々台無しだよ」

 

森の中。生い茂る木々と宵闇で正確な位置など解らない。導もなしにこれ以上奥へと進めば間違いなく遭難するであろう混迷の新緑。

そんな中、知らずに突如『このような物体』を確認しようものなら、猟銃が火を吹いてもおかしくはないだろう。俺も一瞬、早くも柄に手が伸びかけた。

 

「そ・れ・で、お別れは済んだのかしらん?」

 

「……あぁ。もう、大丈夫だ」

 

「借りてたお部屋からは何も持ってこなかったけれど、良かったのかしらん?」

 

「あぁ。俺が今まで身に付けた技術はなくならないんだろ? だったら問題ない。全部頭に入ってるし、余計な荷物は邪魔なだけだろ?」

 

「そう。それじゃ、余り時間も残ってない事だし、早速行くわよん❤」

 

すると、貂蝉が取り出したのは、どこぞの美術館にでも展示されていそうな円形の銅鏡だった。西暦でも3桁、それも相当序盤、そんな印象を受ける造形。明らかに中華系の紋様。

 

「これを割れば、道が出来るわぁん♪」

 

「割る、のか? これが入口とかじゃなくて?」

 

「えぇ。どちらかと言うと、これそのものが『鍵』なのよん」

 

「そうか」

 

手渡されるそれは、当然ながら重かった。フリスビーや円盤なんかよりも一回り大きい、脇に抱える必要があるくらいの大きさ。割るとなると、直接叩くよりも地面に叩きつけた方がよさそうだ。

 

「解った。……それで、その後はどうすればいい?」

 

「何もしなくて大丈夫よん。これはいわば、乗車券みたいなもの。一旦道に入ってしまえば、後はアタシの仲間が目的地まで連れてってくれるわん」

 

「俺の、記憶ってのは?」

 

「……それも、やってくれるわよ。外史に着く頃には、もう終わってるでしょうね」

 

「……そっか」

 

今は不思議と、すんなり受け入れられていた。昨日までの葛藤が、不安が嘘のように消え去っていた。

それは、間違いなく、

 

「御主人様はきっと、出会いに恵まれてるのねん」

 

「……あぁ、自分でもそう思うよ」

 

良き友に会い、良き師に会い、良き女性(ひと)達に会えた。

どれか一つでも出会えれば上々、そんな人達が、自分にはこんなにもいる事。

そして、

 

「有難う、貂蝉。お前が来てくれなかったら、俺はきっと、壊れたままだった」

 

いつまで経っても割り切れなくて、いつまで経っても諦め切れなくて、世に溢れ返る『普通』の海で生きる事を止めて、呼吸を止めて、ゆっくりと奈落へ沈んで行って。

そこに、何があるだろう。それで、何が変わるだろう。そこには、何もない。それでは、何も変わらない。

そうやって引き摺り続けて、徐々に擦り減って、擦り減って、そしていつか何もなくなる。

それでも良かった。それも、悪くないと思っていた。

でも、

 

「本当に望むなら、最後まで諦めちゃ、駄目だよな」

 

何処かで叶わないと思っていた。無理だと、不可能だと決め込んでいた。

例えば、80点を目指している者は80点を取れない。100点を目指して初めて、80点を取れる可能性が生まれる。完璧を目指してこそ、最良の結果を導き出せる。

夢無き者に理想無し、理想無き者に計画無し、計画無き者に実行無し、実行無き者に成功なし。故に、夢無き者に成功無し。

俺は、その夢すら自分で否定していた。そんな奴が、成功する筈もない。

自嘲。苦笑。胸中を構成するものが、その類だけになろうとして、

 

「いいえ、御主人様は壊れてなんていなかったわよん」

 

「……でも、俺は、」

 

「会いたかったんでしょう? 7年経った今でも、想い続けていたんでしょう? それはね、一途って言うのよん。本当にその人が好きじゃなきゃ、出来ない事だもの」

 

「貂蝉……」

 

「耐え忍ぶのは男も女も同じ。大事なのは、その気持ちをいつまでも持ち続けられるかどうか。そして、御主人様はずっと想い続けた。7年間ずっと、強く、強く。だからこそ、アタシも貴方を見つけられたのよん」

 

強い想いは縁となって、絆となって結びつく。有り体に言えば、想い合う男女の小指に結ばれる運命の赤い糸。

それはまるで磁力のように、互いを惹き寄せ合う。今もこうして時間だけでなく、次元すらも越えて。

 

「お爺様も言ってたじゃない。御主人様が自分の想いを否定して、どうするのよん?」

 

「そう、だな……ってか、聞いてたのか?」

 

「御免なさいねん。聞いちゃいけないとは思ったのだけれど、もしもがあるかもしれないと思って」

 

「……まぁ、別にいいけどさ。聞かれて困るような話はしてないし」

 

むしろ、己の未熟さを露呈された自分の方が申し訳なく思うくらいで。

 

「……んじゃ、そろそろ行くよ」

 

「あら、そう。向こうでもアタシの知り合いが色々と助けてくれるでしょうから、安心してくれていいわん」

 

「そこまでしてくれてるのか。何か、本当に至れり尽くせりだな」

 

「どぅふふ❤ アタシは尽くすタイプなのよん」

 

「ちなみに、誰なんだ?」

 

「行ってみてのお楽しみよん♪ それに、言っても直ぐに忘れちゃうわん。ただ、御主人様も知ってる人だとは言っておくわねん。事情も知ってるから、信じてくれていいわん」

 

「……それもそうだな。何から何まで、有難うな」

 

「いいのよん。それよりも、そろそろ時間がないわん」

 

「ん、解った。……ふんっ」

 

振りかぶり、徐に地面へ投げつける。

鼓膜をつんざくような破砕音と共に辺りを満たす白光。それはやがて円形の『穴』を象り、そこから漏れ出す光が徐々に自分を包みこんでいく。

暖かい、優しい光。羊水のように、心が安らいで、意識が落ちていく。

そして、

 

「なぁ、貂蝉っ!! お前、中身は本当にいい『女』だよっ!!」

 

何もかもが消える前に、ここまで助けてくれた恩人に、気休め程度にしかならないだろうけど。

 

 

 

「―――いつか、お前の言う『俺』に会えるといいなっ!!」

 

 

 

鳩が豆鉄砲を食らったような、まず見られないだろう彼の呆然とした表情が、『俺』が見た最後の光景だった。

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

「……ふふっ、まさか見破られてたなんてね」

 

既に白光は消え、辺りが再び黒に塗り潰された中、苦笑を漏らす貂蝉。その視線はいつもの熱を帯びたそれではなく、どこか達観や感心さえ感じさせる。

そう、何故大きなリスクがありながら、貂蝉が世界を渡り歩いているのか。

彼が外史の『管理者』における『肯定派』である、というのも一因ではあるが、それが全てではない。彼は、捜しているのだ。全ての外史の祖となった『最初の北郷一刀』を。その過程において、彼が出来る節介を焼いているに過ぎないのだ。

が、

 

「ふふっ、流石は『私』が惚れ込んだ『御主人様』って所かしら? いい男よねぇ、やっぱり」

 

その筋骨隆々の体躯が『縮んでいく』。言葉づかいも癖のあるオネェ系統から流暢な女のそれへと。やがて変化が収まったそこにいたのは、ただの一人の『女性』だった。

 

「ふぅ、やっぱり管理者としての姿は疲れるわね。っと、流石に服は着なきゃ。慎み慎み」

 

極め細やかな柔肌と均整のそれた肢体を包む衣服はあのまま。つまり、ピンクの下履き一枚。指を鳴らしたと同時、祭祀用の巫女装束を彷彿とさせるような、長い比礼を纏った白装束。黒曜の長髪が夜風に棚引く下、翡翠の双眸がそっと細められる。

貂蝉。楊貴妃・西施・王昭君と並び、古代中国四大美人の一人に数えられる。史実にその名はなく演義にのみ、その存在が記された彼女を巡り、何人もの男がその生涯を狂わせた。故に『傾国』の美女。その美貌は十中八九と言わず、擦れ違った者皆が振り返る程。

この姿を知る者は決して多くない。管理者はそれぞれ、その在り様を『魂』という形で与えられる他は基本、制限はない。元より、『彼女』はその在り様を『貂蝉』として与えられた。自ずと本質は『そう』あろうとし、しかしそのままでは同じような負の連鎖が起こりかねない。

故に、彼女は『男』という仮面をかぶる事にした。しかし、彼女は『男』をさして知らずにいた。故に、『男』でありながら『女』である道を模索し、行き着いたのがあの『漢女』という終着点である。

閑話休題。

 

「……本当、ままならないわね」

 

また違う、しかし同じ人。同じ声で、同じ顔で、同じ心で、でも違う人。もう、何度見ただろう。何十、何百、何千、何万。有り得た筈の可能性、その行く末を見る度に微笑む『彼』を見て、その隣で安らぐ彼女達を見て、

 

「……私も、いつか」

 

ゆっくりと踵を返し、虚空へと歩き出して、

 

「幸多き未来を、『この外史の』北郷一刀様。お互い、頑張りましょう?」

 

その後ろ姿は、世界へと溶けて行った。

 

(続)

 

後書きです、ハイ。

 

いよいよ次回で『蒼穹』第1部完結します。

ここまででも結構伏線張ってるので、勘のいい読者ならば先の展開が読めてしまうかな?

貂蝉に関しては俺なりの解釈が加わっています。

だってさ、英雄全員が性転換してるって前提条件なら、華佗や小蓮は『どういう事なの?』って事になるでしょう?

ってことは、何か別の条件がかかってる訳で、ましてや『彼女達』は管理者側な訳で。

……まぁ、俺の妄想が入ってないって言えば嘘になるがねww

 

で、

 

もうそろそろ『盲目』の方も更新しなきゃなぁ、でもリアルの方の締め切りも就職活動もあるしなぁ、という板挟み状態です。

特撮やどうでしょう、ラーメンズで気力(ガソリン)を補給しつつ、益々正社員扱いのバイトに今日もまた。

両手や両腕がますますボロボロに。そして周囲からの誤解は深まるばかり……俺が一体何をした?

 

ま、そんなこんなで俺は今日もすこぶる元気です。

 

世間じゃインフルエンザがまた猛威を奮っているようですが、ちゃんとメシ食って、ちゃんと寝て、ちゃんと水分補給して乗り切りましょう。

刺さるような寒風吹き荒ぶ北の大地から、皆様の健康を祈って。

 

追記:弟は無事、受験戦争を勝ち残りました!!

 

 

 

 

…………最近、またツイッターにちょくちょく出没するようになりました。基本、日付が変わる頃にバイトから帰ってくるので、語らいたい人はぜひどうぞ。

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

やれやれ、我が孫ながら慌ただしい奴よ。こんな夜更けに来て、直ぐに出ていくとは。

 

 

婆さんなら、どうしたかのう。あの人なら、快く送り出したかもしれんな。

 

 

全く、老い先短いジジイから3つも楽しみを奪いおって。

 

 

儂にはまだまだ、教えとらん事が山ほどあるんじゃぞ? お前という新芽が、如何なる実を結ぶのか、見届けとらんのじゃぞ?

 

 

ひ孫の顔も見とらん。密かに考えておった名前の候補が無駄になってしもうたではないか。

 

 

…………お前が来る日を心待ちにする事も、無くなってしもうたではないか。

 

 

何故、皆揃って儂を置いていく……また、独りではないか。

 

 

幾ら慣れようと、痛みが引くわけではないんじゃぞ?

 

 

……………………いや、お門違いじゃな。あ奴に当たるのは間違っとる。

 

 

この歳で饒舌に独り語りとは、儂もまだまだ青いと言う事か。とうに枯れ果てた積もりでいたが、そうでもなかったようじゃな。

 

 

一刀。お前に譲ったその刀はな、お前が生まれた日に、儂が知り合いに頼んで打って貰った代物じゃ。

 

 

堅く、強く、真っ直ぐな、無銘の一振りの刀。時には人を殺める程の力。それを、お前には正しき道で振るって欲しい。そう願って、儂はお前を『一刀』と名付けた。

 

 

見つけたんじゃな。その使い道を。実に、喜ばしい事じゃ。

 

 

一目、見てみたかったのう。お前を射止めた女子とやらを。お前と並んで笑う姿を。

 

 

達者でやれよ。儂の、可愛い、可愛い、孫よ…………

 

 

…………

 

 

……………………

 

 

………………………………

 

 


 
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