<魔法少女とま☆ラビ>
第六話
戦闘、出会い、そしてまた戦闘と、そんな流れの中、再び先を進んでいる一行。
ラビの人懐っこい会話と、それにつられたように答える虎次郎、そしてそれを見て楽しそうな顔をするとま。
やれやれとした顔の中で、なんとなく今までの旅よりも違う雰囲気を感じながら、それをまんざらでもないと思いつつある夕子。
一見すると楽しく歩く四人。
そんな光景を見せながら先を見ると、小さな草むらからガサガサと草を揺らす存在があった。
「!? ま~たキャぐるみット~~? でも、でも今度はわたしがっ!」
気合を入れて身構えようとするラビに、夕子はそれを制止する。
「あれは違いますわ。 キャぐるみットは、あんなに小さな草むらには入りきれません。」
その夕子のセリフに付け加えるように、とまも言い出した。
「そういえば、あんなにちっちゃな草の茂みだったら、キャぐるみットの姿はとっくに丸見えよね。
大きさは・・・あたしとそんなに変わらなかったりして・・・。」
と、そうこうしている間に、四人が注目しているその草の茂みから、やがてひょこっと姿を現す者がいた。
「おっ!フーセンアニマルか!」
虎次郎が、そう言いながらおもむろに近づいていくと、そのフーセンアニマルと呼ばれる者は一匹だけかと思いきやそうではなく、一匹、二匹、三匹・・・・と、次から次へと草むらから現れ始めた。
そして、虎次郎がそのフーセンアニマルにそっと挨拶をしてみると、フーセンアニマルの一匹は突然、四人の前で緩やかな、そして温かなメロディーを歌い始めた。
身構えていたラビの緊張を解くために、さらに虎次郎はフーセンアニマルの歌声をジャマしないように、小さな声でそっとラビに話しかけた。
「心配しなくていい。こいつらはフーセンアニマルっていって、森の音楽家だぞ。」
「ずっと前にも一度だけ会ったことがある。さっきのキャぐるみットとかと違って、こいつらは俺と同じく、心穏やかな種族なんだ。」
俺と同じく・・・ねぇ?という皮肉めいた顔で見るとまに向かって、虎次郎はチラッと軽く睨みつけながら、さらに
「これは、こいつらの歓迎の歌だぞ。 どうやら俺たちは、敵とはみなされなかったみたいだ。」
「こいつらフーセンアニマルは、森の中でも滅多に会えない珍しい種族なんだ。どのくらい珍しいかっていうと、会えただけでそいつが幸運になれるって言われるくらいだな。」
「へー。なんだか、四葉のクローバーみたいだね!フーセンアニマルちゃん?くん?わかんないけど、わたしはラビ!よろしくね!」
虎次郎の説明を聞いてすっかり緊張を解いたラビは、先ほど虎次郎がやってみせていたフーセンアニマルへの挨拶の仕草を真似てみせながら話しかけてみた。
すると、フーセンアニマルたちは、とま・ラビ・虎次郎・夕子の四人を取り囲むようにして次々と歌い始め、その歌声は徐々に大きく美しいハーモニーを奏でていくのだった。
「どうやら、ここにいる全部のフーセンアニマルが警戒を解いてくれたようだな。」
「一緒に踊ろう!ね?みんな!」
我先にと楽しげな顔でラビは、フ-センアニマルの歌声に合わせるように、とまと一緒にその身をリズミカルに動かし踊り始めた。
ノリの良い虎次郎も、後に続けといわんばかりに、飛び込むように踊り出す。
「ふん・・・くだらないですわ。」
ただ一人、踊りに加わっていくことをせず、腕を組んだまま遠目で見ていただけの夕子。
だが、そんな夕子にラビは声をかけて、夕子の手を引きながら誘い出す。
「夕子ちゃんも踊ろ! ね?きっと楽しいよ♪」
「・・・夕子『さん』!もう、一体何度言ったら・・・。」
「そんなこといいから、ね?」
そう言われても、なかなか気乗りしない顔の夕子に、さらにラビは言う。
「難しい顔とか、しかめっ面ばっかりしてると疲れちゃうよ? たまには気持ちを休めて楽しまなくっちゃ!」
「そ、そんなことあなたに言われなくっても、わかってますわ!何よ、このくらい!」
負けん気の強いところがあるのか、夕子はラビの誘いを挑発と受け取ったのか、だんだんとこのまま引き下がっては
という気持ちになり、皆のいるフーセンアニマルの輪の中へ入っていった。
「そうそう、そうこなくっちゃ!」
夕子の参加に喜ぶラビを見て、虎次郎も夕子に付け足す。
「戦士の休息だと思ってだぞ、夕子。」
「わかってますわよ!そんなこと! これでいいんでしょ? っとっとっと・・・きゃっ!」
慣れない動きで踊りについていこうとした夕子は、そのぎこちなさからフーセンアニマルの一匹にぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさい。えっと・・・。」
戸惑う夕子に、とまがすかさず笑顔でフォローする。
「ドンマイドンマイ、気にしないで。上手く踊れるかどうかじゃなくって、気持ちで楽しむことが大事よ。」
「そうそう、夕子ちゃん!」
「夕子、もっとリラックスだぞ!」
夕子に皆の激励がとび、顔を赤らめながら夕子はそれに応えるように再び踊り始めた。
その時、いつの間にか夕子の顔にうっすらと笑顔が見えたことに虎次郎は喜んでいた。
そして虎次郎は、すっと夕子に語るように、心の中で思っていた。
(そうだぞ、夕霧。宿命や責任も大事だけど、そればっかりじゃ身がもたないぞ。そういう意味じゃ、とまとラビの二人の方が上だ。)
(その身のことだって、気に病むことはないんだ。運命がそうなっただけだし、それにお前はもう、時の裁判までその身に受けているんだから。)
虎次郎の思っていたこと・・・宿命とは?責任とは?そして心の中で夕子を夕霧と呼んだのは何故なのかは、いずれ
おいおい知っていくことになるが、とまとラビは果たしてそれを知った時、どういう思いにかられるのか・・・・。
Tweet |
|
|
1
|
1
|
追加するフォルダを選択
オリジナルの魔法少女として描いてきたものの文章化・第六話です。 今回は戦闘シーンはなく、ちょこっとほのぼの・・・・かも(*^^*)