消防で働く友人の話。
秋から冬にすっかり変わった十二月。空気も乾き、忙しくなるらしい。
その日も、引継ぎ後から、友人と、友人の同僚Aは防火服に身を包み、
車両に乗り込んで現場に向かったそうだ。
現場の状況は芳しくなかった。
そんな中、野次馬の中から、
「中野三兄弟がまだあの中に」「えっ、まだ小学生低学年くらいでしょ?」
「かわいそうに」「早く消して」
などの声を同僚Aが聞いたそうだ。
友人が確認したら、兄弟が中にいるのは間違いないとのことだった。
友人は、隊長に報告後、すぐに同僚A と二人で、要救助者捜索の為、炎の中に入っていった。
消火活動を続けていたことで、火の勢いは停滞していたが、建物が持ちそうに無い状況だった。
友人と同僚Aは、一階の奥、階段辺りで要救助者を二人発見したが、救助した兄弟に意識はなく、
一刻を争う状況だった為、友人は急いで救助した兄弟を連れて外に出た。
救急に二人を預けたところで、家が崩れ始めてしまった。そのとき同僚Aはまだ中にいた。
助けた兄弟は、奇跡的に一命を取りとめ後遺症もなかったが、
残念ながら、同僚Aは殉職してしまったとのこと。
友人は、あのとき同僚Aがついてきていないことに気づいていればと、そのことを悔やんでいた。
けれど、友人はこうも言っていた。助けた人の声を聞くと、
危険な仕事だとわかっていても、やめられない。
私は、なんとなく「助けた人の声って?」と友人に聞いた。
実は昨日、その火事の中野さん夫婦と、無事退院した兄弟が、挨拶に来たらしい。
中野さん「また家族四人で暮らせるのは、友人さんと同僚Aさんのお陰です。ありがとうございます」
兄弟「「たすけてくれて、ありがとう」」
そのとき、私は気づいてしまった。この悲劇の真相に。
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最近、うちが繋げてるスカイプ通話で、「意味がわかると怖い話」の朗読が流行ました。たぶん、すぐに解ります。意味怖というか、鬱話に近いかもしれません。