No.374971

恋姫夢想 ~至高の鍛冶師?の物語~ 第十六話

龍々です。
お待たせしました、第十六話投稿です。
最近二週間に一話ペース、でも長くない……鬱だ。

ではどうぞ。

2012-02-08 21:33:13 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:5292   閲覧ユーザー数:4364

「賊が増えてる?」

「うむ」

「そうなんや。ほんま参るで」

 

今俺の店には華雄と霞が訪ねて来ている。以前得物の鍛え直しを頼まれ、

それが済んだのでその受け取りに来てもらっているのだ。

 

「なんや変な噂も蔓延しとる様やし」

「…星が言ってた乱世の兆しが明確になり始めたって所か」

「趙雲か。今どこにいるのだろうな」

「まあ趙雲の事やし、どこ行っても変わらんやろ」

「「確かに」」

 

そう、星…趙雲はもうだいぶ前にこの街を離れたのだ。

これからも様々な場所に行くんだろうが、最終的には劉備の所に落ち着くんだろう。

まさか存在しないなんて事は無いと思うし。

 

 

「せやけど真也も甘いんやな」

「何がだ」

「趙雲にメンマ作って持たせてやったんやろ?あんなに嫌がっとったのに」

「……あれだけしつこいと作った方が気が楽だ」

「その割には、あいつが出立する時まで教えなかった様だが」

「教えて今度は『もっと量を作ってくれ』なんて言われたらたまらないからな」

「ま、そういう事にしとくわ」

 

霞が言った通り、俺はメンマを作って星に持たせた。

流石に大壷一杯に作る事はしなかったが、それでもそこそこの量は作った。

渡した時の星の感激ぶりはかなり凄かった。

必死に隠そうとしてたけどバレバレだったし。

 

「…こほん、感謝しますぞ鷹原殿。お礼といってはなんですが、私の真名を預けましょう。

 私の真名は星です」

 

と言って俺に真名を預けてきた。

蒲公英といい、星といい、食べ物で神聖な物の筈の真名を預けるのはどうかと

思ったりもしたが。

 

「鷹原殿の真名を預けられたい所ですが、次に会った時に鷹原殿が預けたくなる様な事を

 してみせます故、その時に」

 

と言われた。

実はあいつも無茶言ってる事は自覚してたのだろうか?

あるいは言い続けただけで期待してなかったかだな。

で、メンマの入った壷を抱え、上機嫌で出立して行った。

 

 

「ところで霞」

「何や?」

「噂って確か

 

『大陸に二人の天の御使い降り立たん。

 一人は一筋の流星に乗り、智を持ちて降り立たん。

 一人は光無き時、技を持ちて降り立たん。

 二人の御使い、乱世を鎮静する力とならん』

 

 だったか?」

「そう、それや」

「私もその噂は聞いたぞ。管輅という占い師が出した物だった筈だ」

「…それは知らなかったな。で、よく当たるのか?その占い師」

 

名前まで出るって事は有名だとは思うのだが。

 

「……よく当たるとは聞いた事がないな」

「むしろその逆、よく外すゆうんは聞くけどな」

 

……そっちの有名か。

 

「そんな占い師が出した物でも知れ渡るって事は、それだけ切望されてるって事か」

「せやな。けど意外やな、真也がそないな噂気にするなんて」

「うむ。お前はそういった事には興味が無いと思っていた」

「俺だってこの大陸で生きる人間だぞ?大陸全体に関わる事なら気にもなるさ」

「…それもそうか」

「そういう事だ。ましてや『天の御使い』なんてのが現れて

 乱世を鎮めるっていうんだからな。それも二人」

「『天の御使い』か~。いったいどんな奴なんやろな?」

「まだ現れるって決まった訳じゃないけどな」

 

乱世を鎮めてくれるっていうんなら、こっちとしてもありがたいがな。

 

 

「ま、それはそれとして…ほれ」

「おおきに」

「すまんな」

 

俺は鍛え終わった偃月刀と金剛烈斧を霞と華雄に渡す。

二人とも手触りを確認したり素振りをしたり装飾の龍の出来を確かめ、納得がいったのか

得物を肩に担いだ。

というか霞、装飾の龍の確かめ具合が本体より入念に見えたのは俺の気のせいだよな?

 

「問題は無さそうだな」

「ああ。感謝する、鷹原」

「ほなこれ、代金や」

「毎度」

 

俺は華雄と霞から金の入った袋を受け取り、中身を確認する。

 

「……毎度毎度確認せんでも誤魔化してへんて」

「別にお前等を疑ってる訳じゃない。

 けど後で計算して多すぎたり少なすぎたりして疑うのが嫌なんだ。

 通過儀礼みたいな物だから気にしないでくれ」

 

実際疑ってないしな。

 

「せやけどな~」

「お前だって龍の装飾に俺が手を加えてないか確認してるだろ」

「ならしゃあないわ」

「納得するのか…」

 

こればっかりは本人にしか分からないからな。

華雄が分からなくても無理はない。

 

 

「……ところで鷹原」

「ん?」

「「あれ、何だ(や)?」」

 

二人が指差した先にはこの店の裏庭と呼べる場所がある。

ちなみにここにパンを焼く窯を作ってある。

 

「……昼寝してるぼたんとその他大勢」

 

あの場所は日当たりが良いのでぼたんのお気に入りの昼寝スポットなのだ。

最初はぼたんだけだったのだが、引き寄せられるように犬や猫、鳥が

集まる様になった。が

 

「いやそれは分かるんだが…」

「何でそこに…」

「「呂布(恋)が混じってる(んや)?」」

「……さあ」

 

いつの間にか恋も昼寝してる時がある。ぼたんの身体に頭を預けて。

今回は恋だけだが、子供達が寝てる時もあったりする。

ついでに服が汚れたりしないように地面に敷く布もあったりする。

毎回どこから持ってきてるのか。

 

「ええの?あれ」

「営業妨害してる訳じゃないし、あれだけ気持ちよさそうに寝られると起こすのもな」

「確かに、見てる分には和む」

「だろ?」

 

あそこで寝る事に関しては別に思う所は無い。

俺の心配は別の所だ。

 

「……どうか杞憂で終わりますように」

「何か言ったか?」

「ちょっとな」

「?」

 

たぶんこの願いは叶わないんだろうが。

 

 

おまけ

 

「~~~♪」

「美味しそうですね~、星ちゃん」

「前々から訊こうと思っていたのですが、いったい何なのですか?そのメンマ」

「ふ。これはさる御仁が作ってくれた極上のメンマなのだ」

「ほう。メンマ好きのあなたが言うからには余程の物ですね」

「なら風達にも」

「生憎量も少なくなってきているのでな。分けるのも惜しいのだ」

「む~、残念です」

「む!?」

「どうしました?」

「誰かが賊に襲われてる様子!稟、これを預かっていてくれ!」

「わかりました。お気をつけて」

「うむ!」

 

「……食べちゃまずいですよね」

「星ちゃんの事だから気付くでしょうね~」

 

 

 

後書き

 

ようやっと黄巾の影が見えてきました。

あと2~3話で行けるといいんだけど。

 


 
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