No.374311

魔法少女とま☆ラビ(第五話)

月野美夕さん

オリジナルの魔法少女として描いてきたものの文章化・第五話です。 挿絵(イラスト)にはありませんが、二人目の魔法少女・夕子がここで初めて魔法攻撃を使います。
本当はこの瞬間の挿絵もあった方が良かったと、今になって思ってたりしますが、時すでに遅し (o_ _)o

2012-02-07 14:23:39 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:560   閲覧ユーザー数:491

<魔法少女とま☆ラビ>

 

 

第五話

 

 

森の中を進み、ようやく少しだけ見晴らしの良い場所に出た、とまとラビの二人が見たものは、

ラビとは別の魔法少女・夕子とネコ族の虎次郎だった。

おおよその目的が同じことから、一行は合流し共に旅をすることになる。

 

四人で山道を進みながら、ラビはその持ち前の人懐っこさで虎次郎に話しかけた。

「そういえばさ、虎次郎って人型?に変身してたよね。あれって簡単に出来るの?とまちゃんは『心の力』が大きく必要って言ってたみたいだけど。」

 

ラビのその質問に、そばにある草を意味もなくむしり取りながら、愚問と言わんばかりの顔で、えっへんとした態度で虎次郎は答えた。

「もちろん、力が必要だぞ。でも俺は、そこらの奴とは鍛え方が違うからな!けっこう自由自在な方さ。」

 

横で聞いていたとまは、負けじとその場で変身しようとするが、やはり未熟なせいなのか、ごく短時間で元の姿に戻ってしまう。

きーーーっと悔しい顔をするとまを見てニヤニヤする虎次郎は、自慢げに変身してみせた。

 

「こうやるんだぞ。 おまけにただ見た目が変わっただけじゃないところも見せてやる。」

 

そう言うと、虎次郎はふいにラビの後ろに回り込み、ふわりとラビを持ち上げてみせた。

 

 

 

「えっ?えっ?う、うっそぉ!?」

 

夕子がそれを見て、激しく文句を始める。

 

「ななな・・・お、お姫様抱っこぉ!? 虎次郎!なにしてるんですの!」

 

とまはその夕子の様子にピーンとくるものがあったのか、それを見て止めようともせずニヤニヤしていた。

 

「こ、虎次郎!早くそれを下ろしなさいってば! まったくもう!」

「それって・・・わたしは荷物扱い~~?」と、ラビが軽くツッコミを入れてみせたが、

顔を真っ赤にして怒り始めている夕子の迫力に虎次郎がビックリして、ラビをさっさと下ろし、変身を解いてしまった。

「なにそんなに怒ってるんだよー。」

 

「・・・知りません!」

 

プイッと顔をそむける夕子に、自覚もなくとりあえず謝る虎次郎。そして、それを見ながらクスクスと笑う、とま。

元があんなに小さい体なのに、見た目が大きくなっただけでなく力も対応するように大きくなった虎次郎に、自分を軽く持ち上げられ、ただ驚くラビ。

 

その場は軽い雰囲気の一行だったが、それを近くでじっと見つめる強い視線があったことに気が付いたのは、そのほんの次の瞬間のことだった。

和気あいあいとした?ケンカするほど仲がとも言うが、ほのぼのしたようなその雰囲気の中を歩いていたその時、

急に夕子が黙り込み、虎次郎がそっと話しかける。

 

「おい夕子・・・。」

「わかってますわ。」

 

そのヒソヒソとした話し方を続ける夕子と虎次郎に対して、理由を聞こうとしたラビととまに、同じように虎次郎はささやいた。

「お前たち、何も知らないフリして、そのまま俺たちよりも前を歩け。」

 

何がなんだかわからないまま、ラビは言われたとおりにしようと先を歩こうとしたが、とまは納得がいかず虎次郎に問い詰める。

「いったい何なの?急に黙りこくったと思ったら、さっさと先を行けとか・・・理由を言いなさいよ。」

「ワケなら、後で教えてやる! いいから俺たちの前を行けって!」

 

虎次郎が、とまに行動を急かしていると、いち早くサッと腰の剣に手を当てて身構えながら、それに追いうちをかけるように夕子も口を開いた。

「・・・来ますわよ!」

「俺たちから離れて見てるんだぞ!」

 

夕子と虎次郎がそう言った次の瞬間、背後の茂みから再びキャぐるみットが襲いかかってきた!

それを見て、とまとラビはビックリして身構えた。

「うっそぉ!? さっきやっつけたばっかりなのに、もう別のが来るの!?」

 

キャぐるみットは、両手を振り回しながら物凄い気迫で迫ってくる。とまとラビが倒したものと同種族のようだが、その獰猛さは先ほどのそれとは比較にならないことが、とまとラビには戦闘したばかりだったこともあり、その時の鮮明な記憶から一目で判断出来た。

 

「せせせ・・・聖なる大地よ、輝きを広げ大いなる使いを・・・・・。」

 

ラビは動揺しながらも、覚えたてではあったがとにかく呪文をと思い、ガクガクした口ぶりで詠唱をしようとしたが、その慌てぶりからモゴモゴとたどたどしく、集中しようとする前にキャぐるみットへの恐怖が先にきてしまい、続きの詠唱がうまく言えないでいた。

 

「そこで離れて、隠れてなさい。」

そんな様子を横目で見ながら、その時すでに戦闘モードへと入っていた夕子と虎次郎は、そんなラビにふっと流れるように伝えながら、さっとキャぐるみットに立ち向かっていった。

 

襲いくるキャぐるみットに対して、虎次郎がスッと人間体に姿を変えて応戦態勢に入り、素早くキャぐるみットに回し蹴りを命中させ、その次の瞬間には元の小さなネコの姿に戻って、持ち前の俊敏さを生かしながらキャぐるみットを翻弄させた。

そして、さらに虎次郎がキャぐるみットを混乱させるような動きをとって時間を稼いでいる間、夕子は既に呪文の詠唱に入っていた。

 

「風と氷のたたずむ狭間よ、その冷酷なる空間より出でよ。」

「我が名において命ずる。剣に宿りし鋭き牙をもてその凍土の力を解き放て。」

「氷結斬!ソード・リッパー!!」

 

素早く呪文の詠唱を終わらせた夕子は、居合切りを思わせる素早い動きでその腰にある剣を抜き、キャぐるみットへと切りかかった。

すると剣は氷の輝きを放ちながら、鋭い大きな剣へと姿を変え、巨大な刃となって襲いかかった。

そしてそれは、通常の剣撃ではありえない、氷の力をまとった巨大な一撃となり、ズバッ!とキャぐるみットを切り裂き、その体だけでなく、周囲までもを一瞬で凍らせた後、ガラガラと音を立てて崩れ去らせたのだった。

 

離れたところから、その一連の流れるような動きを見ていた、とまとラビの二人はポカーンとしながら

「・・・すっごい。」

「なに・・・あの流れるような二人のコンビネーション・・・・。」

 

先ほどまでの自分たちとは、まるでレベルの違う夕子と虎次郎の戦闘の仕方に、二人はただ茫然とするだけだった。

「さ、済んだぜ。」

「もう出てきてもよろしいですわよ、お二人さん。」

 

涼しげに平然とした顔で言ってくる夕子と虎次郎に、とまとラビは感心するやら自分たちの不甲斐なさに反省するやらで戸惑いながらも、やがて心強い仲間を得た喜びを感じていったのだった。

 

「夕子ちゃん、すっごーい!」

「虎次郎もキックかっこよかった! ちゃんとそれぞれの役目があらかじめわかってるみたいだったよ!」

 

「ゆ、夕子ちゃん? せめて夕子さんとお呼びなさいな!」

「そういえば、俺もいつの間にか呼び捨て扱いか・・・。ま、俺は大して気にしないからいいけどな。」

 

「あたしは気にしますわ!」

「やーだよー。夕子ちゃんは夕子ちゃんだもん! それでいいじゃん、ね?」

 

と、ラビは夕子のそんな口ぶりをものともせず言い続けて、結局そのまま呼び方が『夕子さん』ではなく

『夕子ちゃん』でおさまってしまった。

 

「ふん!」

もう知らないという顔でいた夕子だったが、内心まんざらでもないような気がしていた自分に

少しの楽しさに似た気持ちを感じていたのだった。

 

 

 


 
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