「マスター、スイートコーンって知ってるかい?」
「スイートコーンって言うと、甘いとうもろこしでしたかね」
「あぁ、そうだ。とりあえず、まぁ、聞いてくれや」
『スイートコーン』
「今日は寒かった。今朝から寒かったな。そんな寒さの中凍える手を暖めようと、近くにあった自販機でコーンスープを買ったんだ。
ん?なんで、コーンスープなのかって?
さぁ、何でだろうな。ただ、その時は小腹がすいていた。それだけだったように思う。
そんな事はどうでもいいんだ。そのコーンスープのラベルには、スイートコーン使用の表示が書かれていた。
マスターはどう思う?スイートコーンについてだが」
「はぁ、私はコーンスープのコーンについてはあまり拘(こだわ)らないので」
「そうか、俺もだ。
そんな、俺だが、ここに寄る前に別の自販機でもコーンスープを買ってみたんだが、見てくれ。」
「ふ~む、なんの変哲もない。普通のコーンスープですね。スイートコーン使用とも書いていないですし」
「そうなんだが、ココを見てくれ、成分表の方だ。」
「スーパースイートコーン?」
「そうだ。これならスイートコーン使用と書けるはずがない。何の変哲もないコーンスープが実はスーパーな代物だったのだ。
マスターはどう思う?」
「はぁ、スーパーなのだから、何だか良い物のような気もしますが、やはり、私はコーンスープのコーンがスイートコーンであっても、スーパースイートコーンだったとしても、気にはしないと思いますね」
「それは何故だと思う?」
「さぁ、なんででしょうかね」
「それは、コーンスープのコーンが食感を楽しむために入っているからだ。
スーパースイートコーンは本来ならスイートコーンより甘く優位性があった。
だが、コーンスープに入ってしまう事でスイートコーンはその優位性を損なわせる事ができたのだ。だからスイートコーンはラベルにて意思表示をした。逆に優位性を失ったスーパースイートコーンは自分の存在を公に晒したくはないと表示を断ったのだ。
マスターはどう思う?」
「そうですね~、コーンの世界も楽じゃないんですね」
「あぁ、まったくだ」
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おっさんとバーのマスターとコーンスープの話です。
短い会話劇でございます。