No.369322

SHUFFLE!&リリカルストーリー 31

グリムさん

男の前に生とアルトが立ちふさがる。
護るべきもののために二体の神獣は…!

お久しぶりです。かなり時間があきましたがSHUFFLE!&リリカルストリー 第31話 神獣 お楽しみください。

2012-01-28 05:03:54 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1302   閲覧ユーザー数:1256

第31話 神獣

 

「わたし達の主様にとって、そしてわたしたちにとっても大切な人に手を出したのですから……覚悟はできておりますよね」

 

表情を読めない顔のまま少女がそう口にしただけで男の背中には氷塊が流れた。男からすればたかが十歳程度の子供……だがそれではありえないほどの存在感と威圧感を少女は持っていた。

 

「ちょっと待ってよ。生はさっき僕に任せてくれるって言ったじゃないか!?」

 

少女だけではない。少年も少女と同等、あるいはそれ以上の存在感を持っている。

 

「(一体こいつらはなんなんだ?)……」

 

付近には人の気配がないことから推察すると人除けの結界が貼られていると思われる。

男はいきなり現れた二人に困惑しながらも冷静でいようと努めようとしていた。なんとかして逃げなければいけない、じゃなければ……

 

「殺されるって?」

 

「……!!」

 

自分の考えを先読みしたかのような少年の発言に男は戦慄する、こいつは心でも読めるというのだろうか?

 

「心なんて読めないさ。ただ自分ならどんなふうになるかなってのを考えてるだけかな?経験則によるものもあるけどね」

 

「……おまえのような子供がか?」

 

「あなたもアルトが見ため通りの年齢だとは思っていないのでしょう?」

 

「……おまえたちはいったい?」

 

「しがない神獣ですよ」「しがない神獣だよ」

 

このとき男は……自分は逃げることができないと悟ったのだ。

「しがない神獣ですよ」「しがない神獣だよ」

 

それは合図だった。その言葉を紡いできっかり一秒後、二人の神獣は同時に動き出す。アルトは男の方に徒手空拳の状態で突っ込む、もちろん殺す気なんてさらさらない。もっと痛めつけてから始末するつもりだからだ、それをできるだけの実力差が二人の間には存在していた。

 

生はアルトに好きにしていいと言った手前もあることだし、今回は男が逃げないように見ている役に徹することになっている。

 

「……行くよ」

 

回避できるギリギリの速さで突き出された拳を男は紙一重で避ける……いや避けさせられる。その証拠に男には反撃なんてする余裕なんか全くない。

 

アルトの拳にはいつの間にか黒のグローブが装着されていた。拳の部分に金属の仕込んである、拳の保護というよりは攻撃力の増強に重きを置いたフォルム、武骨なそれはア

 

ルトのかわいいと言えるであろうその姿には不釣り合いで常にない異様さを醸し出していた。

 

「ほらどんどん行くよ!」

 

アルトが繰り出すのはボクシングでいえばジャブといわれるものだ、威力よりも手数に重きを置いたパンチである。

アルトにはこの戦闘をすぐに終わらせるつもりは毛頭なかった『死なない程度にいたぶって、できるだけ長く苦しみを味あわせる』それはアルトの中で決定事項だった。

そこには弟分と妹分に怖い思いをさせた奴へのあまり良くない感情が入っているのは言うまでもないと思う。

アルトの繰り出す拳を男はすべて避けようとするがそうはいかない、ジャブを全部避けれるわけがないのだ。それにジャブとはいってもその一発一発に必殺に近い威力がある

 

「ぜぇぜぇ、――っ!」

 

だから全身ぼろぼろで立っているのもやっと、というような状態になるまで数分かからなかった。

 

「うん、いい格好になったじゃないか。どう気分は?」

 

アルトは底冷えするような眼差しのままたのしそうにそう口にする、その顔には疲れはみじんも見受けられないどころか、息すら乱れていない。

 

そう、この場においてアルトは絶対的な強者なのだ。

 

「そろそろ終わりにするね?じゃあ、さよな――「アルト待ってください」――ら、ってなんだよ生?」

 

その強者に口をはさむものがあった。それが敵なら話を聞くつもりはないが味方なら別だ、それも自分と同じくらいの実力を持っているなら無視はできない(そうでなくとも無視することはないのだが)。

 

アルトが冷静なら生も声をかけるつもりはなかった。だが、生からみてアルトは必要以上に頭に血が上っていて、大事なことを忘れているように見えたのだ。

 

「いえ、腹がたっているのはわかりますがその男を殺すのは少し早計ではないですか?」

 

「どういうことだよ?」

 

生はアルトのいらだったようなその返しにため息をひとつはくと説明を始めた。

その男から魔界と神界の情報が聞きだせるのではないかということ、その男の処遇に関しては稟やユーノに相談してからでも遅くはないということ、そしてなにより人を殺したという業を主達に背負わせたくないということ……。

 

生の話を聞いている内に冷静になったアルトとしては生の意見に全面的に賛成だ。というか頭に血が上ると自分は若干イノシシのようになる傾向があるなぁとか思ったり思わなかったりするのだった。

 

「…ごめん、頭に血のぼってた」

 

「いえ、わかってくれたならもういいですよ?さてじゃあ大人しく付いてきていただけますでしょうか?」

 

生のその言葉に男が頷くと……

 

「そうですか。では少し寝むってくださいませ」

 

首に衝撃が走ったのを自覚する暇も与えず男の意識を刈り取った。

 

「ではこの男も運びましょか。スターチスお願いできますか?」

 

『はい。では生、キャロ様をお願いしてもよろしいですか?』

 

「お安いご用です」

 

「ラン、エリオはボクがおぶるよ」

 

『わかりました。アルト』

芙蓉邸に帰ろうと動き出そうとした時、結界の中に何者かが侵入してきたことを知らせる警鐘が生の頭の中で鳴り響いた。結界の中に侵入できるということ、それは少なくとも自分たちを害すことのできる存在がこの結界内に侵入してきたことを意味する、才能はあるがいまは目覚めていない一般人という可能性もあるにはあるが、限りなく低い。

 

「アルト、侵入者です。わたしが撃退しますのであなたは皆様を安全なところへ。ラン、キャロ様をお願いします」

 

「…めずらしいなぁ」

 

「アルト何がおかしいのですか」

 

アルトが何がおかしかったのか笑いながら呟くと生の声はアルトを攻めるような声音になる。さっきの戦闘の後だと考えれば当然の反応でこの場合はアルトの反応の方が異常なのだ。

ただし近づいているものが自分たちにとって最も身近な気配の一つであれば話は違ってくる。

 

「ごめんごめん、でもこの気配なら心配いらないって……ほら」

 

アルトは謝りつつ公園の入り口の方へ視線を向けると、そこにはこちらに向かってかけてくる稟の姿があった。

 

「ね、問題ないでしょ?」

 

「……はい、すいませんアルト。先ほどの出来事で思ったより動転していたようです」

 

「いいって、とりあえず家に帰ろうよ?」

 

「はい、今回のことは主様や稟様たちに相談しなければならないでしょうしね」

 

そうしめくくりどう説明するのかそれを頭の中でまとめながら、生は皆とともに帰路についた。

 

あとがき

 

みなさんお久しぶりですグリムです。今回は投稿が非常に遅くなり誠に申し訳ありませんでした。

2話連続投稿となりますのでそちらの方もよろしくお願いします。

 

 

 


 
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