No.369014

真・恋姫†夢想 魏√ 桂花EDアフター その八

狭乃 狼さん

皆さんどうも。

似非駄文作家の狭乃狼です。

今回、今まですっかり忘れていた、桂花EDアフターの続きを、

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2012-01-27 15:00:19 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:10157   閲覧ユーザー数:8013

 

 季節は春。

 

 受験のために追われる多忙な日々も漸く終わり、この世界に来て始めて訪れた、桜の花の咲き乱れる頃。

 

 「……あ……った……」

 「……俺も……間違いなく、これ……だよな?」

 

 私と彼は、手元の紙片と目の前の掲示板を、何度も何度も交互に見やりながら、それらに書かれた数桁の数字を、しっかりと確認する。

 

 「……や……ったあああああああっっ!!」

 「おおっしゃあああああああああっっ!!」

 

 そして、それらに一つの狂いも無い事を完全に確認した後、私と彼は思わずその場で抱き合い、今にもあの白い雲にまで届きそうなほどに飛び上がって、喜色の大絶叫を上げた。

 ……この一年近くに、二人で必死になってした、地獄のような猛勉強。それが今日というこの日、漸くその実を結んだのだ。

 

 ……これで喜ぶなと言う方が、無理という物よね♪

 

 「これでやっと、昼間もずっと、アンタと一緒に居れるのよね!」

 「ああ。学部もおんなじ、政治経済学部だからな。……と、言うわけで」

 

 その顔に未だ満面の喜色を浮かべたまま、私のことを抱きしめていたその腕をゆっくり離し、私の事をじっと見据える彼。

 

 そして。

 

 「……大学合格、おめでとう、桂花!」

 「……うん!アンタも、合格おめでとう、一刀!」

 

 彼、北郷一刀と、私、若文桂花。

 

 私立、聖フランチェスカ学園、大学部入学の決まった、その晴れの日の事でした。

 

 

 

 そして翌月の四月初頭。

 

 私と一刀の大学部入学式には、鹿児島からわざわざこの日のために来てくださった、一刀の祖父母である北郷一虞さんと燐華さんの暖かい祝福もいただき、私達は晴れて、大学生としての日々を開始した。

 

 もっとも、最初の講義の日に私と一刀の関係が、一刀の自称大親友らしい、及なんとかという眼鏡の関西弁男のせいであっという間に広まって、それから一月近く、私達は同じ学部の他の生徒たちから、色々とからかわれたりとかする羽目になった。

 一刀にいたっては、私のこの体型…まあ要するに、傍目には子供にしか見えない身長等々の為もあってか、初日からいきなり、ろりこん扱いされていたけどね。

 

 まあとりあえず、彼がそうなってしまった事の元凶、すなわち一刀の自称大親友さんに、しっかりかっちりオシオキはしておいた……んだけど。

 

 「……桂花ちゃんの侮辱言葉、わいにとってはご褒美も同然や!わいのこと、もっとなじって下さい~!」

 「ちょ!?寄るなこの変態眼鏡!あたしの体に触れて良い男は、一刀だけなんだから!!それ以外の男は半径十万km以上近づくんじゃあないわよ!!」 

 「そんな無茶な!ほれやったら日本にも住めへんやんか!!」

 「あ、それは良いわね。だったら日本といわず、地球の反対側のアフリカの奥地にでも一人で行って、そこの原住生物でも口説いてれば良いんじゃない?」

 「ひ、酷い!桂花ちゃんてば、そんなにワイの事嫌いなんか!?」

 「うん」

 

 どきっぱり。一刀以外の男になんて、かける情けは無用の長物。特にこの及……なんだっけ?には、ね?

 

 「がーーーーーーーん。……うう、あんまりや……でも」

 「?……でも?」

 「……そんなそっけない態度がまた、最高やーーーーーっ!桂花ちゃ~ん!かずぴーなんかとっとと捨てて、こっから先はワイと……ほげあっ!?」

 

 あ。及某が突然出てきたパンチで吹っ飛んだ。

 

 「……及川……お前、何、人の彼女を堂々と口説いてやがる(怒)」

 「か、かずぴー?い、いややなあ、ほんのちょっとした冗談やんか~。ワイが大親友の彼女を寝取ろうだなんて、これっぽっちも思うわけ無いやろ~?」

 「……ほんとーに、これっぽっちも、無かった……と、言い切れるんだな?」

 「……ほんの、これっくらい、ちびっとだけ……言えんかも」

 「……そっかそっか。ちびっとだけ、な。ははは……ブーメ○ンス○エアー!」

 「ほぎょぼおおおおおおっ?!」

 

 あ。及某がまた吹っ飛んでった。うん、とりあえず、後はお星様にでもなって、私達の幸せを見守っていてください。ナームー。

 

 ちーん(笑。

 

 

 ……まあ、だからと言って、ホントにお星様になったわけも無く。

 

 及某の奴も、私達同様、晴れてこの春から同じ学部に通う、一回生になったわけで、しょうがないから取りあえず、一応、一刀の友人と言うことで、私に話しかけてくることを、不本意ながらも許可してやった。

 ただし、今でも大の男嫌いという、その基本的なところは治っていないわたし。

 及川(何時までも及某だと色々面倒なので名字を使うと事にした)へ向ける言葉面には、以前一刀に向けていた時のような悪口雑言交じりな口調になってしまうのは、そこはまあご愛嬌、ってことで。

 ……もっとも、言われている及川の奴は、その方が嬉しいらしいんだけどね……。

 

 やあねえ、M属性な奴って(笑)。←【お前が言うな】

 

 ……なんか空耳が聞こえたような気がしたけど、まあ、取りあえず今のはさておき。

 

 大学に入って一年目は、正直わざわざ紹介するほどの事柄は発生せず、単位をきちんと取ることと、そして、大嫌いな男ども(勿論一刀は除く)と同じ空気を、狭い空間内で吸う事に慣れる事にだけ集中し、あっという間に一年と言う日々は過ぎていった。

 

 夏はみんな(不本意ながら及川も着いて来た)で海に行き、初めて体験する潮騒の匂いにすっごく感動した。実際、海なんてものをまともに見るのは初めてだったんで、その時の私の口から出た言葉は、こんな感じのものでした。

 

 「……長江や黄河より広いんだ……海って」

 

 ちなみに、その感想を耳ざとく聞いていた及川が、私に言った一言がこれ。

 

 「なんや、桂花ちゃん海見るん始めてなんか?ならこれって知ってるか?……海の水って、しょっぱいんやで」

 

 取りあえず、その瞬間に蹴飛ばしました。……んなことぐらい、私だって知ってるっての!ったく、ほんとに馬鹿なんだから、この眼鏡は。

 ついでに、その後一刀と一緒になってソイツを砂に埋めておいた。……満潮ぎりぎりまで放置するという、素晴らしいオシオキ込みでね♪

 

 ……こほん。

 

 今度は秋。

 

 紅葉狩りをメインに山に登って(これまた不本意にも及川も居た)、キャンプやバーべキューなんてものを体験した。……まあ、軍事行動なんかで山登りぐらいはした事あったけど、その時とは違って、みんな緊迫した空気などは当然纏っておらず、とても和気藹々とした、楽しい一時だった。

 

 冬は冬で、また山に。その時ばかりは、及川という名の邪魔者もおらず、一刀と二人っきりでの、一泊二日のスキー旅行。

 ……生まれて初めて経験するスキーで、それはもう、派手に転びまくってゲレンデを穴だらけにしちゃったし、暫く霜焼けでお尻が酷い事になったり、あと、リフトに上手く乗ったは良いものの、降りるのを思いっきり失敗して二週する羽目になったりとか。

 まあ、そんな穴があったら入りたくなるような失敗も全部ひっくるめて、一刀と二人っきりでの旅行は、とっても楽しく、充実したものだった。

 

 そして年末。

 

 一刀と二人コタツに入りながら、除夜の鐘っていうのを、その耳にかすかに捉えつつ、私はこの世界に来てから二度目の年を越した。

 

 

 

 この世界に来て三年目の、春。

 

 

 

 桜並木の連なるサイクリングロード。そこを私と一刀は自転車に乗って、颯爽と駆け抜けていく。

 

 「気持ち良いわねー、こうして春を満喫しながら走るのって」

 「ああ、本当に最高だな。……にしても、桂花も随分、自転車に乗るの上手くなったよな」

 「まあねえ♪何しろ、体中に痣を作りまくって、それでも必死に練習したんですもの。こうやってアンタと、二人でサイクリングするのが夢だったんだもの」

 

 そう。その為だけに、大学に受かっていこう、私は毎日、お屋敷のメイド仲間である岬風花さん(双子の妹のほうね)に付き合ってもらって、転びながらも慣れない自転車の練習に励んだ。

 そして漸く、その練習の成果がこうして実ったと言うわけだ。

 

 「なら今度はさ、近いうちに二人で、自動車教習所にでも通おうか。二人分の費用ぐらいなら、俺も貯金があるからさ」

 「あ、私の分の費用ぐらい、ちゃんと私が自分で出すわよ。胡蝶さんから貰ってるお給金、結構溜まってるから」

 「そうか?なら次の月曜あたりにでも、二人で入学の手続きに行こうか」

 「おっけー!でも取りあえず、今日のところはサイクリングを思いっきり、楽しみましょ!」

 「了解!」

 

 春の抜けるようなその青空に、私達の笑い声が高らかに響き渡る。

 

 今、私はとっても幸せ。

 

 一刀と二人、こうして正史の世界で、笑いあいながら、時には喧嘩もしつつだけど、それでも互いを互いに必要としあう、そんな日々を過ごしているのだから。

 

 かつて、自分が生れ落ちた世界を捨て、華琳さまや他の仲間達、そして家族を捨ててまで、一刀愛しさのためだけに、私はこの世界の住人となった。

 

 そこに、後悔は一切無い。 

  

 時折、郷愁のような物に駆られない事が、全く無いとは言わないけれど。

 

 それでも、今、私の幸せは“一刀の傍(ここ)”にあるのだから。

 

 数年後には大学も卒業し、そして、彼と夫婦になり、いつか子を授かり、温かな家庭を築いて、そして、最後は彼と同じ場所で、永久の眠りに着く。

 

 そんな平凡な、ごく普通の一生。

 

 それを、私は彼と供に、これからも過ごしていく。

 

 ずっと、ずっと。

 

 二人の命の灯火が潰える、その時まで……。

 

 

 そう、私達は全く、信じて疑って居なかった。

 

 

 

 あの人が、私達の前に現れる、その時までは。

 

 

 

 運命という物は、時に残酷で、とても無慈悲なものだと、彼女から教わることになるその日までは。

 

 

 

 ……………………………………

 

 

 【???視点】

 

 そこは、中華人民共和国にある、故宮博物院。

 

 中国大陸における様々な秘宝や遺物を収蔵する、世界でも有数の博物館である。

 

 その、故宮博物院の中には、未だ公にされていない、発掘品や宝物なども、数多く保管されている。

 

 そして、そんな未公開の品々が収められている、とある倉庫の中。開館時間外の深夜にも関らず、ごそごそと蠢く音が聞こえていた。

 

 「……どうだ、あったか?」

 「……ええ、ありましたよ。私達が長年探し続けた、例のモノが、ね」

 「……間違いないんだな?」

 「大丈夫、間違いありません。……どうやら“力”も失われていないようですし、これで、私達の悲願が、漸く叶う事になります」

 「……そう、だな……」

 

 それは、二つの人影。その声は双方供に若々しいものであり、かつ、何か得体の知れない雰囲気のようなものを、それらの声は含んでいた。

 

 「……後は、予定通りに、あの“外史”へと渡るだけですが……本当にいいんですね?今ならまだ、引き返すことが出来ますよ?」

 「……くどい。すでに決めたことだ。……あの“女”を復活させること、それが何より、俺達にとって完遂しなければならないことだ。……その先にある、本当の目的の為にも、だ」

 「……分かりました。では、そろそろ行きましょうか。……肯定派のあの二人に気付かれないうちに、第一段階を済ませておかなければ、いけませんからね」

 「ああ」

    

 そこで、二つの声は完全に沈黙し。気配も既に消えてしまっていた。

 

 ……その後、室内にあった無数の収蔵物の中から、とある一点の品が無くなっていたことに、博物院の人間が気付いたのは、それから随分後の事だったそうである。

 

 

 …………………………

 

 

 【桂花視点】

 

 大学二年目の、とある日のこと。

 

 私はその日、講義が休講になってしまった事もあり、珍しく平日にメイドとしての仕事をこなしていた。

 

 「奥様。お茶のお代わりは」

 「ええ、ありがとう、桂花ちゃん。……それにしても、随分お仕事にも慣れたわよね。一刀くんとも仲良くやっているようだし、順風満帆、って言った所かしら?」

 「は、はい。その、おかげさまで」

 

 かちゃり、と。ティーカップをお皿に戻しながら、給仕をしている私にそう微笑みかけてくれる、この屋敷の主である西園寺胡蝶さん。

 西園寺家と言うのは、なんでも古くは公家の流れを汲む、由緒正しき家柄だそうで、文明開化の後も華族として、そして現在にいたっても日本有数、いや、世界有数の大財閥なんだそうだ。

 ……まあその大財閥のトップに居る人が、実は外史という一種のパラレルワールドを管理する、次元時空管理局とかっていう組織の一員であるなど、まさか誰も、想像だにすらしていないでしょうけど。

 

 こんこん。

 

 「はい、どうぞ」

 「失礼します、奥様。お客様がお見えになっておいでです」

 「お客様?おかしいわね、今日は誰も面会予定は無い筈なのだけど」

 「はい。ご本人も、アポは取っておられないそうです。ですが、何分急を要するとのことですので、奥様に是非ともお会いしたい、と」

 「そう。それで、一体何処のどちら様かしら?」

 

 突然に屋敷を訪れた訪問客。その予定に無かった事柄に驚きはしつつも、いたって冷静にその客の名前を水花さんに聞く胡蝶さん。

 

 「ご本人は、高千穂魅子さまと」

 「ぶっ!?げほっ、げほっ」

 「ちょっ!?お、奥様大丈夫ですか?!」

 

 訪問客の名前を聞いたその途端、胡蝶さんは飲んでいたお茶を思い切り吹き出し、激しくむせこんだ。……そんなに驚くほどの人なんだろうか?

 

 「す、水花さん!す、すぐにその人をお通しして!あ、いえ!私が自分でお出迎えを……!!」

 「……その必要は無いぞ、胡蝶」

 『っ!?』

 

 私は突然したその声に、ただ純粋に驚き。一方で胡蝶さんの方は、しまった、という表情をしての驚愕の声を、揃って同時に零した。

 

 「み、魅子さん、いえ、その、お、お師匠様!!」

 「……お師匠……さま?」

 

 なんだろう。胡蝶さんがお師匠様って呼んだ、その、なんだか弥生時代にでも出てきそうな髪形をした、紺色のスーツをピシッと着こなしたこの人を見てると、何故だかとっても、嫌な予感がするんだけど。

 

 そしてそこにもう一人、遅れてして来た声があった。

 

 「あのー……胡蝶さん?」

 「か、一刀?ちょ、講義はどうしたの?!」

 「いや。講義はもう終ったんだけどさ、なんか、この人にいきなり掴まって、ココまで連れてこられたんだけど……胡蝶さん、この人……誰?」

 

 

 講義が休みになった私と違い、選択科目の講義があった一刀の方は、今日も学校に行っていた。そして、その講義が終ったその途端、黒塗りのリムジンに乗ったこの人…高千穂魅子さんが現れて、彼を半ば強引に、ここまで連れ帰ってきたのだそうである。 

 

 「おお、これはすまんかったな、北郷一刀どの。……そっちの女子(おなご)が、若文桂花どの…いや、荀文若どのだな」

 『なっ!?』

 

 な、なんでこの人、私の本来の姓と字を知ってるの?!

 

 「あ、貴女一体何者よ!私のその名前を知っているのは、そこに居る一刀と胡蝶さん、それと鹿児島の」

 「一虞どのに燐華どのだけ……そう言いたいのかの?」

 「な、なんで爺ちゃんと婆ちゃんの名前まで……あんた一体……!!」

 「なんじゃ。二人にはわしの事、何も話しておらなんだのか?え?胡蝶よ」

 「そ、その、つい、というか、なんというか……」

 

 うわ。あの胡蝶さんがすっごい低姿勢だわ。さっき、この魅子さんて人のこと、お師匠さまと呼んでいたけど、それが何か関係してるのかしら。

 

 「まったく、(たる)んでおるとしか言い様が無いの。どれ、気合の入れなおしがてら、暫くぶりに稽古をつけてやるゆえ、管理者としての姿になって見せい、貂蝉」

 『……へ?』

 「わ、分かりました……水花さん?申し訳ないけど、部屋から出て防護結界の方、お願いできるかしら?」

 「はい、奥様。……あんまり部屋を壊しすぎないでくださいね?」

 

 そう言って。水花さんは呆然とする私と一刀を横をすり抜けて、部屋から出て行った。そして、その彼女が退出してから二分ほど経って。

 

 「……では、よろしくお願いします、お師匠様。……いえ、前・漢女道正式継承者、卑弥呼!」

 「うむ、何処からでもかかってくるが良い。現・漢女道正式継承者、貂蝉!」

 

 ちょ!?待って!!あんたら何を……ッ!?

 

 『ぶるあぁぁああああああああっっっっ!!』

 『ふんぬうぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっ!!』

 

 『筋肉二大競演キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!?!?』

 

 片や、ヒモパンいっちょの筋肉ダルマに。

 

 片や、カイゼル髭に褌のこれまた筋肉お化け。

 

 そんな化け物二匹が、競い合うかのようにポージング合戦を繰り広げる中、とても直視できないその光景に、揃って強烈な吐き気に襲われている、私と一刀でありました。

 

 ……おえ~……。

 

 ~つづく~


 
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