No.367623

勝手に五竜亭クイズ

「ファンタジーRPGクイズ 五竜亭の一夜」シリーズの二次創作です。
かなり古い作品ですので記憶にある人はほとんどいないでしょうし、
解答に納得いかない方もおられるかと思いますが、そこはそれ。
正解のないファンタジーの問答を、まずは十問目指して書いてみたいと思いますので、お楽しみ頂ければ幸いです。
※作中の固有名詞(ラインリッヒ三世や女神のほほ笑み亭等)は原作に準拠しています。

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2012-01-24 00:05:05 投稿 / 全21ページ    総閲覧数:1293   閲覧ユーザー数:1279

 
 

ジェダから徒歩四日。マーカスの森を抜けると不思議な宿があるという。

一階は酒場、二階は宿屋というありふれた建物だが、そこにはなぜか腕利きの冒険者が集い、古き神々の伝承を語る日もあれば、冒険で生き残る秘訣について喧嘩する夜もあるとか。

 

煤けた天井をキャンパスにして、春の日差しが五匹の竜を描くことから名付けられた「五竜亭」に、また一人の冒険者が扉を開いた。

 

 

☆登場人物一覧☆

 

カールス・グスタフ 歴戦の傭兵

ヴィヴィ カールスとともにいる、なぁーんにも考えていないフェアリー

“蛇の目”ダイス 盗賊ギルドの一員

フンバルト・ヘーデルホッヘ 誇り高き騎士

ビッケム・アンダーヒル 陽気なハーフリング(ホビット)

ソマーウィンド 優雅なエルフの少女(ただし300歳を超えている)

ケド 魔法学院の生徒 真面目で努力家

赤熊 気むずかしいドワーフの戦士

メロス・グリングラス 無口なレンジャー

ヒースクリフ 細面の吟遊詩人

ガルフネット 金儲けに余念がない女魔法使い

マリア・シルバームーン 愛を説く聖職者 酒乱

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一問 旅の必需品

出題者:カールス・グスタフ

 

お前はいつだったかの新米冒険者か? ずいぶんと久しぶりじゃないか。

最初はぎこちなかった武具の扱いも、サマになってきたようで何よりだ。

――ほう、今度は遠い異国まで隊商の護衛につくのか。

なら、心ばかりの忠告をさせてもらうが、この街を離れ長旅に出る前に急いで準備してきたほうが良いものがある。

それが何か分かるか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答 質の良いブーツだ。

 

〈解説〉

武器やリュックなどは使い慣れたものが既にあるだろう。

だが、お前さんの靴は、野外を長距離歩くには少しくたびれてきたんじゃないか?

何ヶ月も荒野を歩く途中、靴に穴が空くなんて絶対に避けたい事態だろう。

壊れたブーツでは隊商についていくだけでも一苦労だし、いざ追い剥ぎやモンスターと戦いとなったときに全力を発揮できるわけがない。

だから、今のうちに足にあった頑丈なブーツを購入してくるのをオススメするね。

 

ダイス「確かに、靴には気をつけたほうが良いな。盗賊は足音の出ないものや、足跡のつきにくいものを使わねぇと商売あがったりだ」

 

マリア「初めて会う人の靴を見れば、持ち主の人と為りが分かるとも言いますわ。足下というのは意外と見られているので小綺麗にしておくのにこしたことはないですね」

 

フンバルト「待て待て、この者は護衛の任務に就くのであろう。麗しき姫君でないとはいえ、か弱き人を護るのは騎士の務め。そのようなときに必要なのはブーツではなく、色鮮やかなマントと、磨き抜かれた甲冑であろう。威風堂々たる騎士を一目見れば、卑しき山賊など恐れをなして近寄りすらせんぞ」

 

カールス「こいつは騎士じゃないし、そもそも騎士の甲冑で一日に何十キロも歩いた日には、疲れきって護衛もなにもあったもんじゃないだろ……」

 

ビッケム「ねえねえ、フンバルトはいつも馬に乗って移動するよね。騎士様の靴って、馬なんじゃないかな」

 

フンバルト「ふむ……、そう考えれば納得はできる。馬を大事にしない者など、騎士の風上にもおけぬからな」

 

ダイス「その大事な馬の手入れは従者がやっているんだろ。その理屈でいけば、従者こそが真の騎士なんじゃねぇか?」

 

フンバルト「おのれ卑しい盗賊風情が馬鹿にしおって! 従者も騎士の一部なのだ! そこになおれ、愛剣スターホーンの錆にしてくれるわ!」

 

野次馬A「おっ、出たぜスターホーン! いいぞ、もっとやれー」

 

ガルフネット「あんたらは何言ってんのや。わざわざ異国まで行くんやろ? なら、そこで高く売れる商品をがっぽり持っていかな大損やで!」

 

カールス「かさばらない物ならそれもアリかもしれんが、その国で何が高く売れるかなんて分かるのか?」

 

ガルフネット「『遠い異国の品です』と言えば大抵の好事家は高く買うてくれるやろ。それでもダメなら『魅了』の魔法で一発やで」

 

カールス「魔法がバレたときは、大急ぎで逃げ出さなきゃいけなさそうだな……。お前さん、やっぱり早く走るためにも良いブーツがあったほうがいいぞ」

 

第二問 どうやって河を渡る?

出題者:メロス・グリングラス

 

ぼくも護衛の仕事をしたことがありますよ。もっとも隊商といった大がかりなものではなく、個人の商人でしたけどね。

じゃあ、今度はぼくが問題を出しましょうか。

 

依頼主である商人とぼくが、目的地である隣国を目指してのんびり旅をしていると、国境付近で大きな河に突き当たりました。

その河に橋はかかっていなくて、槍や弓矢をもった渡し守たちがいるばかり。ただ、渡し賃が一人銀貨2枚と予想より高額で、そのときぼくたちの手持ちは銀貨3枚しかありませんでした。

さて、ぼくたち二人はどうしたでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答 近くの町に戻り、銀貨1枚を稼いでから舟に乗った

 

〈解説〉

国境付近の河で武装した渡し守、というのがポイントです。

この河は国境付近にあるため、密入国や密出国を監視する必要があり、国の兵士たちが渡し守と関所を兼ねて巡回をしていたのです。

もし泳いだり、小さな小舟を調達してこっそり渡ろうものなら、たちまち捕まえられたでしょうね。

急ぐ旅ではなかったというのも、ぼくたちにとって幸運でした。

 

カールス「じつは河ってのは権利の塊なんだ。河を渡る権利、魚を捕る権利、水を利用する権利。それぞれ独自のルールを定めているところも多いから、うっかりルールを破って罰金を払わせられるってこともあるんだぜ」

 

ソマーウィンド「樹木や河はそれぞれ自分の意志を持っているというのに、人間は勝手に自分のものにしてしまうのね」

 

ケド「人間は欲深いですから、利用のルールを決めないと、魚を取り尽くしたり上流で水を使い果たしたりしてしまうんですよ」

 

ソマーウィンド「長い目で見れば、自分で自分の首を絞めていることに気づかないなんて、とても悲しい事だわ」

 

ガルフネット「しっかし、魔法を使えないのは不便やね。うちなら「FLY」の魔法でビューンとひとっ飛びや」

 

ヴィヴィ「びぃびぃもひとっとびだよー」

 

カールス「国境の兵士は気が立っているから、そんなのが見つかったら、たちまち尻に矢が突き刺さるぞ……」

 

ダイス「それにしても銀貨2枚は高すぎだな。付近の盗賊ギルドなら抜け道を知っていそうだから、俺ァそこから聞き込みするね」

 

野次馬A「俺たちはそんなツテがないから、夜にこっそり泳いで渡ったらだめかな」

 

カールス「夜に泳ぐのはよほど切羽詰まらないかぎりオススメしない。泳ぎに自信ある奴も溺れるくらいだし、夜行性の水棲モンスターが出たらまず助からないぞ」

 

野次馬B「それは知らなかった……」

 

メロス「それに、そのときの商人さんは泳げなかったし、運んでいる商品が粉薬だったからね。泳ぐという選択肢は最初からなかったよ」

 

ガルフネット「そりゃどうにもならんワ」

 

ダイス「国境付近じゃなきゃ、橋を建ててるんだろうけどな。舟の往復じゃ効率が悪いし、馬車なんかは渡れないだろう」

 

ガルフネット「……橋といえば、ダイス、アンタ最近セルフィスの街に行ったんだって? 橋の警護しているベルとどうだったん?」

 

ダイス「なっ、なんでそれを……? 誰にも言ってないはずなのに」

 

ガルフネット「ふっふっふ。アンタが血相変えてここを出て行ったから、大方そんなところとカマかけたけど図星だったみたいやね」

 

マリア「まあ、ダイスさん。ベルさんはお元気でしたか?」

 

野次馬A「おっ、ダイスはデートか? おーい、女将! ダイスにエールを追加してやってくれ!」

 

ダイス「ガルフ、てめぇ覚えてろよ……!」

 

第三問 お忍びの姫君

出題者:“蛇の目”ダイス

 

やれやれ、ガルフにまんまと乗せられちまったけど、こうなったら仕方ない。セルフィスに行ったときの話をするか。

お前さん、セルフィスの街は知らないか? ラインリッヒ三世という王様がいる、ここらじゃ一番大きな街さ。

俺が慌てて五竜亭を出て行ったのは、そこの盗賊ギルドから緊急の命令があったからなんだ。

 

「セルフィスの街を挙げて行われる収穫祭に、姫様がお忍びで参加する。

 だが、この情報はすでに漏れており、誘拐を企む者がいるらしいので、盗賊ギルドのメンツにかけて、これを阻止せよ」

 

収穫祭の時期はただでさえ旅行者や上京してきた農民でごった返すから、こんな面倒なことは正直勘弁してもらいたいんだが、うちのギルドは王家ともそれなりに仲良くやっているから仕方ない。

盗賊ギルドのメンバーを総動員して、姫さんを陰から護衛にあたったわけだが、このとき俺たちが立てた作戦が何か分かるか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答 ニセの姫を仕立て上げた

 

〈解説〉

まず本物のお姫さんには、ギルドの女盗賊たちが目を光らせる。女性トイレや、宝飾店なんぞに入られたら、男の盗賊たちはお手上げだからな。

だが、相手が男性禁止の場所を狙い全力で誘拐を仕掛けてきたら、いくらうちの女盗賊たちが優秀でも万が一ってこともある。

そこで、誘拐犯たちの目を逸らさせるために、ニセの姫君をでっちあげることにしたのさ。

 

カールス「それでニセのお姫さんは誰がやったんだ?」

 

ダイス「……そこはベルに頼んだ。はじめはギルドの女盗賊から良さそうな奴を仕立てるつもりだったんだが、ちょうど良い背格好のやつがいなくてな……」

 

ガルフネット「本当はベルを祭りに誘う口実やったんやないの」

 

ダイス「そんなんじゃねえよ! 危険だし最初は巻き込むつもりなんてなかったんだ。だが、誘拐犯がどうしても見つからなくて、罠にかける必要があってな……。ベルにはホント申し訳なかったぜ」

 

マリア「皆が神に感謝する収穫祭にそんな悪いことを企む人がいるだなんて! それでダイスさん、お姫様は無事だったんですの?」

 

ダイス「ああ、お姫さんは事件があったことも知らないまま城に帰ったぜ」

 

ケド「事件を知らないまま……ということは、やはり誘拐犯がいたんですね?」

 

ダイス「まあな。ベルを本物の姫さんだと勘違いした誘拐犯たちが、護衛のスキをついて馬車へとさらって走り出したんだ」

 

マリア「まあ! それでベルさんはどうなったんですの!?」

 

ダイス「あいつらはベルを乗せて、そのまま逃げ切るつもりだったんだろう。けど、馬車の進行方向にいた俺が誘拐犯にダーツを投げて、ひるませた隙にベルが馬車から飛び降りたから誘拐は失敗さ。……これが本物のお姫さんだったら、走る馬車から飛び降りるなんて絶対に無理だったろうな」

 

野次馬A「おいおい。走る馬車から飛び降りたら、ベルだって怪我したんじゃないのか?」

 

カールス「さて、そうかな……。おい、ダイス、その包帯はどうしたんだ」

 

ダイス「な、なんでもねぇよ。俺がドジふんで転んだだけだ」

 

ガルフネット「ははぁ、ダイスが飛び降りるベルを受け止めないわけがないもんねぇ。どれ、ウチが水晶玉の魔法でそのシーンをちょっと映してみるワ」

 

ダイス「やっ、やめろガルフ!」

 

野次馬A「おいおい、ダイス。怪我人はおとなしくしたほうがいいぞ」

 

野次馬B「そんなに暴れたら傷口が開くからな。……おーい、誰かロープもってこい」

 

ダイス「むぐっ! むぐぐっ!」

 

野次馬C「……一丁上がりと。ガルフ、こっちはいいぞ」

 

ガルフネット「お、見えてきたで」

 

 

 

* * *

 

 

 

カールス「やれやれ、ダイスもフンバルト顔負けの騎士ぶりだったな」

 

ガルフネット「いやー、ええもん見せてもろたわ。お芝居だってあんなにクサいシーンはないで」

 

ソマーウィンド「馬車から飛び降りたベルも、身を挺して受け止めたダイスも無茶すぎるわ。どうして人間って命を大事にしないのかしら」

 

メロス「そう言う君も水晶玉に見入っていたんじゃないかい」

 

ソマーウィンド「……そうね。森では平穏な日々ばかりだから、相手に自分の命を託す光景なんて、ほとんど見たことがないもの。だからこそ人間を観察するのはやめられないのかしら」

 

 

 

第四問 洞窟の奥底で

出題者:ガルフネット

 

なんや今日はえらく人が少ないな。ダイスは前回からかいすぎたから、いたたまれなくて出かけたのは分かるとして、カールスのおっさんやメロスにソマーもおらんのか。まあ、仕方ないから今回はウチが問題だしたるわ。

 

あれは少し前のことやけど、財宝が眠ると噂される洞窟へ、街で雇った戦士と二人で潜ったときのことや。

財宝があるとは分かっているのに、誰もそれを手に入れたことがないくらいやから、危険だろうとは思うとったけど、まぁ出るわ出るわ魔物のオンパレードやった。

 

それでも何とか地下5層までたどり着き、目の前に財宝の山というところまで迫ったところで、思わぬアクシデントが起きたんや。

それまで慎重に探索してきたにもかかわらず、お宝を見つけた途端に戦士が「財宝だ!」と無防備に近づいてしまってな。案の定、天井でエサを待ちかまえていたブロッブが戦士へ襲いかかり、全身を溶かし始めたんや。

 

ブロッブはいくら切っても増えるだけだし、ウチのか弱い細腕でなんとかできる相手やない。

こうなったらイチかバチか、最後まで残していた「火球」の魔法をブロッブだけ死ぬようにぶつけたところ、奇跡的にうまくいったようやった。

戦士も軽傷で済んだみたいだし、目の前にはお宝がざっくざく。

 

さてウチはここでどうしたと思う?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答 全速力で洞窟から逃げ出した

 

〈解説〉

ブロッブに「火球」の魔法をぶつけた途端、真っ黒いケムリをあげて燃えだしたんや。

洞窟の地下5層でそんなことになってみい! あっという間にケムリが充満し息が詰まってお陀仏や。

お宝は惜しいが、命と引き替えにしては何にもならん。事態は一刻を争うから「倍速」の魔法をかけてすっ飛んで洞窟を駆け上がったわ。「火球」の魔法を使う時点で諦めとったとはいえ、本当にもったいないことしたで!

 

赤熊「やれやれ、お前さんも分かっておらんな。たしかにケムリも危険じゃが、洞窟内では火を使った途端に大爆発ということもあるんじゃぞ」

 

ケド「粉塵爆発ですね。炭坑では毎年それで亡くなる方が何人もおられるとか」

 

ガルフネット「ウチかて使いたくて使ったワケやないで! お宝は得られないし出費はかさむし大損やったワ」

 

マリア「それで、その戦士の方はどうなさったの? まさか一人置いて逃げ出したんじゃないでしょうね」

 

ガルフネット「ウチとしてはブロッブから助けた時点で出血大サービスのつもりやったから、あとは放っておいても良いかと思うたんやけど……」

 

マリア「まあ! それじゃその方はケムリに巻かれても良いと言うの!?」

 

ガルフネット「いや、そいつは案外機転の利く奴でな。手持ちの毛布やマントを手早く天井の狭い部分へカーテンのようにつり下げたんや。正直、それがなかったらウチも危なかったかもしれんワ」

 

ケド「水は低きを流れ、ケムリは高きを流れますからね。たしかにそれはケムリを止める堤防として、有効だと思います」

 

野次馬A「だけどよ、空気が心配だから、魔物がたくさんいる洞窟で魔法なしってのは大変なんじゃないか?」

 

ガルフネット「別に「火球」だけが魔法やないんやで。「アイスストーム」なら燃えることもないし、「石壁」の魔法で閉じこめてやってもええんや。要は頭と魔法の使いようやで」

 

ケド「でもガルフネットさん、魔法の使用は世界の均衡を崩すことに繋がるんですから控えるべきですよ」

 

ガルフネット「普段から使い慣れてるからこそ、機転の利いた使い方もできるってもんや。机に向かって研究ばかりでは、せっかくの頭脳も腐ってしまうんやで!」

 

 

第五問 勝利の後で

出題者:赤熊

 

ふむ。財宝繋がりで今度はわしが問題を出そうかの。

あれはトロルの潜む洞窟でのことじゃった。……トロルとは巨人族の一種で、力が強く一撃でもくらえば命が危ういような相手なのじゃが、幸いなことに知能はあまり高くなくてな。食べ物でおびき出し、落とし穴に嵌めてうまくトロルを退治したんじゃ。

そのトロルは洞窟の奥に宝石をたんまり貯め込んでいたのじゃが、それを見てわしは落胆せざるをえんかった。さて、なぜか分かるかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答 トロルは全ての宝石をごちゃ混ぜにしていたのじゃ。

 

〈解説〉

宝石は硬いものがほとんどじゃが、それゆえに一緒の袋や箱に入れると傷つけあってしまう。なかにはオパールのようにそれほど硬くないものもあるから、それぞれ個別に柔らかい布袋に入れておかないといけないのじゃが、あのトロルはそんなことお構いなしだったようでの。ほとんどの宝石は傷がついて、価値がだいぶ下がったものばかりじゃった。所詮は宝石の価値も分からない怪物とはいえ、無惨な姿の石を見るのは忍びなかったのう。

 

ビッケム「ふぅん、ふしぎだね。ちょっと見たくらいでは同じに見えるのに、もう価値がないだなんて」

 

赤熊「宝石というのは傷や含有物、カットの仕方で価値がずいぶん変わってくるからの。そのトロルは小さな鋼玉(こうぎょく)をたくさん持っておったから、それで大粒のオパールやガーネットが傷つけられていたのは返すがえす残念じゃった」

 

ビッケム「鋼玉ってなあに?」

 

赤熊「鋼玉とはルビーやサファィヤのことじゃ。赤いものだけをルビーといい、そのほかの色はサファィヤと呼んでおるの。鋼玉という名前だけあって、ダイヤモンドの次に硬い宝石なんじゃよ」

 

ダイス「宝石もだが、純金の細工物も柔らかいからな。せっかく盗んだお宝が無価値にならないよう、盗賊ギルドでも新米にお宝の扱い方を学ばせるぜ」

 

ビッケム「金も柔らかいの? この前見せてもらった金貨は硬かったけど」

 

赤熊「金貨の種類によっては混ぜ物をしてあるからの。純金はダイスの言うとおり柔らかいから、歯で(かじ)ればすぐに歯形がつくぞい」

 

ソマーウィンド「ドワーフは金属や石を食べてるから、そんな鈍重な体型になるのよ」

 

赤熊「いくらドワーフでも金属など食べんわ!」

 

ヒースクリフ「その美しさ、並び立たず、触れなば互いを傷つけ合う♪ 宝石もバラも人もみな孤独♪」

 

ダイス「お、ヒースじゃねぇか。久しぶりだな」

 

ヒースクリフ「ええ、本当にお久しぶりですね。五竜亭の皆さんも相変わらずのようで安心しました」

 

ダイス「たしかに、赤熊のおっさんとソマーの仲の悪さは相変わらずだな」

 

ビッケム「ぼくはやっぱり宝石より食べ物のほうがいいなあ。宝石は混ぜたら価値がさがるかもしれないけど、料理の材料は混ぜたら美味しくなるもの」

 

ヒースクリフ「美味なる食事は音楽とともに、多くの人と喜びを分かち合えるものですからね」

 

 

 

第六問 吟遊詩人の仕事

出題者:ヒースクリフ

 

今宵は月が綺麗な良い夜ですね。

私たち吟遊詩人は、五竜亭のような酒場や人の行き交う広場などで、歌と演奏を披露することにより幾ばくかの路銀を稼いでいます。古今東西の英雄譚から地方でのみ伝わる童歌まで、様々な歌を皆様にお届けして場を盛り上げるのが仕事ですが、実はそのほかにもある役割を担っているのです。

さて、その役割とは何か分かりますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答 各地の出来事を歌にして、別の地に情報をお届けすることです。

 

〈解説〉

おいそれと生まれた土地を離れられない人にとって、遠い場所の出来事を知るというのはとても喜ばれるものです。我々吟遊詩人は各地での出来事を新たな歌にして運ぶのも仕事ですから、自然と情報通になるという側面もあるわけです。もちろん、歌い手によっては内容が誇張されてしまうことはあるでしょうけれど。

 

カールス「逆に、普段はいかつい傭兵でも出身地の歌を聴いて泣き出す、なんてこともよくある話だな」

 

ダイス「吟遊詩人が各地の出来事に詳しくなるってぇのは分かったが、それは行商人たちでも同じことなんじゃないかい?」

 

ヒースクリフ「確かに、そういった方たちも各地の情報にお詳しいですね。ただ、その情報が商売のタネであったりすれば、おいそれと教えてもらえないかと」

 

マリア「それにヒースクリフさんの歌はとっても綺麗ですもの。多くの方に幸せを運べるのは素晴らしいことです」

 

カールス「確かに、歌と楽器が上手いってのは羨ましい話だ。傭兵稼業をしていれば武器の扱いは慣れたもんだが、雅なものには縁がなくてな」

 

ヒースクリフ「楽器が演奏できなくても場を盛り上げることは可能なんですよ。歌が上手ければ歌い手や歌姫、話上手な方は語り部として生活てきますから」

 

ケド「語り部や吟遊詩人の方達は、歴史書に記されていない貴重な情報を知っていることが往々にありますから、魔法学院としてもお世話になることが多いですね」

 

* * *

 

フンバルト「しかし、今宵の月は見事なものだ。こんな夜は美酒を空けながら英雄譚や騎士の物語を聴くのに相応しいが、なにか良い歌はないかね」

 

ヒースクリフ「では、いまセルフィスの『女神のほほ笑み亭』で大流行している騎士の歌を習ってきましたので、それを」

 

マリア「まあ、いったいどんな出来事でしたの?」

 

ヒースクリフ「息抜きに城を抜け出したお姫様が、悪漢たちに誘拐されそうになるところを、若き騎士が鮮やかに助け出す歌ですよ。お姫様が悪漢たちの馬車から飛び降り、騎士が身を挺して抱き留める場面が一番の盛り上がるところです」

 

フンバルト「うむうむ、高貴なレディを身を挺して守るとは騎士の鑑! 騎士を信じて馬車から飛び降りる姫君の勇気もまた素晴らしい」

 

野次馬A「おいおい、それって……」

 

野次馬B「最近どこかで聞いたような話だな」

 

野次馬C「こりゃあ、ぜひ聞かせてもらわないとな!」

 

ダイス「…………」

 

カールス「おいおい、ダイス。顔が真っ赤じゃないか。酒の飲み過ぎはいかんな」

 

ダイス「そのにやけ面を見れば、そんな心配してねぇってことが丸わかりなんだよカールス……!」

 

第七問 騎士の義務

出題者:フンバルト・ヘーデルホッヘ

 

ふむ。君はいつぞやの冒険者か。幾たびも危険を乗り越えたようで、顔つきもだいぶ凛々しくなったな。君のような将来有望な若者には、冒険者ではなく騎士見習いになることを勧めたいのだが……それが君の選んだ道では仕方あるまい。

我輩は生まれたときより騎士の道を志してきたゆえ苦にはならないが、なかには嘆かわしいことに騎士の義務を窮屈(きゅうくつ)に感じる者がおる。高貴なる者ほど義務が増えるのは当然のことなのだが……。

さて、君は騎士の義務をいくつ挙げられるかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答 強くあること、勇気を常に持つこと、正直であること、自己犠牲を(いと)わない高潔な行いを心がけること、誠実であること、王家への忠誠心、礼儀正しくあること、神の教えに忠実であること、弱者への敬意と慈愛、仲間と苦楽を分かち合うこと、(ちか)いを守ること、悪の力に対抗して正義を守ること、女性を庇護といったことだ。

 

〈解説〉

正直で礼儀正しいだけでは弱き者を悪から守ることはできん。かといって、ただ強いだけではそこらの粗暴者粗暴者(そぼうもの)となんら変わることはない。心身の両面を鍛え続け、その力を正しく使う者が騎士と言われるのだ。五竜亭にも暴飲暴食で腹をたるませた不誠実な者がおるが、そのような者には惑わされず、我が輩のような騎士を目標にすれば周囲から敬意を勝ち取れるぞ!

 

マリア「素晴らしいですわ騎士様。神は教えに忠実な者に必ずや祝福を授けますわよ」

 

カールス「腹をたるませたってのは誰のことか気になるが……フンバルトの言うことにも一理無くはないな。なにせ騎士団ってのは国でも有数の戦闘集団だ。そんな奴らに無法をされた日には、町の一つ二つくらい

簡単に消えてしまう。だから、騎士団を制御するためにはこうした取り決めも必要になるんだろう」

 

ダイス「俺らからすれば、弱者は弱者なりに助け合って暮らしているんだから、上から目線の押しつけがましい偽善はお断りしたいんだがね。まぁ、くれる物はもらっておくってトコロかな」

 

ビッケム「えー、フンバルトはりっぱなこと言ってると思うけどなあ。どうして二人とも感心しないの?」

 

ガルフネット「建前と本音が違うってとこがビッケムには分かってないんやな。まあ、見ててみ。……おーい、フンバルト! 女性を庇護し仲間と苦楽を分かち合うってんなら、今日の夕食代はフンバルトがもってや!」

 

フンバルト「なっ、なぜ我が輩が貴様の夕食代を負担せねばならんのだ」

 

ガルフネット「この前、セイレーンの歌に魅了されて海に飛び込もうとしていたところを助けたのはウチやないか。魔法を解かなかったら、今頃アンタは海の底で魚のエサなんやで! だから今度はフンバルトがウチを助ける番や!」

 

フンバルト「そ、それとこれとは話が別では……」

 

ガルフネット「ほらな? 自己犠牲を厭わない人間ならパーッと仲間に(おご)ってくれても良さそうなものやろ」

 

カールス「まあ、ガルフが女性と見られていない可能性もあるがな……」

 

ガルフネット「失敬な! ウチはどう見てもか弱い乙女やで!」

 

ダイス「あのボンボエリカ虫の話を聞いて、お前さんを乙女と思う奴はユキリア中に一人もいねぇよ」

 

ビッケム「ねえねえ、じゃあさ、マリアにならおごってくれるんじゃない?」

 

マリア「え? 私にですか?」

 

カールス「ま、待てっ、ビッケム!」

 

ビッケム「ねえフンバルト! マリアにお酒をおごってあげてよ!」

 

フンバルト「マリア殿に!? そっ、そういえば我輩これから魂の歌亭に呼ばれているのであった。マリア殿に美酒を捧げられないのは残念だが、お先に失礼するぞ」

 

ダイス「……危ないとこだったぜ」

 

ビッケム「なあんだ。やっぱりガルフの言うとおり、騎士の義務ってタテマエなんだね」

 

カールス「いや、今のは騎士の義務の一つ『正直さ』に忠実だったと思うぞ。なにせ酒を飲んだマリアの横にいたいと思う奴は五竜亭にいないからな……」

 

第八問 寂れた村で

出題者:ビッケム・アンダーヒル

 

昨日はフンバルトたちのフクザツな事情っていうのを見たけど、やっぱりぼくにはよく分からなかったなあ。あまり難しく考えないほうが楽しいよね。

――――そういえば、難しいで思い出したけど、ぼくが仲間と旅に出ているとき、突然の大雨に打たれて近くの村へ雨宿りさせてもらったことがあるんだ。不思議なことに、その村はお年寄りばかりで、みんな悲しそうで元気がなかったんだよ。話を聞いてみると、その村では農産物が不作で、若い人たちは大きな町へ出稼ぎに行ってしまったんだって。ずっと寂しかったらしくて、雨宿りさせてくれるだけじゃなく、ご馳走をたくさん作ってくれたんだ。ほんと美味しかったなあ。

雨宿りさせてもらったお礼に、ぼくたちはお爺さんお婆さんたちを元気づけてやろうと思ったんだけど、どうしたらいいかすごく悩んだんだ。

考えた末にぼくたちは何をしたと思う?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答 その村でお祭りがある、と近隣に知らせた。

 

〈解説〉

お爺さんお婆さんたちは、自分たちはもう役に立たない者と思いこんでいたけど、ぼくたちに料理を作ってくれたように、じつはまだまだ元気なんだ。だから、それを発散できる場があればと思ってお祭りを開催したんだよ。近くの村から孫のような子供達も来てくれたから、すごく喜んでくれたよ!

 

マリア「まあ、それは良いことをしましたね」

 

ソマーウィンド「でも、どうしてその村の若い人たちは彼らを置いていったの? 一緒に行けばいいじゃない。老いたからといって愛している人を置き去りにするなんて……考えられないわ」

 

カールス「一概に悪いとも言えないな。若者たちの行った街で寝泊まりできる場所は限られているだろうし、一緒に行けばそれだけ滞在費がかさむ。なにしろ村では自宅にタダで寝泊まりできるが、街では何をするにしても金がかかるからな。それに、村を長期間無人にしておけば盗人やモンスターに占拠されるかもしれない」

 

ソマーウィンド「お年寄りばかりなら、逆にモンスターに襲われないよう街に行くべきじゃないのしら」

 

メロス「たぶん、その方達は愛着のある我が家を離れたくなかったんだと思うよ。……たとえそこに危険があろうとも」

 

ビッケム「それに、お祭りを開いてからは、近くの村人たちがその村へ遊びに来てくれるようになったんだよ。お婆さんたちの料理は美味しいし、お爺さんたちがいろいろ教えてくれるから」

 

マリア「お年を召された方達はいろいろな知識をお持ちですからね。必要とされていることが分かれば、張り合いがあると思いますよ」

 

野次馬A「そんなに良いことづくめなら、早くやれば良かったのにな」

 

ヒースクリフ「いえ、これはビッケムさんたちがいたからこそ成功したのだと思いますよ。こうした催し物は事前に大きく宣伝することも重要なんです。陽気なハーフリングたちが楽しそうにふれ回ったから、自分たちも行ってみようという気になったのかと」

 

野次馬B「へえ、そんなもんなのか」

 

カールス「それなら確かにハーフリングたちはうってつけだな。なにせ年中パーティを開いていそうなイメージがあるから」

 

ソマーウィンド「ガルフネットが宣伝役だったら、何か裏があるんじゃないかって思ってしまうものね」

 

第九問 魔法陣を止めるには

出題者:ケド

 

魔法学院では、光と闇の均衡や世界の秘密、魔法の理論などを学びますが、そのほかにも論理的な思考を養うよう教わります。

それが役に立った話ということで、一ヶ月前にフンバルト殿やカールスさんとともに受けた依頼のことを問題に出しましょうか。

我々が受けた依頼というのは、ある領主のお嬢さんが誘拐されたという事件でした。

なぜ魔法学院の学生である僕にも調査するよう依頼がきたかというと、犯人は悪の道に魅入られてしまった元学院の生徒のようなのです。

地道な調査を続け犯人たちの居場所を特定し、いざアジトに乗り込むと待ち受けていた魔法使いたちと激しい戦いになりました。どうにか魔法使いとその手下は倒せたのですが、ここからが問題です。

攫われた女性は血で描かれた魔法陣の中で眠っており、今にも悪魔召還の生け贄にされそうになっていました。

魔法陣はすでに完成していて、急いで解除をしようにも、その方法を知っている魔法使いはすでに死んでいます。

こうした魔法陣は、下手に止めようとして失敗すると大爆発を起こしたり非常によくない結果がおきるのですが、幸いなことに、悪い魔法使いは悪魔召還の手順を書いたメモを残していました。

 

★メモ

・剣は死の前に現れる

・血は骨と肉より生じる

・血なくして呪はかからない

・肉をは骨なくして立つことはない

・死は最も最後に訪れ、呪とともに悪魔を招く

・肉は剣によって断ち切られ、血を呼ぶ

 

見れば、魔法陣には「死」「骨」「呪」「剣」「血」「肉」と彫られた6つの像が、お嬢さんを囲むように置かれています。

おそらく、この手順の逆に実行すれば安全に解除できるようですが、どういった順番でやればいいでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答 死>呪>血>剣>肉>骨の順番で取り除けば良いのです。

 

〈解説〉

まずはメモに書かれた言葉を分かりやすく記号にしましょうか。

剣>死

肉・骨>血

血>呪

骨>肉

呪>死

肉>剣>血

これを一列に並び替えると、骨>肉>剣>血>呪>死の順番になります。

つまり、この逆に像を取り除けば、魔法陣は安全に解除できるはずです。

 

マリア「ああ、悪魔の召還だなんて、なんて恐ろしいことを。主よ、この弱き魂の持ち主をどうかお許しください……」

 

ダイス「しっかし、カールスとフンバルトの旦那はヘマしたな。そういう悪党は生け捕りにしろって命令が出てるんじゃねェのかい」

 

カールス「まぁそうなんだが、魔法使いの手下が手強かったのと、もう一つ誤算があってな」

 

ケド「いよいよ捕らえようというときに、彼は魔法陣のそばで自殺してしまったんです」

 

マリア「まあ、なんてことを……」

 

ガルフネット「学院の信用を落とすやつには容赦ない罰がまってそうやから、せめて自分で一息にって感じやろか」

 

ケド「……真相はもう分かりません。そこまでして悪魔を呼び寄せる理由っていったい何だったんでしょう」

 

ガルフネット「そりゃあ悪魔に願いを叶えてもらうか、悪魔を解き放ってユキリアを大混乱させるとかやろ」

 

ダイス「そのあたりが定番かもしれないが……そういやフンバルトの旦那はどうしたんだい。いつもなら手柄を延々と自慢しそうなモンだが」

 

カールス「フンバルトなら、助けた領主の娘からぜひお礼をと言われて、領主の屋敷に残ったぞ。しばらく逗留するんじゃないか」

 

ケド「ずっと捕まっていたはずなのに、元気な方でしたね。僕たちは堅苦しいのが苦手なのと、学院に報告があるので先に戻ってきました」

 

ダイス「ふーん。……なあ、その娘ってほかにどんな特徴だったよ?」

 

ガルフネット「なんやダイス! 他の女に興味を示すと、愛しのベルちゃんから怒られるで?」

 

ダイス「そんなんじゃねえよ! ただ、ケドの話を聞いてこう思ったのさ。『悪魔を呼び出すくらい大それたやつがそんな簡単に自殺するだろうか』ってな。その女性はピンピンしてたんだろ? 俺ならその娘が真犯人で、元学院の生徒は忠実な手下って可能性を疑うかもな」

 

ケド「あ……」

 

 

 

第十問 信頼を得るには

出題者:マリア・シルバームーン

 

 

やはり五竜亭に帰ってくると気が休まります。

教会も落ち着きますが、ここはまた別の意味で安らげる場所だと思います。

さて、私たちはケドさんたちが救出した娘さんが悪魔憑きではないかと疑い、急ぎ領主の屋敷へ向かいました。

まずは、私たちがフンバルトさんの仲間であることを説明し、騎士様から屋敷の様子をお伺いしようとしたのですが、屋敷の方は「そんな人はここにいない」と繰り返すばかり。

 

それでは……と領主さんに話をお伺いしようとしたのですが、ここのところ病で伏せっているとのこと。

使用人の皆様にいろいろと話しかけても、話をはぐかされるか怯えたように逃げ出されてしまうという具合です。

 

フンバルトさんも領主の娘さんもどこにいるか分からない中、私たちはどうしたでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答 私が教会の者であること、悪魔憑きを退治しにきたことを正直に話しました。

 

お屋敷の皆様は、どうすればいいか分からず、頼る者もなく途方に暮れていたのです。

私たちは「領主の娘さんを助け出した冒険者の仲間」と説明したのですが、屋敷の方からは「恐ろしげな儀式をするお嬢さんの仲間」と誤解されていました。そこで、聖印と祈りの文句を唱え、怪しい者ではないことと、彼らの力になりにきたことを正直に説明したのです。

屋敷の人から話を聞くと、彼女はやはり悪魔の力に取り憑かれており、さらに力を得ようとフンバルトさんを生け贄にしようとしていました。

私の力はまだまだ未熟なのですが、聖印をかざし神の御名とともに悪魔払いの句を唱えたところ、彼女に取り憑いた悪魔を退散させることができました。

 

ケド「フンバルト殿はまさに間一髪でしたね」

 

フンバルト「ふん、レディを傷つけるわけにはいかなかったまでのこと。男であればスターホーンで成敗しておったわ」

 

ガルフネット「そんなこと言って、どうせ若い女の子にチヤホヤされて、鼻の下伸ばしたところを捕らえられたんやろ」

 

フンバルト「むぐっ」

 

ビッケム「ところで、悪魔が退散されたなら、その人は助かったの?」

 

マリア「命に別状はありませんよ。ただ……」

 

野次馬A「ただ、なんだ?」

 

野次馬B「おかしくなってしまったとか?」

 

マリア「悪魔が去るとき、力の代償としてその方から若さを奪っていったんです。いまでは、領主の母親くらいの年齢にしか見えなくなってしまって……」

 

カールス「マリアが気に病むことではないさ。力を求めてケドの学友をたぶらかし、悪魔と契約した彼女の責任なんだから」

 

野次馬C「でもよ、今度は若さを求めて悪魔を呼びだすかもしれないんだろ」

 

ケド「いえ、それは難しいかと思います。彼女は正気に返った領主さんによって地下に幽閉されてしまいましたし、彼女はもう悪魔と取引できるものを持っていませんから」

 

野次馬A「命や魂はまだあるんじゃないのかい?」

 

ケド「いえ、すでに彼女の魂は闇と契約してしまったので、さらなる契約の代償とすることはできません。残った命も、いつまでもつのか……」

 

ビッケム「なんだか、とっても悲しい話だね」

 

ヒースクリフ「真に悲しいのは、多くの人間のなかに力を求める欲望や、悪魔の誘惑に負けてしまう弱さがあることでしょうね」

 

赤熊「……愚かしいのは人間だけではないぞ。我々ドワーフもミスリルという至高の鉱石を求めて山を掘り尽くし、太古に封じられた恐ろしい悪魔を解き放ってしまったことがあるんじゃ」

 

フンバルト「むぅ。そのような悪魔を討ち取ってこそ騎士の誉れ。してその山はいずこにあるのか」

 

赤熊「ドワーフの名だたる戦士たちが束になっても敵わない悪魔に、フンバルトが勝てるとはとうてい思えんのじゃがの」

 

フンバルト「な、なにを無礼な! そこへ直れ、愛剣スターホーンの錆にしてくれるわ!」

 

ソマーウィンド「私たちエルフにしてみれば、悪魔を呼び出したり、神の力を借りる人間が一番恐ろしいんじゃないかって気もするけどね……」

 

 

 
 

 
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