何気ない所ほど気になってしまう。
ついつい流し気味のあるあるを切り取っていく……。
裕太「今日の議題は『家族で飯食ってる時にお色気シーンが流れた時のあの気まずさ』、
を取り上げるっ!」
時紀「ど、どうしたのさっ!?」
やはり驚いているなっ、時紀……。
しかし、俺はどうしてもこの話をしなければならないのだ。
裕太「時紀はこんな経験、ないか?」
時紀「あ、あるけどさ……」
時紀は困惑が続いている。
何があったかまだ理解できていないようだな。
裕太「俺は昨日飯を食っていた……」
その情報だけで時紀は察したようだった。
時紀「なるほどね……」
裕太「わかってくれたか?」
時紀「要するに昨日、そうなったワケだ」
裕太「その通り! 流石、時紀」
時紀「いつになく子供っぽいねぇ」
おいやめろその冷めた視線。
裕太「……で、時紀もあるならわかるだろ?
この意図してない気まずさが」
時紀「まぁ、わかるけどさぁ……でも気にしたって……」
裕太「しかし! この話には続きがある!」
時紀「っ!?」
急に大声を出したので、時紀がビクリ! と反応した。
裕太「その気まずさもそうだが、
そこから性生活的な話題に発展する場合が、ある」
そう。母親は思春期男子である俺に、訪ねやがったのだ。
裕太「俺に『アンタもこんなことしてんの?』と」
時紀「ぶぅーーーーーーーーーーっ!」
ゆっくり飲んでいた牛乳を吐き出した。
裕太「うわ汚ぇっ!」
時紀「ごほっ、ごほっ……」
驚いて吹いたのなら許すが、
笑って吹いたのなら罰が必要になるぞ時紀。
時紀「……んっ……んぁいっ変わらずだね裕太のお母さんは……」
まだ飲み物が気管に残っているようだった。
裕太「お前……笑って吹いたのか?」
ジロリ、と睨みつけた。
時紀「い、いや……笑ってない笑ってない」
裕太「本当に?」
時紀「ホントホント」
裕太「微妙に片言になってないか?」
時紀「なってないなってない……。
って、それより話したい事あるんでしょ?」
裕太「今回だけは許してやろう……」
時紀「ありがとうございますっ」
裕太「ふん。調子のいい奴め」
時紀「ごほっごほっ……で、お母さんに訊かれた訳ね」
裕太「ああ。その通りだ」
時紀「それでそんな喋り方なのね」
裕太「…………」
俺の切れ長の目で見つめる。
時紀「……ううん、何も言ってない言ってない」
裕太「勉強ばかりで貧相な体も、今の俺にかかれば真っ二つだ」
中途半端に鍛えた手でリンゴを砕くような仕草をしてみせる。
時紀「ごめんってばっ」
裕太「いいな?」
時紀「了解~」
こいつのいらないツッコミのせいで脱線してしまった……。
裕太「話題を戻す。……そう母に訊かれたという本題に」
時紀「で、その事に腹を立ててるワケ?」
裕太「普通聞かなくていいだろ……。
居間でエロシーンが流れるハプニングがあった後だぞ?」
ただでさえ、その年頃にとってはデリケートな問題なのに……。
時紀「逆にそんなときぐらいしか聞けないでしょ」
裕太「…………」
時紀「…………」
時紀は両手を広げ、どう? みたいな仕草をした。
裕太「……まぁ……確かにな……」
時紀の言うことも一理あるかもしれないが……。
裕太「でもやっぱ聞くのはナシだろ~」
時紀「わかるけど、もう聞かれちゃったんでしょ?」
裕太「ああ。根掘り葉掘りな……」
時紀「前も思ったけど、
裕太のお母さんって結構大胆に踏み込んでくるよね……」
裕太「そういや、
お前が家に来た時にも彼女がどうとか訊かれたよな」
時紀「ああ、あったねぇ」
裕太「あれは本当にひどかった。
彼女の話題はもちろん、俺よりも先行ってるとか何とか……」
時紀「そうそうっ」
裕太「あの後、お前が帰ってからも俺に訊いてくるんだぜ?」
時紀「あ、そうだったの!?」
裕太「ああ。まぁ、何も言ってはいないけどよ」
時紀「いやそれはいいんだけどさ……」
裕太「もう知らんっつーのって感じで」
時紀「まぁ僕の事を時紀に聞いても仕方ないよね」
裕太「本当だよったく……」
時紀「でも、ああいう知りたがりな所とか裕太にソックリだよ?」
裕太「おいおい……」
時紀「ホントにないって言い切れる~?」
時紀のぱっちり目がジト目になって俺を詰問する。
裕太「た、確かにないとは言えない……と、お、思う……っ」
時紀「でしょ? 問い詰め系は間違いなくお母さんの遺伝だよね」
裕太「そうかなぁ……」
時紀「間違いなくそうでしょ」
裕太「う~ん……」
時紀「そんなに嫌なんだ……」
裕太「そりゃあそこまでデリカシーないとさぁ……」
時紀「裕太だってそんなにデリカシーないでしょ?」
(性に関しては)紳士な俺を捕まえてなんて事を。
時紀「それって何? ナンパ師ってこと?」
裕太「だから俺の心読むのやめろって!」
時紀「得意の八の字眉げだからね」
困り眉毛を撫でながら、
裕太「そんなに眉毛に出るのか……?」
時紀「わっかりやすいぐらいにね」
裕太「んな事言われるんのお前くらいになんだけどなあ」
時紀「ふふん、まぁ僕くらいだよね裕太の表情が読めるのは」
裕太「まぁ実際そうなんだが……」
悔しいがそこは間違っていない。
時紀にはなぜか心を読まれてしまう。
時紀「読むなって顔に出てるよ?」
裕太「わかってるなら読むなぁっ!」
時紀「ふっふーん」
心が読めたらプライバシーの意味ないだろ……
裕太「ったく……」
時紀「今日はこのぐらいにしてあげるよ、読むの」
裕太「今日だけじゃなくて明日も明後日も読むな!」
時紀「ま、それは裕太次第だよねぇ~」
キーンコーン、チャイムが鳴った。
裕太「あ……」
貴重な休み時間は終わってしまった……。
あれ? 本題ってなんだっけ?
なんかあったような……。
まぁいいや。どーせいつもの事だし。
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練習用です。ですので是非。