「何をしている、皆、秋蘭を捕らえなさい」
華琳の右手が秋蘭に向けられると親衛隊が秋蘭を囲んだ
周りを見回す秋蘭はあからさまに面倒そうにしている
「無駄なことを」
一斉に襲い掛かる親衛隊を秋蘭は体術で軽く振り払う
ある者は強烈な肘を受け悶絶、ある者は蹴りを受け意識を失う、ある者は投げ飛ばされ強烈に全身を打つ
秋蘭の周囲には倒された親衛隊の山が出来ていた
秋蘭の武器は弓、矢は無限にあるわけではない
「怯むな、親衛隊を総動員せよ!」
華琳の号令はさらに続く
「ちっ、そういうことか」
秋蘭の周囲に倒された親衛隊の山が重なり続け、やがて山が邪魔になり動きが封じられ始めた
「くっ、うっとおしい」
親衛隊の攻撃はとまらない
すると、秋蘭が足元の兵の腕を踏み態勢を崩した
「し、しまっ・・」
「もらったわよ」
絶を構えた華琳が秋蘭に飛び掛る
しかしそれが秋蘭の狙いだった
「馬鹿め」
「!?」
態勢を崩したのは華琳を誘い込むための演技だった
すぐに態勢を整えた秋蘭の矢が絶を構えた華琳に放たれる
「曹操様!!」
身を挺した親衛隊の兵が華琳の前に立ちふさがると、秋蘭の矢は彼の胸を貫いた
「このような子供だまし、私には通じぬよ」
秋蘭が回し蹴りで大きなつむじ風を起こすと、山となっていた親衛隊が吹き飛ばされ、周囲に邪魔なものはなくなった
「ちっ」
華琳の額に新しい冷たい汗がたれた
「曹操、なぜ私と戦う、私との利害は一致していたはずだ」
華琳は絶を握る手に力をこめた
「利害とは別の話よ。春蘭処刑の日、あなたは春蘭を助けようとせず傍観していた。なぜかしら?」
秋蘭の口元がにやりと上向くと、面白い見世物を眺めるように華琳を見下す
華琳はそんな秋蘭の態度にさらにいらいらした態度を見せた
「許子将との契約は一刀を呪縛から開放すること。そのためならば、私も、そしてかわいい魏の精兵達の犠牲も厭わない。
そう誓った以上、覇王の言葉に二言はない。だが、愚かにも許子将は私を信用していなかったのではないか?」
許子将の提案、それは恋姫の世界に囚われた一刀の開放
開放の条件、全ての恋姫の抹殺
「私が春蘭を処刑できるか、試したのでしょう」
秋蘭が答える
「そのとおり」
「私はね、他人に試されるのが一番嫌いなの」
華琳が秋蘭に切りかかる
秋蘭は華琳の絶を餓狼爪で受け止めた
「よく言う。現に貴様は契約を反故にしているではないか」
「契約実行の賽は既に投げられた。晋軍は魏も呉も蜀も破り恋姫は滅びるわ。これ以上・・・・私に出来ることはないのよ!」
絶が餓狼爪を弾き飛ばす
「ならば、最後は私のやりたいようにやらせてもらうわ」
華琳は追撃の構えを見せる
「ふ・・・・・下らぬ」
「何がおかしい」
「契約実行の賽は投げられただと?私を甘く見るなよ曹操」
秋蘭は餓狼爪を降ろすと、戦う意味もないと言いたげな態度を見せる
「確かに曹操の覚悟は固かったさ、北郷一刀の姿を間近にするまでの話だがな」
華琳の表情が揺らぐ
「北郷一刀と本当に再会できるとは思っていなかったのだろう。その姿を見た貴様の覚悟は大きく揺らいだ」
春蘭処刑の日、帰還した一刀との再会を果たした華琳は思った
このまま一刀と共にこの世界で生きたいと
しかしそれは一刀をこの世界から開放することとは真逆の行為だ
唯一手に入れられなかった一刀を手に入れるチャンスと、契約の実行
重すぎる天秤は華琳を悩ませ続けた
「北郷一刀と再会した貴様は希望を持ち始めた。北郷と共に生き、恋姫抹殺の任からも開放されるのではないかと
しかし、それでは困るのだよ。契約は履行してもらわねばならん。そのための障壁は排除しなければならなかった」
春蘭を処刑できるか試すと同時に華琳の覚悟も試していた
「あのまま曹操と北郷が結託してしまえば何をしでかすか分からん。だから、私と明命で貴様のもとから一刀を連れ出したのだよ」
心当たりのある華琳はあえて反論しなかった
「そう、全て見透かされていたのね」
下を向く華琳に秋蘭は追い討ちをかける
「うむ、だから一刀を呉へ誘導したのだ、呉と、孫策と一刀が交わると情報を流すために」
華琳の体がピクッと反応する
「さすれば、貴様の嫉妬心が焚き付けられ、契約実行に動くだろうと、な。
そして貴様は、こちらの要望どおりに孫権を脅迫し、孫策を追放させた」
「・・・・・・コロス」
華琳が絶を握りこむと、それまで見せたことの無いオーラを発していた
それのオーラを受けた秋蘭は
「それでいい。この体とて胴と首を切り離されれば死ぬ」
と告げると、両腕を左右に開き華琳の絶を受け入れるようだった
華琳が絶を振り上げる
「華琳、秋蘭、お前ら何やってんだよ!!」
「・・・・・・あなた、どうしてここに」
「貴様・・・・」
白蓮と
「はぁはぁ、二人とも止まってくれ」
許子将の水晶を抱える一刀だった
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華琳と操られた秋蘭の戦い