No.366688

東方忘却記

赤谷蒼士さん

幻想郷各地に謎の結界が発生した。
博麗霊夢は八雲紫からの提案を受け、この異変の調査に乗り出すこととなる。
しかし、お供は記憶と能力を無くした霧雨魔理沙と東風谷早苗だった。
長編二次創作(予定)

2012-01-22 03:16:10 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1544   閲覧ユーザー数:1539

 幻想郷。

 様々な人妖が入り乱れ、その中で一応の平和を保っている【忘れられたものの行き着く場所】。

 そこで、巫女である博麗霊夢は自分の不幸を呪っていた。

 今、彼女の目の前にあるのは結界である。

 

「紫……あんたまた何やったのよ!」

 

 霊夢は、博麗神社の境内でそう叫んだ。

 大体の場合はこうすれば八雲紫――幻想郷の賢者である――が現れ、事情の説明やらをしてくれるはずだからである。

 しかし、一向に紫は現れない。

 それどころか、神社の周りに気配すらまったく無いのだ。

 

「……おかしい」

 

 紫の気配が無いならまだしも、あの三妖精や萃香の気配すら消えている。

 そもそも、結界もおかしいところがある。

 人里や竹林、魔法の森。

 各地を覆う結界に、霊夢は違和感を感じていた。

 無秩序ではなく、一定の範囲を覆う結界。

 これは何かあったに違いない。

 いつもの如く、霊夢は勘に任せて事件の解決に赴こうとしたその時。

 

「霊夢!」

 

 誰かに呼び止められた。

 神社の影から現れたのは、八雲藍だった。

 

「丁度良かった。あんたの主人を探していたところよ。さあ、大人しく案内しなさい」

「ああ、私もお前を探していたんだ!すまないがついて来てくれないか!」

「……はぁ?」

 

 藍について行くと、いつの間にかマヨイガにいた。

 後ろを振り返れば少し遠いが神社も見える。

 

「ちょっと藍、マヨイガってこんなところにあったかしら?」

「……それも含めて、紫様から説明がある。こっちだ」

「……ふぅん」

 

 藍に案内された場所は、八雲の屋敷だった。

 

「入ってくれ。紫様がお待ちだ」

「ちょっと紫、結界の状態が……え?」

「ん?」

「はい?」

「来たわね、霊夢。説明をするから座りなさい」

 

 そこにいたのは、守矢神社の巫女である東風谷早苗と、普通の魔法使い、霧雨魔理沙だった。

 だが、二人とも様子がおかしい。

 

「……簡単に言うわ。これは異変よ」

「そんなことは分かってる。で、なんでこの二人が?」

「救出できたのはこの二人だけなのよ。でも、記憶と能力を失ってる」

「どういう……こと?」

「私にも分からない。何故、記憶と能力を失っているのか。何故、こんな事態になっているか。藍は能力だけ失っているわ。だからあなたのところに使いに出せた」

「あんたならスキマで家まで来られるでしょうに」

「……無理なのよ。スキマがうまく使えない。境界が安定してないの」

「境界が安定してないですって?」

「つまり、博麗大結界にもいずれ歪が出来る可能性がある」

「それじゃあ……!」

「そうよ。幻想郷の崩壊に繋がってしまう」

「……」

「あ、あのー……」

 

 霊夢が黙った所に、魔理沙が口を出した。

 

「さっきから……何の話なんですか?」

「ああ……あなたたちは記憶喪失だったわね。話が分からないはずだわ」

「ええ、それにどうしてこうなっているのかも……」

「記憶喪失ってどの位なの?名前は?」

「名前と、ここが幻想郷ということは分かります。けど、それ以上は……」

「私も、だな。異常事態なのか?」

「まあ……そんな感じね」

「ふぅん」

「で、これからどうすればいいのよ」

「簡単な話よ。中に入って状況を調べてきなさい」

「……はぁ!?なんで私が!あんたが行きなさいよ!」

「それが出来れば苦労はしないわ。……無理なのよ、私も藍も」

「どういうこと?」

「縛られてるのよ、この地に」

 

 紫の言葉を要約すると

 ・自分たちはこの地、マヨイガという【場所】に縛られているためマヨイガから出られない。

 ・藍が博麗神社まで行けたのは博麗神社とマヨイガの境界を曖昧にして同じ【場所】ということになるようにバグを起こした。

 ・マヨイガの端までは行けるのだがそれ以上は結界に覆われているので進めない。

 ・スキマを使っての移動を試みたが出口がマヨイガ(現在は博麗神社含む)以外に作れない。

 という事だった。

 

「じゃあ結界の中にどうやって入れってのよ」

「……分からないわ。あなたでも突破できないかもしれない。不安定になっているスキマへ入れる訳にもいかないし」

「……はぁ。とにかく、直接接触しないことには何も分からないわね。とにかく行ってみるわ」

「頼んだわ霊夢。それと、この子たちも連れて行って頂戴」

「魔理沙と早苗を?なんで?」

「記憶の手がかりを探すことも考えなさい」

「……まあいいわ。じゃ、行くわよ二人とも」

 

 そう言って、霊夢は飛び上がったが……

 

「ちょっと待って下さい、何で飛んでるんですか?」

「人が生身で空を飛ぶなんて……やっぱり夢じゃないのかなこれ」

「あー……そっか。そりゃ突っ込まれるわね」

 

 霊夢はため息を吐き、地上に降り立った。

 魔理沙と早苗は興味津々で霊夢の身体を触っている。

 それはそうだろう、二人とも記憶が殆ど無いのだ。

 霊夢が飛べることを知っているはずが無い。

 二人に大雑把な説明をし、何故飛べるかについては納得してもらった。

 

「あんたらは飛べないの?」

「無理ですよ、人間は普通生身で飛べません」

「そりゃな。霊夢は不思議な力があるからだろう?」

「……歩いて行くしかないか……」

 

 こうして、三人の前途多難な探索は始まりを告げたのだった。


 
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