No.366351

東方天零譚 第七話

まっきーさん

二人でミッションに出たけど、こんなのもありかな、と思いました。

2012-01-21 16:48:10 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:555   閲覧ユーザー数:553

結局、回収出来たデータはほとんど壊れていて使い物にならなかったようだ。

ただ、ゼロの武器に関するデータの一部分は回収に成功したらしい。

なので、ゼロと二人でセルヴォのところに行ってみた。

すると、セルヴォはゼロにトリプルロッドという武器を用意してくれた。

「ちょっとコツが必要だが、ゼロ、君なら使いこなせるはずだ」

トリプルロッドは、見た目はただの槍の柄の部分であった。

ゼロが試しに突いてみると、ゼットセイバーと同じようなエネルギー状の槍の先端部分が出現した。

「きにいってくれると嬉しいんだが」

そして、一通り振り回してみる。この武器ならこれまで攻撃しにくかった上空の敵にも対応出来そうだ。

「いいなぁー、私も新しい武器欲しいなぁ」

この世界に来てから、自分の能力は制限されている。

かつては緋想の剣を地面に刺せば地震を起こせたり、要石を上空から投下することも出来た。

しかし、今や要石の射出と緋想の剣で切りかかる事くらいしか出来ない。

「天子なら自分の能力でどうにか出来るんじゃないかい?」

天子の能力について一通り聞いていたセルヴォが意見してみる。

「う~~ん、なんか前ほどちゃんと出来ないのよねぇ……」

前はそこまで意識せずとも能力が使えた。だが、今はどうやって使っていたか感覚が思い出せない。

「そのうち、キミでも使えるような武器を作ってみるよ」

「ありがと、セルヴォ」

そんな会話をしたのが数日前。

あれから特にミッションも言われず、ベース内で気ままにすごしていた。

相変わらず動かないイブーを放置したり、アンドリューおじいさんの長話の続きを聞いてみたり。

あのおじいさん、話の途中で引っ掛けようとするからちょっと苦手。

ゼロはこの数日間トリプルロッドの練習をしたり、フラフラとどこかへ出かけてはサイバーエルフを拾ってきたりしていた。

どこから拾ってきたの? と聞いてみると「砂漠の前のゲートの上」という、まず調べないであろう所を言って来た。こいつはアホなんだろうか。

でも世界を探索するのは面白そうだから、ある日フラフラ出歩いてみた。

まだベースから離れたところには行けなかったけど、それでも十分楽しかった。

そして今、アルエットと遊んでいるとシエルから通信が入った。

「行っちゃうの?」

「大丈夫よ、すぐ戻ってくるから!」

そう言って、力強く天子は司令室に向かった。

部屋に入ると、既にゼロは到着していた。

シエルは天子が来たことを確認すると、ミッションの説明を始めた。

「ゆそう列車を破壊しろ?」

「そう。敵のゆそう列車を破壊して敵のほきゅうを邪魔したいの」

「なんかセコい作戦ね」

「でも、効果的な作戦よ。偵察班からの連絡によると…」

シエルは簡単にまとめられた資料を取り出した。

簡素な地図の一部分に、赤色で丸が囲ってある。

「敵の列車は、今、旧プラットフォームで、にもつを積んでいるらしくて…攻撃するぜっこうのチャンスみたいなの」

説明しながら、赤丸を指差す。

「このゆそう列車を…破壊してくれないかしら…」

そう言ってシエルが見据えるのは決まってゼロ。まぁ一応天子も含まれているが。

「おねがい…ゼロ…天子…」

「ああ」

こいつは少しは悩まないのだろうか。

そういう私も即答なんだけど。

かくして、今度のミッションは、ゆそう列車の破壊となった。

 

地下へと続く道へ入ると、シエルから連絡が入る。

「ゆそう列車は、その地下どうの奥にあるわ。気をつけてね」

「了解!」

天子とゼロは階段を降り、地下道へと入る。

電灯は一応点いているが、コードが垂れ下がっていたり所々破損していたりと、ボロい印象を与えていた。

というか、天子は基本的にこの世界ではボロい印象を受けてばかりだった。

さっそくゼロは進行方向とは逆方向に進みサイバーエルフ探しをしたようだが、今回はいなかったようで、おとなしく合流。

奥へ進むと、いきなり道が途切れ穴があいていた。

「地下道のくせに道が途切れているとかおかしいでしょ」

狭い穴だったので難なく飛び越える。だが、そこに天井に張り付いていたメカニロイドがゆらゆらと近づいてきた。

ゼロはそれを見て、さっそくトリプルロッドを使っていた。突きしか出来ないが、角度的に使いやすいみたいだ。いいなぁ、あんな武器欲しい。

それはさておき、少し進むとコードが垂れ下がっていた。だが、二人はゼットセイバーや緋想の剣でこれを一刀両断。問題なく進んでいく。

二人はまったく危なげなく進んでいった。

やがてボス扉(天子命名)にたどり着く。

「なに、何か出てくんの?」

と、ワクワクしだす天子。だが、中に入ってみれば少し大きめのメカニロイドがいるだけ。

「なんだ、雑魚か……」

とたんにやる気をなくす天子。その様子に、珍しくゼロが声をかけてきた。

「油断するな」

怒られた。

なにさ、いつもクールぶっちゃっててさ。

むしろ、気を張り続けてたら疲れちゃうわよ!

そんな風に抗議の声を出してみるも、ゼロは無視。一人でメカニロイドと戦い始めてしまう。

「がんばれ~」

やる気なさそうに応援する天子。その時、シエルから通信が入った。

「天子、ゼロを手伝ってあげて! 一人じゃ大変……」

「いいじゃん、あいつやる気満々なんだから」

「でも……」

そんな会話をしているうちに、あっさりと倒してしまった。

ゼロは、残骸の中からサイバーエルフを回収すると、天子を置いてさっさと進んでしまう。

「ちょっと、こら!」

慌てて追いつきながら、文句を言う。

「なんで置いていくのよ!」

それに対し、ゼロは普段と変わらない淡々とした様子で、

「やる気の無い奴は邪魔だ」

ぴしゃりと言ってのけた。

「この天人の私が、邪魔ですってぇ!?」

邪魔扱いされて、天子の怒りは軽く有頂天になった。

「これまでも、私がいたから敵をやっつけてこれたのに!」

「…」

「なんとかいいなさいよ!」

口げんか(一方的)をしながらも進むと、目の前に赤い列車が止まっていた。これが恐らく今回の目的である列車であろう。

その列車にとりあえず乗ってみると、シエルから通信が入る。

「ゼロ、天子、たいへん!」

「なに、シエル!? 今忙しいんだけど!」

「ゆそう列車には、以前ベースから盗まれたサイバーエルフが積み込まれているらしいの」

サイバーエルフと聞いて、ゼロが微妙に反応したのを見逃さなかった。

「敵の本拠地にもって行かれたら、きっと悪い事に利用されるわ。助けてあげて…おねがい!」

その時、列車が軽く揺れると、どんどん旧プラットフォームが離れていく。

「発車しちゃったみたい、さらわれたサイバーエルフを助けないと…二人とも、お願い!」

だが、天子はここで、

「ふん、いいわ。私一人で助けてあげる!」

そんなことを、傲岸不遜に言い放つ。

「えっ!? て、天子!?」

「いい、ゼロ。私のほうが凄いってところ、見せてあげるんだから!」

そう言って、天子は一人走り始めた。

目の前に腕を強化したであろうメカニロイドが現れるが、細かく要石を射出してけん制し、一気に近づいて緋想の剣で切り伏せた。

「邪魔よ!」

イライラした調子で、怒鳴り散らしながら進む天子。

敵はうじゃうじゃと現れ、天子に激しい攻撃をしかける。これを撃破していき、進んでいく。

さすがの天子でも無傷ではいられず、ダメージがそれなりに蓄積されてしまった。

それでも何とか進み、ボス扉の中へと入る。

「そこは列車の動力部みたい。サイバーエルフがいるのはそこよ!」

シエルがそう教えると、天子は獰猛な目つきで、

「ふーん、こいつをやっつければいいのね?」

獲物を睨み、笑った。

それは、巨大な装置。

全体は赤くカラーリングされ、いくつものコードが奥へと伸びている。

そして、装置の中心にはこれまでに幾度と現れた雑魚メカニロイド(パンテオンというらしい)が埋め込まれていた。

「どう考えても、あいつを攻撃すればいいって丸わかりじゃない!」

そう言って、勢いよく敵へと切りかかる。高い位置にいるため、ジャンプしながらの斬撃。

その直後、足元から炎が噴射されるも離れて回避する。

「そんなみみっちい炎じゃ当たんないわよ!」

なおもジャンプ切りをして攻め続ける。すると、

「あつっ!?」

敵は巨大な炎を噴出してきた。

「ふん、やるじゃない!」

なおも敵に切ってかかる天子。だが、

「!?」

突如、床が競りあがってきた。さらに天井にはトゲが生えていることに今更ながら気づく。

「うわっと!?」

慌てて回避する。だが、ゆっくりとであるが別の床も競りあがってくる。

天子は落ち着いて床を見極め、着実に回避する。

そして、最後の床が競りあがると、敵は炎を噴射しながら前進し、部屋を狭くしてきた。

「ふーん、だんだんこっちにくんのね」

このままでは圧迫死かトゲに刺さって死ぬだろう。その前に決着をつけなくてはならない。

「面白いわね!」

言って、天子はチャージショットと緋想の剣を駆使して攻めつづける。

だが、火力不足なのか敵は倒れる気配が無く、天子はだんだんと追い詰められていた。

「まったく、盛り上げてくれるわね!」

床が競りあがってきたので、回避しようとする。

だが二つ同時にあがってきたため、回避が間に合わない。

「っ!」

覚悟を決める天子。

だが、突如何かに引っ張られ、天子は串刺しから逃れられる。

「ぐえっ」

服を引っ張られ、あまり可愛らしくない声が漏れる。

それでも何とか助かり、天子は改めて助けてくれた人物を見る。

そこには赤い装甲に流れる金髪、そしてさっきまで喧嘩をしていた相手、ゼロがいた。

「ゼ、ゼロ!」

ゼロは、床が引いたあとに一直線に敵に近づくと、セイバーを振り下ろした。

それがとどめの一撃になったのか、敵は爆発。

列車から脱出すると、捕まっていたサイバーエルフがそこにいた。

「ありがとう。二人のおかげで、全て上手くいったわ。本当にありがとう…」

シエルがそう呟く。

それを聞きながら、天子の意識はゼロに向いていた。

お礼言わなきゃ。

「あ、あのさ……」

言いにくそうに、もじもじとする天子。

ゼロは、黙って待っていた。

「その……さっきはごめん。それと、その……」

「…」

逡巡し、下を向いてしまったが、

「あ、あり……がとぅ……」

お礼をいえた。

素直にお礼を言うのが恥ずかしくて、言葉が尻すぼみになってしまったけれど。

そんな天子の、ある意味決死のお礼の言葉に対しても、

「ああ」

この二文字で終わらせてしまう辺りは、さすがゼロといったところか。

そんなクールな態度が、なんとなく気に食わなくて、天子はいつうもの調子に戻ってしまった。

「い、言っとくけど、負けを認めたわけじゃないからね! 今回だけなんだからね!!」

別に何も勝負していないのだが、天子は大声であれこれ喚き始める。

とにかく天子は、このクールでサイバーエルフ愛好家で、いつでも他人をあっさりと助けてしまう、この男がなんだか小憎たらしかった。

 


 
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