No.366346

東方天零譚 第五話

まっきーさん

レジスタンスベースの描写はゲーム画面を見た自分の感想をそのまま書いてます。

2012-01-21 16:43:23 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:615   閲覧ユーザー数:612

処理施設の奥にあった転送装置でベースへと戻った天子とゼロ。

すぐにシエルの元へと戻り、彼女からねぎらいの言葉をもらう。

そして彼女から今後もミッションがあるということを聞いたのち、解散の流れとなりかけたそのときに、シエルは思い出したように話しかけてきた。

「そうだ、下の階にある動力室にセルヴォという技術者がいるんだけど、彼からこれをあずかっているわ」

そう言ってシエルが取り出したのは小型の装置。

「エスケープユニットと言って、使うとミッションから脱出する事ができるの」

それを二つ、天子とゼロに差し出す。

「でも、脱出するとそのミッションは失敗になるから、使う時は気をつけてね」

要は緊急用の脱出装置なのだろう。仕組みはわからないけれど、天子が受け取った装置はスイッチ式らしいので、天子でも使えるらしい。

エスケープユニットを受け取って、ふと天子は思いついた。

「そう言えば、まだこのベースのこと全然知らないわね……」

謎の施設から脱走してベースに戻ったその直後に処理施設へと向かったため、せいぜいトランスサーバールームと今いる司令室くらいしか知らないのだ。

シエルは、その天子の呟きを聞いて返事を返す。

「じゃあ時間もあるから、少しベースの中をうろついてみたら?」

「そうね。何があるかわからないし」

「本当は案内してあげたいけど、まだやらなくちゃいけない事があって…」

そう言って申し訳なさそうにしょげたシエルに天子は優しく返事をする。

「いいわよ、シエルは忙しそうだし。一人で気ままにぶらつくわ」

「あっ、だったらゼロと一緒に回ってみたら?」

そう言ってゼロへと視線を動かすシエル。それに対して、ゼロは、

「俺は動力室に行く」

ピシャリと言い放った後、司令室を出て行ってしまった。

「感じわるっ」

天子が不満をもたらすと、

「ちょっと、なれなれしかったかな…」

自分に原因があるのではないかと、シエルは悩み始めてしまった。

「違うわよ。ゼロの奴が無愛想なだけ!」

「そうかなぁ…」

「そうよ! あいつ、全然喋らないのよ! もう少し愛想良くならないのかしら!」

プリプリと怒りながら、これまでの不満をシエルにぶつける。

「きっと、ゼロは無口なのよ」

「無口ってレベルじゃないわよ! 基本的に話す言葉は簡潔だし!」

「それもゼロの個性、じゃないかな…」

「まったく、コミニュケーション能力の低い奴ね!」

気がつけばシエルが天子をなだめる構図となっていたが、ふいに、

「でも、うらやましいな…」

ぽそっと、シエルが呟く。

「うらやましい?」

思わずぽかんとしてしまった天子はオウム返し。

「ゼロと仲が良さそうで…」

少し恥ずかしそうに頬を染めて答えるシエル。そして、天子もまた顔を紅潮させて、

「べっ、別に仲良くなんてないわよ! なんで私があんな奴のことなんか!」

大慌てで首をブンブン振って否定する。

「わたしは、二人は仲良しだと思うけどな…」

追撃。純粋無垢な少女が眉毛を八の字にして、"うらやましい"オーラを出して天子のことをじっと見つめてくる。

思わずいたたまれなくなった天子は、

「じゃ、じゃあ私ベースの中みてくるからぁぁぁ!」

と言って、司令室から情けなく逃げた。

 

「はぁ、まったくもう……」

冷静になろうと必死にクールダウンに努めながら、とりあえず天子は上のフロアへと足を向けた。

エレベーターで上がって、すぐに到着。奥のほうへと歩いていった。

周りを見ると、やはりボロい。

壁には所々にヒビが入っており、配色も灰色またはクリーム色といった感じで鮮やかさが無い。

そんな風に周りを見渡しながら思考することで、少しは落ち着いてきた。

そんな時に、天子は一人の少女を見つけた。

ぱっと見た印象はシエルに似ていた。

長い金髪に可愛らしい顔立ち。ピンクのワンピースのような服を着ており、白いネコのぬいぐるみを抱いている。

一見すると可愛らしい女の子だが、耳が人間と違っていることから恐らくレプリロイドだろう。

あんな可愛いタイプのレプリロイドもいるんだなぁという感想を天子は持った。

一方、その少女は天子に気づくと、とててと近寄ってきて話しかけてきた。

「はじめまして。あなたもシエルおねえちゃんを助けてくれたの?」

「えぇそうよ」

おねえちゃん? ってことは姉妹? でも、確かシエルは人間って聞いたけど……。

「私の名前はアルエット。シエルおねえちゃんがつけてくれたんだよ」

やはり、おねえちゃんって言ってる。どういうことだろうと思って聞き返そうとするも、アルエットは返事を挟む余地も無く喋り続けくる。

「天子もゼロも、まるでユウシャだよね。だからシエルおねえちゃんを守れたんだよね」

ユウシャと来た。まさか自分はユウシャと呼ばれる日が来るとは思わなんだ。

なおもアルエットはまくしたてる。

「あっ、そうだ。シエルおねえちゃんのおへやから、サイバーエルフがいなくなっちゃったんだって」

話題がコロコロ変わるのはまだ幼いからだろうか。

よくよく見ればシエルよりも幼く、下手したら幼女と呼ばれる年齢かもしれない。

レプリロイドに年齢があるのかどうか知らないけど。

「赤ちゃんのサイバーエルフだから、まいごになっちゃったのかな…」

この子と長くいると話が終わらない雰囲気を感じ取った天子はその場を離れようとする。

しかし、アルエットは天子から離れず話しかけてくる。

「シエルおねえちゃんみたいな科学者になれたら、私もサイバーエルフのけんきゅうをしてみたいな…」

適当に相槌を打って退散する方針にチェンジ。

「そうね。やってみたらいいんじゃない」

「シエルおねえちゃんって誰にでも優しいんだよ。私もみならわないとね」

「そうね。みならってみたらいいんじゃない」

「ネオ・アルカディアにいた時は人の優しさなんて知らなかったな…」

「そうね。……って、え?」

アルエットは、表情を暗くして黙ってしまった。

適当に相槌を打っていた天子だが、素に戻って聞き返す。

「ネオ・アルカディアに居た頃って、そんなにひどかったの?」

「…」

アルエットは黙ってしまった。

その表情、様子から、彼女がどれだけ厳しい生活をしていたのかが伺えた。

「……大丈夫よ、私がいるから」

そう言って、天子はアルエットの頭を撫でてあげた。

アルエットは、不安そうな表情で天子を見上げる。

「ほんと? 大丈夫?」

「ほんと。このユウシャ天子に任せなさい!」

そう言って、薄い胸をドンと叩く。

天子の自信満々な態度を見たアルエットは、

「…うん!」

嬉しそうに、花咲くような笑顔でうなずいた。

 

アルエットと別れて、天子は一人レジスタンスベースをうろつく。

ベースは生活に必要なものは一通りそろっていた。

共同スペースに資材室、トランスサーバールームに倉庫など。

倉庫にはレプリロイドの動力源であるエネルゲン水晶が豊富にあった。

そんな中で天子の目を引いたのは、住人であった。

ベースに住む住人はみんな仲良しで人が良かった。

現在の状況に疲弊しているところはあるかもしれないが、みんな元気に活動していた。

中には多少ボケているが優しく応援してくれるアンドリューおじいさんや、腹ペコで動けないイブーなどの個性的なメンバーもいたが。

それでも、ベースに居る人みんなが、天子とゼロに感謝し、応援してくれた。

こんなにも暖かい対応をされたことが無かった天子は最初の方こそ「当然ね!」といった態度であったが、何度も感謝され続けると、「さすがに感謝されすぎ…」と戸惑ってしまった。

そんな感じでベースを探索した天子。

大体探索を終えて、天子はあえて最後に残していた場所へとたどり着く。

そこは、動力室。シエルがちらっと話した技術者がいる部屋だ。

天子は、色々聞くなら技術者だろうと当たりをつけており、長居が出来るようこの部屋を最後にしたのだ。

意気揚々と部屋に入る天子。

まず思ったことが、ゴチャゴチャしている上にボロい。

電灯は切れかかってチラつき、部屋に薄暗い印象を与える。

天井にはいくつものパイプが走り、部屋中に様々な情報を表示している計器類が乱立していた。

動力室というよりは研究室である。以前見たかっぱの部屋に似ていた。

一応中央のスペースは人が移動出来る様空いており、そこに二人の人影があった。

一人は緑色の服を着たおじさん。白色にオレンジのゴーグルが特徴的である。

そして、もう一人。妙に見慣れた赤い奴がいた。

「ゼロ! なんでここに!?」

「…用があっただけだが」

冷静に返される天子。知らずシエルとのやり取りを思い出し無駄に詰問調になっていたようであった。

そこにおじさんが割ってはいる。

「やぁ、君が天子か。本当に人間にしか見えないね、びっくりだよ」

「ちょ、ちょっと何よ!」

おじさんは一言呟いたあと、じろじろと天子を見回していた。

「あんまりジロジロ見るな!」

そう言って頭をポカリと殴りつける。おじさんは一歩退いた。

「いや、申し訳ない。つい技術者としての好奇心が働いてしまった」

あまり反省していない類の笑顔で謝辞を述べたおじさんはそのまま自己紹介を始めた。

「そうだ、自己紹介がまだだったね。私の名前はセルヴォ。見ての通り、私は技術者だ」

「そう、私は天人の比那名居天子よ。」

よろしく、と言って握手を交わした後、セルヴォは自己紹介の続きを言う。

「私はシエルといっしょにエネルギーやサイバーエルフっていう電子で出来た妖精の研究をしているんだよ」

まぁ、研究とは言っても動力室を改造して使わせてもらってるんだけどね。と言って苦笑する。

セルヴォは、ゼロと天子を見て、

「時間とデータがあればキミ達のための武器も開発してあげられるんだが…」

そう言ってため息をつくセルヴォ。その申し訳なさそうな表情の本当の意味に、天子は気づいていた。

「そんなこと言って、本当は自分の興味本位で作ってみたいんじゃないの?」

天子の発言に、セルヴォはギクッ! といった様子を見せる。

慌てて、

「い、いやだなぁ天子! そんなわけないだろう? 純粋にキミ達を思ってこそさ!」

取り繕うセルヴォであったが、バレバレである。

そんな様子が可笑しくて、天子はゲラゲラ笑った。

「あんた、良い性格してるわね! 面白いわ!」

「まったく、大人をからかうものじゃないよ…」

少し気恥ずかしそうにしているセルヴォ。だが、ふいに表情を切り替えて、

「だが、キミ達のために何かをしてあげたいというのは本当だ。感謝しているんだよ、これでも」

真面目に感謝を述べる。天子もゲラゲラ笑うのを止めて答える。

「いいのよ。私も自分のために戦っているんだしね」

そう言って、ふと天子は思いつく。

「ゼロ。あんたは、なんで戦っているの?」

単なる興味本位。ゼロのことだからすぐ返事が返ってくると思っていた。

しかし、予想に反して、

「…」

ゼロは黙ってしまった。

これまでは明らかに質問された場合、返事をしたりうなづいたりと何らかの反応を示していたはず。

だが、今回は返事をせず、考え込んでいるようであった。

そして、

「…今度言う」

そう言ってゼロは部屋を出て行ってしまった。

取り残され、思わずセルヴォのほうを見た天子。目があって、セルヴォは、

「別に、天子は何も悪くなかったと思うよ」

と気遣いの言葉をくれた。

「そうね。それじゃ、私もそろそろ行くわ」

そう言って、天子も動力室を後にする。

部屋を出てすぐ、天子は壁に寄り添ってぼそっと呟く。

「あいつ、何かあるのかな……」

これまでのゼロとは違う一面に、一抹の不安を覚えた天子。

覚えたのであったが、そこは幻想郷の住人。

司令室の後ろにシエルの部屋があることに気づき、ゼロと一緒に乗り込もうとして恥ずかしがるシエルとドタバタを繰り広げている内に、そんな不安を忘れてしまった天子であった。

 


 
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