《聖戦士伝説外伝・ハイパーW伝説~便乗~》
シュンジは悩んでいた。かなり真剣に悩んでいた。そりゃもう苦悩のオーラ力がだだ漏れしちゃうくらい考え込んでいた。窓辺に佇み、風に吹かれながら、周辺の皆様方が話し掛けるのを思わず躊躇うくらい真摯に沈思黙考していた。
見た目のポーズはかなりイイ感じだ。その筋の嗜好の人が見たら「きゃあステキ!」くらいは口走るだろう。
「さすがはシュンジ。いつ如何なる時でも地上の平和の為に思いを巡らせているのですね」
エレ王女は何だか感動している。
「ええ。やはり彼は王の名を戴く者としての義務を果たされているのでしょう」
シーラ女王は慎み深くも美しく微笑んでいる。
が。
「そうかな~?」
ショウの、シュンジを見る眼はかなり懐疑的だ。
「『あの』シュンジがそんな、殊勝な事を考えるかなぁ……」
疑問を抱くショウの脳裏にはこの瞬間、シュンジによってもたらされた数々の「出来事」に関するアレコレな思い出が去来してるのは秘密だ。それによって「あ、ちょっと泣きたくなってきちゃったなー」な感じなのも内緒だ。
「それに関しては同感だ……」
最近すっかりパシリが板についたトッドはニヒルな感じに呟き返した。ええそうですとも、先輩のアレンにアレコレこき使われるのは昔っからだから慣れてるとしても、立場的に王様に納まってるシュンジに色々頼まれるのも判るとしても、だからと言ってショウ(もと学生)やフェイ(もと売れない俳優)にまでアレコレ「お願い」されるのはどんなもんよ。いやそれ以上に、「お願い」されるとうっかり「おう、いいぜ」と応えてしまう根っからアメリカンな自分はどうなのよ、と自己ツッコミしてしまうのも慣れたけど。
「なんかまたロクでもねぇ事を考えてる気がするのが、俺の考えすぎならいいんだけどな……」
アレンの呟きに、ショウもトッドも反射的に同意に達してしまった。
この三人、よっぽど「凄い」思い出を思い出しているらしい。たった一言の発言の直後、倣った様に明後日の方角を見詰めて現実逃避したからだ。何だか「み~っつ~のこ~ころ~が♪ 一つになれ~ぇば~♪」な息の合い様だった。←話が違
ギャラリーの困惑はさておいて、シュンジは深く激しく考え込んでいる。
ことの発端は「ところで、一月後にはホワイトデーというものがあるらしいですが、シュンジ王はいったいなにをお返しいただけるので?」なシーラ様発言だ。
そう、思い返せば1月前。どこからともなく受信した誤情報からバレンタインデーに目覚めたシーラ様、エレ様は全兵士にチョコレートを下賜した。この「行事」によって全軍の志気が高まったのは王の立場上、非常に喜ばしいと思う。それによって、うっかり自分の存在意義がスルーされた感があるのは無視していいだろう。たぶん。きっと。
が、両姫君は同時にホワイトデーの「慣習」にも目覚めてしまった。「姫」という立場上特に言及はしないものの、返礼をものすごーく楽しみにしているのは明白だった。
そりゃ頂いた以上は礼を返すのが男として、日本人として、王として当然の姿勢だ。それ自体はいい。
が、問題が存在する。
相手はお姫様そして女王陛下だ。王族で貴人だ。ハイソサイエティな方々だ。間違ってもセレブではない。
しかも女性。
更に妙齢。
これが相手が例えばショウクラスの、要は「友達」相手なら何の問題もない。「こないだはありがとうな」とでも言って、ジュースの1本も奢れば義理は果たせるだろう。それもどうかとは思うが、そんな気はする。
が、高貴なしかも妙齢の女性に何をどうお返しすれば失礼ではなく、かつ満足してもらえるというのか! まさかジュース1本とか、クッキー1袋(しかもスーパーで購入)とか、ましてやハンカチセット(デパートで3000円くらいの)を贈って済ませらせれる話ではないだろう。ナンボ彼女いない暦=年齢な男子校生活者にもそれくらいの判断は出来る。
「全兵士に成り代わって俺がお礼をします」とうっかり見栄を張って言っちゃった手前、半端な行動は全員のプライドそして名誉に関わる。今となってはメカニック、メディカル、それ以外の小間使いクラスも含んで全男性のプライドがシュンジの双肩に重くのしかかっている。心ならずも嘆息し、呟いてしまった。
「これなら竹刀一本でダンバインと渡り合え、って言われる方が気が楽だな……」
物凄く無茶な独り言を口に出し、途方に暮れてみた。
・・・・・・・・・・
【余談】
シュンジ「なぁショウ、俺たちって竹刀1本でダンバインと渡り合えると思うか?」
ショウ「頭に虫が涌いてるならバルサンでも焚け」←だいぶ扱い慣れた模様
シュンジ「そうか……(がっくり)」
ショウ「(あ、少しは反省したか)」
シュンジ「そうか。ならマシンガンでも持っていれば何とかなるかな?」
ショウ「……なる訳ないだろ……(泣きそう)」
さて。
合間に幾つかの戦さと、人間関係のアレコレと、その他日常的な出来事を挟んで「その日」。グリニッジ標準時で3月14日。
当日だ。The Dayだ。決戦は金曜日だ。←違わないが違う
シュンジはもしかしたらドレイク軍に喧嘩を売る(違)時以上に気合を入れ、朝の軍議の終了後、二人のお姫様にこっそり切り出した。とは言っても周囲には色々な人がいるのだが、その辺は仕方ない。
「シーラ様。エレ様。実は『例の件』で内密のお話があるんですが」
軍議の席では強張り加減だった二人の表情がぱっと輝いた。家臣の誰をも魅了する美しい微笑みだ。
「『例の件』と申されますと、もしかしたら」
「そうです」
王族の女性としての嗜みなのか、二人は決してはしたない事は言わないし、しない。そのはずの二人の瞳がとても輝いている。
卑俗な物言いが許されるならば「キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* 」(×2)という感じだ。
「その件に関して、お二方には是非ともお付き合い頂きたいのですが、宜しいですか」
二人はとても嬉しそうに、そして慎み深く「はい」と応えた。
だからシュンジは即効で指示を飛ばした。侍従はじめ関係各所が戦闘開始前以上にフル稼働を開始し、根回しは万全だ。何せこちらには優秀な「参謀」がついているのだから。
結果的に当の「参謀」チャーリー・カミングスがひどい過大労働を強いられたという現実はあるのだが、まああれだ。貴人には奉仕を提供する者(いわゆるサーバント)が必要という事で彼には納得してもらうしかあるまい。
と、いう事でお姫様二名をお乗せし、数体のオーラマシンが護衛となる一機の高速艇がゴラオンより発進した。戦速ほどではないものの結構な速度で飛翔する。山を飛び、谷を越え、僕らの町にやってきた訳ではないが、薄い空気を裂く様に雲の合間を幾つも越える。
少し冷える。サーモは入っているが基本的に高速艇も戦時使用だからその辺は甘い。一応防寒用の上着はあるものの何となく冷える。
お姫様たちは防寒具に身を包みながらにも不満は何も言わない。そういう風に教育されているからであり、時折、慎み深く多少のお喋りをする程度だ。
実のところ、お喋りの中身は
A子「今朝はお化粧の乗りがちょっと悪かったわー」
B子「○○のローションって結構ベトつくのよねー」
A子「ファンデは◇◇に限るわよー。△△も悪くないけどちょっと匂っちゃって」
B子「乾燥する時期にはパックもイイんだけどねぇ」
A子「パックするならティッシュがイイんだって。繊維の抜けがないから超オススメ」
B子「昨日テレビでやったやつでしょー。見たよそれ!」
な感じなのだが、テンポが基本的にゆっくりめなのと、言葉遣いが美しいので気付かれにくい。これは美点と言えるだろう。
ただ、内部会話はセキュリティの関係上、基本的にオープン回線で逐次中継されるので、伴走機で護衛を勤める形のマーベル、ガラリアははっきり聞いてしまった。だから真意にも気付いた様だが、何も言わない。
こちらは高速艇のパイロットを務めるアレンは気付いていない様だから、いいのだ。世の中には「男(あなた)の知らない世界」もある事だし。同性間でしか通じない会話は異性には「宇宙人の言語」だ。
宇宙人はともかく、高速艇は「とある場所」付近で着陸態勢に入った。気付いたシーラが「あら」と声を出す。
「アレン騎士、こちらはどちらでしょう?」
「もうすぐ降りますんでベルトを締め直して下さいや」
答えないでくれ、と言われていたので心の中で謝罪しつつ質問はスルー。サングラスを直しつつ計器を確認する。オールグリーン、計器は全て順調。お姫様たちも何も言わずにベルトを締めてくれた。
「ようし、いい子だ。ゆっくり頼むぜえ、お嬢ちゃん」
同時進行の旋回と減速。地表を出来るだけ荒らさず着陸させる、「コップの水も零さない」と表現できる芸当は元空軍パイロットならではだ。
やや離れてマーベル、ガラリア機も着地。全てを確認し、アレンはベルトを外していい、と言った。
「お姫様がた、お疲れ様でした。降りて結構ですぜ」
ドアを開けてやる。二人は順番に手を取られ、機外に姿を現わす。アレンの絶妙な操縦技術は準備通り二人の姫君を特別誂えの絨毯のペイヴメントに導いた。
シーラは、エレは思わず「まあ」と声を出してしまった。
上空からはよく判らなかった。ここが高山地帯なのは少し判っていたが、降りてみるとこれが一面の花畑だ。今の季節とは思えないほど、名前は判らないものの色鮮やかな花が美しく咲き乱れ、冷たく感じる風さえ清涼と思えてくる。
実はこれ、数日前から職人たちが高山病に負けそうになりながら移植した花なのだが、お姫様が知る必要性はない。
そして眼を移すとペイヴメントの先には更に高速で先回りをしていた(しかもビルバインを借りて)シュンジが、簡素だが王にふさわしい姿で待ち、更に向こうには小さいが品のいい綺麗な四阿。この為にわざわざ造って運んできたのだ。
「お待ちしていました。こちらにどうぞ」
シュンジは一礼してシーラの手を取り、アレンはエレを導いて四阿へと入る。
ガラス張りの四阿は十人も入れば手一杯の感じの本当に小さなもので、フランス辺りのカフェテリアに似ているのだが、お姫様は知らないだろう。
中に微かに流れるイングリッシュジャズは定番ナンバーだが、上品に耳を楽しませてくれる。それ以上に外界に負けず劣らず美しい花をポイントを押さえて統一しつつ飾り、自然の心地いい香りが柔らかに空気を彩る。
古きよき映画黄金期の女性の憧れを一身に集めた小洒落た空間、その理想の形がここにあった。それはバイストン・ウェルの二人の心もしっかり捕らえてくれた。
「お二人にバレンタインの返礼をさせて頂きたく、この様な場を設けました。地上で一番高い、そして一番綺麗な場所でのお茶のひとときを楽しんで下さい」
シュンジは噛みそうになりながら、頬も少し引きつってしまっていたが、何とか言えた。幸い、この為に、とあるホテルから派遣してもらったボーイもてきぱき動いてくれ、二人の姫君をお席に導く事にも成功した。
「でもシュンジ、宜しいのですか? 戦時にこの様な」
「はい、ですから今日だけです。今日のこのいっときだけでも、お二人には戦さの事を忘れて楽しんで頂きたいんです」
「まあ……」
シーラ様もエレ様も喜んでいる。大成功だ。シュンジは内心ホッとしつつホストに頼み、彼も椅子に着く。
パティシエの心尽くしの、食い盛りの高校生には「え~これっぽっち???」な大きさな、しかしお洒落大好きな女性が見れば「うわー可愛い! 綺麗! 食べるのがもったいなーい!(でも写メ後に美味しく頂きます)」な創作ケーキと、最高級ダージリンが運ばれてきた。
シュンジには、というか、モテナイ歴=年齢の聖戦士連中(ごく一部除く)の脳味噌ではこれが精一杯だった。「可愛い喫茶店で、綺麗な曲を聞きながら美味しいお茶とケーキ。ボーイは品のいいイケメンで、女の子には楽しく笑って話をしてもらう」。このくらいしか考えられなかった。
ならば、ここで「参謀」チャーリーの出番であった。彼の情報収集能力が店はコレ、曲はコレ、お菓子とお茶は……とあらゆる情報そして人材を収集する事となり、その費用の大半は戦費から(主に聖戦士の待遇を削る事で)捻出された。
この点に関してマーベルら同じ女性から「シーラ様たちばかりずるい! というか、私たちも欲しい!」という至極尤もな意見も出され、女性聖戦士には、紙コップと紙皿ではあるが同じ紅茶とお菓子が支給されている。もちろん、これに関してもシュンジたちの待遇が削られている。
そして「品のいいイケメンのボーイ」としてトッドとフェイが立候補したのだが、アレンに「黙れガキども」と一蹴されたのは内緒だ。そして二人は不遜の罰としてお花を移植する職人の皆様に「アシスタントにどうぞ」と差し出され、こき使われ、慣れない作業から高山病になって酸素マスクを与えられたのも内緒だ。
なお、彼らへのバイト代もお姫様の接待費用に化ける事が決定している。
シュンジは今やはっきりと理解していた。
ホワイトデーとは、男に取ってこの上ない苦行であると。そして、今までの彼女に縁のない人生は、ある意味で幸福であったのだと。
今更理解していた。
パティシエの説明というか薀蓄というかを聞き、お茶にお菓子を味わい、あとの会話が「世界がもっと平和ならいいのにね」「その為には頑張らなきゃね」なのは仕方ないとして、ティータイムは完璧に順調だ。お上品な環境についていくのは大変だが、この調子ならお姫様たちは満足して下さるに違いない! とシュンジはとても満足していた。「その瞬間」までは。
が。
シュンジの胸ポケットの通信機が震え出す。心の中で舌打ちと万歳三唱を同時に行い、しかしなるたけ顔には出さずに「失礼」と前置きして席を立つ。素早く隅に向かい、取り出した。
「よっす。こちらシュンジ」
『こちらショウ。楽しい時間を邪魔して済まん』
思わず互いに声を潜めてしまう。
「それ皮肉?」
『さあな。
敵襲だ。数はこっちも何とでもするが、お前がビルバイン持っていってるもんだからチョイト不安。戦地コードはすぐ送る、来られそうか?』
「すぐ出るわ。最短算出しとしてくれ、最速で行く」
通信を切りながら振り向く。さてお姫様たちに何と言ったものか、お茶を続けていて頂きたいものだが……お二方は口元をナフキンで拭っていた。まだお茶もケーキも残っているのに、だ。
「あれ??? どうしました、お二人はごゆっくり」
「そうは参りません。戦さが起きているならば、我々も一国を預かる者として向かわぬ訳には参りません」
シーラ様の瞳はとても真剣だ。
「銃後の方々を護るのは我らが責務。女とて、戦さに立たずして何が王でしょう」
エレ様の瞳もとても真剣だ。
さすが二人とも「王」の名を戴く者。産まれついてよりNoblesse oblige、すなわち高貴なる者の義務と責務を身に着ける者の心は、さすが俄か仕込みの王様とは訳が違う。シュンジは一瞬二人に気圧される気がした。
が。
「それにしても、折角の労いの宴の席を邪魔する輩がいるとは。何と無粋な事でしょう」
シーラ様の瞳は女豹の様に優美だ。
「シュンジの折角の心尽くしを無にされるとは心外。この罪は知らしめて差し上げねばなりません」
エレ様の瞳は氷の様に冷たく澄んでいる。
シュンジはつい唾を飲んでしまう。何この二人の雰囲気。妙に怖いんですけど、と言ってみたくなってしまう。巧く言えそうにないが。
「……あの……お二人とも、如何なさいましたか?」
心の底から敬語になってしまうシュンジに罪はあるだろうか。
そしてすっかり忘れていたが、これらの会話もアレンたちの耳に入っているのだ。その通り、菓子をもらえないアレンは悲しく啜っていたコーヒー(ちょっと冷めた)を吹き出しそうになっている。
怖い。何だかお二人が物凄く怖い!(ど本音)
「エレ様、正義と秩序を乱す不心得者は速やかに排除致しましょう」
シーラ様は微笑む。
「そうですわ、シーラ様。ここは我らが、不心得者を正しき道へと導いて差し上げねばなりません」
そうなのか? 本当にそれが目的か? というか、もしかして、ひょっとしたら、美味しいお茶とお菓子の時間を邪魔されて普通に、一般的に、だが深々と根に持つ感じに怒っていないか???
いや気のせいだ。卑しくも一国のあるじが、幾ら何でもティータイムをパーにされたからって激怒する訳がないじゃないか。その辺の一般的な子供ならともかく、女王陛下と姫君が……それもいわば異国のお二人が……。
シュンジは知らなかった。年頃の女の子の興味は何に向けられているか。そしてその「興味」が不本意な形で取り上げられる時、如何なる「報復」が計画されるか。
シュンジは知らなかった。異世界の王族だろうがハイソだろうがシーラ様もエレ様も年頃の乙女であり、その為に、表面上はさほどとは思えずとも、内面でそういった方面に燃え上がる炎の激しさはハンパない事を。
シュンジは、そして男性聖戦士は知らなかった。それは明らかに彼らの落ち度であり、罪である。
「エレ様、こうしてはおられません。すぐアレン騎士に艇を出させましょう」
「ええ。同時にゴラオン、グラン・ガランも出撃体勢に入らせましょう」
「戦さとは悲しいものですね。しかしこれは我らが選んだ修羅の道。平和の為に致し方ない事です」
「一刻も早く平和を迎える為には力を惜しみません。参りましょう」
歩いていくお二方の足取りはとても凛々しい。足音さえも罪深いほどに美しい。
それだけに、呆然として取り残されるシュンジの間抜けな姿は、そして大慌てで高速艇の暖気を開始するアレンの狼狽振りは際立ってしまっていた。
語り部は語る。
その日、シーラ・ラパーナ、エレ・ハンム両王の采配はいつに増して精細であり、かつ適切であったと。また敗残を許さぬ冷酷さは常に増して美麗であったと。
語り部は語る。両王のこの世ならぬ凄惨な美の所在を。
しかし語り部は語らない。
この日、シーラ・ラパーナ、エレ・ハンム両王の胸の内に去来する感情の「意味」を。
語り部は語らない。二人が内心に秘めていた呟きの真の意味を。
すなわち。
「あのケーキすっごい美味しかったのに! お茶もサイッコーに美味しかったのに! 何でこんな時に攻めてくるのよ、信じらんない! ドレイクってホンット気の利かないオヤジなんだから!」。
言葉遣いを下卑なものとすれば、要するにこういった内容である事を語り部は語らない。絶対に。
【後日談】
「げ……」
シュンジはチャーリーの差し出した内訳書を見て青褪めた。
「この数字、先週見た見積もりより増えてる気がすんだけど……?」
「いやその。お茶が途中で中断になったから、せめて今度はお菓子だけでもちゃんと食べたいな、という要望があって……今度はお姫様に、その侍従に、もちろん女性聖戦士の皆さんに、それから……」
物凄く怖い数を指折り折って説明するチャーリー。
半端じゃない。物凄く多い。当然、必要とされる金額も只事じゃない。
「と、いう事で、皆さんの色々が更に削減される事になります。その旨了解して下さい」
「そんなあ! 俺たちだって副食ガマンさせられてんのに、パイロットのささやかな楽しみを奪わないでくれよぅ!」
王の名に似つかわしくない情けない悲鳴を上げる高校生に、チャーリーはにっこり、と笑いかける。
「頑張って下さい!(爽やか且つ胡散臭い笑顔)」
さすがチャーリー・カミングス。伊達に戦場(一応、銃後だが)で揉まれていない。と、いうか、もう一般社会への復帰を諦めた節があるっぽい。
「チャ~リ~さ~ん~!!!」
「では、そういう事で!」
用意していた決済印を勝手に握らせ、勝手に押し、勝手に去っていく。その手際のよさはある種の感動すら喚起する。もちろに当事者以外の者に対して、だ。
「そんなぁ……ささやかな楽しみだったのに……」
飴とチョコレート。ゼリー。ヨーグルト。週に一度はショートケーキ。行事の日には……と、非常にささやかな色々が脳裏に去来する。それらに次に巡り合えるのはいつの日か。シュンジはとてもとても、心の底から泣きたくなっていた。
【オマケ】
トッド:おいシュンジ! 何で俺らまでおやつ抜きなんだよ!
フェイ:そうだ! 俺らなんかこき使われた上に高山病にまで罹ったってのに!
アレン:オメェらは直に見てねぇからいい……俺らは見たんだ、「あの」お姫様たちがマジで怒ったとこをな……。
マーベル:ええ。アレは本気で怖かったわ……。
ガラリア:うむ。王の怒りとは何と恐ろしいものか、再認識してしまった。
ショウ:……その怒りどころがイマイチ理解できない俺は幸せなんだろうか。
シュンジ:だと思うよ……悪い、みんな。俺がチャーリーに負けたばっかりに。
トッド:そうだな。テメーの浅知恵が全部悪い!
フェイ:罰として、来週の格納庫掃除はお前が全部やれ!
シュンジ:お前の当番だろうが! 国王命令、交代は認めない! ついでに来月はお前、民間に出向。外貨を稼いでこい。
フェイ:ひでぇ! 横暴!
シュンジ:ハリウッドでスタントの仕事だぞ?(ちょっと危険だけど)
フェイ:任せろ!
トッド:……(単純な奴……)。
シュンジ:トッドも来月は出向。日本のブルーインパルスで曲技員が足りないそうだ。
トッド:おう、行ってくら!
アレン:……(馬鹿だ。馬鹿がいる)。
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とある方のお話(サイト閉鎖済)の続きに書かせて頂いたもの。サイトでは削ってたオマケが残ってたのでうp。
ひたすら果てしなくどーしょーもないキャラ崩壊ギャグ。特にシーラ様、エレ様大崩壊。