No.363733

愛しの君

初音軍さん

映画、けいおん!を見に行った日に思いついたネタ。
でも映画とはまったく関係ないんですが。
映画を見ていて改めてこの関係性が好きだと思えました。
が、これがどれだけの需要があるのかがw(´ω`;)
というかあずにゃんは思い出の中でしか出てこない件について←

2012-01-15 16:49:28 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:709   閲覧ユーザー数:585

 ちょうど、講義が終わって部屋に戻ったらムギちゃんがお茶を用意して待っていて

くれていた。勉強で頭がくたくたになった私にはムギちゃんが天使のように

見えていた。

 

「ムギちゃんありがとー」

「お疲れ様、唯ちゃん」

 

 暖かい湯気がなんだか落ち着く。ティーカップに綺麗な淡くも赤い液体から

良い香りが鼻に吸い込まれていく。そして、少しランクは落ちたが美味しそうな

お菓子たち。

 

「今日もありがとね、ムギちゃん」

「ふふ、ついコンビニ寄っちゃうと気になるのが多くてね」

 

 大して忙しい日々ではないが、距離も遠いし、向こうとの日程も合うかわからない

私はあずにゃんとは携帯でのメール等のやりとりで済ませていた。

 

 勉強が終わった後はなんだか気だるくて毎回ムギちゃんのとこへお邪魔している。

ムギちゃんもそれが嬉しそうだから、つい甘えに来ちゃうのであった。

 

 それも時々だけどね。大体はいつもの放課後ティータイムで賑やかわぁわぁして

晶ちゃんたちに怒られるのが日課となっていた。

 

 しかし、あれだけ長くあずにゃんたちといたのに、この生活に慣れてしまうと

まるで今まで過ごしたことが非日常に感じてしまうのだから、恐ろしいものである。

 

 ムギちゃんが買ってきたポッキーを咥えて物思いに耽っていると、ぷっと笑いを

堪えるムギちゃんに私は起き上がって頬をふくらませる。

 

「ひどいよ、ムギちゃん~」

「ごめんなさい、珍しくなんか考え事しているような表情だったから、つい」

 

「なんかあずにゃんが遠くにいるように感じて・・・」

 

 そんな私にムギちゃんは優しく微笑んで私の髪の毛を弄っている。

 

「そうね、それは梓ちゃんも同じ気持ちじゃないかしら」

「あずにゃんも?」

 

「そうね」

 

 頭から伝わる柔らかいムギちゃんの膝枕と私を撫でる暖かい手が私のもやもや

を払ってくれる。その時に、ムギちゃんが心配そうに私に聞いてきたのだ。

 

「梓ちゃんが心配?」

 

 そんなことはなかったのだが、すぐに答えることはできずに私は目を瞑って

卒業式の時のことを思い出していた。あの光景のことを。

 

 私は式の全てを終えてみんなと帰ろうとした時にたまたま昇降口であずにゃんが

寂しそうに掲示板をぼ~っと見つめていた。

 

 そんなあずにゃんを見て私はつい、声をかけようとした。だけどその後すぐに

憂と純ちゃんがあずにゃんを励ましてそのついでにからかっていて、その光景は

とても自然に見えて私は伸ばしかけた手を引っ込めていた。

 

 あぁ、あずにゃんの今はもう既に始まっていたんだなぁって。だからどこか寂しかった

のかもしれなかった。でも、今思えば一番寂しかったのはあずにゃんだったはずなのに。

 

「あずにゃんなら大丈夫だよ」

 

 私は起き上がってすぐにムギちゃんと顔を合わせてニコッと笑いを浮かべる。

いきなりの変化に驚いたムギちゃんは私の顔を見て釣られて笑い出した。

 

「そうね、大丈夫ね。どっちかというと唯ちゃんの方が寂しそうだものね」

「言ってくれるね~。そうだよ、あずにゃんのあの抱き心地を味わいたいよ~」

 

 春も終わりが近づきやや暑く、温い風が窓を通って私達にぶつかってくる。

環境の変化もみんながいてくれたから、もう慣れっこであった。

 

「ふふふ」

「えへへ」

 

 よくわからないけど、幸せな笑いを浮かべられるのも、特にムギちゃんが気づけば

私の傍にいてくれたから、なんだか幸せな気持ちでいられたのかも。

 

 だからそれが伝わってるかわからないから、私はムギちゃんの頬にチュウをして

 

「でもね、ムギちゃんとこうしていると暖かい気持ちでいられるから、

私は寂しくないんだよ?」

 

 このことは予想外だったのかみるみる内にムギちゃんの頬が真っ赤に染まって

少し戸惑ったように、でも嬉しそうに手を頬に当てる。

 

 その様子がとても可愛らしくて私は何度もムギちゃんにちゅっちゅっと口付けを

すると。

 

「うん、私も唯ちゃんが傍にいてくれるおかげで寂しくない、嬉しいわ」

 

 いつものように気合が入ったような言い方ではなくて、良い感じに力が抜けて

少し気だるそうな、色気を感じるムギちゃんの言動にドキドキする。

 

 でも、本当はムギちゃんは私ではなくあずにゃんとくっつきたい、という気持ちの

方が強いのだと思えた。だって、卒業より少し前にあずにゃんと二人で接していた

ムギちゃんの嬉しそうな顔が忘れられなくて。

 

 それに、私もあずにゃんに会いたいし。

 

「えへへ、そうだ。じゃあ、今度あずにゃんに会いに行く!」

「そう・・・それがいいわね!梓ちゃんよろこぶし」

 

 少し他人事のように言うムギちゃんを見て首を傾げて私は言葉を続ける。

 

「もちろん、ムギちゃんも行くんだよ。わかってるよね?」

「え・・・。いいの? 私が行ってお邪魔にならないかしら」

 

 普段、時々驚かされるくらいの行動派なのに今回に限って妙な気遣いを見せる。

私はからかうようにムギちゃんに「当たり前でしょ」って言ってから、もう一度

ムギちゃんの目を見つめながら。

 

「私達二人の好きな子のなんだから」

 

 その後、あまり言葉は交わさずとも、お互いを見つめる視線で感情は読み取れた。

その静けさを漂わせた空間に、カーテンから漏れる光が優しく二人を包み込んでくれた。

 

 今度の休みに会いに行こう。私とムギちゃんは手を繋ぎながら一つの携帯に文章を

打ち込んで送信した。この気持ち、あずにゃんに伝わりますように、と。

 


 
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