No.360662

こよみライダー(上)

ミケ猫さん

仮面ライダー×化物語クロスオーバー2次製作物をリュウ<http://www.pixiv.net/member.php?id=509738
>さんとha赤坊主<
http://www.pixiv.net/member.php?id=2289279
>さんとで作ってみました!毎週偽物語放送後にUPします。自分とリュウさんが文章、ha赤坊主さんが表紙および挿絵を担当して頂いております!どんなものになるかは分かりませんが素敵な絵を見ながら、是非楽しんでいただければと思います!!
そんな訳で第1弾!こよみライダー(上)です。文章は私、ミケ猫が担当しました。それではどうぞ。

2012-01-08 23:36:22 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:1027   閲覧ユーザー数:998

 

 

001

言うまでも無く、僕は中学校まで変身物が大好きだった。

ライダーしかり、○○戦隊然り。

だが、だからと言ってそんなトンでもなストーリーが自分に起こることを期待していたわけじゃない。ましてやそれが自分の目の前におきるなんていったい誰が想像するだろうか?

子供の夢程度じゃ収まるはずが無い。

僕自身すでに一度は人外となり、ましてやその類と一生関わることになったのだ。

別の要因が入ってくることは御免蒙りたいと高らかに宣言したい。

そうだから、だからこそ。

「こんな事になるなんて想像もしたく無かったよ」

「カカっ、それは仕方なかろう。あるじ殿の運命はそういうものじゃからのう」

この騒動を運面論で片付けやがった、隣でマントを翻すは、ご存知元鉄血にして熱血にして冷血の真祖、ダークオブアウトサイダー、我らがアイドル忍野忍ちゃんである。

ノリノリだなぁ。

見た目ガッチャマン(忍野の教育はもはや趣味の分化と呼ばざるを得ない)を派手にしたような衣装をまとい、瓦礫の山から目標を見据えている。

その隣で似たような服に身を包み、僕も空を見上げている。

言うまでもなく忍が創造ったものだが、なんでいつもいつも派手なんだ。

向かいを見上げると、さっきの奴に似た格好(左右で色が違う。何だあいつ)のやつと、似たベルトを巻いた、僕より少々大きい奴(赤)と僕より少々小さい奴(黄)が立っている。

すでに特撮と化したこの舞台ではあるが、それでもこれが事実である以上僕は受け止めなくてはならないのだろう。

一応こうなった原因の一端は僕にもあるのだから。

「さて、向こうも臨戦態勢のようだし、ぼちぼち仕掛けますか」

「そうじゃのう、あんなトカゲなんぞに最強の座は譲れん」

「それを言ったらお前なんて蝙蝠だろうが」

「言うな!、それは言ってはならん!」

なんか頭を抱えて丸くなる忍ちゃん。

以外に気にしているようだ。

『Gya------------!!!!!!!!』

空を泳ぐそれは、けたたましい声を荒げた。

「おい、取り合えずコンセプトに頭を悩ませるのは後だ。まずはあのデカブツを倒さないとな」

「いいんじゃいいんじゃ、儂なんぞただの蝙蝠なんじゃから・・・」

「ヘコみすぎだろ!?」

思った以上のダメージだ。どうしよう・・・・そろそろ上の奴が襲ってきそうな勢いなんだけどな。ってか冗談が通じない相手だろうからこんなコント見ても突っ込みもくれなさそうだし。

仕方ない。

「忍、あれ倒したらドーナツ20個食わせてやる。というか、あれを倒さないとドーナツ屋も永久に開かなくなるぞ?」

「なんと!?それは困る!!」

すっくと立ちあがると見ても居ないそいつに指を差し向けた。

「さっさと叩き落してやるから待っておれ!ドーナツ!」

「そっちか!」

002

ここ数日、町がやたら慌しい。

例に漏れず、我等がファイヤーシスターズこと火憐ちゃんと月火ちゃんも、西へ東へと奔走している。

今回の事件はどうもちょっといつもと勝手が違うのか、二人とも少し行き詰っているようだ。

僕としては、一応の忠告はするが、後は基本放置であるのでそれ以上突っ込むつもりはないんだけどな。

そう思ってリビングで漫画を読んでると、

「なぁ兄ちゃん、ちょっと聞きたいんだけどさ」

火憐ちゃんから質問がきた。

珍しいこともあるもんだ。

「どうしたでっかいの」

「うーん、どういったものか・・・」

こいつが悩む姿というのは実に珍しい。だからと言ってまともな質問や答えや応答があった試しは無いというのがわが妹ながら残念な所だが。

「えっとさ、仮面ライダーって分かる?」

「僕にそれを言うのか」

なんとも間抜けな質問が来たものだ。

僕に仮面ライダーを語らせればそれはもう1号から平成ライダーまで1ヶ月を掛けて語りつくせるというものだ。

「いや、それは御免蒙るんだけど」

即効で一蹴された。

「で?仮面ライダーがどうしたよ」

「いや、兄ちゃんも知っていると思うけど、最近この町でやたら怪物を見たって騒ぎがあるだろ?その中の一人がこんなことを言ったらしいんだ。『俺は仮面ライダーだ』って」

「・・・・・・・」

それはまた、なんとも怪しい話が出てきたものだ。

「またおかしな事を言う奴が出てきたな。そいつは変身でもしたのか?」

「おお!よく分かったな兄ちゃん!さすが」

マジデスカ。

「マジもマジ。大真面目だよ」

ドアの向こうからやってきたのは下の妹の月火ちゃん。

「結構な目撃情報と被害が出てるみたいで、色々大騒ぎみたいなんだよね。お兄ちゃんの学校の生徒も何人か目撃してるし」

「そんなところまで調べたのか」

「モチロンだよ。でもね、どうも容姿の情報がいくつかある上に、どうもそういうことを手引きしている人間がいるみたいなの」

「そういうこと?」

「そこも噂でしかないんだけど、変なメモリーカードを売る白尽くめの男がいるんだって」

思った以上に大事になっているようだ。作戦参謀のこいつが言うからには確かな情報なのだろうがこれはちょっと気になる話でもある。

さすがにあの男ではないだろうがどうにも関連性を疑わざるをえない。

「なるほど、そこまで大事になっているなら、警察も動いているんだろう?」

「うーん、化け物が出たって話の所為でろくに相手もしてくれないみたい。物理的な被害が今のところ少ないらしいし」

実被害がないから、軽く扱われているのか。

「それと、この騒ぎの前後から別かどうかはわからないんだけど、もう一個事件がおきているうえにこの二つに比べると小さい事件が多いんだよね。ところでお兄ちゃん、通り魔事件は知ってる?」

「さすがにな」

1週間前くらいから、学生を狙った通り魔事件が起こっている。

主に女子高生が連れ去られ、衰弱した状態で後日発見されるというものだ。

こんな小さな町だからすぐに広まり地域・警察・学校で対策が設けられているにも関わらず一向に被害が減らない。幸い皆命に支障は無いケガらしいが物騒な話だ。

唯一の怪我が首筋にある傷というのが僕の悩みの種ではあるが。

他にも強盗や暴走車両など、事件が横行している。

なるほど、警察はこっちに忙しいという訳か。

「要するにあれか、お前らはこの二つの事件が関わっていると踏んでいるわけだ。」

「うん、羽川さんのお墨付き」

「・・・・・」

羽川に聞いちゃったのか。今はどこだっけ、南米あたり?

どうやって連絡取ったんだこいつら・・・。

「なんか衛星電話ってやつ使ってるんだって。現地の軍人さんと仲良くなったとか何とか」

「どんだけアクティブになってんだよ」

もはや羽川はどこに行っても生きて行けるんだろうな。

僕なんてもう要らないかも・・・

言ってちょっとヘコんで来た。

「ってちょっとまて、何でお前らその電話を俺に言わない?」

「別に言われなかったし」

「そうそう、それに翼さんからも特に兄ちゃんに換わって欲しいとも言われなかったしな~」

・・・・・本気でへこむなそれは・・・。

しかしまぁ状況は理解できた。これが命に関わる事件の可能性もあるって事だ。

あの羽川が断言した以上、これは決定事項。

となると・・・

「羽川にはなんて言われた?」

「えっと、頑張ってって」

「嘘つけ」

あの羽川がそんな事言うもんか。前のことを教訓にしないわけないんだから、これ以上首を突っ込むなと言っているはずだ。

まったくこいつらは、いい加減お灸をすえる必要があるな。

「化け物騒ぎについては多少放置する予定だったが、ここ最近の事件が絡んでるとなると話は別だ。結果的に警察が動いているならお前らの出る幕は無い。正義ごっこもいいが身の丈にあった行動をしないと痛い目みるぞ」

「でも」

「でもも何も無い。いい加減に学べ」

「「いや」だ」

「・・・・・・・」

ムカつくくらい可愛いやつらだな。またちゅーしてやろうか。

さすがに限度を超えている問題だけに、こいつらをこれ以上動かすわけにはいかない。

しかしこいつらを止めるのは、文字通り骨が折れることになりそうだからな。

「分かった。じゃあ現状維持でなら許す。ただし、ちょっとでも事件性がある場合は俺と親に相談すること。約束しろ」

「分かった」

「うん」

素直に頷いたので話はこれで切り上げることにした。

あーでもなんだか絶対に裏切られる気がするのは僕の気のせいだろうか。

「それじゃ、これから戦場ヶ原んとこで勉強だから出かけてくる。なんか変化があったら必ず連絡しろよ」

「はーい」

返答を聞きつつ、僕は家を後にした。

003

家を出たとたん、スーツベストの人に声を掛けられた。

ちょっとダンディズムをかもし出そうとして失敗している感が否めないといった服装だ。

「君、阿良々木・・・暦くん?」

急に声を掛けられた。

「あぁ、そうだけど」

「そうか、良かった。ちょっと聞きたいんだけど、『羽川翼』って子知ってるかな?」

「・・・あんた誰だ?」

「おっと、自己紹介が遅れたな。俺は左翔太郎。探偵をやっている」

探偵。・・・胡散臭い響きだな。っつーかこの町に探偵なんていたか?

「探偵が羽川に何の御用で?」

僕は少し声のトーンを落として返答をする。

こいつ、僕の羽川に何のようだ。

「いや、実はこの町で起きている事件について聞きたいことがあってね。羽川って子に会いたいんだけど、どこに居るか知らないか?」

「…ならあいつの家に行って下さい」

「行ったさ、でも家は焼けてなくなってるわ、新しい家に行ったら行ったで親御さんは教えてくれなくてな・・・というか子供がどこに居ても自分たちには関係ないって感じでな。結局居所はわからずじまいなのさ」

まぁそうなるか。

「それで彼女と親しいらしい君の所に来たんだ、それで、そのこはどこにいるのか知ってるなら教えて欲しいだけどな?」

少し値踏みするようにして、こちらを見ているのが癇に障るやつだ。

悪い奴ではなさそうだが・・・さてどうするか。

「残念ですが、今羽川はこの町にいませんよ」

「え?じゃあ今はどこに?」

「たぶんアフリカ大陸にいると思います」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アフリカ大陸!?」

とっさに言っちまったがまぁいいだろう。素性の知れないやつにワザワザ本当のことを言う必要も無いしな。

しかし、開いた口が塞がらないといった顔をしている。

「学生・・・だよな?何だってそんなところに」

「一足先に世界一周を試してみたいんだそうで、まぁ取り合えず卒業までは帰ってこないと思いますよ」

「そうなのか・・・参ったな・・・」

そういうと、男は携帯電話を取り出し、掛けはじめた。

「フィリップ、俺だ。・・・・あぁ、どうも羽川翼って子は今この町にいないらしい・・・・・・あぁ、分かった。一先その方向で聞き込んでみる・・・・・と言う訳だ、時間取らせて悪かったな。」

「いえ、では失礼します」

「あぁ・・・おっと、ちょっと待った」

男は懐から一枚のカードを取り出した、絵柄の描いてない変なカードだった。

「忘れるところだった。これを受け取ってくれ」

そう言うとそのカードを僕に向かって投げ渡した。

両手ではさむ様に何とか受け取ったがやっぱり何も描かれてない。なんだこれ?

「すいません、このカードを持った覚えはないんですが?」

「だろうな」

しれっと言いやがった。

「まぁ疑問はあると思うが、それでもこれはお前のなんだ。悪いが受け取ってくれ」

「はぁ・・・分かりました」

僕は疑いの目を向けつつその場を後にする。

ある程度距離が離れたところで、自分の影を何度か踏んだ。

「なんじゃい、あるじ殿、こんな朝早くに・・・・」

「眠っているところ悪いな、あそこにいる男なんだけど、変な感じとかあるか?」

「・・・・特に無いのう。ごく普通の人間じゃ」

僕の思い過ごしか・・・。なら問題ないだろう。

「ちょっと悪いがこのまま起きててくれ」

僕はカードをポケットに押し込むと、そのまま北白蛇神社まで向かった。

 

004

「さて、ちょっと出てきてくれるか?」

「あるじ殿は鬼じゃな、こんな朝早くに夜型の人間を起こすとは」

「そこは今度ドーナツおごるから。で、ちょっと相談というか頼みがある。」

僕の言葉の真剣さに気付いてくれたのか、おちゃらけはなしと分かってくれたようだ。

「で、頼みとはなんじゃ?」

「最近起きている事件について、ちょっと調べたいことがある。それと、可能なら解決したい。手伝ってくれないか?」

「嫌と言っても付き合わざるを得ないワシにそれをあえて聞くか。相変わらずじゃのう」

現在の主従関係は逆転しているものの、僕としては元主でもある。

命令できる立場なのだろうが、それは出来ればやりたく無い。

「あくまで対等か。まぁ良かろう。して、何を調べるのじゃ?」

「さっきもいったが、最近起きている事件について、だ。怪物騒ぎってのが気になるんだよ。怪異の仕業なら、何とかしておかないとうちの妹たちが巻き込まれる。っていうか頭を突っ込む」

忍は大きくため息をついた。

「相変わらず甘いのう。まぁそこがいい所なんじゃろうがの」

「んじゃ、OKでいいな」

「そうは言っておらん。命令じゃないならそれなりに交渉してしかりじゃろう・・・・・・・・・」

忍の言葉がそこで切れた。

「どうした?」

「上で何かが来たようじゃ。」

「何か?」

「分からん」

首を横に振る。

「一つだけ分かるのは、儂らが時間移動したときの現象に似ておるということだけじゃ」

「誰かが時間を越えたってことか?」

「いや、恐らくそうではない。ワシも要領を得ないのじゃ。なんとも言えん」

忍が珍しく困惑した表情を浮かべている。

くそ、いったい何が起こっている?

一先ず神社に向かったほうがよさそうと判断し、僕らは階段を駆け上がる。

崩れた社が見えた頃、その屋根の後ろから、一人の男が現れた。

僕にとってはひどく見慣れた格好で。

「お前らロストドライバーを見なかったか?」

唐突の質問に面食らっていると、そいつは当たり前のように目の前に近づいてきた。

「お前、ちょっと違うな。そこのちっこいやつも。いや、どちらかというとちっこいやつが違っていて、お前はズレた感じか」

「!?」

なんだこいつ。僕が人から外れていることに気付いた?

わずかに残っている吸血鬼の本能が僕を後ろに交代させる。

なんだこいつ、なんでこの男はあいつと同じ装いでまるであいつのような臭いがする?

「怖がるなって。別に何もしねぇよ。だからその殺気を鎮めろちびっこ」

見ると、忍が完全に臨戦態勢に入っている。

どういうことだ?こいつはそんなに危ない奴なのか?

「士君、小さい子を怖がらせちゃだめですよ」

更に後ろから、女性が現れた。この男の連れらしい。

「ごめんね?士君には私から言っておきますから。私は夏海。実は私たち、ちょっと探し物をしてるんです」

忍は警戒心の残し、威嚇行為だけをやめると僕の後ろに隠れた。

「はぁ、まぁいいですが。探し物というのは?」

「だからロストドライバーっていってるだろ」

『士』と呼ばれる男が辛辣に答える。

「士君!いい加減にしないとぉ~」

「分かった!分かったからそれはやめろ!」

夏海という人が親指を立てたとたん手のひらを返し始める。

なんかやられるのだろうか・・・

「改めて、私たちは『ロストドライバー』って物を探しているの。そうだなぁ。ベルトみたいなものなんだけど。見たこと無いかな?」

僕と忍はしばらく考えてみたが心当たりがまったく無かった。

「いえ、申し訳ないですが聞いたこと無いですね。その『ろすとどらいばー』ってなんですか?」

「うーんと、仮面ライダーに変身するための重要なパーツって言ったらわかるかな?」

「かめんらいだー?」

またか。ちょっと可笑しな人たちに出くわしたらしい。

この人はまともだと思ったのになぁ・・・

「あれ?もしかしてこの世界には仮面ライダーはいないの?」

「いや、いるも何も・・・・それはテレビの中の作り物の話でしょう?」

「ふん、どうやらこの世界には仮面ライダーはいないようだな」

更に悪辣に切り返す。どうやらこの人は僕らと友好関係を築く気は無いようだ。

「仕方ない、俺らだけで・・・・・というわけにもいかないみたいだな」

男が鋭い視線を向ける先に鋭利な口、緑の皮膚をした怪物みたいな格好の奴らが現れた。

「おい忍。何だあいつら?」

「わからん、少なくとも『怪異』の類ではない。そしてあれは人間じゃ」

「はい!?」

あれが人間だと?いつかのタイムスリップじゃあるまいし、いったいなんだって言うんだ。

「ドーパント・・・か。おい少年」

「な・・・なんだよ」

パニックな僕とは対象的に、この男には余裕が満ちていた。

「男がこんなときにオタオタしても仕方ねえ。こんな時は見栄でも余裕を見せるもんだ」

「無茶言うな、僕は普通の高校生だぞ!?」

「フツウねぇ」

男は、皮肉めいた返事をすると、ニヤリと笑い腹に何かを押し当てた。

「そうだ、自己紹介がまだだったな、俺は門矢士(かどやつかさ)。またの名を」

一枚のカードを取り出し、高らかに叫んだ。

「通りすがりの仮面ライダーだっ!変身っ!」

 

-Kamen ride Dicade!-

 

バックルのようなものにカードを差し込むと、光に包まれ、門矢士と名乗った男はマゼンダと黒を基調としたものに姿を変えた。

「なっ・・・・」

言葉が出ない・・・変身?仮面ライダー?特撮の世界の出来事が目の前に現れ、僕の頭はもはや処理能力を超えていた。

「さぁて、掃除を始めます・・・か!」言うが早いかマスクマンは化物に向かって突っ込んでいく。

一匹を標的にしたかと思うと、勢いに乗ったパンチで敵が数メートルもぶっ飛んだ。

「っ・・・・・!?」

そのまま反転し、その勢いで回し蹴りを打ち込むとそいつも同じく吹っ飛ぶ。

僕が完全に吸血鬼化でもしない限り起こりえないような出来事がいま、目の前で繰り広げられている。

戦闘シーンも、まるでテレビの中の出来事のようにしか見えない。

忍のほうもまるで思考が停止しているようだ。

 

門矢士だったそのマスクマンは、無造作にドーパントと呼ばれたモンスターに向かっていく。

「なるほど、ゴブリンね・・・量産型なら問題ねぇだろ」

一匹が門矢士に殴りかかると、事もなげにカウンターで殴り飛ばした。

そいつはそのまま気に激突しぐったりと動かなくなる。

次に近くにいた一匹に対してそのまま回し蹴りを食らわせ、そいつは側転するように吹っ飛ばされる。

続けざまに正拳突きを放ち、そいつはほかの数匹を巻き込んで後退する。

同じ要領で、次々に敵が一箇所に吹っ飛ばされていく。

「あの人はいったい・・・」

「士くんは仮面ライダー。仮面ライダーディケイド」

夏海さんが口を開いた。

「世界を渡り、世界を壊し、世界を守る仮面ライダーだよ」

モンスターがたじろいでいると、門矢士は腰から一枚のカードを取り出し、バックルのようなものに差し込んだ。

 

-Attack ride Blast!-

 

腰にあった本のようなものが銃に変形し、弾丸を打ち出す。

それは銃身から複数に分裂し、散弾銃のようになってモンスター達に襲い掛かる。

デタラメすぎるだろ!?

「さぁて、止めだ」

別のカードを取り出し再度バックルに差し込んだ。

 

-final Attack ride DiDiDicade!-

 

門矢士の目の前にカードのような板が複数出現し、モンスター達に向かって並んでいく。

そのままジャンプ下かと思うと、カードに向かって突っ込んでいく。

「でぃやーーー!」

掛け声とともにカードを1枚置きに通っていき、モンスターに飛び蹴りを食らわした。

門矢士はその場にいた十数人をものの数分で倒してしまった。そして、倒されたそいつらは煙のように消えてしまった。

全てが夢だったと言いたい。

隣で忍も非現実を見ているような顔をしている。いや、お前も現実じゃねぇだろと突っ込む余裕もないから一応心で突っ込むだけにしておこう。

元の姿に戻ると、門矢士はこちらを向いた。

「で?本物をみた気分はどうだ?・・・・少年」

「・・・言葉も無いですよ」

僕はその場に座り込んで応えた。

005

僕を驚かすのは更にここからだった。

あの潰れた神社の後ろに入り口だけの壊れたドアがあるのだが、あけて見るとなぜか写真館があった。

いくらなんでもそれは無いだろ!

「俺らはこうやって世界を巡るんだ。気にするな」

一通り説明を受けはしたがどうにも信じがたい。

しかし、実際目の当たりにしている以上、現実を受け入れなくてはならない。

異世界を旅するというこの4人。どうやら門矢士の仮面ライダーとしての能力が原因らしい。

そのため一つの世界に長くとどまることは出来ないそうだ。

今回、僕らのいるこの世界に来たのは、『ロストドライバー』なるベルトがこの世界に落ちてしまったからとのこと。

原因は門矢士。をいをい・・・・

ちなみに、いつの間にか2人増えているのは、その二人が家の中にいたから。

光栄次郎(ひかりえいじろう)さんと小野寺(おのでら)ユウスケさん。

光栄次郎さんは夏海さんのおじいさんとの事。

小野寺ユウスケさんは前の世界で怪我したため今回は療養中。

仮面ライダーがケガで療養って・・・色々と夢をぶち壊してくれるものである。

小野寺さん曰く「士は口は悪いけどいい奴だから」との事。

まぁ話を聞く限り、悪い奴ではないらしいので取り合えず信用しよう。

「しかし、じゃあドーパントがいたとなると、この世界にはダブルがいるってことじゃないのか?」

「いや、どうもこの世界とダブルの世界がつながっているみたいだな。」

門矢さんが答える。

門矢さんが言うには、理由は分からないが、現在この世界は『仮面ライダーダブル』という世界と繋がっているらしい。

そのため、僕らの認識の外にある現象が起こっているとのこと。

「いや、さらっと言うけど、僕も多少の経験はあるけど、だからって早々簡単に世界って繋がるものなのか?」

「んー」

夏海さんが困惑した顔をする。

「実を言うとね。何でこの写真館でこういうことが起こるのか、理由はまったく分からないっていうか・・・なすがままって言うか」

「・・・つまりは殆どされるがままですか」

「唯一、原因は分かっているんだけどね。なぁ士」

ユウスケさんが門矢さんに意味ありげな視線を投げる。

「そうだよ。俺が原因だ。ディケイドは世界を渡る力を持つ。それが影響しているって事は分かっている」

特に興味も無さそうに言う。

「その上俺は夏みかんのところにいたとき、すでに記憶を無くしててな。ディケイドが世界を渡る以外のことはまったく知らん。それでもなんとかやってるんだからいいだろ」

ただ。と言葉を続ける。

「本来ライダーのいない世界とは原則として繋がることはめったに無い。なぜなら俺はライダーのある世界を渡る力を持ってはいるが、それ以外の世界とは干渉する術を持たないからな。それでも今回の状況が発生する場合」

僕を指指差しながら

「この世界自体で次元に干渉する現象が発生した場合が考えられる。さっきお前ら言ってたな。経験があるってよ?」

にやり・・と。

原因は僕といわんばかりに笑ってみせる。

「・・・過去に飛んだことはありますよ」

隠しても仕方ないので僕は一応事実を話した。

「・・・・まぁそういうわけで、取りあえずこの神社・・・・今は写真館ですがココに満ちていたエネルギーも消えて、僕らはココに戻ってこれたんです」

「・・・・なるほど。大体わかった。それはかなりの冒険だったな。まぁ安心しろ、今回俺らがこの世界に来た以上、俺らが干渉し、ことが終わればそれらは勝手に収束する。それが俺の存在理由でもあるからな」

「それは私も保証する。だから安心してほしいかな」

「でも士、実際この世界の原因を片付けないと駄目なはずじゃなかったか?」

「そこはダブルに任せておけばいいだろう。問題は・・・」

スッと取り出した写真を僕らの前におく。

「これを見つけないと次の世界にいけないんですよね。大事な預かり物でもあるし」

さらりと凄いことを言ってないか?

「後もう一つ。この世界に干渉するにはこの世界を代表する存在が必要だ。お前ら風に言えばヒーローみたいなやつだな。」

「そうそう、こんなカードを持ってる人って知ってるかな?」

夏海さんが一枚のカードを僕に渡してくれた。

先ほど門矢さんが使っていたものと同じ模様のカードだった。模様はディケイドという名前のライダーの絵だ。

僕は思わずポケットに手を当てた。

「・・・いえ、知りません」

「そっかぁ。もし見つけたら教えてね」

「分かりました」

「取り合えずだ少年、何か情報があれば教えてくれ。ここにくれば大抵誰かはいるだろうからな」

「・・・それもわかりました」

助けてもらった手前、断るわけにもいかない。

最後に、これだけは聞いておかなければいけない。

「あの・・・」

「ん?どうした?」

「なぜ、その格好なんですか?」

「あぁ、これか」

門矢さんは嫌そうに言う。

「俺は世界を渡る毎にその世界で一つ役割を与えられるんでな。誰かは知らんがこの格好はこの世界にとって重要な人物の格好らしい。」

「分かるんですか?」

「・・・毎回そうだしな」

当たり前のように答えてるが、それはどういうことだ?

あの忍野がこの世界で重要な関わりがあるのだろうか?

僕たちにとっては・・・・確かにあったが。

タイミングもちょうどよかったので、一言お礼を言って、写真館を後にする事にした。

「あんまり居れないけど、ここにいる間はいつでも遊びに来ていいから。良かったら・・・ね」

夏海さんの去り際の一言で、また遊びに来ようと決心する。

長い石階段を降りきったところで、忍から声を掛けてきた。

「あの話を聞いた感想として、あるじ殿はどう思う?」

「どうねぇ」

回答に困る質問だ。

話がぶっ飛びすぎてるし、何より現実味が薄い。

何より僕は今抱えている問題で精一杯なのだ。とても他に手をまわす余裕なんて無い。

さて、どうしたものか。

「正直半分半分だな。探し物って話は良いとして、それ以外がぶっ飛びすぎてる。正直この手の話は怪異だけで精一杯だっていうのに」

「そうじゃのう。ワシに加え、色々な怪異と関わったおまえ様にとっては頭を抱える話じゃろうな。」

「お前はどうなんだ?あの話を聞いて」

「正直どーでもいい」

「あ、そう」

「最初はあのムカつく男が良く分からないから威嚇したが、特に害もなさそうじゃしの」

「まぁそれは同意だな。でも何で俺やお前が人外と分かったんだ?」

「それはワシにも分からん、特に専門家にも見えんが」

忍も分からないのか。忍野が居たら何かアドバイスをもらえたのだろうか・・・・・。

「しかし、あの変身は良かったのぅ、おまえ様もああやって変身出来たらカッコいいのに」

「あんなの出来るわけないだろ」

「吸血鬼化すれば不可能ではないぞ?」

「そのためだけに出来るか!」

「そのときは是非ガッチャマンをモチーフに」

「古いよ!二人なんだからせめてヤッターマンじゃないのか!?」

「あれはマントが無いではないか!」

重要なのはそこなのか・・・。

まぁヒーローならマントが欲しい所ではあるからな。気持ちは分からなくもない。

ん?まてよ?そもそもヤッターマンにマントってなかったっけ?

って・・・

「そんなことは今はいいとして、取り合えず活動は夜か」

「そうじゃのう、動くにしてもそれが良かろう」

まだ日も落ち始めたばかりだったが、僕は早々に帰路につくことにし、忍も影に潜った。

ふと、道の先を見ると、八九寺が歩いているのを発見した。

いつもの如く、絶妙なタイミングで現れるなこいつは。

「よう、八九寺」

「おや、阿良々木さん、今日も残念な制服姿ですね」

「開口一番に残念とかいうなや!」

「まぁ阿良々木さんの服のセンスはもはや直し様がないのですから言うだけ野暮ですね。すいません」

「僕のセンスはそこまでどうしようもないのか!?」

なんということだ・・・そりゃあまり変化の無い服ばっかりだけどまさかそこまでだったなんて・・・

「仕方ありません、そこは原作にしたがって諦めてください」

「諦められるか!」

「時に阿良々木さん」

「ん?なんだよ」

「なんだか急いでいるように見えましたがどうしました?」

「あぁ、まぁちょっとな」

「なるほど、またいつものように正義の活動ですか」

「ちげぇよ!」

「じゃあ正義の味方ごっこですか?」

「変わってないわ!それと、正義の味方ごっこをしているのはあいつら・・・妹達のほうだ」

「ファイヤーシスターズ・・・でしたっけ?私もよく耳にしますよ。あっちこっちで大活躍とか」

「あんまり聞きたくねぇな」

「なんでもこの前は実践担当の方が電柱を圧し折ったとか」

「いくらなんでもそれは在りえねぇだろ!?」

「あとは頭脳担当の方がシャベルを持ち出して脅したとか」

「・・・リアルすぎる・・・」

あいつならやりかねん・・・いや、絶対やってる!

「そして影の司令がその二人を文字通り影から操っているという噂ですっ」

「全部僕に罪がかぶってない!?」

「仕方ありません。上司というのは部下の不始末を背負うのが仕事というものです」

「僕はあいつらと関わりたくないわ!」

「でも毎回やっているんですよね?後始末」

「やるか!・・・・いやまぁ手に負えないような大事になったらさすがに手を出すことも無いこともないが・・・」

「阿良々木さん、あまり妹煩悩も大概にしたほうがいいと思いますよ?」

「妹煩悩って・・・僕たち兄妹は仲が悪いんだぞ?そんなことあるかよ」

「いやいや、阿良々木さんの妹好きは有名ですよ?ロリ疑惑もそこから来ているんだと実しやかに囁かれています!」

「誰に!?」

「基本的には戦場ヶ原さんと羽川さんですかね」

「いや!止めろ!僕はロリコンではない!」

「どうでしょう?忍さんを影に飼ってて、私や余接さん辺りを狙っている辺り、その疑惑は確信としてよいかと思いますが」

「冤罪だー!」

「それに妹さん達が窮地に陥ったら真っ先に駆けつけそうですよね。それこそ何を捨てても」

「あほか!捨てねぇよ。元々捨てるか」

「では全て持っていくと?」

「人生の中で捨てる選択肢があったとしても、僕が捨てるのは僕だけだ」

「まぁそうじゃなきゃ吸血鬼になったりはしませんしね」

「まーな」

「時に阿良々木さん、最近仮面ライダーシリーズのゲームはご存知ですか?」

「だから僕に仮面ライダーを語るな」

「私はアマゾンが好きなんですけど、あれって何なんでしょうね?一応仮面ライダーの定義ってバッタってイメージが私にはあるんですけど」

「僕は平成も好きだからそのイメージは余り無いけど、そうだな。確かに1号2号のことを考えたらアマゾンからちょっとおかしくなった気もしないでもないな」

「そもそもアマゾンってモデルはたしかマダラオオトカゲですよね?なのにトカゲ的武器要素が一つも出てこないってのはコンセプトとしては失敗だと思いませんか?」

「そんなことを言ったらストロンガーもどうなんだよ。あれなんてカブトムシなのに雷を操るんだぞ?」

「スカイライダーは空飛んじゃいますしね」

「そう考えると、仮面ライダーの定義ってあくまで『バイクに乗った人』なんですよね。海外では『マスクドライダー』って呼ばれているようですけど。私が聞くと違和感を禁じえません」

「なんで?」

「だって『マスク「ドライ」ダー』ですよ!?なんか嫌な響きです。風邪を引きそうです。阿良々木さんのギャグくらい寒いです。」

「そんなところに突っ込みどころを見出すな!」

「所で阿良々木さん、今日は何をしていたんですか?」

「ん?いや、今のところは何もしてないけど。どうして?」

「いえ、珍しく阿良々木さんが考え事しているようなので、ちょっと気になりまして」

「珍しくは余計だろ」

「そうですか?私からみたら、大事に関わっているように見えるんですけどね。」

こいつも変なところで感がいいな・・・。

「改めて、どうしたんですか?」

「正直人に話していいものかどうか迷うところだが、そうだな。他の意見も聞きたいところだし聞いてくれるか?」

「いいでしょう、自称『みんなのお母さん』八九寺真宵が阿良々木さんの悩みを聞いてあげましょう」

「自称かよ!・・・いや、ちょっと今回は突っ込みは控えよう・・・まじめに困った話だからな」

俺は今日起きた出来事を一通り説明した。

この一文で終わらせたのはこれを読んでくれている人はすでにわかっているからということであり、決して書くのが面倒という作者の怠慢なわけじゃないョ。

「見苦しい言い訳は見っとも無いですよ」

なんか僕が怒られた。僕のせいじゃないというのに。

「そんなことより、取り合えず一通り説明したがどうだ?八九寺の感想は?」

「・・・・・」

なんだ?やけに深刻な顔になっているな。

「阿良々木さん、なにかお悩みなら私に相談して下さい。私にできる事ならしてなんでもしてあげますからっ」

母性のごとくの笑みで言いやがった。

「おい八九寺、僕の言った事信じてないだろ?」

「いやいや、いくらなんでもそんな荒唐無稽な話、信じられませんよ」

「だよなぁ」

まぁわかり切った回答ではある。

実のところ僕自身が半信半疑なのだ。

こんな空想話をそうそう信じる奴はいないだろう。

「ときにアパレギさん」

「八九寺、どこかの仕事名のように僕の名前を言うんじゃない、僕の名前は阿良々木だ」

「失礼、噛みました」

「いいや、わざとだ」

「かみまみた」

「わざとじゃない!?」

「はにかみました、えへっ」

「オリジナルネタ使っちゃった!」

「阿良々木さん、もうすこし切り返しはしっかりやって欲しいところですよ?」

「うぅ・・・努力はしているんだがなぁ」

最近の八九寺の切り返しについていけていないのはつらいところがあるな。

これを機会にレパートリーを増やさねばなるまい。

「まぁあれですね。話を戻しますが仮面ライダーといえばやっぱり私としてはV3を押したいところですね」

「V3とはまた渋いところをチョイスするな。ちなみになんでだ?」

「全作品の中で唯一自分から改造されたってところですかね。家族の敵をとるために自ら改造されるとかかっこいいと思います」

「一応言っておくが、自分から改造されるのはスーパー1もだからな?理由は違うけど」

「そうだったんですか?私はスーパー1は見てないので知りませんでした」

「そもそもお前の世代じゃないはずなんだが・・・」

「そこを言ったら阿良々木さんもじゃないですか。まぁとにかく、ああいうなりふり構わないってところに惹かれるところもありますよね」

「改造するのが1号と2号ってのもある意味壮絶だよな」

「そうですね~。と言うか自分がそうだからって改造なんて早々出来るものでもない気がしますが、どうやって改造するんでしたっけ?」

「どうやってって、うーん」

なんだっけな、僕も正直うる覚えなんだけど・・・・えっと

「たしか、デストロンの犯行現場を目撃して、鋏の怪人だったかに両親と妹を殺されて、本郷に一度は改造を頼んで拒否されて・・・・」

「あぁそうでした!1号と2号を助けに行って、瀕死になったんでした」

「そうだそうだ、で、助けるために改造手術をしてV3になったんだったな。思い出せてよかった」

なんかこういうのは思い出せないとすっきりしないからな。

「考えてみると結構壮絶ですよね。復讐のためにってところがとくに」

「たしかに、自分を捨ててでもってところはちょっといただけねぇけど覚悟ってところは僕もそう思えるな」

「阿良々木さんも似たような感じですけどね」

「僕は違うよ。僕がやるのはいつだって自分を守るためだ」

「その定義も大概ほかの人より広いですけどね」

八九寺はくすっと笑った。

まぁその通りなのだが。実際僕は自分だけと言っておいて、結局はその中にみんなを含めている。

見抜かれてるなぁ。

「今までのお話も、阿良々木さんがそうじゃないってパターンを、おそらく想像も出来ないですけどね。正直一連の話に阿良々木さんが居ないだけで物語として完結できないと思いますよ」

「そういってもらえてうれしい限りだよ」

うれしいことを言ってくれるやつだな。メタ発言が過ぎるけどな。

「そんな褒め上手な八九寺へのお礼として、今後出会い頭のたっちんぐは是非とも続けていくことをここに約束しよう」

「非道なお礼が帰ってきました!?」

「もちろん本誌に掲載したら確実にR18が付くほどの過激なサービス突きでな!」

あー八九寺がまた3メートルほど物理的にも精神的にも離れてしまった。

うん、目が良いね!あの蔑むような目!

「八九寺、今の僕はその目で見られることがすでに快感となっている。だからお前のその行為は僕の行動を増長させるだけだぞ?諦めて僕に厭らしいことをされとけ」

「無駄にカッコいいです!?」

あーついに横道に隠れてしまった。

「そろそろ私、ほんとに逃げたほうがいい気がしてきましたね」

「はっはっはっ、そんなことほんとにするはずが無いだろう」

「そのセリフにはまったくと言って良いほど説得力が皆無ですねっ」

いつも通りのやり取りを済ませるとたところで、

「まぁ、でも、阿良々木さんの話しですから、全く信じてないわけでは無いですよ。怪異とは関係ない事件と言うのはちょっと気になりますが」

と話を進めた。

「気になる?なにがだ?」

「実は、昨日街の外の方に道を尋ねられたんですよ。阿良々木さん家はどこですか?と。ハードボイルドを目指して失敗した様な感じの方でしたね。で、その方が電話をした時に、先ほどの話しに出てきた『どーぱんと』と言う単語がありました」

僕の家を尋ねてきた?

一人の男が頭をよぎった。

「そ、そいつ、なんて名乗ってた?」

「確か、左翔太郎さんだったと思います。」

006

夜になり、辺りが静まり返り、妹たちが寝たことを確認した後、僕と忍はこっそりと外を出た。

前もって忍に血を吸って貰い、体力の底上げも実施済みだ。

それはいいだけど、

「なぁ、なんでこんな格好なんだ?」

「決まっておろう、ダークヒーローなのじゃから」

「いや、ダークも何も俺らヒーローじゃないし」

昼間の仮面ライダーに感化されたのか、結局忍が物質創造能力で仕立てた変身スーツ(笑)を着ることになった。

見た目はガッチャマンっぽい感じだが、色が漆黒ってところに違いがある感じ。

そして装飾が入ってたり無駄にゴージャスである。

いや、これでも我慢してもらったんだよ?

最初はなんか金銀とか宝石とかもうなんか派手過ぎて着る気になれなかったんだから!これでも落ち着いたんだよ!

「して、あるじ殿。まずはどこに向かうのじゃ?」

「そうだな。一先ず通り魔事件が多発している中学の通学路一帯を散策だな」

屋根伝いに移動しながら、予定を考えていく。

ちなみに、現在の忍は大体高1程度といった感じ。

まぁこれもありだよな。

「さて、ここらへんか」

月火ちゃんから聞いていた犯人の目撃情報が多い場所へと到着した。

閑静な住宅街・明かりもあまりないと人に襲われやすい条件がそろっている。

「さて、今日はここで監視か。くるかなぁ」

「まぁ来なかったら来なかったで儂は問題ないがの」

「そりゃまたなぜ?」

「決まっとる、でえとじゃ!」

「ぶっ」

真顔で言っちゃったよ。

「なんじゃ、儂とはでえとしたくないのか?」

「いや、まぁしたいかしたくないかというのであれば吝(やぶさ)かではないが」

「ではOKということじゃの」

実際こいつとデートするのは構わないんだが、なんだろう、やけにテンション高いなこいつ。

まぁ機嫌が良いことは悪いことじゃないな。

そういえばそういえば、最近の事件以降あんまりガ原さんのところ行ってないな。ここから近いし後で顔出してみるか。

「おまえ様、あそこを見よ」

ふと忍がこちらから見て少し見づらいわき道を指す。

吸血鬼の視力で良く見ると、なにやらが揉め事が起こっているように見られる。

人数は3人、二人の女の子(たぶん女子高生)に対し、一人の男といった構図のようだった。

「とりあえず、このまま様子を見よう」

しばらくすると言い合いが始まったのか声を荒げているようだ。

あまりこういうのは見ていたくないものである。

すると突然、女の子二人が悲鳴を上げて倒れた。

「行くぞ」

一気に現場までジャンプし、そのまま男と倒れた女の間に入る。

「何だお前?」

何かを手で遊びながら持ち、帽子の下からにらみつけるようにこちらを見ている。

「あんたこそ、この二人に何をしたんだ?」

ゆっくりと、間を詰めていく。

相手の年は20半ば、ガタイもいい。しかし、今の僕は吸血鬼化でコンクリートの塊も持ち上げられ、ちょっとやそっとじゃ死なない体である。

並の人間になら引けはとらない。

「その格好・・・・ヒーローごっこなら他所でやれ、野郎には興味ない。今立ち去れば見逃してやるぞ?」

「残念ながら、僕はヒーローは嫌いなほうでね。だからといってこういうことを見逃せるほど、人間を辞めたつもりもないですよ」

フッっと一笑すると、男は後ろ腰から何かを取り出した。

「OK、痛い目を見る事をご所望というわけか。面白い。後悔するなよ?」

男は取り出した物を腹に押し当てると、それは自動で腰に巻かれる。

そして持っていたものを目の前に突き出した。

 

-Vampire-

 

「お前には、伝説の恐怖を体験してもらおう。変・身」

突き出したメモリーカードのようなものをバックルに差込み、横にスライドしたかと思うと、男は異形の形へと変身した。

僕はこれに良く似たものを知っている。

「かめん・・・ライダー?」

「へぇ、知っているのか。そうだ、俺は仮面ライダー」

マントを翻し、男は叫ぶ。

「仮面ライダー・ヴァンパイア!」

何だって言うんだこれは。仮面ライダーだと?あいつらの仲間なのか?いや、それよりもこの姿・・・まるで・・・

「こやつから、儂と同じにおいがするのう」

淡々とした口調で忍が言った。

「貴様もか。なるほど、確かに同じにおいがするな。すると、隣の男は眷属か」

「今はちょっと違うがの。同胞の、しかも同じ位の存在と会うのは初めてじゃのう」

とんでもないことをさらっと言うな。同じ位?ってことはこいつも真祖だっていうことか?

いったいなんだって言うんだ、こいつは今の今までは確実にただの人間だったはず。なのに次の瞬間には真祖だと?冗談にもほどがある。そんな都合のいいことが早々起こってたまるか。

「正確には同じ能力を得たというだけだけどな。それに、現時点でお前はすでに真祖としてその能力を失っているようじゃないか」

「色々あっての。お主には関係なかろう」

ムスッとした態度で会話を続ける忍だが、もう俺には理解ができない。

あいつも、忍もいったい何を話しているというんだ?

「さて、そろそろ騒ぎに気づくやからも出てくるころだな。さっさと済ませようか。どっちからくる?」

「あるじ殿はちょっと混乱しているようじゃし、儂が行こうかの」

「ま・・・待て」

何とか声を絞り出す。やっと感が我ながら情けない。

「僕がやる」

「ふん、それでいいぞ」

ファイティングポーズを取るが相手はまったくの自然体。

こっちが上だと言いたいのか。

こうなったら先手必勝っ。

勢い良く後ろに下がった後で、壁を走りながらパンチを繰り出した。

その瞬間、僕の体はコンクリートの地面にめり込んでいた。

「がっ!?」

「なんだ、戦闘はド素人か」

治癒回復もかなり底上げされているにも関わらず回復が追いつかない。

なんてパワーだよ・・・化け猫にやられたとき以来・・・それ以上のダメージだ。

「興ざめだ、改めてさっさと去れ。見逃してやるよ」

「そ・・・んなわけ・・・いく・・・かよ」

何とかその場を立ち上がり、構えなおす。

「なら次は二人いっぺんで来い、格の違いを教えてやるよ」

あくまで自然体のまま、愛想なく男は答えた。

「おまえ様、?どうする?」

「あいつ、たぶんこの二人を連れて行くつもりだ。だから」

作戦を伝え、しのぶが頷いたのを確認し、構えなおした。

一瞬の間のあと二人同時にスタートした。忍は男へ、僕は二人のところへ。

もう少しで届くといったその瞬間。僕の体が宙に浮いた。

「人の獲物を持っていくとは感心しないな。お仕置きだ」

その瞬間からだの半分が吹っ飛んだ。

 

 

 

 
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