ボクは見習いの騎士だ。
今、目の前で起こっている事は夢なんだろうと、どこかで信じている。
しかし、そんなものは、あっさりと裏切られる。この戦いは現実なんだ。
それならば!
ボクはブラッドさんから渡された剣を鞘から抜く。
(ギャハハハハハー)
下品な笑い声が聞こえた。ドロシーさんを見ても、オリンズを見ても
そんなそぶりを見せていない。
(オイ、小僧)
まただ。(ここだ)後ろを振り向いても誰もいない。
(テメーの手元だよ)
握っている剣を見る。間違いない、この剣がしゃべっている。
(久しぶりのシャバだぜ。で、今の持ち主は小僧か?)
うなずき答える。
(しかし、面白そうな場面じゃねーか、どっちをぶっ殺せばいい?
向こうのクソ女か、それとも、そこのガキ女か?ギャハハハハハー
めちゃくちゃに切……)
ボクは一度、剣を鞘に収めた。
剣は何かを言っている途中だったみたいだけど……
「オリンズ、今何か聞こえた?」
首を左右に振る。そしてトコトコと、こちらへやってきて
「ねぇ、オーダーその剣って、ちょっと見た目が悪いから、あとで
かわいくデコレーションしていい?」
ボクの答えを待たずに、さっきの場所へ戻って行った。
もう一度、鞘から剣を抜く。
(ゴルゥゥゥゥアー、小僧、こっちがしゃべっている途中で鞘に戻してんじゃねーぞ!)
お汁が、顔に飛んでくるんじゃないかってぐらいの勢いだ。
(それから、そこのガキ女を、オレに近づけるんじゃねーぞ!)
どうやら、かわいくデコレーションされたくないみたいだ。
「オリンズ、ボクはライオンと戦う、君はドロシーさんを頼む」
と、かっこよく言ってみたものの、どうすれば……
(ふん、ライオンの方か、まぁいいか)
重低音な唸りが、間合いをつめて来た、そして前足をものすごいスピードで
振りかぶって、こちらへ襲い掛かってくる。
ガッキーン!
(ギャハハハハ、おい小僧。ビビッてんじゃねーゾ)
反射的に眼を瞑ってしまったが、ボクの手が……いや、ボクの持っている剣が
勝手に相手の攻撃を受け止めている。
何度も何度も、一撃で人を引き裂く攻撃を受け止め続ける。
(……小僧、このままじゃラチが開かない攻撃をかわす事に集中しろ。
オレはその隙をついて、奴を倒す)
ボクはコクリとうなずいた。
また同じタイミングで前足を振り上げ、こちらに向かってきた。
計ったようにかわして、相手の胸元へ飛び込んだ。
と、同時に剣が一の字、一線!
目の前にいた、巨大な百獣の王は煙になり姿を消した。
不思議な感覚だ。ボクの中の大事な扉が少し開いたような……
(おい、小僧。名はなんていう?)
「オーダーだよ」
(そうか、今度からオレのことバローって呼べ)
「これは、驚いたロシー」
オリンズと戦いながら、オーダー達の戦いを見ていたドロシーがつぶやく。
「キャロットミサイル!」
2本の巨大人参が油断しているゴスロリ目掛けて、勢いよく飛ぶ。
直撃か?否。大きな人参が当たる直前で液状になってドロシーは一気に
飲み込んでしまった。
オリンズと巨大ウサギは、ジリジリと圧力に押されている。
ドロシーが魔法の術式を手で完成させると、月のウサギは一瞬で、パッと姿を消した。
そして指でこっちへ来いと合図を出すと、オリンズは掃除機に吸われるように
ドロシーの元へ。
拳にハァーと息をかけて……
ゴチーン!
またサッカーボール大の、たんこぶがオリンズの頭に生えた。
それを手で押さえてジタバタ痛がっている。
「このくらいで稽古を終えましょうロシー」
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ファンタジー小説です、続きものです。