みちる「ねえ雄二。雄二とあたし達はもう恋人なんだよね」
雄二 「ああ。そうだったのか」
みちる「ええええええええええええぇぇ!! キスしてくれたじゃん!」
みちる「埋葬までしてくれた仲でしょ。ちゃんと面倒みなさいよねっ!」
埋葬した仲と言われると、我ながら凄い歪な関係に聞こえる。
みちる「じゃあさ、じゃあさ。恋人なんだから、もうデートごっこじゃないわよね」
雄二 「何故俺が答える前に次のステップに進む」
みちる「これって本当のデートなのよね」
雄二 「……」
みちる「ちょっとー、なんでだまるのー」
雄二 「ああ、分かった。本当のデートってヤツでいい」
みちる「………………」
雄二 「何故黙る」
みちる「凄い……これが本物のツンデレ」
雄二 「じゃあな」
みちる「あーー! 待ってーー! 今のなしーー!」
近くに居たら居るでうるさい奴だな。
飽きない女、というか飽きないみちるは興味単位では望ましいが……
みちる『雄二君。それなら私とデートはどうかしら?』
雄二 「……」
みちる「ちょっとー、何であんたが出てきてんのよ。今日は私の番でしょー!」
みちる『雄二君スネちゃったじゃない。だから今度は私の番よ』
みちる「ずーるーいー! そんなのってない! わーたーしー!」
本当に見てる分には飽きないな。
みちる『もうお昼を回るわ。手っ取り早く三人で行きましょう』
雄二 「そうだな」
みちる「ちょっとあんた! 何勝手に三人とか言ってるのよ!」
みちる『あら。だって二人きりだったら雄二君帰っちゃうじゃない』
みちる「雄二はツンデレなの! そんでもってツンデレの私が好きなの!」
いつも思うがこいつはもうめちゃくちゃだな。
雄二 「今日はどこに行くんだ?」
みちる『今日も……ホテルに行きましょうか』
みちる「きいいいい! あんたいい加減にしなさいよねーーー!」
みちる『うふふ。じゃあ、頑張ってね。今日はもう私休むから』
みちる「むきいいいいい! 待ちなさいよ! もう出て来るんじゃないわよ!」
どっちだよ。
みちる「あ、ちょっと待って」
みちる「今日"も"……ホテル………って……」
雄二 「む、珍しい花だ。これ何の花か分かるかみちる」
みちる「え、どれ?」
雄二 「これだ」
みちる「へー。珍しいんだコレ。その辺りにいっぱいあるじゃない」
雄二 「そうだ。ハナビシソウというこの辺り一帯にしか割かない花だ」
みちる「へー。そうなんだ」
ちなみに日本中では割と有名な一年草だったりもする。
みちる「でも、こういうのってなんかいいわよね」
みちる「珍しかったり、当たり前の日常をきちんと感謝できるのはいいよね」
雄二 「……」
中々深い発言だな。
みちる「なによー。なんか言いなさいよね」
ニャンメルのこと。
自分の命のこと。
もう一人のみちる。
色々なことがみちるを成長させ、こういう言葉が生まれたんだな。
雄二 「いや……そうだな」
自分を大切にしない甘えた人間は嫌いだ。
雄二 「みちる。デート行くぞ」
みちる「へ?」
雄二 「走るぞ」
みちる「ちょちょちょ、ちょっと待ちなさいよ雄二!!」
みちるは自分を大切にすることを学んだ。
みちる「これってデートしてるんじゃないの!?」
雄二 「デートごっこの時も俺とのデートを練習しただろ」
みちる「おにー! あくまー!」
そして俺は、人を変える喜びと人に触れ合うことを学んだ。
雄二 「嫌なら来なくていい。俺は走る」
みちる「走らないなんて言ってないんだからね!」
雄二 「……ぷ、」
一緒にいると楽しい。
人を大切にする必要を求めなかった俺は、
多分俺が思っているよりも多くのものをみちるから学んでいる。
雄二 「ゆっくりでいいぞ」
雄二 「ゆっくりでいいから付いてこい」
みちる「わ、わかってるわよ」
雄二 「……」
みちる「は…は…並んだわよ雄二」
雄二 「俺がペースを落としているからだ」
多分、こいつが頭悪いのは、
本当に人を幸せにすることのできる才能なんだと思う。
みちる『でもそれにしてもホテルの件をスルーするのは彼女を馬鹿にしすぎだと思うわ』
みちる「あーーーーー!!」
雄二 「……」
なるほど。文字通りみちるは一枚岩ではないな。
雄二 「む。珍しい草だな」
みちる「二度も同じ手は食らうかーーーー!!」
ち、学習しやがった。
雄二 「行くぞ。ペースアップ」
みちる「ゆっくりでいいって言ったじゃない!」
雄二 「よし。展望台まで競争だ」
みちる「ちょちょ、ちょっと待ちなさいよ浮気者!!」
……浮気のラインが見えないのは厄介な現象だな。
みちる『あら、雄二君は二人のものでしょ?』
みちる「いーやーなーのー! ずーるーいー!」
雄二 「……」
みちる「何よ、雄二のやつ。私だって、ちゃんと彼女として扱って……ブツブツ」
みちる『彼、もうあんな遠くまで言ったわよ』
みちる「ちょ、待って…」
みちる「待ちなさいよ雄二ーーー!」
みちる『(……うふふ)』
みちる『(可愛い子ほど、いじめたくなるっていうしね)』
みちる『(結局、みちるは私よりも愛されてるね……)』
みちる「ゆーじー! 本当にそれペース早すぎ! 付いて行けない!」
みちる『雄二くーん! 私が今から追いつくねー!』
みちる「あんたは3回休みなの!!」
みちる「おらあああああああ! 負けてられるか、絶対追いつくんだから!」
みちる『(……)』
みちる『(案外、実は私もアナタに劣等感あったりしてるんだけどね)』
人は生きているから笑っていられることができるわけじゃない。
でも、生きていないと笑うことはできない。
毎日に感謝して、今の大切さを必死に生きる人は幸せで、
その幸せは人に幸福を運ぶ。
みちるだったからこそ、
私も、雄二君も今が笑えるんだと思う。
みちる『みちる』
みちる「また出た!」
みちる『……』
みちる「なによー」
ありがとう、は言ったらダメね。
言ってしまったらみちるは優しいから、また変に気を遣っちゃうし。
みちる『……ふふ。呼んだだけ。もうそろそろ見えなくなるわよ』
みちる「きいいいいいいい!」
———end
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ネタバレ有りです。グリザイアの果実みちるルートの日常を書いてみました。