ある国のある列車の個室の中で深刻そうな顔をしている男が居た。
彼は有名な武器商人で警察から事ある毎に逃げていた。
だが、今回は警備が厳重過ぎる。
部屋の中にマシンガンを持った男が五人。
部屋の外に拳銃を隠し持った男が二人の合計七人。
男が警察から逃げる時は精々三人程しか居ない。
これ程警備が厳重なのはこの男の下にある脅迫状が届いたからである。
『満月の夜、どこに居てもあなたを殺す。
俺が来るまで神に祈っているが良い』
これは今、世界で悪人を殺している男が送り付けた物だ。
その男は噂では日本の秘密部隊に所属し悪人を殺し続けている男。
その男は常に白い服装をしいていることことからこう呼ばれている。
『純白の外道』
純白の外道は標的だけではなくその家族も殺す。
その家族が例え生まれたての赤ん坊や子供だったとしても……
純白の外道が何故そこまでしているのか真の理由を知る者は居ない。
バンッ!
扉が開かれた瞬間マシンガンを持った男達が構えるがその行動は純白の外道にとっては遅過ぎる。
純白の外道は一瞬でマシンガンを構えている男達に近づき男達を倒す。
「そ、そんな……腕利きの連中だったのに……」(英語)
武器商人の男はそう言いながら後ずさるが純白の外道は非情にも隠していたナイフを取り出し武器商人に
投げつけた。
「ぐはぁっ」
武器商人は倒れて息をしなくなった。
そして、純白の外道はその部屋から出た。
二日後日本成田空港
純白の外道が武器商人を殺してから二日が経った。
イギリスの闇社会では大騒ぎだった。
当たり前ではあるが日本では大した騒ぎはなかった。
「お、来たの。お~い!かずぴ~!」
そう言って手を振ったのは純白の外道の学生の頃の親友の及川祐。
純白の外道……北郷一刀はゆっくりと及川の方に歩いて行く。
「どうやった?って聞かなくても良いか。どっかで飲むか?」
「ああ、お前の奢りでな」
「え……」
「冗談だ。割り勘で良い。さっさと車に案内しろ」
「ほっ……こっちやで」
及川は安堵した表情になりながら一刀を先導し始めた。
純白の外道……北郷一刀は五年前人の常識では考えられない体験をした。
三国志の時代にタイムスリップしたのだ。
だが、一刀がタイムスリップした世界では覇王曹孟徳、江東の小覇王、大徳劉玄徳……
あげ始めたらきりがないが一般的に知られている将が女だったのだ。
一刀は覇王曹孟徳に仕え定軍山で死ぬ筈の夏候淵を助け、赤壁で負ける筈の魏を勝たせた。
その結果一刀は彼女達と引き離された。
「及川、クーラーの温度上げろ。寒いんだよ」
「おお、悪いの」
及川は謝罪しながら操作してクーラーの設定温度を上げる。
一刀はそれを見て自分の愛する者達の所から帰って来た後のことを思い出した。
一刀は帰って来た後自分の祖父に弟子入りした。
一刀の祖父は最初は訝しんでいたが一刀はあの世界で体験したことを話すと一瞬で承諾してくれた。
一刀の才能は祖父よりも上だった。
一刀は一年で祖父と善戦し、もう一年では互角になり、もう一年で祖父に圧勝した。
それから一刀は軍のことを学ぶ為に自衛隊に入った。
するとなんと及川も入隊し一刀を支えた。
入隊から一年が経つと二人は見たことも無い様な高官達に呼ばれある話を受けた。
『北郷君、及川君、我等は君達にある部隊に所属して欲しいのだよ』
詳しく話を聞くとその部隊は国内外問わず活躍しどの様なことでもする秘密部隊だそうだ。
一刀は経験を積む為に秘密部隊に入隊した。
ついでに及川も入隊した。
今現在で百件の任務を成功させている。
「かずぴ~明日からしばらく休暇やろ?どうするんや~?」
「そうだな、祖父ちゃんの墓参りにでも行くか」
一刀の祖父は一刀に全てを教えた後七十六歳でこの世を去ったのだ。
一刀の祖父の遺言は『一刀の人生は本人の好きにさせろ』とのことだった。
「久しぶりに話すんか。ゆっくしてきいや?」
「勿論そのつもりだ」
一刀はそう言ってもう何も言うことは無いと言う様に目を瞑った。
一刀side
祖父の祖父の墓地
「あんなうるさかった祖父ちゃんがここまで静かになるなんてなぁ……」
俺は休暇が始まってから祖父ちゃんの墓に来ていた。
「毎回毎回思うけど祖父ちゃんがいきなり地面の下から出て来ても多分俺おどろかねぇわ。
それ位祖父ちゃん元気だったから」
修行を始めた頃は滅茶苦茶過ぎる動きをしていた。
本当に七十過ぎたジジイかと疑う程の動きだった。
「でも、もううごかねぇんだよな……」
俺は墓を拭きながらそう呟いた。
そして線香を焚いて手を合わせる。
「邪魔しないでくれたのは感謝するぜ。
素直に出て来な、そうすれば手荒な真似はしねぇよ」
俺はそう言いながら俺に視線を向けている奴の方を向く。
常人では絶対にできない気配の消し方だ。
相手は相当出来る。
そんなことを思っているとフードで顔を隠した奴が出てきた。
「北郷一刀……純白の外道ね」
「!何で知ってやがる?」
俺は警戒して構える。
武器は無いが何とかするしかない。
相手は声からして女だ。
力で勝負することになればこっちが絶対に勝てる。
「安心なさい、敵ではないから」
「信じられると思うか?
今の俺は北郷一刀だったから助けてやろうかと思ったけど
俺が『純白の外道』だって知ってるなら容赦はしねぇぞ?」
俺は殺気を相手に放つ。
でも、何だろう?こいつの声聞き覚えがある様な……
「曹孟徳の居る世界に戻してあげましょうか?」
「え?」
俺の思考が相手の言葉で停止した。
「戻れる……のか?」
「ええ、あなたが戻りたいと願えばね」
俺はその言葉に思考する。
俺は今まで華琳達の所に戻った時の為に力を付けていた。
でも、俺は……今までたくさんの人を殺してきた。
それは華琳達も同じだ。
それは分かっている。
分かっているけれど俺の場合は……子供も殺してきた。
俺はそんな外道だ。
そんな俺がまた彼女達と共に幸せになる資格があるのか?
いや、無い。
でも、俺は……俺が力を付けたのは……
「戻りたい」
華琳達を支える為だ。
「そう……ならこれを戻りたいと願いながら地面に叩き付けなさい」
相手が俺に渡してきたのは銅鏡。
俺はその銅鏡を受け取り戻りたいと願いながら地面に叩き付けた。
「頑張りなさい……北郷一刀」
そんな声を聞きながら俺は意識を手放した。
第三者視点
「ご苦労さま」
一刀が居なくなった後一人の少年がその場に現れた。
少年はフードを取った少女の頭を撫でる。
「彼等、大丈夫かしら?」
「大丈夫だよ、きっとね」
「何でそう言えるの?」
少女がそう尋ねると少年は微笑みながらこう答える。
「彼女達の絆を信じてるからかな?」
「そう……」
「ああ、さぁ、帰ろうか」
「ええ」
少年と少女はその場から姿を消した。
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始まりました~『愛する者を支える外道』!
一刀の強さは恋よりも強いです。
応援よろしくお願いします。
では、始まり~
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