No.350202

そらのおとしもの 学園そらおと

水曜定期更新
誰も見たことがない斬新な物語を提案してやるぜ!
そらおとと学園モノの夢のコラボーレーションだぜ!

週末のクリスマスに向けて、作品を増産中。

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2011-12-21 00:08:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2898   閲覧ユーザー数:2334

学園そらおと

 

 私の名は林檎飴(りんごあめ)ニンフ。

 恋に恋する普通の中学生。

 身長はまだ伸びなくて胸はペッタンコのままだから小学生とよく間違えられるけれど頭の方は凄いんだから! 

 アミバさまを越える天才は私しかいないって赤ペン先生に言われているぐらいなんだから。

 そんな私は一昨日ここ福岡県の空美町に引っ越してきた。

 そして今日から空美学園に通うことになっているの。

 慣れない環境でちょっと不安もあるけれど、新しいお友達と出会えるから楽しみだったりもする。

 それにもしかすると格好良い男の子に出会えちゃったりもするかもしれない。えへへ。

 もしかすると私の運命の王子さまの出会い場所になっちゃったりして。

 ああ、ほんと、新しい学校はどんな所なのかしら?

 楽しみだわ~~♪

 

「……ニンフ、早く起きないと遅刻」

「へっ?」

 

 従姉妹で同居人の天使(あまつかい)アルファ(通称イカロス)に声を掛けられてはっと気付く。

 時計を見ればもう8時を過ぎている。

 

「アルファ! 何でもっと早く起こしてくれなかったのよぉ!」

 

 もう、始業ベルが鳴るまで時間に余裕がない。

 慌ててベッドから飛び起きて、パジャマを脱ぎ捨てて空美学園の制服に袖を通し始める。

 

「……何度も起こした。けど、目覚めなかったのはニンフ」

「ああ~ん。もぉっ! 昨日興奮し過ぎて遅くまで眠れなかったのよ!」

 

 昨夜は空美学園での新生活をあれこれ考えてなかなか眠れなかった。

 そのツケがこんな形で回って来るなんて、もぉ~っ!

 

「……ニンフ、朝食は?」

「走りながら食べる!」

「……じゃあ、食パン」

 

 アルファから食パンを受け取り、口にくわえて玄関に移動する。

 

「行って来ま~す」

 

 靴を履いてパンを口にくわえたままアルファに向かって声を掛ける。

 そして扉を開けて外に出る。

 

「プススゥ。ニンフ先輩、パンを口にくわえてはしたないんだぁ~」

「余裕こいて笑っている暇がないのはデルタも一緒でしょうが!」

 

 敷地を出た所で、従姉妹でアルファの妹である天使デルタ(通称アストレア)が私をバカにしながら見ていた。

 この子は私より年下の癖に私より背は大きいし、胸に至っては私じゃ一生掛かっても追い付けないほどに大きい。デルタの癖に生意気よ!

 

「私の学校は近くだから大丈夫ですもんね~♪ あっかんべ~♪」

 

 デルタは舌を出すと赤いランドセルを背負って小学校に向かって走り出した。

 

「あの体で小学生とかフザケんじゃないわよ!」

 

 地団駄踏んで悔しがる。

 体型は私の強いコンプレックス。

 でも、いいんだもん。

 私を私のまま好きになってくれる素敵な王子さまを探すんだから!

 

「……ニンフ、早く出掛けないと遅れる」 

 

 メイド服で出勤姿になったアルファが私に声を掛けてきた。

 アルファは格好の通りメイドさんとして近所の家を回りながら働いている。

 私と年齢はそんなに変わらないのにアルファは天使家の大黒柱として働いている。

 って、そんなことを考えている場合じゃない。

 時計を見るともう8時20分、歩いて20分掛かる所を10分で行かなきゃいけない。

 

「きゃぁああああぁっ! 遅刻しちゃう~~っ! 行ってきま~~す!!」

 

 パンをくわえたまま学校に向かって走り出す。

 転校初日から遅刻なんて絶対にダメなんだから~~っ!

 

 

「遅刻遅刻遅刻~~っ! 遅刻しちゃうよ~~っ!」

 

 学校に向かって必死に走る。

 息は切れてきたけれど、これなら何とか遅刻せずに到着できるはず。

 よっし。頑張るわよ~~!

 残り時間を計算しながら曲がり角を右折したその瞬間だった。

 

「きゃぁああああああぁっ!?」

「うわぁあああああああぁっ!?」

 

 私は大きな衝撃と共に後ろに向かって大きく吹き飛ばされてしまった。

 そして尻餅を突きながら地面に倒れてしまった。

 

「痛たたたたたたぁっ!」

 

 お尻を強く打ってすごく痛い。立てない。

 

「大丈夫か?」

 

 私がぶつかったらしい男の子から手が伸ばされる。

 

「あ、ありがとう」

 

 男の子の手を取る。

 男の子は今日から私が通う学校の制服を着ていた。どうやら同じ学校の生徒らしい。

 と、男の子の顔を見てみる。

 ……やだ。ちょっと、好みのタイプじゃない♪

 

 キリっとした目が特徴の短い髪がちょっとワイルドな私好みの男の子。

 背は中学生にしては低いかなと思うけれど、私も低いから気にしない。

 そして口にくわえられた赤いバラが素敵♪

 もしかして、このキリっとした凛々しい少年が私の運命の王子様じゃないのかしら?

 その、このキリっとした少年が……キリっとした……うん? キリっと?

 少年の顔が突如デレっとした締まりのない顔に変わった。

 

「デヘヘヘヘ」

 

 少年は同じ地点を向いたままだらしなく笑っている。

 この人は一体、何を見ながらデレデレしているの?

 少年の視線の先を追ってみる。視線は私の下半身に向いていた。スカートが捲れてしまい、水色と白のストライプのパンツが丸見えになっている下半身に。

 その瞬間、少年がデレデレしていた理由が全部わかってしまった。

 足を閉じて下着を少年の視線から隠す。

 それと同時に、少年の手を掴んでいた手を離し、代わりに少年の頬を思いっきり引っ叩いた。

 

「バカぁあああああああぁっ!」

 

 涙を浮かべながら立ち上がる。

 

「バカっ! 変態っ! エッチっ! エッチっ! エッチィ~~~~っ!」

 

 男の子にパンツを見られた! 見られた! 見られた! 見られたぁ~っ!

 しかもエッチな目で見られたぁ~~っ!

 もう、恥ずかしくてお嫁にいけないよぉ~~~~っ!!

 

「痛ってぇなあ! そんなに強く叩くことねえだろっ!」

「うるさいっ! 私のパンツ見てデレデレしていた分際でっ!」

 

 運命の王子様かと一瞬思っちゃったけど、とんでもない大間違い。

 コイツはただのスケベ男よ!

 

「股おっ広げてパンツ見せっ放しにしていたのはお前の方じゃないか!」

「誰がアンタなんかに好き好んでパンツ見せるってのよ!」

 

 自意識過剰なんじゃないの、この変態っ!

 

「はんっ! 俺だって、お前のペッタンコでガキみたいな体のパンツじゃなくて、もっとボンッキュッボンッの大人の女のパンツが見たいっての!」

「何ですってぇ~~~~~~っ!?」

 

 睨み合う私と少年。

 何て失礼な奴なの!

 私のパンツをいやらしい目で眺めていた癖にっ!

 

「へっ! お前がボインボインになってから頭下げて頼むならもう一度パンツ見てやっても良いぞ」

「フザケるんじゃないわよっ!」

 

 少年の頬をもう一度思い切り引っ叩く。

 

「グハァアアアアアアアァっ!?」

「バカぁああああああああぁっ!!」

 

 私は涙を流しながら走り去った。

 

 

「うっうっ。転校初日から遅刻とか最悪よ~っ」

 

 泣きながら走った私は道を間違えて学校に遅刻してしまった。

 それもこれも全部あのスケベ男のせいよっ!

 もう会いたいとも思わないけれど、また会ったらもう一度引っ叩いてやるんだから!

  

「ああ~教室に行くの気が重いよぉ~」

 

 20分も遅刻して教室に入る。

 担任の先生から科目の先生に話が既に伝わってから普通に入れば良いと言われたけれど、普通になんか入れない。

 そもそも転校生自体が普通じゃない。その普通じゃない存在が遅刻して教室に入る。これが普通でいられるものか。

 けど、転校初日から学校をサボるわけにはいかない。

 重い気持ちで扉を開ける。

 

「数学は芸術だぁああああああああぁっ!!」

 

 バリバリ授業中だった。

 その為にむしろ教室の生徒たちの視線が一斉に私に集まった。

 は、恥ずかしい~~っ!

 

「ウム。君は報告に聞いている転校生だな。さあ、こちらに来て自己紹介してくれ」

 

 メガネを掛けた背の小さな先生の要請に応じて教卓の前へ。

 こうなった以上、覚悟を決めるしかない。

 大きく息を吸ってから自己紹介を始める。

 

「名富州市(なぷすし)から引っ越してきた林檎飴(りんごあめ)ニンフです。よろしくお願いします」

 

 挨拶が終わると同時に大きく頭を下げる。

 第一印象は悪くない筈。

 さて、このクラスに格好良い男子はいるかしら?

 期待に胸を膨らませながら顔を上げていく。

 と、最悪にも目が合ってしまった。

 私の顔を見ながら驚いている失礼な男と。

 

「あ~アンタ! さっきのパンツ覗き魔っ!!」

「俺を二度も叩いた暴力女っ!!」

 

 最悪な再会だった。

 まさかこんな最低エロ野郎と同じクラスだなんて。本当、最悪っ!!

 

「おいおい、Mr.桜井はその美女ともう知り合いなのかい? 相変わらず美女には手が早いなあ」

 

 長髪で1人だけ白ランの男が髪をかき揚げた。

 

「智ちゃん、その可愛い転校生とどこで知り合ったの?」

 

 ポニーテールのスタイルの良い少女がスケベ男と私を交互に睨んでいる。

 何で私まで睨まれなくちゃいけないのよ~っ!

 

「……桜井くん」

 

 前髪に鈴を付けた幸薄そうな少女は泣きそうな表情で私と男、桜井智樹というらしい、を交互に見ている。

 一体、私が何をしたって言うのよぉ! 

 

「フム。桜井と転校生は既に親しい仲のようだな。じゃあ、転校生の面倒は桜井が見てやるように。席は桜井の隣な」

「「なあ~~~~っ!?」」

 

 何で転校早々こんな最悪な奴に面倒見てもらわないといけないって言うの?

 冗談じゃないわよ~~っ! 

 でも私の抗議を聞くことなく先生は授業に戻ってしまった。

 こうして私の最悪な転校初日は幕を開けたのだった。

 

「フフフフフ。いじめ甲斐のありそうな子が転校して来たじゃな~い。ウフフフフフ」

 

 そう。私の波乱の1日はまだ開けたばかりだったのだ。

 

 

 了

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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