No.349315

真・恋姫†無双 怒りのクリスマス 前編

黒山羊さん

『俺へのお土産=酒』という公式を作り上げた黒山羊です。
あぁーあ、日本酒美味し!

第3回同人恋姫祭りという事で作品紹介と行きます。
先ず、1つ目は葉月さんの『真・恋姫無双アナザーストーリー 蜀√ 桜咲く時季に』ということで、蜀好きはとりあえず、読むべし。

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2011-12-19 00:15:25 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:11147   閲覧ユーザー数:6289

視点:一刀

 

こんにちは、北郷一刀です。珍しく一人です。

今日はクリスマスで、桃香や華琳や蓮華達と過ごしたくて、破産上等で、プレゼント用意したんだけど、愛紗に『スケベなご主人様は出て行って下さい!』と城から追い出されてしまった。マジ酷いよな。月の頭を撫でていただけじゃないですか!

なんでそんな事で怒られないといけないんだよ!

 

俺、あの城の城主なのに……。そんなわけで居場所を失った俺は城下町をブラブラと歩いている。

城下町は綺麗な装飾が施され、いつもと違った雰囲気を醸し出している。

いつもの城下町を賑やかというのなら、今の城下町は鮮やかというのが最も適当だと思われる。

それもそのはず、今日はクリスマスだ。え?なんで、この三国志の時代にクリスマスがあるのかって?

俺がクリスマスというものを皆に教えた。その結果、普及しただけの話。

別に華琳にサンタコスをさせたかったとか、桂花にトナカイコスをやらせたかったとかそんなつもりは無かった。

 

まあ、そんなこんなで、城下町はクリスマス一色に染められている。

それぞれ大事な人と思い思いに過ごしているようだ。ある者は子供と手を繋ぎ、ある者は異性と手を繋ぎ、笑顔に溢れている。

要するに………

 

俺の周りはリア充まみれだ。

 

え?『普段リア充の奴が何を言っている!爆死しろ』だと?愚か者が!

クリスマスという一大イベントに好きな人と過ごせない元リア充は非リア充以下だ。

 

分からないか?孫の手に例えてみれば分かると思う。孫の手を嫁で、体の固い俺は今背中がかゆいとしよう。それでだ!

孫の手があれば、孫の手で背中をかくだろう。だが、孫の手を持っていない奴は別の背中をかく手段を持っているだろう。

だが、孫の手で背中をかくことに慣れてしまっている奴は孫の手無しに背中をかく手段を知らない。だから、背中をかきたくて出来ないと言う訳だ。え?こんな例分かりずらいだと!

 

仕方ないな。要するにだ。普段からリア充の奴は非リア充流のクリスマスの過ごし方が分からないから、困ってんだよ。

それで、おかげで非リア充よりみじめな気分になるんだよ。前の世界で嫁の居なかった時より最悪な気分だ。

無駄に周りがイチャイチャしているのが、余計に気にくわない。俺がリア充気質の非リア充だから!

僻みというのなら、勝手に言っていろ!俺は滅茶苦茶ムカついているんだよ!あぁ、流れ星でもこの都に落ちないかな?

 

「大将。どうしたッスか?」

 

俺に声を掛けてきたのは、呉の兵士と魏の兵士。

クリスマスだというのに鎧を着て、槍を持っている。何処かで賊が出てその対処に行っていたのだろうか?それとも、単に見回りに行っていたのか?俺には分からないが、二人とも仕事中のようだ。

そういえば、前にクリスマスで嫁と過ごしたいという要望があったので、所帯持ちは休んで、寂しい奴は働けとか言う無茶苦茶な命令を出したよな。ってことは、……よし、非リア充見つけた。

 

「城から追い出されて行くところがなくてな。一人寂しくブラブラとな。お前達は?」

 

「単なる見回りですよ。この見回りが終われば、もうやることが無いので、この後飲みに行くことになりました。」

 

「面子は?」

 

「龍を倒した時のあの面子ですよ。」

 

「それ。俺も行って良いか?」

 

「大丈夫ですよ。」

 

よっしゃーー!クリスマスを憂鬱に過ごさなくてすむぞ!ぼっちのクリスマスは便所弁当より寂しいからな。マジで助かった。

俺は二人について行き、見回りが終わると、そのままある居酒屋へと向かった。

 

居酒屋には龍を倒しに行った時の面子がそろっていた。どうやら、俺達が最後だったらしい。

昼間っから居酒屋が開いていて、繁盛しているとは凄いな。こんな所までクリスマス商戦の波が来ているらしい。俺は純粋に驚いた。

しかしアレだな。こんな時間帯に男客だけとは凄いな。女性客が一人も見当たらない。

 

「もしや!?」

 

「気付かれましたか?そうです。今此処は未婚者で嫁が無くて嘆き悲しんでいる者だけが集まっているのです。」

 

「俺居ても大丈夫か?」

 

「問題ないですよ。御遣い様は暇なのでしょう?だったら、問題ありません。」

 

良かった。日頃リア充してるから、ぼこられるかもと一瞬心配になったが、どうやら大丈夫そうだ。

こうして、俺達は非リア充の中に混ざって酒を飲みだした。あぁ、酒はやっぱり良いな。嫌な事を忘れられる。

 

 

 

 

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛――。マジで、やってらんねーッスよ。何?クリスマスって、なんなんッスか?

こんなの単なる盛りの付いた犬の為にある行事じゃないッスか!?次の日に惚気を聞くとすごく腹立つんッスよね!」

 

曹魏のが酔っ払って何やら、愚痴を零し始めた。だが、まったくもってその通りだ。

俺は経済の活性化という尤もらしい言い訳をするが、曹魏のは酔っ払っている所為か、あまり納得がいっていないようだ。

気持ちは分からないでもない。俺だって、日本にいた頃に、誰かのクリスマスのイベントを聞くと彼女と盛ってました、という返答が多かった。だから、俺もその気持ちは凄く分かる。あれって、スッゲェームカつくよな。

何べん包丁でメッタ刺しにしてやろうか考えた事か。

 

「私、なんか最近親に心配されているんですよ。そんなんで、社会で生きていけるのかって。

こっちは働いているから、社会で生きていけていますよ!ったく、俺の傷口を菜箸で穿るのは本当に止めて欲しいです。」

 

蜀のも結構あれている。だが、分かる!スッゲー分かるよ。

アレ、マジで腹立つよな。人間嫁がいなくても生きていけるっての!社会で生きていけるの!

菜箸で穿るなよな。ほんとトラウマになっちまうから勘弁して貰いたいものだ。

 

「最近、俺なんて同僚に嫁が出来たからって自慢して来てうっとおしいんですよ。

で、今は一人身の方が楽だなんて言ったら、『そんな強がり言うなよ。寂しいんだろ?』って訳の分からない事を言って来るんですよ。」

 

分かる。それ、メッチャ、分かるよ。兄ぃ。あれ本当にうっとおしいよな。

俺も日本にいた頃、よく及川に言われたよ。自分は一人身の方が楽だと自己完結しているから別にいいだろう!

人間って、ロボットにでもならない限りあくまで人の気持ちに対して主観なことしか言えないんだから、人の気持ちを否定するなよな。お前に何が分かるんだよ。チクショー!え?『昔俺もそうだったから、今だからこそ分かる』?って言われた?

そういう時はね。『十人十色だから、それが絶対的な定理じゃないの!そんなことも分からないんですか?』ってそげぶしたら良いんですよ。

 

それから、延々と兄弟の愚痴は続いた。

そんな愚痴を聞いた俺はある決心をした。それは俺を助ける為でもあり、兄弟を助けるためのモノでもあった。

俺は大きく息を吸い、机を思いっきり叩き立ちあがった。

 

俺の行動に驚いたのか、同じテーブルに座った6人は俺の方を見てきた。

少しばかり酔っている所為か、フラフラするが、そんなことは、今は問題では無い。

今問題なのは、コイツらが報われていない事だ。そして、俺はこんな報われない奴らを救いたい。

アルコールで俺の考えが無茶苦茶な事は百も承知だそれでも、俺は……救いたい。

俺は18杯目の白酒を一気に飲み干すと、机の上に立った。

 

 

 

 

「諸君らに問う!心して聞くが良い。」

 

俺は机の上で手を横に振り、そう叫ぶと、店の中の全ての客の声が消え、動きを止めた。

箸を持つ者は、皿の上の料理を取ろうとする姿のまま、固まる。酒を飲んでいる者は杯を口に当てたまま、固まった。

酔った勢いで殴り合いをしようとする者は拳を止め、二人同時に固まった。

その結果、店の中に存在する音は皆無となり、俺の一挙手一投足だけがその場を支配する者となった。

 

「たとえば、己の一生が全て定められていたとしたらどうだろう。

人生におけるあらゆる選択、些細なものから大事なものまで、選んでいるのではなく、選ばされているとしたらどうだろう。」

 

その言葉で杯を持っていた者は手から力が抜けたみたいだ。

あちこちで、陶器が割れる音が聞こえた。客は俺を食い入るように見てきた。

俺はそんなことをお構いなしに続ける。

 

「富める者は富めるように。貧しき者は餓えるように。善人は善人として、悪人は悪人として。

美しき者醜き者、強き者弱き者、幸福な者不幸な者―――そして、勝つ者負ける者。」

 

そして、箸を持っていた者も力が抜けたみたいだ。

あちこちで、箸が机の上や床に落ちる音が聞こえてきた。さらに、客は凝視してくる。

俺はなお続ける。

 

「すべて初めからそうなるように……それ以外のモノにはなれぬように定められていたとしたらどうだろう。

何事も己の意思で決めたのではなく、そうさせられているだけだとしたら?

ただ流されているだけだとしたら?」

 

さらに、殴り合いをしていた者らが相手の胸倉から手を放した。

そして、その者達は俺を正面から見て来る。俺は言葉の続きを言う。

 

「問うが、諸君らそれで良しとするのか?

持てる者らは、ただ与えられただけにすぎない虚構の玉座に満足か?

持たざる者らは、一片の罪咎なしに虐げられて許せるか?」

 

そして、椅子に座っていた者は立ちあがった。

 

「否、断じて否。」

 

客の表情が変わった。一気に怒りの表情へと。

そして、ある者は唇を吊りあげ、ある者は拳に力が入る。そして、ある者は眉間にしわが寄った。

 

「虐げられ、踏み潰され、今まさに殺されんとしている君ら、一時同胞だった者たちよ。

諸君らは敗北者として生まれ、敗北者として死に続ける。その運命を呪うのならば、私のもとに来るがいい。

百度繰り返して勝てぬのならば、千度繰り返し戦えば良い。

千度繰り返して勝てぬのならば、万度繰り返し戦えば良い。

未来永劫、永遠に、勝つまで戦い続けることを誓えばよい。

それが出来るというならば、諸君らが“私の志”の一部になることを許可しよう。

永劫に、勝つために。

獣のたてがみ――その一本一本が、諸君らの血肉で編まれることを祝福しよう。」

 

店の客は雄たけびを上げる。その雄たけびはあまりにも大きく、衝撃波となって俺に客の気持ちが伝わってくる。

ここに居る者達が何に怒り狂うているのか俺には分かった。

だが、俺はあえて、なおこの気持ちを増幅させるような言葉を続けた。

 

「さあ、どうする。諸君ら、この時代の敗北者たちよ。私に答えを聞かせてくれ。」

 

 

 

 

「戦うか、否か――。」

 

 

 

 

視点:愛紗

 

「もう、愛紗ちゃん。ご主人様が来ないようにしてって言ったけど、追い出してって言っていないでしょう!」

 

今私は桃香様から説教を受けている。

理由は簡単だ。ご主人様に秘密でサプライズクリスマスパーティを計画していた。そして、ご主人様にはそのパーティに出席して貰うつもりだったので、会場に来ないようにしながら、何処かに行ってしまわないようにするつもりだったのだが、ご主人様が月の頭を撫でているのを見たら、つい嫉妬心から怒ってしまい、追い出してしまった。その結果、ご主人様は一人ブラブラと何処かに行かれてしまった。

 

そして、冷静になって思い出した時にはもう、後の祭りだ。

そのことで、私は今桃香様に怒られている。桃香様が此処まで怒るのを私は久しぶりに見た。

余程ご主人様と過ごすクリスマスを楽しみにしておられたのだろう。

私も事実楽しみにしていた。だから、私がやった事を他の者がやっていたら、すごく怒っただろう。

私はとても申し訳ない気持ちになった。

 

「まあ、桃香。そのぐらいにしておいて、今は一刀を探そう。何時までも、此処で関羽を叱っていても事態が好転しないぞ。」

 

「そうよ。愛紗が涙目じゃない。それだけ反省したってことよ。」

 

「蓮華さんと華琳さんが言うなら、分かりました。そのかわり、愛紗ちゃん!」

 

「は!はい!なんでしょうか!?桃香様?」

 

「今度からご主人様をすぐ怒ったら……。」

 

「……怒ったら?」

 

私は迫りくる桃香様の顔を恐れおののいてしまい、正座のまま若干後退する。

何故だろう?桃香様はこんなにも笑顔なのに、先ほどと違って、ニコニコしている。

だが、途方も無い恐怖を私は感じている。今の桃香様の強さは恋以上だと錯覚してしまうほどだ。だから、私は逃げ続けようと試みるが、後ろの壁に足のつま先が当たり、逃げ場を失った。おかげで、私は混乱してしまう。次の手は?次の手は?

 

華琳殿や蓮華殿に目配せで救援を要請するが、二人は怯えた様子で、ただただ首を横に振るだけだった

そんなことを考えていたら、急に視界が暗くなった。理由は桃香様が私を覆いかぶさるように立っていた。

私は蛇に睨まれた蛙の如く、完全に動けなくなった。そして、ゆっくりと桃香様は私の前で屈んだ。

ただ、しゃがむだけのはずなのに、こんなにも私はゆっくりと感じてしまう。

そう、これはまるで死刑の執行を待っている罪人の気分だ。

 

「関羽さん………だからね。」

 

桃香様は何かを仰られた。簡単な言葉で構成されたセリフにも関わらず、私は理解できなかった。

落ち着け、関羽雲長。冷静に!冷静に考えたら、必ず分かるはずだ。理解できるはずだ

整理すると桃香様の言った言葉を整理してみると、2単語に分けられることが分かった。

そう『関羽さん』と『だからね』の2単語だけ。一つずつ見てみよう。

『関羽さん』……『関羽さん』と桃香様から最後に呼ばれたのは、ずいぶんの前の話だ。そして、真名を交換してから今までその言葉を聞いた事がない。だから、姉妹の契りをかわした時から、真名で呼んでいる。だから、『関羽さん』と言う事は真名をかえさせてもらうということなのだろうか?

そして、『だからね』も『関羽さん』の言葉を考えると、おそらく『次、ご主人様を理不尽に怒ったら、関羽さんと呼ばさせてもらうからね』という意味なのだろう。そこで私は初めて分かった。どうやら、私は桃香様の逆鱗に触れてしまったらしい。

あれだけいつも笑顔の桃香様が笑顔のまま怒っておられる。これは大変不味い。

 

「分かりました!今すぐご主人様を連れて来ます!」

 

私は脱兎のごとくその場を離れ、ご主人様を探しに行った。

後ろで華琳殿や蓮華殿が何かを言っているが、私にとって桃香様とご主人様の言葉が最優先事項だ。

だから、桃香様に嫌われる前に、ご主人様を見つける!私に出来る事はただ、その一つだった。

速くご主人様を見つけないと、桃香様やご主人様を不幸にしてしまう。私が守りたいと思ったモノを私の一刹那の感情で不幸にしてしまう。それだけは避けたい。本当に避けたいと思った。そして、私は考えも当てもなく、城下町へと行った。

 

 

 

 

「いつもだったら、此処に居るはずなのに……。」

 

そう、ご主人様は私に追い出されたせいで、ここら一帯に居るはずなのだが、どうしても見つからない。

この城下町は広い。私一人で探すのは骨が折れてしまう。だが、そんな状況にご主人様を追い込んだのは私自身だ。

自業自得というものだ。故に私自身で何とかしなければならない。泣き言言わずにご主人様を探すぞ!関羽雲長!

 

私はただ闇雲にご主人様を探しまわった。

ご主人様を前に捕まえたパンチラスポット。猥談する為に集まる警邏隊の隊舎。ご主人様がよく居られる昼寝スポット。恋の触れ合い動物園。ブランコのある公園等々探しまわったが、何処にもいなかった。さて、本当に……どうしたものか。

私はブランコに乗って、一人俯いている。ご主人様が言う『公園に出勤するリストラされたサラリーマン』のようだ。

 

「ねえ、おかあさん、あの人、何してるの?」

 

「しっ!見ちゃいけません!ほら速く行くわよ。」

 

「あぁ、待ってよ!お母さん。」

 

何やら、そんな会話が聞こえるが、今の私に取ったらそんなことは些細な事だ。

少しばかり足が疲れた。もう少しばかり休憩したら、ご主人様を探しに行こう。

しかし、たかがご主人様探しごときで此処まで疲れるとはな。余程、桃香様にあんなことを言われたのが私の潜在意識内ではこたえたようだ。

いや、単に、まだまだ鍛錬が足りないだけだな。何かの所為にするのは私が弱いからだ。

あとで、ご主人様と桃香様にちゃんと、許してもらえるまで、謝ろう。何度でも何度でも、額から血が出てでも、許してもらえるまで謝ろう。

 

「関羽殿!此処に居られましたか!」

 

そう言って、私に向かって走ってきたのは警邏隊の副隊長の楽進こと…凪だ。

凪は全力で走ってきたのか、息が絶え絶えだ。

 

「どうした?凪?何かあったのか?」

 

「はい。城に向かって、暴徒が進行中です!今すぐ、城の南門に向かって下さい。

警邏隊だけでは手に負えず、暴徒を止められません!あまりにも暴徒の士気が高すぎます!」

 

「何だと!?」

 

私は驚いてしまった。暴徒を警邏隊が抑える事できないという事態が発生したなどと聞いた事が無かったからだ。

そして、私の武が必要なぐらいの自体が起こっている。城には恋や春蘭、雪蓮殿が居るはず。それにも関わらずだ。

余程の事態が発生していると考えられる。私は凪と共に城の城門へと向かった。

 

 

 

 

裏道を通り、民家の屋根の上を走り渡り、城門に辿り着いた。城門前には、もうすでに暴徒が来ていた。

暴徒の数は、百や千では無い。万は居るように見える。そして、暴徒のほとんどは民に見える。どうやら、黄巾党ではないようだ。

そして、おかしなことに暴徒の中には警邏隊の人間が見える。そして、暴徒の殆どは男に見える。

私は城を守っている警邏隊の先頭に立ち、恋達と合流する。そして、暴徒に覇気をぶつけ、威嚇をしてみた。

 

「貴様等!何のつもりかは知らぬが、貴様が向かっている先には何があるのか、知っているのか!

死にたい奴は前に出るが良い!この蜀の筆頭武将関羽雲長が叩き切ってくれる!」

 

ここはご主人様の城。私が何としてでも守らなければ!

だが、暴徒は私の覇気をものともしていない。ただ、腕を上下に振り、私の聞いた事も無い言葉を言っている。

 

「じーく!はいる!う゛ぃくとーりあ!じーく!はいる!う゛ぃくとーりあ!!」

 

暴徒の覇気に変化は無い。怒り一色だ。

この暴徒、何かがおかしい。ただ何かの呪文を叫んでいるだけで、何かを訴えて来ようとしない。

だが、おかしいのそれだけでは無い。そう、さっきも言ったが、この暴徒に警邏隊が加わっていることだ。

この街を…この平和を守りたいと思って志願した者達ばかりと聞いている。だからこそ、それが一番不可解だ。

だが、暴徒は抑えなければならない。今日を楽しみにしていた者は多い。

私とてその内の一人だ。私だってご主人様とクリスマスを過ごしたい。さっさとこの暴徒を倒したい。

私は青龍偃月刀を構える。あくまで暴徒命を取るつもりはない。軽く気絶させるつもりだ。

 

「このままでは、埒が開かない。春蘭、雪蓮、恋行くぞ!」

 

私はそう言って、暴徒へと突撃しようとした。だが、ある出来事により、私は突撃を止めた。

突然、暴徒が左右に分かれ、奥から神輿がこちらに向かって来ている。

その神輿は私達のほんの目の前に止まると、神輿の上に座っていた者が立ちあがった。

 

「怒りの日。終末の時。天地万物は灰燼と化し、ダビテとシビラの予言の如くに砕け散る。

たとえ、どれほどの戦慄が待ちうけようとも審判者は来たれり。あまねく全て厳しく正され。一つ余さず燃え去り消える。

そう、かの日こそ………、怒りの日来たれり。」

 

顔を真っ赤にしたご主人様が喚いていた。その右手には酒壺がある。どうやらかなり飲んでいるようだ。

酒を飲み、顔を真っ赤にしているが、喚いていたと表現するのは何かが違う。

確かに、ご主人様は顔を真っ赤にしているが、口調はハッキリしている。泥酔状態のご主人様の言葉を聞いた暴徒達は更に声を上げる。

酔っている状態で戯言を言う事を、喚くというのは間違いでは無いとは思うが、これは演説にしか私は聞こえない。

そんなご主人様の演説に少しばかり凛々しさを感じてしまう//////

は!いかんいかん!これはご主人様が引き起こした暴動。ご主人様に、この暴動の要求を聞き、早くこの暴動を諌めなければならない。

 

「何のつもりですか?ご主人様。場合によっては御覚悟頂くことになるやもしれません。」

 

「我が総軍の願いは……我が総軍の渇望はただ一つ。

追い出された為に好きな者と過ごせないクリスマスを、満たされないクリスマスを、見せつけられ惨めなクリスマスを壊してやることだ。このクリスマスを破壊し尽くすことによって、我らの渇きを潤いへと変えてくれる。」

 

「乱心ですか?ご主人様?」

 

「いいえ。私は至極冷静であるよ。愛紗よ。

私の渇望は『救われぬ者に救いの手を』である。故に、私は、救われぬ者と共に、私と友の渇きを癒す為に、無限の回帰より脱却し、この恐怖劇(グランギニョル)が終わるまで、闘争を続けよう。私が指揮し、この英雄達(エインフェリア)が先陣を務める。怒りの日(ディエスイレ)に相応しい。」

 

要するにご主人様はクリスマスを一人寂しく過ごす者と共に、クリスマスという恋人たちの為にあるイベントを潰すつもりらしい。

そして、この暴徒はそんなご主人様に従う者達……天の国の言葉で言うなら、『非リア充』の軍勢らしい。

なるほど。それならば、一人身で寂しい者の集まりである今日の警邏隊の者達が賛同してしまうのも頷けるというものだ。

まったく、ふざけたことを止めて頂きたいものだ。

 

ご主人様は神輿に刺さった黄金の槍を抜く。

 

聖約・運命の神槍(ロンギヌスランゼ・テスタメント)天の国の神を貫いた槍だ。

これに貫けぬモノはこの世には存在しない。森羅万象、三千大千世界さえも。」

 

ご主人様が持っている槍は突くことに特化した形となっている。その黄金の槍はまさに、天の御遣いに相応しい輝きを放っている。

そう、星の龍牙のような相手の武器を絡めとる造りや私の青龍偃月刀のように相手を切るような作りも無い。

純粋に相手を貫く。それだけに特化した純粋な槍。なるほど。天の国の神を貫いたという逸話があってもおかしくは無い。

 

「そのような槍、天の国から持ってきておられたのですか?」

 

 

 

 

「いんや。さっき街の人から貰った。」

 

 

 

 

「はぁ―――。ご主人様はこの戯けた騒動を起こした罪、今すぐ償って貰いますので、お覚悟下さい!」

 

「「「「「……………」」」」」

 

ん?なにやら周りの空気が何処かおかしい気がする。何と言うか冷たい。そう、冷たい視線が私の方に向いている。

視線があまりにも冷た過ぎて私は戸惑いの居を隠せずにいた。

 

「おい、どうした!?」

 

「ねえ、これって要するに、愛紗に追い出された一刀が酒を飲んで自棄になっているとしか見えないんだけど。

で、一刀が怒られた理由って月の頭を撫でていただけだよね?

だとすれば、どう考えても、一刀を怒って、追いだした愛紗の責任よね?凪はそう思わない?」

 

「残念ながら、私もそう思います。」

 

「関羽様の所為で、隊長がご乱心なのー。」

 

「身から出た錆っちゅーやっちゃと、ウチも思うわ。」

 

「…………愛紗………悪い。」

 

「よく分からんが、同意だ。」

 

「なんだと!私を責めるというのか?」

 

私がこの場に居る全ての者に問うたら、皆無言で頷き、私をジト目で見て来る。

確かに、私が悪いかもしれない。私がご主人様を追い出さなかったらこんなことにはならなかったはずだ。

そして、追い出して居なければ、今頃、ご主人様と城の者達でクリスマスパーティーが行われている予定だった

………と、すれば、『私が追い出さなければ、ご主人様が扇動しなかった』という事が成り立ってしまう。

要するに、この暴動は私が起こしたようなものだ。

 

「分かった。確かに、よくよく考えれば、私がご主人様を怒らせなければこんなことにはならなかったはず。

では、この関羽雲長。自らの罪を償う為に、一人で決死の覚悟で突撃させていただく。」

 

「ちょっと待ちなさい。誰も一人で責任取れって言ってないわよ。ね?」

 

「はい。この街を守るのは、警邏隊の仕事。加勢させていただきます。

べ…………べべべべつに、隊長とクリスマスを過ごしたいからという訳ではありません//////」

 

「ツンデレ凪ちゃんがそう言うなら仕方ないの―。」

 

「せやな。」

 

「………恋も、ご主人様とクリスマスが良い。」

 

「呂布に同意だ!」

 

そういって、皆が私に手を貸してくれる。

よし、ご主人様を数回ひっぱたいて、正気に戻させる。だが、これは私の不遜が招いたこと。だから、後でご主人様のご要望を何でも受けるつもりだ。たとえ、どんなエッチな要望でも受けるつもりだ。それが私への罰なのだから。

私は青龍偃月刀を構え、大きく息を吸った。ご主人様も槍を構える。

ご主人様が槍を構えている姿を、初めて見るが、その立ち姿は様になっている。

 

「では、参ります!ご主人様!私が勝って貴方を正気に戻させます!」

 

「抜かせよ!散るのはどちらか知るがいい。故に滅びよ!勝つのは私だ!女神の地平を産む礎となれ!」

 

私は大地を蹴り、ご主人様は神輿より跳び下りた。こうして、リア充と非リア充の戦いの幕が切った。

これが後世にわたって伝えられることとなる。『怒りのクリスマス』である。

 

 

 

 

どうも、黒山羊です。

第3回同人恋姫祭りという事で、作品を投稿しました。

テーマは『クリスマス』という事で、非リア充のクリスマスとリア充のクリスマスが激突するというモノにしました。

だって、大学時代のクリスマスと言えば、酒を飲んで、リア充の家の前に何か(リボンを付けたブラックバス)を置いて行くという悪行しかした覚えがないので。

『ハッピー=クリスマス』って定理が適用されるのは一部の人だけなんだよ!コラ!非リア充には適用されないんだよ!

ってことで、非リア充であると勘違いした酔っ払っている一刀と恋姫達が衝突することとなりました。

 

酔っ払った一刀が別のゲームのキャラのようになっていますが、誰だか分かったでしょうか?

『Dies irae Acta est Fabula』の黄金の獣ことラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリッヒ卿とクソニートことカール・エルンスト・クラフトさんがごちゃ混ぜになっています。最初はクソニートだけで行こうかと思ったのですが、クソニートは武器を持っていないので、如何なものかと思い、こうなりました。

あれ?『第3回同人恋姫祭り』の規定で、キャラって原作限定じゃなかったっけって?

一刀がバグっているという設定なので、セーフかと思い、ラウンジに書きこんだところ反対意見が無かったので、おkという事になりました。

 

それで、皆さまにアンケートです。この歌劇の幕引きはどのような感じになるでしょうか?

以下の内から皆さまがお答え下さい。

 

1.一刀瞬殺されて、土下座。

 

2.一刀(アルコール覚醒)が愛紗相手に善戦。

 

さあ、どちらですか?

それでは、皆さま後編へと続きますので、次も宜しくお願いします。

それでは……。

 

 


 
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