No.348744

「火傷」他 看板娘の小説五編

今生康宏さん

小説というよりは、コント集……?四コマとかになると楽しそうな気がします

2011-12-17 23:33:57 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:346   閲覧ユーザー数:346

イタズラ

 

 

 

「ねぇねぇリナ。トイレに便座を綺麗にする為の消毒液があるじゃない?」

「ええ。あるわね」

「アレの中身をね、透明のマスカットジュースにしてみたの」

「また馬鹿なイタズラを……」

「そしたらね」

「ええ」

「すり替えたの忘れて、自分がおトイレする時にジュースで便座拭いちゃった。べとべとですんごい気持ち悪かったよ……」

「……馬鹿だ」

イタズラ2

 

 

 

「ねぇねぇリナ。洗面所に手を洗う為の緑色の石鹸水があるじゃない?」

「ええ。あるわね」

「アレの中身をね、緑色の野菜ジュースにしてみたの」

「あれ……既視感が……」

「そしたらね」

「え、ええ……」

「清掃員のおばちゃんに見つかって、すんごい怒られちゃったよ……」

「馬鹿だー!」

次ページには、少女同士のキスシーンの描写を含みます

苦手な方はスキップを推奨します

火傷

 

 

 

 今日も今日とて、学食でお昼ご飯。

 ちなみにリナは今日お休み。基本的に病気に強い竜族だけど、リナって地味に病弱キャラなのよね。

 まあ、ただの風邪だし、明日ぐらいには復帰すると思うんだけど。

 という訳で、今日のご飯はシャロンとだけ一緒。あたしが唯一友達って認めてる男子のアルフは、教室ではよく話していても、ご飯までは恥ずかしいから別だし。

「何買ったの?」

「もう好い加減冷たいメニューは辛いから、きつねうどんだにゃ」

「あはは。今まで頑張って冷たいうどん食べてたもんねぇ。あれ、猫娘族の為に冬でも続けてるんだっけ」

 シャロンを始め、猫娘(ワーキャット)は皆猫舌で、兎に角熱いものが苦手なんだよね。

 そこがまた、可愛い所なんだけど、本人はそれが嫌みたい。

「ずっと冷たいものに頼ってる猫娘なんて、青二才にゃ。妖獣の地位向上の為にも、舐められる様な要因は取り除いて行くべきにゃ」

「シャロンはもう貴族だし、十分地位高いと思うけどね……。うー、それにしても寒っ。あたしはカツ丼にしたけど、うどんにした方が良かったかな」

「チェンジするかにゃ?」

「えっ、良いの?きつねうどんとカツ丼って確か一ディール(日本円換算で百円)ぐらい値段違ったと思うけど」

「勿論、差額は払ってもらうにゃ」

 やっぱり……微妙にシャロンってお金にシビアなんだよね。

 でも、背に腹は代えられないし、うどんよりはどんぶりの方がシャロンも食べやすそうだから、差額をきっちり払ってチェンジ。

 食券をおばちゃんに渡して、料理が出来るのを待つ。

「寒い所為か、いつもより学食混んでる気がするね。冬場のお弁当って冷たいのかな」

「最近は保温の弁当箱もあるそうだけど、やっぱり熱々が食べたいのが人情というものにゃ」

「だよねー。あ、もう出来たみたい。ありがとー」

 いつも使っている席に着いて、シャロンと向かい合っていただきます。

 ちっちゃいシャロンとカツ丼という無骨な食べ物、という組み合わせも可愛らしい。

「にゃ……何見てるにゃ。フィーアもさっさと食べるにゃ」

「えへへ、シャロンが熱がる姿を見たいなーって」

「悪趣味にも程があるにゃ……。でも、残念だったにゃ。あたしはこれぐらいの熱さ、全然平気にゃ。眉一つ顰めることなく、食べ切って見せるにゃ」

「へー。こりゃまた、随分と大きなフラグを立てて来たねー」

「ふん、精々がっかりすることだにゃ」

 と言う感じに、実食!

 昔、好物の中に一つ混じってる嫌いなものを当てる番組があったよねー。

 あれ、妖魔界テレビの中でもかなりの高視聴率を叩き出してたんだけど、ある妖魔(ディアブル)のアイドルが出た回、判明した嫌いな食べ物をそのアイドルがアンチの人から送りつけられまくった、っていう事件があって、打ち切りになっちゃったんだよね。

 好きな番組だったのに勿体ないなー。

 さて、シャロンに戻って、と。

 まずはカツを一切れ、箸に挟んだシャロンは、親の仇を相手にした時の様に、きっ、とそれを見据える。

 ちなみに、この“箸”というのは、最近になって妖魔界にやって来たものなんだけど、意外にも便利で、今やナイフとフォーク以上によく使われている食器だったり。

「ふーふーするべきじゃない?」

「甘いにゃ!あたしがただの猫娘族じゃないことの証明には、そんな逃げは許されないにゃ」

 そう言うと、ぱくっ、とそれを一気に口に放り込んだ……!

 「あの」シャロンが……猫娘のシャロンが……ゲーム的に言うと、炎属性魔法で一瞬にして倒れる猫娘族の女の子が、熱々のカツを食べる……!

 正に胸熱。誰が上手い事言えと、って感じだけど、これはもう、激萌え!

「にゃうっ!」

 ……と思ったら、シャロンの口からリバースして来るカツ。ほとんど齧れてすらいない…………。

「フィーア……」

「……無理、しなくて良いよ。あたしは、シャロンの熱いものダメなところ含めて大好きだから。ね?」

「フィーア……そうじゃないんだにゃ」

「え?」

「舌、火傷したにゃ……すっごくひりひりして、もうこれ以上食べれそうにないにゃ……」

「ええー!?午後、体育あるんだよ?ほら、あたしが冷まして食べさせてあげるから……」

「駄目にゃ……水すら、染みそうだにゃ……」

 ……猫娘の舌の耐久度、まさかここまで低かったとは…………。

 もう、スペランカー先生とか、そんなレベルじゃないよ!豆腐どころか、湯葉だよ!

「仕方ないなぁ……」

「ど、どうするのにゃ?」

「舌の火傷って、冷やすとマシになるんでしょ?なら、こうするしかないじゃん」

 あたしは少し口に水を含むと、ぐっ、とシャロンに顔を近付けた。

「にゃっ!?ちょっ、フィーア、女同士でそういうのはまずいにゃ!」

 じゃあ、男の子となら良いの?って話だけど、どの道シャロンは嫌がりそうだよね。

 なら、ここはいっそ女で、親友のあたしがするのが吉!

 ってことで、あたしは無理矢理シャロンの口を開けさせて、そこに舌を入れた。

 程なくして、温かい舌があたしの舌先に触れる。猫舌と言っても、ざらざらしていなくて、あたし達と同じ感じ。まあ、猫娘は猫の化身であって、猫そのものじゃないからね。

「んーっ!んふっ、んふぅぅ!」

 シャロンは目を見開いて、必死に手足をばたばたさせてるけど、単純な力ならあたしが勝ってる訳だし、頭の後ろに手を回して、しっかりと頭の位置を固定した。

 お互いの鼻と鼻がぶつかりそうな距離で、シャロンの髪の匂いも、口の中の味も、共有する。

「んちゅっ……ちゅる」

 唾液と水をたっぷりと絡めた舌で、優しくシャロンの患部を撫でる。

 水が染みない様にゆっくりと、だけど、火傷の痛みが引く様にしっかりと、シャロンの「治療」をする。

「んっ、れろっ。どほ?きもひいい?(どう?気持ち良い?)」

「ふぇんなかんひひゃ(変な感じにゃ)……」

 ……よくよく考えてみれば、あたしの口の中で水が十分温まってそうだけど、まあ……いいや。

 こうしてるだけで、火傷、マシになってるよね?

「んー、ちゅっ。はひ、くひにたはったの、のんへ(はい、口に溜まったの、飲んで)」

「んっ……こくんっ」

「……ぷはっ。初めて、しちゃったね」

「うん……女同士のキスも、大人のキスも……初めてにゃ」

「あれ?そういう言い方ってことは、唇のキスはしたことあるの?」

「一応、お母様とかに……」

「んー、それはノーカンじゃないかな」

 キスしてる間もそうだったけど、シャロンの顔は真っ赤。でも、あたしもそうかな。

「で、どう?ちょっとは火傷、治った?」

「うん……多分、にゃ」

「やった。愛の力、だね?」

「あ、あたしは、別にそんな、フィーアのこと……」

 言いながら、どんどん俯いて行くシャロン。

 素直じゃないなぁ。でも、そこも含めてシャロンって子だけどね。

「……ところで、フィーア」

「ん?どうしたの?」

「これ、あたしが自分でゆっくりと水を飲むだけでも良かったんじゃ……」

「…………あ、かもね」

「……ふにゃーー!!む、無駄に初めて奪ったにゃー!」

「あはは。でも、嫌じゃなかったでしょ?」

「うぅ……そ、そんなの……」

 シャロンはまた、机に顔が付くぐらいがっくりと項垂れて、何かぶつぶつと言った。

居眠り

 

 

 

「おい、フィーア。フィーア・リファール!当てられてるぞー!」

「……フィーア、起きるにゃ。どうせ答えられないだろうけど、せめて授業参加しているというのは証明するにゃ!」

「ふにゃ……あ、はい。シャロンの今日のパンツは水色でーす。ちなみにレースも付いてて、何故か気合入ってまーす」

「ふむ、そうか……それは興味深い。ありがとう。もう寝てて良いぞ」

「やったー!」

「フィーア……そんなに寝たければ、あたしがその頸動脈切り裂いて、永遠に眠らせてやるにゃ!ちなみに先生!今フィーアが言ったのはでたらめにゃ!今日のあたしのパンツはピンクだし、レースも付いてないにゃ!」

「お、おう。そうか」

「……馬鹿はどっちよ」

失せ物

 

 

 

「そういえばフィーア、前に魔法薬店行った時のアレ、ちゃんと髪飾りに染み込ませた?」

「え?なんだっけ、それ」

「……だからフィーアは馬鹿なんだにゃ。ほら、いつぞやレモン色の水を買ったにゃ。一つの瓶に入ってるそれを、友達同士で分けあって、いつも身に付ける布製のものに染み込ませておいたら、ずっと友達で居れるって……」

「シャロン、解説どうも。わかったでしょ?フィーア。あなたが言い出したことなんだから、ちゃんとやってるんでしょうね」

「え、えーと……ごめん、失くしたかも」

「にゃー……流石のフィーアクオリティにゃ……」

「で、でも、まだ捨ててない筈だから、探せばきっとあるよ!だから、今度の休みにでも探しに来て!」

「はぁ……世話が焼けるわね。本当」

「同感にゃ……まあ、なんだかんだでいつもあたし達が助けて、甘やかしてるのが問題な気もするけどにゃ……」

「うー、本ッ当、ごめん!貸しにしておくからさー」

「……貸し、か」

「……今の言葉、撤回したりしないかにゃ?」

「う、うん!妖魔に二言はないっ!!」

 

 

 

   次回に続く


 
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