No.348149

真・恋姫†無双 雛里√ 鳳凰一双舞い上がるまで 第三章 15話(後編)

TAPEtさん

結以と遙火との話です。
昔から言おうとしていたちょっとした昔話まで含めて……黒幕。
自分が貂蝉をちょっと貶めているように思える方も居ると思いますが……

元ならこれより酷い扱いされてるはず。

2011-12-16 18:49:25 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2805   閲覧ユーザー数:2474

倉SIDE

 

一刀に頼まれたとおり、宿の女将に部屋をもう一個借りてもらって、盲人の人をそこの部屋に連れて行った。

 

「こっち」

 

部屋を開けると、お布団が二つ並んである部屋だった。

二人用の部屋しか残ってなかったらしい。

 

「親切に案内してくれて真ありがとうございます」

「…………大丈夫」

 

とても落ち着きのある声で感謝されて、こんなこと前にやったことないからちょっと答えに戸惑った。

 

「……じゃあ、あたしは行く」

「はい…あ、ちょっと待ってください」

「…何?」

「宜しければ、お顔を触っていただいて宜しいでしょうか」

「………うん」

 

特に裏がありそうもなかったから、あたしは何の迷いもなくその人が座った布団の隣に座った。

そしたら、その人の両手がゆっくりとあたしの肩から頸、そして口、頬、徐々に上がってきながらあたしの顔を触れていく。

 

「とても、綺麗ですね」

「…………」

「あの方にとても似ているに違いありません」

「…あの方?」

 

どういうこと?

 

「遙火」

「……なんであたしの真名を知ってるの?」

 

真理ちゃんたちの言う話だと、真名はとても大事なもので、許されてもないのに呼ぶような人がいたら許してはいけない、と言っていた。

でも、何でだろう、あまり怒る気がしない。寧ろ、とてもなつかしい感じがする。

 

「その真名は、わたくしが考えていたものなんです。あの方は名前を付けるのが苦手だったものですから、わたくしがこの名前にしましょうと言っても自分でもっといいもの

 

を考えようと何ヶ月も悶々としていたんです。結局、自分じゃきめられなかったみたいですね」

「……さっちゃん、知ってる?」

「はい……あの方がわたくしについて何も仰ってないんですか?」

 

あたしは頭を横に振った

さっちゃんは、今寝ている。起こさないで欲しいって言っていた。

 

さっちゃんは自分について多く語らなかった。ただ、あたしが自分の娘だってことだけを話した。

あたしも、それ以上聞きたいと思わなかったからそれ以上聞かなかった。

だから、あたしはこの人に付いて聞いたことがない。

 

「そうですか……それなら、わたくしも己のことをあなたに話さない方が宜しいのかもしれません」

「…さっちゃんと知り合いじゃないの?どうして…」

「……あの方はあなたにわたくしに付いて何も話しませんでした。それは、まだわたくしが出る幕ではないという意味でしょう」

 

この人は、あたしに何かを隠していた。

とても大事なことなのだろうと思う。

でも、それよりももっと確かなものは、この人があたしに付いて知っているってこと。

 

「……さっちゃんは、自分があたしの親って言ってた」

「はい」

「…本当なの?」

「信じて頂けなかったのですか?」

「…………」

「…十年以上独りにしておいて、突然現れて親だと言ったところで簡単に認めてもらえるはずがありませんね」

「……別にそういうわけではない」

 

あたしがどれだけ長い間独りで居たのかは覚えていない。

でも、周りに覚えがある時に、あたしには誰も居なかったことは確かだった。

おじさまが来て、暫くは楽しかったけど、孫策の手に殺されて、一刀と雛里ちゃんに会った。

……もし一刀たちに会ってなければ、あたしは今皆を失ったあの森の中、あの暗い倉の中で一人で泣いているのかもしれない。

 

「思い出した」

「?」

「あの時、会っていた」

「…そうでしたね」

 

そういえば、昔、一刀たちに会う前に、倉の中に居た時この人に会ったことがあった。

誰かが前で私に話して、後ろではもう一人が立っていた。

それがこの人……

 

でも、確かに覚えている。あの時、この人の目はちゃんと見えた。

光が入らない暗い倉の中でも、そんな闇に慣れていたあたしは、その人の目の光が確かに見えていた。

 

「目…どうしたの?」

「これは、誰かから逃げる時に失ってしまったものです」

「逃げる…?」

「はい、……もしかしたら、あの方は最初あの剣を見たあの時から、こうなることを予測していたのかもしれません。だから、わたくしを、あなたを逃したのです」

「……どういうこと?」

「…わたくしはあなたに多くを語ることはできません。ですが、あの方もいつかはあなたに話してあげると思います。そう、あなたが事実に耐えれるほど強くなった時に」

「強く?……どれぐらい」

「それは力を持つものとは違います。あなたに求める強さはもっと他にあります。あなたが成長したら、言わずともあの方があなたに話してあげるだろうと思います」

「…良く分からない」

「………」

 

その人は目を閉じたまま、優しい笑顔を見せてあたしを自分の胸に抱き寄せた。

 

「聞こえますか?」

「…どくどくってしてる」

 

胸の心臓が、脈を打っている音が、胸に密着された耳に伝わってきた。

とても落ち着くその音を聞いていると、思わずに顔が緩んでくる。

 

「覚えて居てください、遙火。いつでも、あなたを愛してくれる人が側に居てくれます。そして、いつかあなたがもらった分、誰かにあげられる時が来たら、あの時があなた

 

に全てを話してあげられるでしょう」

「………」

 

あたしは自分から顔をもっとその人の胸に密着させた。

何故そうしたのかは分からない。

でも、まるであたしが長い間求めていたものをやっと見つけたかのように、もっと、もっとそれを欲しがっていたから…その心を拒むことなく、あたしは自分が望むものをた

 

だ求め続けた。

 

・・・

 

・・

 

 

 

 

孟節SIDE

 

「……可哀想な娘」

 

いつの間に眠ってしまったあの娘の短い髪を手でなぞって、膝の上にその小さい頭を乗せて撫でていると、体が震えてきました。

悲しいとかじゃなく、嬉しかったんです。

どれだけこの娘に会う日を待っていたのでしょう。駄目な親に会って、捨てられ、独りで長い間寂しい思いをさせてしまった。

わたくしたちにはこの娘を見守ってあげる資格がないのかもしれません、左慈さま。

ですが、決してそれがわたくしたちが望んでいたことではないことを、この娘はわかってくれるのでしょうか。

 

「……失礼…します」

「……どちら様でしょうか」

 

部屋の外で聞いていたのでしょうか。

幼い声の女の子が部屋の門を開けて入ってきました。

 

「てわ、はじめまして、諸葛均と言います。…遙火ちゃんのお友達です」

「そうですか……娘が、大変お世話になっております」

「…やっぱ、遙火ちゃんのお母さんなんですか?」

「…はい」

 

遙火、わたくしが自分で産んだ子供。ちゃんと母乳をあげることも出来ずに逃さなければならなかった可哀想なわたくしの娘。

 

「左慈さん……は、じゃあ、誰ですか?」

「…あの方もまた、この娘の親です。自分で産んだわけではないものの……どちらかと言うと、あの方は遙火の父親と言った方がいいかも知れません。わたくしは人間で言う

 

男女の性別なんてものはあまり気にしませんでした。ただ、わたくしたちの愛を確かめる証が欲しかっただけです」

「……それなら、どうして……」

 

あんな所に捨てなければならなかったのか、ですね……。

 

「私は、雛里お姉さんたちが初めて遙火ちゃんに会った時そこにいませんでした。でも、遙火ちゃんがご両親もなく独りで居たことは分かります。私には、それがどんな気持

 

ちか分かります」

「………」

「世界で独りだけぽつんと置かれているような感覚。それに慣れてしまえば、自分が本当に人なのかも曖昧になってしまいます。とても……とても酷いことなんです」

「…わかっております」

「じゃあ、どうしてですか」

「この娘を…助けるためでした」

「助ける…ですか?」

 

その声から、少なからず軽蔑の色が混ざっていることをわかっていましたが、わたくしは遙火には言えなかったことを、その遙火のお友達という方に教えようと思いました。

 

・・・

 

・・

 

 

 

それはあの夜、荊州でのあの醜い戦いが始まっているあの場所で、突然左慈さまによってその外史から飛ばされた後から起きたことでした。

 

「…っ!!」

 

突然離されたわたくしは慌てて戻ろうとしました。でも、その時、

 

「行ってはなりませんよ」

「!」

 

誰かに止められて、わたくしは振り向きました。

 

「孟節、お久しぶりです」

「……管路さま」

 

それは管理者たちの中でも左慈さまが信用なさる方の一人である、管路さまでした。

 

「やっと、同等な位置で貴女と話すことができましたわ、孟節、いえ、結以」

「…わたくしをその真名で呼べられるのは左慈さまだけです。どうしてここへいらっしゃるのですか、あの時以来姿を消したのでは」

「わたくしめも色々あったのですわ…ところで、今戻ろうとしているのでしょうけれど、やめた方が宜しいですわ」

「どうしてですか!何故左慈さまは突然わたくしを…」

「貴女を助けるためですわ。そして、貴女の腹の娘のためにも」

「……!」

 

わたくしは驚いて管路さまを見ました。

助ける?どういうことですか?

 

「孟節、良く聞いて欲しいですわ。これから言うことは左慈、いえ、左慈だけではなく、管理者たちの未来を握っている話ですから」

「………どういうことですか?」

「…鞘に収められている剣を見ましたわね」

「はい、左慈さまは、その剣が己の一部だと仰っていました」

「そうですわ。あれは正しく左慈『だった』もの。ですが、『それ以上』のものでもありますわ」

「…どういうことですか?」

「孟節、わたくしめには全てが見えますわ。過去、現在、そして未来まで。もしかすると、あの時死ねなかったのは、貴女にこの話をするためだったのかもしれませんわね」

 

それから管路さまが仰ったことは、とても驚くような話でした。

 

「かつて左慈の半分であった『氷龍』は今こそ封印されていますが、愚かにも貂蝉がその封印を解けてしまおうとしていますわ。あの剣の勢いに叶えるものは唯一、鳳凰の命

 

を込めた『鳳雛』しかなかったというものを、左慈さまは貂蝉の計略に乗せられ、『鳳雛』の力を天の御使いを救うために使い、己が再び『氷龍』を自分の中に収めようとす

 

るでしょう。だけどそれは失敗し、左慈さまは己の力を全てその剣に奪われてしまいますわ。あの剣はただの剣ではありませんわ。『左慈』の暗かった過去、かつて全ての管

 

理者たちが排除しようとしたその力が再び目覚めると、奴は先ず自分を小さな刃物に収めた管理者たちへの復讐を果たそうとするでしょう。貂蝉を含めた全ての管理者たちが

 

それに対抗し、自分たちの座を守ろうとするも、『左慈』の力を得た『氷龍』は以前の左慈さまとは比べ物にならないほど残酷で、冷酷な方法で管理者たちを抹殺するでしょ

 

う。だけど、なんとか数の暴力で、貂蝉と管理者たちは『氷龍』に勝つことが出来ます。でも、氷龍もただやられては居ません。氷龍は今度再び力を蓄え管理者たちと外史ま

 

でも滅ぼそうとする。でもそうするには、『欲望』という人間の感情がもっとも良い餌になります。昔から氷龍はそうやって生きてきたのですから。何百、何千の氷龍の欠片

 

が外史に落ちると、人間の欲望を操って様々な方法で外史たちに混沌と戦乱を催しますわ。そうやって氷龍が十分な力を持つようになった時、その時こそは管理者たちの世界

 

は滅んでしまうでしょう」

 

「……管理者たちが…全て死ぬというのですか?そしたら外史は」

「無論、戦乱という病に巻き込まれ外史という木も枯れてしまうわ」

「そんな……」

 

でも、だとしたら、今からそれを止めに行かなければなりません。どうして、止めるのですか?

 

「だけど、それは起きるべき事件です。既に止めることなんて出来ません」

「変えることは…」

「出来ませんわ。しようとしてもならない」

「どうしてですか…管路さまも本当の未来を見ているわけではないではありませんか。未来があなたさまが見たものと違うかもしれないじゃないですか」

「もし、氷龍が負けて、永遠に存在を失うとすれば、彼と命を共に使っている左慈もまた死んでしまいますわ」

「なっ!」

「貂蝉が望むことはそれです。管理者世界の半分を葬るとしても、左慈、貴女の夫一人を殺すためにこの全てを仕組んだのですわ」

「……狂ってます」

 

あの方は…外史を守ることが役目だったのではないのですか?

 

「貂蝉は外史という木を守るために、ちょっとした『枝打ち』は必要不可欠だと思う者。それほどの被害は予想済みなはず。だけど、貂蝉が予想しているよりも氷龍が遙かに

 

強い、というのが問題にならないわ。」

「……わたくしはどうすればいいのですか?左慈さまは……」

「…左慈の体を得た氷龍は先ず貴女を探そうとするわ。貴女と、貴女の子供を捕まえるために…その娘を己の養分とし、力を蓄えようとするでしょう」

「…!あの方の子供です」

「だからこそ良いのですわ。判らないの?アレは左慈とはもはや別の人格。全てを滅ぼすためには貴女との愛、己の子供への慈愛なんてものともしないわ。だから、逃げなさ

 

い。出来るだけ遠くへ。そして、どうしてもその娘を守ることができなくなった時、その娘をあなたが初めて見たあの森に隠しなさい。そしたら少なくとも、あなたが見たぐ

 

らい育つまでは、守られるでしょう」

「…その後は……どうすればいいのですか?」

「……それからはあなたの夫がやってることに従えばいいですわ。彼もまた、全て理解して行動するでしょうから」

 

 

 

 

「わたくしと左慈さまは追われていました。わたくしたちを狙っている者たちはとても多くて、またとても強くて、立ち向かうこともできなければ、隠れることもままなりま

 

せんでした。だから、わたくしは当時産まれたばかりのこの娘をあの場所に隠しました。誰にも気付かれず過ごせるように、出来るだけわたくしから離れた場所に……」

「……だからって、」

「分かっています。わたくしがやったことは許されないこと。でも、そうしなければなりませんでした。そうしてでも、愛する娘が生き残れるなら、例え親もない娘として生

 

きるとしても、その生を守ることが、母として出来るわたくしの全てでした」

 

友達とは言え、この方に言えることは少ないでしょう。

でも、わたくしはこれからもこの娘を守ることが出来ません。だから、誰か、この娘を守ってあげれる人たちに

 

「これからも、この娘の側に居てください。守ってあげて……わたくしに出来ない分まで……」

「……これからも、遙火ちゃんと離れているのですか?」

「…はい…左慈さまはどうか知りませんけれど、わたくしはまだこの娘に母ということを伝えないつもりです」

 

もしかしたら、既に気づいているかもしれませんけれど……

 

「わたくしが付いていたら、またこの娘と、あなた達を危険な目に合わせてしまいます。ですから、わたくしに出来ることは、所詮この程度です」

「…分かりました」

 

その方は淡々と言いました。

 

「私と、北郷さんと雛里お姉さんが遙火ちゃんと一緒に居ます。貴女が出来ない分、遙火ちゃんのことを守って、幸せにしてあげます」

「…ありがとうございます」

 

手を伸ばすと、その人の服らしきものが手に届きました。

ですが、少し上を触ろうとすると虚空になっていて、わたくしは自分が話しているその娘が、もしかすると遙火よりももっと幼い娘かもしれないということに気づきました。

 

「乱世というものは、とても辛い時期です」

「……」

「こんなに幼い娘まで、大人になれなければ生きていけないのですから……」

「……これからそれを変えるんです。北郷さんと私たちが…遙火ちゃんも一緒にです」

「……わたくしに出来ることがあるでしょうか」

「…おばさんは…医者ですか?」

「薬を少し造れるほどです」

「この街は今阿片に荒らされています。人たちを阿片中毒から救える薬はありますか?」

「………あるにはあります」

「てわっ!?」

「ですが、それを作るに大事なものがいくつかあります。とても高価なもので、私が持っているものでは、2,3人ぐらい呑ませるものを作るのが精一杯でしょう」

「それでも、作ってください。後、その薬を作る方法を、教えて欲しいです」

「……分かりました。それでよろしければ……最初からここから病の匂いがすることに気づいてきたのですから、わたくしに出来る限りご協力いたしましょう」

「ありがとうございます」

 

 

 

いつものエセ予告です。

 

 

次回、豫州反乱編の最終回

 

 

一刀「あまりにも沢山の人々がこの喧嘩に巻き込まれた」

孫策「もう止めることはできないわ」

太史慈「私たちを虫けらのように扱ってきた袁家に私たちに力を見せ付けよ!」

 

 

一刀「これは聖戦じゃない。戦争でもない。これはただの犬死だ」

一刀「お前に彼らの命を犠牲にする権利はない」

太史慈「お前にも彼らの権利を黙殺する権利はない。彼らの声を聞きなさい」

 

 

「袁術を殺せー!」

「袁家は滅びろー!」

「俺たちは生きたいんだ!」

 

 

雛里「戦で勝つ一番良い方法を知ってますか?」

一刀「何?やる前に止める?」

雛里「いいえ

 

 

 

(戦で得する唯一の者)を捕まえればいいんです」

 

 

「孫呉の兵よ!今こそ義の旗の元に立ち上がる時よ!」

「悪い子にはお仕置きが必要のようですね」

 

3部作

 

COMMING SOON

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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