【曹操 side】
老いは怖いものだ。
どのような豪傑、賢者も老いの前ではすべて等しく抗えない。
寿命は誰にでも来るものだ。
「すみません、曹操様。このようなときに」
私の目の前で弱々しく寝台に寝転がる司馬懿がつぶやく。
「仕方がないわ、病気なら。体を治すことだけを考えなさい。貴方が治る頃には、私はこの大陸の王よ」
今にも消え入りそうな司馬懿を元気づけるように、いつもの様に自信タップリに答える。
司馬懿は最近、歳のせいかよく寝こむ様になった。
魏の知恵袋として他の文官達に重宝されているだけに、その穴は大きい。
そしてもう一つ気がかりなことがある。
「劉協様は、まだ目を覚ましませんか…」
「ええ、ずっと寝たままよ。医者に診せても、どこも悪いところは無いと言うわ。息もしてるし、本当にただ眠っているみたいだけど、でも全然目を覚まさないわ…」
劉協様が眠ったきり目を覚まさないのだ。
原因は不明、色々と試してみたが起きる様子が無い。
劉協様の教育係である司馬懿も心配であるらしく、自分も病気の身であるのに心配をしている。
「……そろそろ行くわね」
もう時間だ、司馬懿に短く挨拶を済ますと兵たちのところへと向かう。
「準備完了しております」
着くと秋蘭が近づき、遠征の準備が終わった事を伝える。
「そう、では早速出発しましょう」
「はっ」
秋蘭は出陣の指示を兵たちに出し、自信も準備に向かった。
老いは怖いものだ、あらゆるものに慈悲無く弱らせる。
その点、私は幸運だ。若いこの時に、大陸に覇を唱えることが出来たのだから。
この国をまとめた後にもやりたいことはまだまだある。
そのための時間はいくら有っても足りない。
やりたいことを実現させるためにも、早くこの戦いを終わらせなくてはいけない。
そのために私はもう迷わない、躊躇わない。
「さあ皆、出発よ。目指すは…呉!」
だから私の前に立ちふさがる者は貴方でも倒すは、一刀っ。
【曹操 side end】
【関羽 side】
「桃香様ー!大変です、魏が呉に向け進軍を開始しましたっ」
そう叫びながらけたたまし音と共に部屋に入ってきたのは、入蜀の際仲間となった魏延こと焔耶である。
「こらっ焔耶、うるさいぞ」
「むっ、すまん…いや、そんな事より桃香様、魏が呉に向け動きました。その数は地平を覆い、百万に及ぶともっ」
「百万だと…!」
魏のその兵の数を聞いた途端、部屋に居た者達全員が一瞬にして緊迫するのを感じた。
戦において兵の数は絶対的な力となる。
いくら猛将と呼ばれるものが居たとしても、数の力の前にはどうにもならない。
「そんなの鈴々が蹴散らしてやるのだ!…って言いたいけど、鈴々でも百万は相手できないのだ~」
いつも勇猛な義妹である張飛こと鈴々もその数には萎縮している様子である。
「曹操さんがとうとう動いたんだね……朱里ちゃん、私たちはこれからどうすれば良い?」
焔耶の報告を受け、数瞬考え事をするように目を瞑っていた桃香様は、目を開けると我が陣営の頭脳である諸葛亮に意見を求めた。
「はい。百万という数は呉にとって絶望的でしょう。いくら呉に優秀な将の方たちがいても、兵数の差が大きすぎます」
朱里は顎に手を当て考える仕草を見せると、自分の考えを述べはじめた。
「それに、この戦い呉が負けると次は私たち蜀が魏の目標となるでしょう。そして、私たちにも魏を越える兵数は無く、負けることでしょう」
朱里の言葉に続き、我が軍もう一人の軍師、龐統こと雛里がおどおどしながらも答える。
「では、どうすれば良いのだ?」
2人の答えは私でも容易に思いつくものであった。
「それなら、兵を増やす他ありません」
「え?でも、呉も私たちも全軍で当たっても百万なんて数に届かないよ」
「ええ、私たちはその半分にも満たないでしょう。でも、2つの軍が合わさればその差は大きく縮まります」
「つまり、呉と連合…」
このままでは私たちも呉もどちらも滅んでしまう、なら力を合わせて魏に立ち向かうしか無い、そういうことだ。
「一刀さんたちとかぁ……」
呉との連合と聞いて、桃香様は心なしか嬉しそうな顔となった。
やはり、桃香様は孫権殿のことを……
「幸い、呉の方たちと私たちは良い関係を築いています。百万という数には及ばなくとも、後は策を持ってすれば敵の戦力を大きく削ぐことが出来るでしょう。曹操さんと話し合うにしても、まずこちらの力を見せつける必要があります」
「しかし、生半可な策を講じても意味がないぞ」
私がそう言うと朱里はニヤリと笑って見せると、
「こういうときのために、呉の周喩さんたちと話し合いを行っています」
朱里は一度部屋から出てゆくと、大きな地図を持って戻って来た。
「普通に戦っては、いくら私たちが力を合わせても魏に勝つのは難しいでしょう。しかし
そう言い広げた地図のある点を朱里は指し示した。
「……分かった、ありがとう朱里ちゃん。この戦いに勝つことができたら、この戦乱も終わるかもしれない。だったら私は戦う!」
桃香様の目は力強く前を向いていていた。
【関羽 side end】
魏がこちらに向けて進軍を開始した、その情報が入ると城の中は戦に向けての準備で慌しくなった。
「しかし百万とは……よくもまあ、集めたものじゃな」
「ええ、このまま戦っても我々の負けは目に見えています」
祭の言葉を受け、冥琳は地図を広げながら答える。
「なので、私たちの有利な場所に戦場を持ち込む」
「有利な場所?」
「ああ、我が軍が最も得意とするものは騎馬でもなければ歩兵でもない…水兵だ」
そう言いながら冥琳は地図上のある場所を指す。
「その大陸最強と言って良い水軍が存分に活躍出来るここ、赤壁で魏を迎え討つ」
「ほお、おもしろい。じゃが、数の差は埋められんぞ」
「それなら大丈夫ですぅ。今回の戦いは蜀の皆さんも一緒に戦ってくれますからー」
祭の問いに答えたのは穏であった。
「それは確かなのか。蜀が裏切る可能性は?」
「それは大丈夫でしょう。我々が負ければ、今度は自分たち。それが思いつかないような者ではありませんよ、伏龍は。それに……」
そこで区切ると冥琳は物言いたげな目をこちらに向けた。俺、何かしたっけ?
「…まあ、その辺は蜀と打ち合わせをしています。各員は戦いに向けて準備してくれっ」
冥琳の言葉に皆は頷き答える。
「…今回の戦い、私も出るわ」
「雪蓮……。しかしお前、剣はもう…」
「それなら心配ないわ。あれから訓練して前の様にとはいかないけど、自分の身は守れるくらいまで力は戻ったわ」
そう言い剣をとって構えて見せる。
「それなら、私も行きます」
雪蓮に続きそう声を上げたのは士徽こと良々であった。
「私には武も知もありませんが、後方でお手伝いは出来ます。それに妻である私が、夫である一刀様の大舞台に一緒に居ないでは示しもつきませんし」
そう言い俺の腕に自分の腕を絡ませてきた。
「ちょっと何言ってるのよっ!お兄ちゃんの妻はシャオなんだからね!お兄ちゃん見ててよね!シャオ、大活躍するんだからっ」
良々と反対側の腕に小蓮がしがみ付き元気に言う。
「ははは、これは今回の戦い、活躍した者は一刀の嫁になる権利がもらえるということかのぉ」
「「「嫁っ!?」」」
祭の言葉に反応した何人かの
「ははは……はぁ…」
ただただ笑うしか無い。
久しぶりの投稿でした。
今回は赤壁前夜、それぞれの陣営の様子を書きました。
最近PS3のアイマス2にハマってしまってあまりPCに時間が割けない!
アイマスおもしろいです。アニメもおもしろいですし、キャラクター達も可愛い!
でも、こちらの方も頑張らなくては…
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久しぶりの本編!