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真・恋姫無双アナザーストーリー 蜀√ 桜咲く時季に 第29話

葉月さん

またまたお待たせしてしまいました。
今回は、前回掲載することが出来なかったオマケを本編の終わりに載せてあります。よろしければ読んであげて下さい。


前回までのあらすじ

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2011-12-10 20:08:17 投稿 / 全17ページ    総閲覧数:13145   閲覧ユーザー数:5699

真・恋姫無双 ifストーリー

蜀√ 桜咲く時季に 第29話

 

 

 

 

【平穏の中の騒動?】

 

 

 

《一刀視点》

 

「ん~~~っ!!いい天気だ」

 

空は快晴。雲一つ無く心地の良い日和だ。

 

「こんな日には陽のあたる場所でのんびりと昼寝が最高だよな~」

 

窓の外を見ながら呟く。

 

「そんな暇がおありでしたら筆を動かしてくださいご主人様」

 

「……はい」

 

愛紗に睨まれながら言われ、俺は目線を机へと戻す。

 

「まったく……あれほど日ごろからちゃんとしてくださいと言っておいたではありませんか」

 

「申し訳ない……」

 

愛紗は腕を組みながら俺を監視するように見ていた。

 

実はここ数日、政務をしていなかったせいでかなり溜め込んでしまっていた。

 

それが愛紗にばれてしまいこうして監視をされながら政務を片付けている状況だ。

 

「……はぁ、仕方ないですね」

 

「愛紗?」

 

愛紗はため息を吐くと山積みになっている書簡をいくつか手に取り空いている席に着いた。

 

「ご主人様一人では終わらないでしょう。私も手伝います」

 

「ありがとう愛紗~~~っ!」

 

「まったく……調子が良いのですから」

 

愛紗は文句を言いながらも頬を赤くしていた。

 

最近分かったことだけど、愛紗はかなりの照れ屋だった。

 

普段は気を引き締めているせいか、そう言うそぶりを見せていない。だが最近になりよく見るようになった。

 

桃香曰く『愛紗ちゃんも女の子なんだよ』だそうだ。

 

っと、こんなことを考えてる場合じゃないな。早いところ書簡に目を通さないと。愛紗が手伝ってくれているとはいえ、そんなに多く肩代わりさせるわけには行かない。

 

「よしっ!」

 

俺は気合を入れて書簡を手に取った。

 

(バンッ!)

 

「おにいちゃーーーーんっ!」

 

その時だった。扉を壊さんばかりの勢いで開けて元気よく鈴々が飛びついてきた。

 

「ぐはっ!」

 

「ご主人様!?」

 

そして俺は横腹に思いっきり体当たりをくらい椅子から落ちた。

 

「お兄ちゃんお兄ちゃん!外は良い天気なのだ。だから遊びに行こ!」

 

「こら鈴々!なんだお前は、入ってきて行き成りご主人様に抱きつきよって!」

 

あ、あの愛紗さん?俺、椅子から落ちたんだけど?頭とお腹、凄く痛いんだけど?

 

「えー!お兄ちゃんと約束したのだ!一緒に遊んでくれるって!」

 

「……ご主人様?」

 

愛紗が睨んでる。俺をものすごい目で睨んでる!

 

「ま、待ってくれ愛紗!た、確かに鈴々とは遊ぶ約束はした。だけど、日取りまでは決めてないんだ!」

 

「ご主人様はそう言っているが。どうなのだ鈴々」

 

「でも、お兄ちゃんは『鈴々が暇な日でいいよ』って言ってくれたのだ!」

 

「ちょっと待て鈴々。確か今日、お前は兵の調練ではなかったか?」

 

「ギクッなのだ」

 

「なにがギクッだ!兵を待たせる将がどこに居る!さっさと行って来い!」

 

「うにゃーーーっ!愛紗が怒ったのだーーーーーっ!!」

 

(ドタドタドタドタッ!!)

 

鈴々は愛紗が本気で怒り出す前に逃げていった。

 

「はぁ、まったく……」

 

愛紗は扉を閉めず逃げ出した鈴々にため息を吐きながら扉を閉めて席に着いた。

 

「ご主人様もあまり安請け合いをしないでください。ただでさえ鈴々は子供なところがあるのです。目の前に楽しいことがあれば自分の立場を忘れてしまうのですから」

 

「以後、気をつけます……」

 

でもな~。なんだか鈴々に頼まれると嫌って言えないところがあるんだよな。妹として見てるからなのかな?

 

そんなことを思いながら仕事を進める。

 

「……」

 

黙々と作業を続ける。

 

「……そろそろ昼ですね」

 

「え?ああ、そう言えばそうだな」

 

愛紗に言われ外に目を向けると陽は既に真上にまで昇っていた。

 

「そ、それでですね。ご主人様」

 

「ん?なに?」

 

「ごいっし」

 

(コンコンッ)

 

『ご主人様。お昼をお持ちしました』

 

愛紗が何かを言おうとした時だった。部屋をノックして昼飯を持ってきたと月が扉越しに伝えてきた。

 

「ありがとう。入ってきてもいいよ」

 

「ぁ、ぅ……」

 

愛紗はなぜか口をパクパクとさせていた。

 

「あ、そう言えば何か言おうとしてたよね愛紗。なにかな?」

 

「い、いえ。なんでもありません」

 

「?」

 

なぜか凄く残念そうにする愛紗。何を言おうとしたんだろ?

 

「まったく。毎日コツコツとやってればこんなことにならずに済むのに。あんたが太守とかホント不安で仕方が無いわ」

 

「うぐっ!ごもっともです……」

 

詠は腰に手を当ててジト目で俺を見てきた。

 

「もう。詠ちゃんダメだよそんなこといったら。ご主人様だってがんばってるんだから」

 

うぅ~。月だけだ。俺の苦労をわかってくれるのは!

 

「ダメよ月。こいつにそんな甘いことを言ったら付け上がるだけなんだから!」

 

詠は相変わらず厳しいな。俺別に嫌われるようなことしてないと思うんだけどな。

 

「詠ちゃんはああ言ってますけど、本当はご主人様の事を心配しているんですよ」

 

「えっ。そうなの?」

 

「ちょ!そんなわけないでしょ!誰がこいつを心配する必要があるのよ!」

 

「ああ言ってるけど?」

 

「照れてるだけです。そうだよね、詠ちゃん」

 

「ち、違うって言ってるでしょ!月、へんなこと言わないでよ!」

 

詠に力強く否定されて少し凹んだ。

 

「もう……ご主人様、本当に詠ちゃんはご主人様の事を嫌ってませんから。気にしないでくださいね」

 

「うん。ありがとうな月」

 

「へぅ~」

 

慰めてくれる月の頭を撫でてやると月は顔を赤くして照れた。

 

「ほら!まだ次の仕事があるんだから次に行くわよ月。あんたも早く食べて終わらしちゃいなさいよ」

 

「うん。それではご主人様、あとで食器を片付けに来ますのでまとめて置いてください」

 

「ああ。月ありがとうな。詠も」

 

「ふんっ!」

 

「待ってよ詠ちゃん!それでは失礼しますご主人様」

 

月はぺこりとお辞儀をすると、さっさと出行く詠を追いかけて部屋から出て行った。

 

「よし!それじゃ早いところ食べて仕事に……あれ?」

 

「……」

 

確かここにうまそうな八宝菜があったはずなんだけど……

 

「なあ、愛紗。ここにあった八宝菜知らないか?」

 

「知りません。早く食べて仕事をしてください」

 

「……」

 

愛紗の机を見るとなぜか皿が二枚あった。

 

「なあ、愛紗。もしかして食べっ」

 

「知りません。鈴々が来て食べたのではありませんか」

 

そう言う愛紗は眉を吊り上げてもくもくと書簡に筆を走らせていた。

 

う~ん。なんか怒られるようなことしたかな?

 

そう思いながらも、机にあった残りの炒飯を食べて仕事を再開した。

 

うん。うまい……

 

(コンコンッ)

 

「ん?あいてるよ~」

 

しばらく仕事に集中していると不意に扉をノックする音が聞こえてきた。

 

多分このほんわかした気配は桃香だろうな。

 

「ご主人様!美味しい甘味屋見つけたから食べに行こっ!」

 

桃香は入ってくるや否や一目散に俺の机に駆け寄って来た。

 

やっぱり桃香だったか、だけど……

 

俺は桃香の後ろに居る愛紗に目を向けてみた。

 

「……」

 

ああ、愛紗の手が……手が震えてる!

 

「えっと……今、政務中なんだけど」

 

なんとか愛紗の機嫌を損ねないように桃香に今の状況を伝える。

 

「え~っ!こんな天気が良いのに部屋に篭ってるなんて勿体無いよ!」

 

「そうは言っても、こんなにあるからさ。今日中に終わらせないといけないんだよ」

 

愛紗は何度も頷いていた。

 

「大丈夫!愛紗ちゃんには秘密にしておくから!」

 

ああ~。その愛紗が今桃香の後ろに居るんだよ。早く気づいてくれ!

 

「ごほんっ!」

 

(ビクッ!)

 

あ、桃香の顔色が変わった。

 

愛紗の咳き込みに桃香は肩を強張らせて顔を引きつらせていた。

 

「あ、あはは~。愛紗ちゃん。おはよ~」

 

「もうお昼を過ぎていますよ桃香様」

 

「……」

 

桃香はそそくさと俺の後ろに隠れた。って!それじゃ俺が標的になるじゃないか!

 

「ご主人様?」

 

「お、俺は何もしてないじゃないか!」

 

案の定、愛紗は俺に標的を変えてきた。

 

「と、兎に角、桃香!俺は今日中にそれも早くに終わらせないと駄目なんだ!だから今日のところは諦めてくれるか?」

 

「う、うんうん!わかったよ。それじゃまた今度一緒に行こうね!約束だよ!それじゃあね!」

 

桃香は頷き、早口で言うと走って部屋から出て行った。

 

「まったく、桃香様にも困ったものだ」

 

「ま、まあ、桃香も悪気があってやってるわけじゃないし」

 

「当たり前です。悪気があったらご主人様共々お説教しているところです」

 

「なんで俺も!?」

 

「何か言いましたか?」

 

「いいえ何も……」

 

愛紗に睨まれ大人しく仕事を再開する。

 

ぐすん。これじゃなんだか原因が俺にあるみたいじゃないか。

 

………………

 

…………

 

……

 

そしてしばらくするとまた誰かが近づいて来る気配がした。

 

こ、この気配はまさか……っ!

 

俺は書簡に筆を走らせながら背中に嫌な汗をかき始めていた。

 

「……」

 

段々と近づいてくる気配に否が応にも緊張が走る。

 

……来たっ!

 

そしてその気配は案の定、俺と愛紗の居る執務室の前で止まった。

 

(ギーーッ!)

 

扉の音がいやに大きく聞こえる。俺は意識しないように勤めた。

 

「主よ。ここにおいでかな?」

 

やっぱり……現れたのは何かを企んだ笑みを浮かべて入ってきた星だった。

 

「や、やぁ。どうしたんだ?見ての通り俺は政務の最中なんだけど」

 

「分かっておりますぞ。流石は主、仕事熱心であらせられるな」

 

星は愛紗が居るのを分かっていて無視をして俺に近づいてくる。

 

「ところで主よ」

 

「な、なに?」

 

「息抜きに私と良い事をしませぬかな?」

 

「ぶっ!な、何言い出すんだよ行き成り!」

 

「何をと申されても。一日中篭っていれば飽きるというもの、ここは主と良い事をして息抜きをと思ったまでですが」

 

ああ、どうしよう……愛紗から、愛紗からなんか分からないけど殺気じみた氣を感じる!こ、ここはなんとか星にお引取り願わないと!

 

俺はこの危機を回避する為に頭をフル回転させた。

 

「き、今日中に終わらせないといけないんだ!だからここを離れるわけには行かないんだよ」

 

「でしたら私はここでも構いませんぞ?」

 

(ミシミシッ)

 

ああ~~~!筆が!愛紗の持ってる筆が!

 

「いやいや!こういうところでやるもんじゃないだろ!?」

 

「ふむ。そうですな。あれは外で行ったほうが開放的で良いでしょうな」

 

「そ、外!?」

 

「おや。何を驚いているのですかな?」

 

「い、いや。なんでも……じゃない!外だなんてダメだよ!もし、誰かに見つかったら!」

 

「そうですな。恥ずかしいでしょうな。だがそれも経験。良いではございませぬか」

 

良くないだろ!?もしかして星は見られながらされるのが好きなのか?って、そんな話をしてるんじゃなくて!

 

「と、兎に角!今はダメだから」

 

「そうですか。では、夜にでも伺いにまいりましょう」

 

「よ、夜!?」

 

「昼間がダメでしたら夜しかないでございましょう。何をそんなに驚いていられるのですかな?」

 

星は当たり前では?といった顔で俺を見ていた。

 

た、確かに夜なら何とか終わってるだろうけど……まさか、星がこんなに積極的だとは思わなかった……じゃ、なくて!

 

(ミシミシッ……バキッ!)

 

「っ!?」

 

等々、愛紗の握っていた筆が折れてしまった。

 

「い、いい加減にしないかーーーーーっ!!」

 

「なんだ。居たのか愛紗」

 

「居たのかではない!ずっとここに居ただろうが!」

 

「なんだ、主と私の話を盗み聞きしていたのか?無粋だぞ」

 

星は愛紗を煽っているのか挑発的な言葉を投げかけていた。

 

「お、お前は……」

 

「あ、愛紗。落ち着いて」

 

「落ち着いています!」

 

いや。全然落ち着いてないだろ!?

 

「何をそんなに怒っているのだ?私はただ象棋を誘いに来ただけなのだがな」

 

「「……は?」」

 

二人して間抜けな声を出す。

 

「シャンチー?シャンチーってあの象棋の事だよな?」

 

「そうですが。主はなにと勘違いされたのですかな?」

 

星はニヤリと笑った。

 

ま、まさか最初から騙そうと!

 

「愛紗も、なにと勘違いをしていたのだ?」

 

「い、いや。私は分かっていたぞ、象棋だと!」

 

「……閨」

 

「っ!せ、星!兎に角、今は忙しいのだ。象棋のお誘いはまた後日にしろ!そうですよねご主人様!」

 

「え、あ、ああ」

 

星に何かを小声で言われたのか愛紗は慌てて俺に同意を求めてきた。

 

「致し方ない。では後日、『なに』と勘違いしたかは主から伺うとしよう」

 

星はそう言うと何事も無かったかのように部屋から出て行った。

 

「……」

 

「……」

 

お互い無言になる。まさに台風が過ぎ去ったようだった。

 

「と、とにかく再開しようか」

 

ぼっとしていても仕方がないと俺は愛紗に声をかけた。

 

「そ、そうですね!早いところ終わらせてしまいましょう……あっ」

 

愛紗は席に着くと声を上げた。

 

愛紗の机の上を見ると折れた筆が転がっていた。

 

「か、換えの筆を持ってきます!」

 

愛紗は慌てて備え付けの棚から新しい筆を取ってきていた。

 

それにしてもよく片手の握力だけで筆が折れるな……

 

あれから一刻くらい経ったかな。大分机の上の書簡も減ってきた。これなら夕飯前には終わりそうだ。

 

「ん~~っ!」

 

凝り固まった体を解すように軽く伸びをする。

 

「っ!」

 

「……?」

 

……なぜか愛紗はびくっと肩を震わせた。机を見るとあまり進んでないようだった。

 

「愛紗?」

 

俺は立ち上がり、愛紗の横に立ち顔を覗いた。

 

「は、はい!なんでしょうか?」

 

「具合でも悪いのか?全然進んでないみたいだけど」

 

「い、いえ。決してそんなことはありません」

 

「ならいいけど。余り無理はするなよ?元々は俺がやらないといけないことなんだから」

 

「大丈夫です。これしきの事で、……~~っ!」

 

「ん~~。熱は無いみたいだな」

 

見上げてきた愛紗のおでこに手を当てて熱を測る。

 

「な、なな何をなさるのですかご主人様!」

 

「何って、熱を測ってるんだけど……あれ?段々と熱が上がってきてる?」

 

「っ!だ、大丈夫です!」

 

「でも、額が熱かったぞ?」

 

愛紗は慌てて俺の手を払う。

 

「べ、別に熱があるわけではありません!ただ、ご主人様に触れられて恥ずかしくなり……っ!?!?」

 

「えっ」

 

「わ、忘れてください!」

 

そう言えば。星が愛紗に何かを言ってから様子がおかしかったな。

 

「もしかして、星に何か言われたのが原因?」

 

「っ!」

 

「そ、そんなことはありません!」

 

どうやら図星のようだ。愛紗は性格のせいかあまり嘘を付くのが上手くない。

 

「星に変なことでも言われたんだろ?」

 

「うっ……」

 

「なんて言われたんだ?」

 

「そ、その……閨と」

 

「……」

 

あいつは……少し愛紗をからかいすぎだ。愛紗はこの手の話は本当に苦手だからな。

 

「いや、その……ごめん」

 

「あ、謝らないで頂きたい!」

 

愛紗の顔は見る見ると赤くなってきていた。

 

「……」

 

「……」

 

う~む。どうしよう……俺が理由を聞かなければこんな空気にはならずにすんだかも。

 

場の空気はとても気まずくなっていた。

 

やっぱりこういう時は男である俺がしっかりしないとダメだよな?

 

「?ご主人様?」

 

俺は意を決して愛紗の手を握り、抱き寄せた。

 

(ガタッ!)

 

愛紗を抱き寄せたせいで椅子が倒れてしまった。だけど俺は構わず愛紗を抱きしめる。

 

前回のデートの一件で、愛紗とのキスはお預け状態だった。なんだか自分から言うのも恥ずかしかったのもある。

 

だけど今は星のおかげではないが無性に愛紗とキスをしたかった。

 

「ご、ご主人様!?な、何をなさるのですか!」

 

「愛紗」

 

「い、いけませんご主人様!」

 

俺が何をしようとしたのか分かったのか愛紗はキスを拒んできた。

 

「なんで?」

 

「な、何でと申されましても……」

 

「今は誰も居ないよ?」

 

「そ、そう言う問題ではなくてですね!き、聞いてくださいご主人さ、んっ」

 

俺はそのまま愛紗の口を塞いだ。

 

「んっ!んんーっ。ぷはっ、強引過ぎますご主人様」

 

「いやだった?」

 

「そ、そんなことは……ただ少し驚いただけで……私としてはもっと優しくして欲しいです」

 

「了解……ん」

 

「ん……ちゅっ……ぁ、んんっ……」

 

愛紗の要望通り優しくキスをする。

 

「んんっ……ご主人様……」

 

「愛紗……」

 

お互い見詰め合う。それだけの事なのにこの空間だけが時間が止まっているような錯覚に陥る。

 

(コンコンッ、ガチャッ!)

 

「失礼しますご主人様。少しお伺いしたいこと、が……」

 

「「っ!?」」

 

だが所詮は錯覚。部屋をノックして入ってきたのは雪華だった。

 

「……ふえ!?あ、あのあのす、すすすすみませんでしたぁぁぁ!」

 

(バタンッ!)

 

雪華はそれだけを言い残し部屋から逃げるように出て行ってしまった。

 

「ち、違うのだ雪華!これは誤解だ!待ってくれ雪華!」

 

愛紗は我に返り慌てて雪華を追いかけて部屋から出て行った。

 

「……えっと。とりあえず、残りの書簡を片付けちゃうか」

 

取り残された俺は席に着き、続きを再開した。

 

「……ああああああっ!!俺、何てことしてるんだぁああっ!」

 

しばらくして恥ずかしさがこみ上げてきて大声を上げた。

 

結局その後、この事が城中に伝わってしまい。桃香や星からしばらくからかわれる事になり、雪華はしばらくの間、俺を遠ざけるようになった。

 

うぅ……何でこんなことに……

 

――数日後……

 

「♪~~。あっ!ご主人様っ!次はあそこに行きましょう」

 

桃香は嬉しそうに俺の手を引いて次の露店へと走っていく。

 

何でこんなことになっているかというと、数日前の愛紗とのキスの現場を雪華に見られたことが事の始まりだった。

 

桃香に『愛紗ちゃんだけずるい!』と言われて桃香の警邏に付き合うことになった。んだけど、この状況はどう見てもデートだった。

 

「桃香。俺たちは買い物に来た訳じゃないんだぞ?」

 

そう、俺たちは今警邏の真っ最中なのだ。だけど桃香はずっと俺の手を握り締めてあっちこっちへ連れ回されていた。

 

「も、もちろん分かってるよ!ちゃんと警邏もしてるし……あっ!あそこの露店、とても美味しそうな匂いがしますよ。行ってみよご主人様!」

 

やれやれ、本当に分かってるのかな?まあ、こう言うのは嫌いじゃないんだけどね。

 

俺は苦笑いを浮かべながら桃香の思うがままについていった。

 

「ん?なんだ?」

 

しばらくウィンドウショッピング、もとい警邏をしていると愛紗が慌てた様子でこっちに走ってきた。

 

「どうしたのご主人様?」

 

俺が立ち止まったことに桃香は不思議に思ったのか話しかけてきた。

 

「愛紗がなんだか慌てて走ってくるんだ」

 

「ええっ!?もしかしてでぇとしてるのがばれちゃたのかな!」

 

やっぱりデートだったんだ。

 

俺は桃香の言葉に苦笑いを浮かべた。

 

「こちらにいらしたのですねご主人様に桃香様!」

 

「あ、愛紗ちゃん!あ、あのね私、ちゃんと警邏してたよ!でぇとなんてしてないよ!」

 

いや。それじゃデートしてたって言ってるようなものだぞ。

 

「……そのことについては後でゆっくりとお伺いします。ですが、今は緊急事態です急ぎ城にお戻りください」

 

愛紗の慌て様はただ事ではなかった。

 

「何があったんだ愛紗」

 

「白蓮様が……幽州が攻め落とされました!」

 

《To be continued...》

真・恋姫無双アナザーストーリー 

雪蓮√ 今傍に行きます アフターストーリー第8話

 

 

 

 

【日常?非日常?笑顔の彼女】

 

 

 

《一刀視点》

 

「……」

 

俺は机に向かい手紙を書いている。

 

誰に書いているかって?これは桃香に向けての手紙だ。

 

なぜこうして手紙を書いているかって言うとあれは桃香や華琳たちが自分の拠点に戻る日のことだった。

 

別れ際に愛紗がとんでもない事を言ってきたことが事の始まりだ。

 

まあ、あれには俺も驚いたけど。取り合えず手紙を書くってことで納得してもらった。

 

どう言う訳か、桃香と華琳にも書かないといけない事になったけど。

 

でも、なぜか一緒に居る雪蓮や優未にも書く羽目になったんだけど……まあ、いいか。

 

そして、今書いているのはここ数日に起きた出来事を書いている。

 

もちろん、呉にとって不利益になるようなことは書いていない。

 

桃香や愛紗、華琳もそれを分かっているからか彼女達も日常に起きた些細なことを書いてきていた。

 

「すー、すー」

 

「んん~、一刀君……」

 

不意に後ろから声が聞こえてきた。

 

「……気持ち良さそうに寝ちゃって……」

 

俺のベットの上で雪蓮と優未は気持ち良さそうに寝息を立てていた。

 

そんな二人を微笑んで席に向き直りそしてまた筆を走らせる。

 

まあ、なんで雪蓮と優未が俺のベッドで寝ているのかは、手紙を書きながら説明しよう。

 

………………

 

…………

 

……

 

――数日前

 

「ねえ、一刀~」

 

「ない」

 

雪蓮は俺に抱きつき甘えた声を出してきた。

 

「まだ何も言ってないじゃない」

 

「言いたいことは分かってるよ。どうぜ、暇だから何か面白いことはないのかってことだろ?」

 

「分かってるじゃない♪流石は一刀。それで何か無いの?」

 

「……今、俺何してるかわかってるか?」

 

「ええ。分かってるわよ」

 

「なら答えてくれるか?」

 

「今後の戦いの為に冥琳や穏、亞莎と軍議中でしょ?」

 

「分かってるならそろそろ俺から離れてくれるかな?」

 

「や~よ♪」

 

「……」

 

ああ……冥琳の眉間に皺がよって血管までも浮き上がってるぞ。

 

冥琳は目を瞑り手を力強く握り締めていた。

 

「お、俺、席外した方がいいかな?」

 

「問題ない。お前はここに居ろ北郷。出て行くのはお前だ雪蓮」

 

「え~。なんでよ」

 

雪蓮は口を尖らせて冥琳に文句を言い出した。

 

「今は大事な時なのだ。お前のように遊び呆けているわけにはいかないのだ」

 

「あら、私だけが遊び呆けているような言い方ね?」

 

「違うといいたいのか?」

 

「ええ」

 

冥琳と雪蓮がにらみ合っている時だった。

 

(バーーーンッ!)

 

「一刀君はっけ~~~ん!遊びに行こう!」

 

「……」

 

「……」

 

「あはは~」

 

「……」

 

「ふふっ」

 

皆一様に優未を見る。

 

「ね?私だけじゃないでしょ?」

 

「え?何々?何かあったの?」

 

優未は状況を読み込めず首を傾げていた。

 

「はぁ……北郷」

 

「え?な、なに?」

 

「二人を連れて暫く散歩にでも行ってきてくれ」

 

「ああ。わかったよ。それじゃ、行ってくる」

 

「あはは~。そのまま、雪蓮様たちを食べたらダメですよ一刀さん。食べるなら私を食べてくださいね?」

 

「……よし、行こう、雪蓮」

 

俺は穏のボケを無視し部屋から出た。

 

「ああん!無視するなんてひどいですぅ~~!」

 

いや、無視するよ!

 

「はぁ、まったく。少しは時と場所を考えてくれよ二人とも」

 

町を歩きながら両脇の雪蓮と優未に言う。

 

「だって暇だったんですもの」

 

「一刀君と一緒に居たかったんだよ」

 

あんな場面でなければ、俺としては頼られていて嬉しい。

 

目の前で冥琳の眉が釣り上がって行って俺を睨んでくる目は生きた心地がしない。

 

喋ってはいないが雰囲気でわかる『北郷、なんとかしろ』っと言っているのが……

 

「一刀様~~~~っ!!」

 

「ん?今の声は」

 

明命か?

 

「あっ!あそこにいるよ明命ちゃん。明命ちゃ~~~んっ!」

 

優未は明命を見つけると手を振って呼んだ。

 

「雪蓮様も優未様も!三人でどこかお出かけですか?」

 

「いや。冥琳に追い出されたんだ」

 

「えっ。な、なぜですか?」

 

「うん。まあ、いつも通り二人のわがままで」

 

「あ、あははは……」

 

明命は納得したのか苦笑いを浮かべていた。

 

「ちょっと誰がわがままなのよ。私は素直に言ってるだけじゃない」

 

「そうだよ~。私だって一刀君に会いたいから探してたのに」

 

いや。それがわがままだと思うんだけど……まあ、それを言っても聞き入れる二人じゃないだろうし。

 

「と、ところで!明命は何をしてたんだ?」

 

俺は無理矢理話を変えた。

 

「はい!お猫様と遊んできました!ぁぅぁぅ、お猫様の肉球は最高なのです」

 

明命はその感触思い出してか夢の世界へトリップしていた。

 

「お~い。明命、もどってこ~い」

 

「はっ!な、なんでしょうか一刀様」

 

「いや。うん。戻って来れたよかったよ」

 

「?よくわかりませんがありがとうございます」

 

明命は律儀にお辞儀までしてお礼をしてきた。

 

「あっ!そうでした。一刀様に聞きたいことがあったんです!」

 

「ん?なになに?一刀に聞きたいことって面白いこと?」

 

「お、面白いかは分かりませんが。一刀様に以前聞いたことがありまして、『どつくかふえ』なるものがあると」

 

「ど突くか笛?なにそれ?それの何処が面白いの?」

 

「う~ん。ど突くか笛のどちらかを選んで遊ぶとか?」

 

いや。二人とも違うと思うぞ。でも、ど突くか笛ってなんだ?ど突くか笛、どつくかふえ……ん?もしかして。

 

「ドッグカフェのことか?」

 

「それです!その『どつくかふえ』です!」

 

明命は嬉しそうに顔をほころばせた。

 

「一刀それはなんなの?きっと天の世界のことでしょ」

 

「ああ、簡単に言えば、犬を連れてお茶を楽しむ場所ってことだよ。そこには犬用の餌や遊ぶ道具とかが置いてあって犬達も遊べるようになってるんだよ」

 

「へ~。それで、明命。それがどうしたの?」

 

「はい。お猫様を見ていて思ったのです。そう言った犬の為のお店があるのだったら猫の為のお店があってもいいのではと!」

 

「キャットカフェってことか?」

 

「「「きやつと?」」」

 

「ああ、猫って意味だよ」

 

「ふ~ん……ん?……ふふふっ♪」

 

「ど、どうしたんだ雪蓮。急に笑い出して」

 

「え?ううん。なんでもないわよ。あ!私、用事を思い出したから先に優未と戻るわね」

 

「ええ!?戻るなら雪蓮だけで戻ればいいでしょ。私はまだ一刀君と」

 

「いいから。優未も来るのよ!それじゃ二人ともまたね~~」

 

「ああん!一刀く~~~~~~んっ!!」

 

「……」

 

「し、雪蓮様たちはどうしたのでしょうか」

 

「さあ。ただ、悪い予感しかしないのは気のせいだろうか」

 

俺は最後に見た雪蓮の笑顔に嫌な予感しかしなかった……

 

「ん~……やっぱり厳しいな」

 

俺は自分の部屋で資料を見ながら唸っていた。

 

「ここは冥琳と相談したほうがよさそうだな」

 

そう思い立った俺は資料をまとめ始めた。

 

(こんこん)

 

『一刀~居る~?』

 

「ん?雪蓮か?どうしたんだ?」

 

『……』

 

しかし、呼びかけても雪蓮の返事は聞こえなかった。

 

「?どうしたんだ雪蓮?」

 

俺は資料を机に置き扉を開けた。

 

(ガチャッ)

 

「今よ。確保!」

 

「え?どわっ!?な、なんだ!?」

 

「ごめんね。一刀君♪」

 

優未は行き成り俺の背後に現れ羽交い絞めにしてきた。

 

「ゆ、優未!?ど、どういうことなんだ!雪蓮」

 

「ふふふっ。少し、黙っててね。か・ず・と♪」

 

「ふがっーーーっ!」

 

雪蓮に目隠しとなぜか猿轡までされた。

 

「これでよしっと。優未もういいわよ。それじゃ、行くわよ♪」

 

「ほ~い。それじゃ一刀君。ちょっとの間我慢してね♪」

 

何がなんやら。俺は分けもわからず縄で縛られ目隠しまでされて一体何処へ連れて行こうって言うんだ?

 

………………

 

…………

 

……

 

「ほい。到着~♪」

 

暫く優未に担が、ようやく目的地へたどり着いたようだった。

 

「それじゃ一刀君降ろすよ~。ちゃんと立てるよね?」

 

優未は俺を立たせるとささっと縄と猿轡を外してくれた。

 

「目隠しは外してくれないのか?」

 

「あ、目隠しはまだ取っちゃダメだよ。合図をしたら外して中に入ってきてね」

 

「よくわからないけどわかった」

 

「それじゃ、あとでね~♪ちゅ」

 

(ガチャンッ)

 

優未は多分、投げキッスしたんだろう口で言って雪蓮と共に扉の向こうに行ってしまった。

 

「……俺ってもしかして傍から見てると凄く間抜けな奴なんじゃないか?」

 

目隠ししたままで扉の前に立つ。これはどう見ても間抜けとしか言いようがない。

 

「う~ん。早く呼んでくれないかな」

 

段々と羞恥心が増さって来て恥ずかしくなってきた。

 

『入ってきても良いよ一刀君』

 

優未の許しが出たのでまずは目隠しを外す。

 

「……」

 

目の前にあるのは普通の扉。だけどその扉の向こうからは異様な雰囲気が漂っていた。

 

「……ここに居ても仕方が無い。とにかく中に入ろう」

 

俺は意を決して扉に手をかけた。

 

(ギィーーッ)

 

「「「お帰りなさいませ。ご主人様っ!」」」

 

「……」

 

(ギィーーッ、バタンッ)

 

「……はぁっ!はぁっ!な、なんだ今のは……」

 

扉の向こうは言い表せないほどピンク色だった。

 

「……(ゴクンッ)」

 

俺はもう一度扉を開けた。

 

「「「お帰りなさいませ。ご主人様っ!」」」

 

「……」

 

(ギィーーーッ、がしっ!)

 

「っ!」

 

「ちょっと~。なんでまた閉めようとするのかな?ほらほら、一刀君入って入って~♪」

 

「ちょ!ま、まだ心の準備が!」

 

「そんなの知らな~い♪」

 

優未は俺の手を取り無理やりに部屋の中へと引っ張り込んだ。

 

「ふふっ。どうかしら一刀?」

 

「し、雪蓮。それに優未もなんでその恰好を?」

 

雪蓮に優未、それだけじゃない。蓮華に冥琳、呉の面々がみんなメイド服を着ていた。

 

「似合うでしょ~」

 

雪蓮はクルリと俺の前でメイド服を披露する。

 

(ぴょこ、ぴょこ)

 

「ん?雪蓮。その頭」

 

雪蓮が一回りした時、頭の上に普段はないものが動いていた。

 

「あっ、気が付いた?どうどう?これも似合うでしょ。これは明命の提案を採用したのよ♪」

 

「明命の提案?」

 

「そ♪まあ、そこんところは面倒だから省略ね」

 

「まったく。北郷にはこの趣旨をちゃんと伝えなさい雪蓮」

 

雪蓮の後ろからこれまた綺麗な毛艶のネコミミメイドの冥琳が現れた。

 

その凛とした振る舞いはなんだかメイド長みたいだった。

 

「え~。それならかくかくしかしかでこうなりました。どう、わかった?」

 

「……全然わかりません」

 

「え~。今の説明で分かりなさいよ。それじゃ、冥琳あとよろしくね」

 

「はぁ、まったく……簡単に言えばだな。明命と北郷が話していたねこかふぇ?に興味を持ったのだよ雪蓮は」

 

「ネコカフェ?ああ、そう言えば数日前に明命と話してたな。でもそれが何でネコミミメイドに?」

 

「天の国では執事とメイドと云う給仕をする職業があるそうではないか。それを以前、蓮華様が話していたのを雪蓮が聞いてしまったのだよ」

 

「ああ。もしかして、それを合わせたらこうなたってこと?」

 

「まさにその通りだ」

 

冥琳はやれやれといった感じで首を振った。

 

「まあ、俺としては嬉しいんだけどね。冥琳の綺麗な姿も見れたわけだし」

 

「そ、そうか?お前が喜んでくれたのならやった甲斐があるというものだ」

 

冥琳は嬉しそうに微笑んでくれた。

 

「ハイそこ!いい雰囲気にならないでね。可愛い可愛い明命ちゃんがお出ましなんだから!」

 

優未は話に割ってはいる目の前に明命を連れて来た。

 

明命の猫耳は黒耳で黒髪と凄く自然で可愛らしかった。

 

「うん。可愛いね明命」

 

「はうあ!そ、そんなことはありません!」

 

「謙遜しないの!それに明命ちゃん凄く可愛いよ~♪もう一刀君にじゃなくて私にご奉仕して~」

 

優未は可愛いものが大好きだから明命の事をマスコットみたいにいつも愛でていたが今日はいつも以上だな。

 

「あぅあぅ。わ、私は一刀様にその……」

 

明命は恥ずかしそうにもじもじしながら俺を上目遣いで見つめてきた。

 

「この~明命ちゃんに愛されるなんて一刀君め……」

 

「それを俺に言われても……それに優未も十分可愛いよ」

 

(ひょこんっ!)

 

「ホントホント?ホントにホント?」

 

優未は猫耳をピンッ!と立て、身を乗り出して何度も聞いてきた。

 

「あ、ああ……」

 

「わ~い!一刀君に可愛いって言われた~♪」

 

「うぉ!」

 

優未は嬉しさのあまりか俺に抱きついてきた。

 

それにしてもこの猫耳どう動いてるんだ?さっきから喜んだりすると耳がぴょこぴょこ動いてるんだけど。

 

「か、一刀……」

 

「蓮華?」

 

俺の背後から少し遠慮しがちに蓮華は話しかけてきた。

 

「そ、その……お、おか、お帰りなさいだ、旦那様……」

 

「っ!!!!」

 

な、なんて破壊力だっ!蓮華の恥らう姿とその言葉に俺は雷に撃たれた。

 

「~~~~っ!う、ううぅ~~、や、やっぱり恥ずかしいわ!」

 

蓮華はその場にへたり込んでしまった。

 

「蓮華……」

 

俺は蓮華の両肩にそっと手を置いた。

 

「一刀……」

 

「もう一回言ってくれるかな?」

 

「~~~~っ!い、いや~~~~~~っ!!!」

 

「あ、蓮華!」

 

蓮華は顔を赤くして逃げてしまった。

 

(チリーン……)

 

「貴様……蓮華様に何を言った」

 

「っ!い、いえ何も!」

 

音もなく思春は俺の後ろに立ち鈴音を俺の首に当ててきた。

 

「ふん。それにしても、なぜ私までもがこんな恰好を……」

 

「え?思春もメイド服に猫耳なのか?」

 

後ろから話しかけられているせいで思春の姿は見えていない。

 

「っ!う、煩い。似合わないのは分かっている。だが、こんな恥ずかしい恰好を蓮華だけにさせるわけにはいかないだろ」

 

思春の猫耳メイド……

 

「お、おい。何か喋れ」

 

「うん。可愛いかも」

 

俺は思春の姿を想像して思わず口から出てしまった。

 

「~~っ!ふん!」

 

(ゴツンッ!)

 

「いてっ!行き成り何するんだよ思春」

 

「煩い。今度そんな浮ついた言葉を言ったらただでは済まさんぞ」

 

思春は俺の頭を殴り、そのまま蓮華を追いかけて行ってしまった。

 

だが、思春の猫耳はどことなく嬉しそうに動いていた。

 

「あ、あの一刀様」

 

「おい、北郷。いつまで待たせるつもりだ」

 

「ぐはっ!さ、祭さん。痛いよ」

 

「何を言うか。ワシらを無視しておいてこれで済んだだけでありがたいと思え。のう、亞莎よ」

 

「あ、あの。その……か、一刀様。お帰りなさいませ!」

 

祭さんは俺の背中を叩くと腕を組んで仁王立ちをした。その横では亞莎が恥ずかしそうに定番の掛け声を言っていた。

 

「亞莎は前にも似たような服をあげたけど良くにあってるね」

 

「あ、ありがとうごいます!」

 

「おい。北郷。ワシはどうなのだ?」

 

「祭さんは……」

 

猫耳メイドの姿で堂々と立たれてると何といいますか……いや、これを言ったらきっと殺される。そうに違いない。

 

「う、うん。似合ってるよ」

 

「その一瞬の間が気になるが許してやろう」

 

ホッと胸を撫で下ろす。生きてるって素晴らしい!

 

「もぉ~。一刀さん。そんなに私を無視するなんて~ぇ酷いじゃないですかぁ~」

 

(むにゅぅ~)

 

「うぉ!こ、この背中に当たる弾力は!?」

 

それにこの声。見なくても分かる。我が呉軍において一番の胸を持つ少女。穏だ。

 

「……あれ?」

 

振り返り穏を見る。そしてあることに気が付いた。確かに服装はメイド服だった。だけど猫耳ではなかった。この白と黒のまだらな耳はまさか……牛!?

 

「あはは~。どうですかこの耳?みんなと同じだと思ってたんですけどぉ~。私だけ違ったんですよぉ~」

 

俺はそこで雪蓮を見る。きっと雪蓮が原因だと思ったからだ。

 

「♪(ぐっ!)」

 

雪蓮は微笑み親指を前に突き出した。

 

いやいや!グッジョブじゃないだろ!まんまストレートだろ!それにどこで調達してきたんだよこの耳は!

 

心の中で雪蓮にツッコミを入れる。

 

「まあまあ、とにかく座って座って!はい!」

 

俺は部屋の中央にあった椅子に座らせられた。そしていつの間にか戻ってきた蓮華や思春、何処からともなく現れた小蓮も加わり全員で俺を囲んでいた。

 

「……」

 

なんだこれ……凄く居づらい。

 

みんなの顔は三者三様。笑っているのも居れば、恥ずかしがっているものも居る、中には射殺すくらい睨みつけている人も若干一名いる。

 

「あらあら、ふふふっ♪」

 

部屋の隅から余裕のある口調に微笑むような笑い声が聞こえてきた。

 

「っ!そ、その笑い声は永久!」

 

「お久しぶりですね一刀さん」

 

そこには雪蓮や優未と同じ恰好をした永久が微笑みながら立っていた。

 

「……」

 

「あらあら、如何致しましたか一刀さん?」

 

「え?あ、いや……見惚れちゃいました」

 

「あらあら」

 

「むっ!」

 

「いひゃひゃ!ゆ、ゆうひ!?」

 

頬を膨らませて優未は俺の頬を抓ってきた。

 

「もーっ!永久様ばかり見てないで私を見てよ一刀君!」

 

「か、一刀、そ、その……わ、私だって恥ずかしかったけど一刀の為にと思って……」

 

「貴様、蓮華様を悲しませるようなことがあれば、わかっているな?」

 

「もーっ!一刀はシャオの夫なんだから私だけしか見ちゃダメなんだから!」

 

「ちょっと小蓮様っ!ここぞとばかりに一刀君の夫って主張しないでほしいな!」

 

「ふ~んだ。そんなのシャオの勝手だもーん」

 

「なにをぉ~!だったら私だって一刀君のお嫁さんになるんだから!」

 

「よ、嫁っ!?か、一刀?一刀はやっぱり優未みたいな子が好きなの?」

 

「北郷ぉ~。貴様ぁ~!」

 

思春は今にも俺に飛び掛ってくる勢いだ。

 

「ふふっ。さて、一刀はどうするのかしらね♪」

 

「楽しんでいるな雪蓮」

 

「当たり前よ。でも、永久に見惚れてたのはちょっと許せないのよね。……どうしてくれようかしら♪」

 

いやいやっ!睨みつけながら語尾に『♪』とかつけないよね、普通!

 

と、とにかくまずは蓮華を慰めないと俺の命が危ない!

 

「だ、大丈夫だ!蓮華は十分可愛いよ。それに俺が蓮華を捨てるわけ無いだろ」

 

「そ、そうよね。一刀がそんな事をする訳無いわよね」

 

よし。これで蓮華は大丈夫、なんだけど……

 

「「むーーーっ!」」

 

逆にシャオと優未は頬を膨らませて睨んでくるし……俺にどおしろと!?

 

「はいはい、二人とも。今は一刀をご奉仕する時でしょ。そんな顔をしてると一刀に嫌われちゃうわよ?」

 

雪蓮は俺に助け舟を出してくれた。

 

「ぶー。一刀君に嫌われるのはやだよ。はぁ、仕方ないな~」

 

「そ、そうよね。一刀の夫になるんだからこれくらい寛大な心でいないと」

 

ほっ……これでなんとかなったか。

 

「それで、なんでここに永久がいるんだ?」

 

「ふふっそれはね……」

 

「雪蓮さんに頼まれたのです」

 

微笑む雪蓮は永久に目線を向けると永久が続きを話し出した。

 

「一刀さんを喜ばせるような面白い、もとい、素晴らしい薬は無いかと仰いまして」

 

「今、面白いって言いましたよね?」

 

「気のせいです♪」

 

「……」

 

笑顔で即答されると何も言い返せなくなる。というか、永久の笑顔有無を言わせぬ気迫があった。

 

「ま、まあ。それでこの猫耳なわけ?」

 

「はい。ですが少々違いますね」

 

「違う?」

 

「はい。この薬はその人にあった動物の耳が生えるようになっているのです」

 

ああ、だから穏は牛なのか。永久の言葉に妙に納得してしまった。

 

「あれ?でもなんで他の皆は猫耳なんだ?明命や雪蓮、優未は分かるんだけど」

 

「厳密には猫耳ではないのですが……まあ、猫耳でいいでしょう」

 

ん?猫耳以外でこんな形の耳ってあるのか?

 

「ちょっと一刀?それはどういう意味かしら?」

 

「え?明命は猫が好きってことだろうし、雪蓮や優未は気分屋で興味のあることしかやらなっ!いへへっ!」

 

雪蓮は笑いながら俺の頬を捻り上げた。

 

「ふ~ん。一刀って私のことそう思ってたのね。ふ~ん」

 

や、やばい!雪蓮のこの顔はやばい!こういう時の雪蓮は何をしでかすか分からないんだ!

 

ひょ、ひょにかく!くふりほこうかはわはった!(と、とにかく!薬の効果は分かった!)

 

俺は雪蓮に抓られながら永久に答えた。

 

ひょ、ひょころへ、こほくふりのこうかはどれくはいふふくんだ?(所で、この薬の効果はどれくらい続くんだ?)

 

「そうですね。一日も経てば元に戻りますわ」

 

「え~。一日しか持たないの?なんだかつまんなーい」

 

「あらあら。優未さん?この薬、本当は効果がとても強いのですよ。もし原液のまま飲んでしまうと……」

 

「の、飲んでしまうと?」

 

「一生その動物になってしまいます。それでもよろしいのかしら?」

 

「っ!(ブンブンブンッ!)いいえ、結構です!」

 

優未は全力で首を振って遠慮した。

 

「まあ、一刀のお仕置きはこれくらいにして……そろそろ始めるわよ」

 

「えっ?な、なにを?」

 

「だからさっきも言ったでしょ?一刀にご・ほ・う・しよ♪」

 

「僭越ながら(わたくし)もご奉仕させていただきますわ」

 

そういうとみんな一斉に俺の周りに集まりはじめた。

 

「「「ご主人様(旦那様)、今日はゆっくりしていってくださいね♪」」」

 

あれから数刻が経った。外は既に暗くなり始めていた。

 

みんなからの奉仕、といても、喫茶店の真似事だからお茶とかの振る舞いくらいしかなかったわけだが……

 

「うっぷ……いくらなんでもお茶だけで30杯は飲ませすぎだろ……」

 

俺の腹はまさに水太り状態だった。

 

そして、最後に部屋から出る時。

 

『ほらほら、思春。最後くらいは言ってあげなさいよ』

 

『雪蓮様がそう言うのであれば……北郷』

 

『……ご、ご主人様、逝ってらっしゃいませ』

 

あの時の思春本気で怖かったな。だって『行ってらっしゃい』が『逝ってらっしゃ』って言うくらいだから。そうとう嫌だったんだろうな。

 

「まあとにかく、これで暫くは雪蓮も落ち着くだろう……」

 

俺はもう夕飯を食べる気も起きないから部屋に帰り寝ることにした。

 

「……ふぁぁあああ」

 

大きな欠伸を一つして部屋に入る。

 

「うぅ……おやすみなさい」

 

俺はそのままベットに倒れこみ眠りに就いた。

 

「ふふふっ♪まだ寝かさないわよ一刀」

 

「……え?」

 

が、俺の耳元で囁く声に顔を上げた。

 

「はぁ~い♪」

 

「雪蓮?」

 

そこに居たのは雪蓮だった。しかもまだメイド服を着たままだ。

 

「優未も居るわよ♪」

 

「えへへ♪こんばんわ、一刀君。さっきぶり♪」

 

雪蓮の言ったように明度服を着た優未も俺の部屋に居た。

 

「どうしたんだ?俺お腹一杯で動けないんだけど」

 

体を起こしベットの横にある蝋燭に火をともそうとした。

 

「ふふっ。そんなの決まってるじゃない。ご奉仕しに来たのよ」

 

「は?」

 

雪蓮の言葉に蝋燭に火をつけようとしていた手が止まった。

 

「私と優未で一刀にご奉仕しちゃうの♪」

 

「しちゃうの♪って……っ!?」

 

そこで俺はあることに気がついた。

 

月明かりから覗かせる雪蓮の目は獲物を見つけた獣のような目をしていることに。

 

『厳密にはネコミミではないのですが……』

 

その時、永久の言葉が甦った。

 

「あ、あの雪蓮?参考までに聞きたいんだけど……それ猫耳だよね?」

 

「ふふっ♪猫耳、ねぇ……」

 

違う!これは猫耳じゃない!

 

雪蓮の含みのある笑いに俺はそう判断した。

 

じゃあ一体何の耳なんだ!?

 

「ねえ。一刀。私達呉にとって一番縁のある動物って何だと思う?」

 

「縁?……なんだろう」

 

「ふふふっ。そ・れ・わ・ね♪……虎よ」

 

虎……確かに雪蓮の母親の異名は江東の虎だったけど……まさかっ!

 

「そ♪私のこの耳はね。虎耳よ♪」

 

「ついでに私の耳も猫耳じゃなくて永久様が言うには豹らしいよ」

 

そして、笑う優未の瞳も雪蓮と同じように獲物を見る獣の目をしていた。

 

ちょ!そ、それって両方とも猛獣じゃないか!

 

「ねえ雪蓮。私、もう。我慢できないよ。いいよね?」

 

「仕方ないわね。それじゃ最初は優未に譲ってあげるわ」

 

「やった~♪」

 

「ちょ!ゆ、譲るっていったっ」

 

「いただきま~~~す!んちゅ!」

 

「んっ!?」

 

優未は俺の言葉を遮り強引に抱きつきキスをしてきた。

 

「ん……ちゅっ……あはは。一刀君の味だ……美味しい。もっと頂戴一刀君……んんっ、ちゅぷ……ぁ、……じゅる……んんっ」

 

優未は一旦は口を離したが直ぐにまた俺の口を塞いできた。

 

「か、じゅと……じゅる……くん……ほう?きもひい?……んちゅ、わたひの口、きもひい?……んぁ」

 

こんなに求められて気持ちが良くない訳無いじゃないか……

 

「ひゃんっ!か、かじゅほっんんっ!……じゅるじゅる……一刀君……は、はげひいよぉっ!……」

 

優未の積極的なキスにスイッチが入ってしまった俺は優未の口、舌を貪るように吸い付いた。

 

「……むぅ~。ちょっとぉ!優未にだけそんなに凄いのするなんて。見てる私の身にもなってよね」

 

「……雪蓮もおいで」

 

「きゃ……もう、大胆なんだから一刀は……んっ……ちゅっ……」

 

口を尖らせている雪蓮の腕を取り無理矢理抱き寄せキスをする。

 

「一刀君。もっと……もっと優未にもキス、して」

 

「だ……めよ……じゅぷ、んん……今は私としてる……だから。ん……ま、へなさい」

 

「うぅ……いいもん。なら私は一刀君のここに……キスしちゃうんだから…………んちゅ」

 

不貞腐れる優未は突然俺のズボンを降ろしはじめた。

 

「う゛っ!ゆ。優未?」

 

「えへへ♪一刀君のだ。久々だよぉ……ちゅ、ちゅ……」

 

優未は頬を染めて俺のものをまじまじと見つめていた。

 

「ちょっと。優未だけずるいわよ」

 

「ん……雪蓮は一刀君にキスされてるんだからいいじゃんよ~」

 

「ふ、二人とも落ち着いて」

 

「よし!なら勝負よ優未」

 

「望むところ!」

 

「お、俺の話を聞いてくれ!」

 

「一刀は…」

 

「一刀君は…」

 

「「黙っ(てなさい)(てて!)」」

 

「は、はい……」

 

二人に同時に言われ何も言えなくなる。

 

「なら勝負は……」

 

「もちろん。どちらが一刀をより気持ち良く出来るかよ」

 

「はぁ!?な、なんでそこで俺が出てくるわけ!?」

 

まずいまずいまずい!こ、このままだと俺……搾り取られる!

 

俺は自分の危機を察して雪蓮たちに気づかれないようにベットを抜け出した。

 

「……っ!な、なんで扉が開かないんだ!?」

 

上手くベットから抜け出せたと安心したのもつかの間、なぜか扉が開かなくなっていた。

 

『あらあら。どちらへお出かけですか一刀さん』

 

「と、永久!?な、なんで扉の前に居るんだ」

 

『それは、雪蓮さんに言われて(わたくし)が扉を開かないようにしているからですわ』

 

「なっ!」

 

「一刀。何処に行こうとしているのかしら?」

 

「そうそう。一刀君が居ないと勝負が出来ないでしょ」

 

「あ、いや。その……と、永久!ここを開けてくれ!」

 

俺は向き直り永久にここを開ける様に願った。

 

『それは出来ませんわ』

 

「な、なんで!?」

 

『術で明け方まで開けられないように致しましたから。ついでに窓も同様ですわ』

 

「な、なんだって!?」

 

俺は慌てて窓に駆け寄った。

 

「……っ!ほ、本当に開かない!」

 

(ガタガタッ!)

 

窓に手をかけるとびくともしなかった。

 

「ふふっ。覚悟はいいかしら一刀?」

 

「あ。いや……お、落ち着こう雪蓮!」

 

「一刀君。私ここでは初めてだけど二度目の初めて貰ってね♪」

 

俺は後ずさり部屋の隅へと追いやられた。

 

「一刀」

 

「一刀君」

 

「「頂きます♪」」

 

「い、いやーーーーーーーっ!!」

 

静かな夜の宮殿に俺の声が響き渡った。

 

「これでよしっと」

 

手紙を書き終えて筆を置く。

 

「……誰に書いてるのかしら?」

 

いつの間に起きたのか背後から雪蓮が俺に抱きついてきた。

 

「あ、ごめん。起こしちゃったか?」

 

雪蓮の手を握り囁くように話しかける。

 

「ううん。そんなこと無いわよ。なんとなく起きちゃっただけだから。それで、誰に書いてたのかしら?」

 

「桃香だよ」

 

「ふ~ん。内容が気になるけど一刀は見せてくれないのよね?」

 

「当たり前だろ?これは個人同士のやり取りなんだから。もちろん、呉に不利益になるようなことは書いてないよ」

 

「そこらへんは一刀を信用してるから気にしてないわ」

 

雪蓮はそう言うとさらに俺に体をくっつけてきた。

 

「どうかしたのか?」

 

「ん~。まだ一刀に甘えたいのかも♪」

 

「困った猫だな」

 

「あら。私は虎の子よ?」

 

「そうだった」

 

「ふふっ」

 

「ははっ」

 

お互い可笑しくなり笑い合う。

 

「ん~……おはようござまふ……(ボフンッ)」

 

起きたかと思われた優未は朝の挨拶をするとまたベットに突っ伏してしまった。

 

「まあ、まだ夜明け前ですものね」

 

窓の外を見てもまだ空には星が輝いてきた。

 

「そだね。それじゃ、もう少し横になろうか」

 

「ええ……ちょ、一刀?」

 

「たまにはこう言うのもいいもんだろ?」

 

俺は雪蓮を抱きかかえベットへと歩き出した。

 

「そうね。でもこんな姿、蓮華には見せられないわね」

 

確かに、蓮華が見たら予想だが俺の命は無い気がする。

 

「ふふっ。そうなったら私が助けてあげてもいいわよ?」

 

俺の考えていることが分かったのか雪蓮がそんな事を言ってきた。

 

「本当か?」

 

「ええ。でも、代わりに一刀はずっと私のものになるけどね」

 

「すでに半分は雪蓮のものになってる気がするけど?」

 

「それもそうね」

 

雪蓮は微笑みながらも否定はしなかった。

 

「では、姫。よい夢を……ちゅ」

 

「ん……一刀もね」

 

二人でベットに横になり。外が明るくなるまで寝ることにした。

 

「ねえ一刀。腕枕して欲しいわ」

 

「了解」

 

雪蓮は俺の腕を枕にして体を寄せてきた。

 

もちろん優未の事も忘れては居ない。雪蓮と同じように優未を起こさないように頭を上げて腕枕をしてあげた。

 

「ん~……一刀君」

 

寝ぼけているのか腕枕をしてあげると優未は俺に体を寄せてきた。

 

雪蓮と優未、二人に腕枕をしているせいでまったく動くことは出来ない。

 

「おやすみなさい一刀……ちゅ」

 

「ああ、おやすみ雪蓮」

 

挨拶程度の軽いキスを交わすと雪蓮は眠りに就いた。

 

「……」

 

俺は雪蓮の寝顔を見て思った。

 

これからも雪蓮と優未に振り回される毎日を送るだろう。けど、今は二人の幸せそうな寝顔を見て眠りに就こう。

 

《End...》

葉月「またまた遅れてしまいました!」

 

愛紗「万死に値するな」

 

葉月「ひどっ!いいじゃないですか!前回のお話でキス出来なかったのをここで実現したんですから!」

 

愛紗「そ、それに関しては感謝はしているぞ」

 

葉月「それと、前回でオマケをかけなかったので今回書かせてもらいました」

 

雪蓮「ふふっ。久々の一刀との交わりは気持ちが良かったわ」

 

優未「えへへ。一刀君、優しくしてくれたな♪」

 

愛紗「……(ジャキ)」

 

葉月「ちょ!な、なんで私に刃を向けるんですか!」

 

愛紗「いや。何となく腹立たしかったのでな」

 

雪蓮「あらあら。ヤキモチ?」

 

愛紗「ち、違うぞ!断じて違う!」

 

雪蓮「はいはい。それじゃ、そう言うことにしておいてあげるわ。ところで葉月、聞きたいことがあるんだけど」

 

葉月「なんですか?」

 

雪蓮「今回の私たちの話って『アフターストーリー』ってことになってるけど、『番外編』とは何が違うのかしら?」

 

葉月「ああ、それはですね。簡単に言ってしまえば『アフターストーリー』はその後の話で、『番外編』はもしも話です。だから番外編は三国志の世界に戻らず、現代での話を描いています」

 

優未「へ~。だから一姫は『番外編』だけにしか出てこないんだね」

 

雪蓮「一姫。不憫な娘!」

 

葉月「まあ、仕方ないですね。それが運命というものです」

 

優未「一姫も可愛いんだけどね~。華琳に狙われてるみたいだから逆に手が出せないんだよね」

 

葉月「まあ、優未も華琳に襲われたことがありますしね」

 

優未「うぅ。お、思い出させないでよぉ。あの時の事を思い出すと恥ずかしくて顔から火が出そうになるんだから」

 

愛紗「お前たちだけで話を盛り上げるな!」

 

雪蓮「あら、愛紗居たの?」

 

愛紗「……(ジャキ)」

 

葉月「だからなんで私に向けるんですか!?」

 

愛紗「お前が話を戻さないからだ!」

 

葉月「ひどい!酷い言いがかりだ!」

 

愛紗「ええい!いいから早く話を進めろ!もちろん現在進行している方だぞ!」

 

葉月「はいはい。ということで雪蓮√のお話はここまでにして蜀√にもどしますよっと」

 

雪蓮「ぶーぶー!横暴だ」

 

優未「そうだそうだ!」

 

葉月「はいそこ!茶々入れないの!私の命にかかわるから!さて、今回はちょっとした日常を書いてみたんですけど」

 

愛紗「あれが日常では困るのだが?」

 

葉月「星にからかわれるのがですか?」

 

愛紗「……程度は違うが日常で行われている」

 

葉月「それじゃ、一刀にキスされることですか?」

 

愛紗「い、いや。それも違うが……別に毎日されても……」

 

葉月「ん?何か言いましたか?」

 

愛紗「っ!な、何も言っていないぞ!私が言いたいのは政務の事だ!」

 

雪蓮「愛紗は毎日一刀にキスされたいんだってよ」

 

優未「私ならキスされないなら自分からしにいっちゃうけどなぁ」

 

雪蓮「愛紗はそこらへんがヘタレだから出来ないのよ」

 

優未「そっかぁ。恋愛ヘタレなんだね」

 

雪蓮「そう。恋愛ヘタレ」

 

愛紗「……恋愛ヘタレ言うなぁぁぁあああっ!」

 

葉月「のわぁぁぁあああっ!だ、だからなんで私を狙うんですか!」

 

愛紗「はぁ、はぁ、も、もう我慢ならん!葉月!貴様はここで屠る!」

 

葉月「なんでそうなるんですか!折角キスシーンを書いてあげたのに!」

 

愛紗「だったらなぜ最後に雪華が登場したのだ!あれはどう見てもお前の仕業だろうが!」

 

葉月「そんなの決まってるじゃないですか。あのまま綺麗に終わらないのが私です!」

 

雪蓮「葉月グッジョブよ!」

 

優未「いい仕事してるね~」

 

愛紗「いい仕事ではない!」

 

葉月「それじゃ愛紗と一刀の絡みはこれからは無しってこどで」

 

愛紗「なぜそうなる!?普通に書けといっているだけだろ!」

 

葉月「えー」

 

愛紗「えーではない。えーでは!まったく……とにかくこのことについてはじっくりとお前と話す必要があるようだな。この後ここに残ってもらうぞ。もちろんお前には拒否権は無いからな」

 

葉月「うぅ~。助けて雪えもん!」

 

雪蓮「だれが雪えもんよ。やぁ~よめんどくさい。それに見てた方が楽しそうだしね。あ、お酒と肴持ってこよっと♪」

 

優未「それなら私も雪蓮に付き合おうかな~♪」

 

葉月「ひどい!この人たち酷い!」

 

愛紗「さあ。話が纏まった所で行くぞ……ああ、終わりの挨拶くらいは許してやろう。さっさと済ませて来い」

 

葉月「はい……ぐすん。えっとそれでは皆さん。次回、生きていたらお会いしましょう。さらばです」

 

雪蓮「ばっはは~い♪」

 

優未「じゃね~♪」

 

愛紗「次回もよろしく頼む……さあ、行くぞ」


 
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