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真・恋姫†無双 雛里√ 鳳凰一双舞い上がるまで 第三章 14話

TAPEtさん

いつもの如く長引くわ・・・これじゃ同人祭りに間に合わん

2011-12-10 19:45:42 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2795   閲覧ユーザー数:2476

真・恋姫†無双 雛里√ 鳳凰一双舞い上がるまで 14話

 

真「真理ちゃんと」

倉「……遙火の」

真「あらすじコーナー(…な)」

 

真「てわわ、倉ちゃんテンション低い…」

倉「……あたし、最近影薄い。真理ちゃんより薄い」

真「てわわ…そういえば、前回出番なかったもんね」

倉「…これって何?」

真「うん、これはね。作者のオリジナル物語である今までの話についてこれていない人たちのために、簡単に今回の話をまとめ上げてみよう

 

 

という、左慈おばさんの企画だよ」

 

「ちょっと、おばさんって何!?」

 

倉「…………(ギロリ)」

 

「ひぃっ!」

 

真「は、遙火ちゃん、そんなお母さんのことを虫けらを見つめるかのように……」

倉「……で、あたし、何すればいいの?」

真「えっと、遙火ちゃんは、今回の物語の重点的な話にどれだけ追いついているの?」

倉「……正直、あまり良く分からない。蜂蜜が悪いというのは解った」

真「そっか。それじゃ、第二章9話から始まった豫州反乱編で散らばっている情報を一つに集めて、どんな問題があって、これをどう解決するつもりか見てみよう」

 

 

真「まず、豫州で起きた重い関税について。これはいつから始まったのか確かではないけど、恐らく孫堅さんが死んで、袁術軍に脅威となった孫家が没落した辺りからではないかって推測されるよ」

倉「どうして?」

真「自分たちの敵が消えたから、もう自分たちが好き勝手やった所で、不意を突くものも居ない、と袁家の元老たちが思ったんだよ。以前孫堅さんが生きているときに今のようなことをしたら、袁家が失った人望は、そのまま孫家に行くことになったでしょうからね。でも、孫家のない今は袁家の力は遠くは荊州と揚州まで届いてる所だから、民たちが重税に苦しまれてもどこかに訴えるところもなかったんだよ」

倉「……ひどい」

真「そうだね。でも、その中でそんな袁家と結託した者が居たよ。それが今回の最も大きな問題を起こしてる『阿片の入った蜂蜜』を売った商人だね。恐らく、その商人は袁家と結託してその蜂蜜を豫州にばら撒き後で大金を絞る考えをしていたと思うよ。そのために、収益の一部を袁家の元老たちに渡すことを条件に他の品物には課す重税を無しにしてもらったんだ。元老たちの側では、更にお金が入る上に、蜂蜜好きな袁術さんがコレにかかれば、きっと今以上に豫州を思うがままに操るが出来るでしょうから、好都合だったはず。易い単価で蜂蜜をばら撒いた商人は、後で阿片中毒になった人たちが多くなるとその価格を一気に上がらせて、大きな収益を得ようとしていたんだね」

倉「……実際に、汝南の街ではそんなことが起きた」

真「そう、その話を耳にして動き出したのが、太史慈さん。太史慈さんは以前青洲で悪政をし街の有力者たちに賄賂を強要する官吏を殺したことで殺人者となって豫州に身を隠していたけど、この事件によってまた姿を表したんだよ」

倉「…でも、太史慈にソレ教えた人って」

真「うん、その話はちょっと後にしよう」

 

真「太史慈さんが動き始めると、これを察知した袁術軍では、孫策に太史慈さんの討伐を命じるけど、これには実は表面の話とは少し違う訳があるよ」

倉「何?」

真「豫州で結託していた商人と元老たちの間の和解があったんだよ。理由は分からないけど、恐らく元老たちの方で自分たちへの割合を多くするように言ってきたとか、そういう話じゃないかな?とにかく、既にばら撒いたものがあるから損をしないためにも商人は元老たちの条件を飲むしかなかっただろうけど、このままやられるわけにはいかない。そう思った商人は、元老たちを破滅させるために豫州の民たちを利用することにした。反対側の元老たちは商人のこんな動きに気づいて、袁術さんを利用して、太史慈さんの討伐という形で、商人を殺すための仕掛けをしておいたんだよ」

倉「……これって、ただ欲望まみれな人たちが仲間割れして泥仕合になっただけだよね」

真「そうだね、民たちや孫策さん、そして袁術さんたちまでも、これの犠牲になったことでしかないよ。でも、これを事前に気づいていても何も出来なかった張勲さんたちや、そもそも関心がなかった孫策さんたちにも非はあるよ」

倉「そういうものなの?」

真「袁術さんが相手だと安易過ぎていた孫策さんの場合、本当に警戒すべき相手を間違っていたわけだし、張勲さんたちの場合、袁術さんをちゃんと守れなかったことに問題があると言えるよ。既に時は遅れているけどね」

倉「……太史慈が孫策に同盟を申し込んだのは?」

 

 

真「太史慈さんは最初は孫策に同盟を申し込むつもりはなかったよ。自分たちでもできると思ったでしょうね。でも、そうするように吹き込んだのは商人の方だよ。もし太史慈さんが死んだ場合、袁術軍に勝てるような駒を増やすためでもあるし、もし放っておいて袁術軍の力が弱くなった際に、知らないうちに仕掛けて来て豫州を奪われては、自分の計画が全部パーになっちゃうからね。商人の側で一番良い状況は袁術軍の元老たちが太史慈さんと孫策同盟軍によって抹殺され、更に太史慈さんと孫策の間で豫州の独り占めするための戦いが始まる図だね」

倉「……孫策ならやりそう」

真「でも、孫策はこれを断ったよ。理由は、今袁術さんという盾をなくすには、自分たちの力がまだまだ弱いと思ったわけだね。でも、これでは商人の思う通りにならない。だから、商人は太史慈さんを説得し、自分が孫策軍を動かせるように仕掛けたんだよ。

 

そして、それ今回の話になるね」

 

倉「…じゃあ、これから太史慈&孫策が袁術軍と戦うことになるの?」

 

 

 

雛「そうさせないのが私たちの役割だよ」

真「てわわ、雛里お姉さん」

倉「……どこに行ってたの?」

雛「それは私の台詞だよ。二人ともこんな所で何してるの?」

倉「……あたしは真理ちゃんが付いて来てっていうから」

真「てわわ!遙火ちゃんが私を売ったよ?!」

雛「あわわ…駄目だよ、倉ちゃん。自分がした行動に責任を取ることが大事なんだよ」

倉「………ごめんなさい」

 

 

雛「うん、というわけで、長い間説明聞いてくれた人も、長くてスクロール下ろした人もここ注目です。ここから、私たちのたーんです」

真「でも、どうするんですか、雛里お姉さん。この状況、もう戦争を止めることは不可能に近いです」

雛「そうかもしれないけど、そうでもないよ」

真「てわわ?」

雛「詳しくは言わないけど、一刀さんが居ない今、私は今回の被害を最小限にするための策を練ったよ。そして、そのためには二人も自分たちの役割を果たしてもらうよ」

倉「……役割?」

雛「そう、今まで場面に散々動かされた私たちだけど、ここからは私たちが状況を動かす番だよ

 

 

それじゃ、本編はじめましゅ!」

 

真「てわっ、雛里お姉さん、大事なところなのに噛んでます」

倉「…久しぶり」

 

 

 

 

 

 

冥琳SIDE

 

「雪蓮!!」

 

昼報告を聞いた私はその場で雪蓮を探した。

でも、いつもの如く部屋に居なかったせいで、あっちこっち探しまわったら、東屋で黄蓋殿と酒を注いでいた。

 

「あはは……げっ」

「ん?何じゃ、策殿……っ」

「……二人とも何をやっているのです!」

 

雪蓮はともかく祭殿までこうも…まったくうちも武将枠と来たら全員酒盛り盛りで、文台さまの時からこうだ。

 

「えっと…冥琳も呑む?」

「あぁん?(ギロリ)」

「直ぐに政務に戻ります」

「今はそういう場合ではない!」

 

一大事なことが起きた。

 

「…何?どうしたのじゃ」

「雪蓮、この前太史慈が協力を求めたことを断ったと言ったな」

「ええ、…それが何かまずかった?」

「……どうやら向こうから仕掛けてきたようだ」

「なんですって?」

 

 

 

「孫策!」

 

と、雪蓮と話をしていたら、向こうから北郷が走ってきていた。

 

「一刀?どうしたの?」

「街で噂がながれていたぞ。お前が裏で太史慈と結託して袁術を討とうとするって」

「なっ!」

 

正しくその通りだった。

ここだけではなく、豫州にもそういう噂が全体的に広まっているらしい。

恐らく、もう袁術の耳にも入っているだろう。

 

「私はそんなことしてないわよ?あなたも見たじゃない。私が奴も目の前で断ったのよ!」

「問題はそこじゃない、雪蓮。問題は今民たちが、我々が太史慈と同盟を結んだと思っていることだ」

 

このままでは…我々は太史慈と一緒に袁術を討つしか方法がなくなる。

完全にやられていた。ただの民衆の反乱だって思っていたのが、こんな手を使ってくるとは…

 

「そのまま無視したらどうじゃ?どうせただの虚言じゃ。実際に儂らが出立せねばどうにもならぬ」

「そうも行かないのですよ。既に袁術軍が我々を敵と認識しているかもしれませんし、そもそも我々が太史慈を助けなければ、勝敗に関係なく我らに悪影響になります」

 

袁術軍に疑われることはもちろんだし、もしこのまま袁術の言う通り太史慈を打てば民たちの中で悪評が広まることは確実。

 

「……どの道、私たちが独立することには致命的ね」

 

そう、これは最初から選択肢なんてない選びなのだ。

太史慈は最初から我々を自分の戦いに巻き込むつもりで居たのだろう。

だとすれば…この戦いに乗って、袁術を討ったとしても、我々の立地は安定しないかもしれない。

 

「…どうすればいいの、冥琳」

「……取り敢えず、太史慈の話に乗るしかないだろう。先手を打たれた以上、我々に出来ることは少ない」

「…太史慈と組んで袁術を討つしかないって」

「……そうなる」

 

こちらの立場が完全に読まれている上で仕掛けられた罠だった。

もう我々に残された選択はないといってもいい。

 

 

 

孫策SIDE

 

してやられたわね……

でも、あの時あった太史慈が本物だとすれば、こんな卑劣なことをしてきそうな様子はなかったのだけど……

 

「おかしい」

「一刀もそう思う?」

 

一刀がつぶやいた言葉に私も同調する声を出してみる。

 

「太史慈がこれを命じたとは思えないわ。恐らく、太史慈の裏で動いている奴がいるのでしょうね」

「…だとすれば、これはもはや革命などではない。これもまたただの権力争いの一種だ」

「何?」

「孫策、僕は太史慈が戦争をしようとすることを別に止めるつもりはなかった。なぜなら、それは『革命』だからだ。民たちが己の立場に不満を持って、自らの力で立ち上がるとしたら、僕もそれを止める気にはならなかった。でも、こんな手を使ってくるということは、何か後ろめたい……孫策、この戦いに参戦することは泥沼に自ら浸かることでしかないぞ」

「わかっているわ。……分かってるけど」

 

もう避ける方法がないわよ。私たちが黙って入れば、勝手に広まった流言と私たちがやってない戦いによって、私たちの未来を壊されてしまう。

そうするぐらいなら、自ら泥沼の中だとしても陥るしかない。

 

「この戦争を止める」

「そんなの無理よ。もうあっちは戦う気まんまんなのよ?」

「恐らく、袁術もそれなりに準備をしているだろう」

「周瑜、もしお前が太史慈だとして、孫策を巻き込む理由はどこにあると思う?」

 

一刀は突然冥琳にそう聞いた。

 

「戦力補強だろう。太史慈の軍は数は多いとしても所詮は民の群れだ。ちゃんとした経験もなければ、人を殺したことさえもない人たちも多いだろう。そんな人たちを集めて戦ったとしても大きな被害が出ることは間違いない。だから我々を自分たちの戦列に組み入れ、被害を最小限にしようとしているのだ。

 

「だけど、そんなことしてもし孫策が太史慈を追い越して袁術を討った功を独占すれば?豫州を乗っ取られる可能性もあるだろ」

「そうかもしれない。が、知っての通り我々には自分たちだけで豫州を治めるほどの余力がない」

「でもそれは向こうも同じなはず……………ならこの戦いの目的は他にあるんだ」

「他にだと?袁術を討つことが目的ではないということか?」

「そう……それだよ、周瑜。袁術が討たれればどうなる。袁家が滅びれば豫州には『誰も居ない』。分かるか?」

「どういうことだ?袁術が居なくなれば、恐らく太史慈は自分が豫州を治めようとするだろう」

「そうだ、でもソレをほっとけない奴が居る。それは……」

 

……私だね。

 

「散々利用されて、自分だけ良い所持っていかれても困るし」

「そう。そこからが本当の混沌の始まりだ。袁術という腐っていても豫州を支えていた柱が居なくなれば、豫州はまさに泥沼の状態。その混沌とした状態で豫州を陥らせることこそがこの戦いの目的だ」

「でも、何のためによ」

「そうした方が良いからだよ。……『商売』に」

 

……!

 

「豫州が混乱に陥れば民たちは更に絶望に落される。誰もが望むだろう。こんな世は嫌だと、死にたいと、ここから逃げたいと。そんな人たちが探すのが何か?麻薬、逸脱……阿片を売り付けるにはもってこいの状況なんだよ」

「なら北郷、お前は太史慈の裏に居るのが、例の蜂蜜を売った商人だと思ってるのか?」

「他にこの状況で得する奴が居ない……」

 

……一刀の言う通りなら、私たちはただ利用されるだけってことになる。

私、冥琳や祭、穏だけじゃなくて、私のために戦う兵士たち私を慕う人々まで……皆犠牲にされる。

 

「英雄ごっこさえもなかったわ。ただの餓鬼よ。食っても食っても収まらない欲望のために人を犠牲にする餓鬼」

「戦で哀しむ人は何万だけど、たった一人喜ぶ奴のために起きるのが戦だよ……上で勝ってるたった一人のために何千何万の命が散って涙が江に成る……僕も惑わされてたのかもしれない。人のためになる戦争があるって……そう思っていたのが行けなかったのかも知れない。…孫策、どうする」

「………一刀、あなたが言いたいことは分かるけど、私は私を信じてくれる人たちを守る義務があるわ」

「……わかった」

 

戦には、巻き込まれた以上やるしかない。

 

「冥琳、太史慈に伝令を出して。協力するって」

「わかった」

「策殿、やる気か?」

「ええ、どの道、もう袁術との関係を維持することは出来なさそうだし」

「じゃが、それじゃと向こうの思いツボじゃ」

「そうかもね。ソイツがこの戦が終わるまで生きていればの話だけど」

 

所詮は商人一人よ。

一度正体と知った以上、これ以上隠れていられると思わないことよ。

 

「戦なんて始めさせないぞ」

 

一刀がそう言った。

 

「戦を止めるのはあなたの仕事よ。出来るのならやってみなさい。でも、私たちに邪魔になるようなことがあったら、その時はまた敵同士よ」

「…………」

「さようなら、一刀、楽しかったわ」

「…ああ」

 

 

 

 

一刀SIDE

 

分かり合えるとは思わなかった。

ただ、確認したかった。孫策と僕の違いを。

 

同じ状況、同じ情報で、同じことを考えてるはずなのに、

僕が出した結果と孫策の結果は逆のものだった。

 

蓮華には悪いけど、僕はここに居られそうにない。

 

「僕は豫州に戻る。お前は出来るだけで良いから反乱を遅らせてくれ」

「…冥琳、出来る?」

「やって見なければ分からん。向こうの戦力も確かに知っているわけじゃないからな」

「頼む。僕は寿春に戻る」

「歩いて行くと何日かかるわよ?」

「馬なんて乗っていけるか。そっちに行く荷馬車でも乗ってもらえば良い」

 

取り敢えず、戻って雛里ちゃんたちが大丈夫か確認しておこう。それから、……もう袁術を説得して見るしか無い。

袁術を説得して袁家元老たちを制圧出来れば、民たちへの圧政を止めさせて、民衆の不満が反乱という形で起きる前に止められるかもしれない。

 

「さよならだ、孫策」

「ええ」

 

出来れば、もうお前とは二度と会いたくないものだ。

 

・・・

 

・・

 

 

 

「寿春に?最近はそっちに行く商人はほぼ居ないぞ。そっちに行っても商売にならないからな」

「じゃあ、まったく流通がないはずないだろ」

「ないんだよ、全然。最近は豫州との行ったり来たりする通行も全然ない」

「マジか……」

 

どんだけひどい状況なんだろう。今の寿春は。

雛里ちゃんたち、大丈夫なんだろうか。

三人を危険な目に合わせないために置いてきたのだったのに、逆に危険な目にあってないか心配だ。

 

「…どっかで、荷馬車を借りれるところなんてないだろうか」

「馬ならともかく荷馬車は無理だろ。馬は乗れんのか」

「ああ、……もういっそのこと、歩いていくことを考えた方が……」

 

「あの、すみません」

 

うん?

 

「あ、あなたは…前の医者さんでは…」

「……?ああ、以前の城での方なんですね」

「あの時は世話になりました」

 

ここに来て風邪で倒れている間、世話になっていた女医者さんだ。

顔が隠しているけど、頭までぐっと隠す外套と江東出身と言っても少し焼けている肌が特徴的だったので誰だか直ぐにわかった。

 

「いえ、病者を治すことが、わたくしの務めですから。感謝されるほどのものではありません」

「ところで、ここにはどのような用件で…」

「はい、聞くと寿春に行かれるそうですが」

「はい、でも、寿春に行く馬車とかもありませんし、馬も乗れなくて……」

「あの、良ければわたくしも連れていってはもらえないでしょうか」

「へ?」

「わたくしも寿春に用事があるので……あ、わたくしに、少しボロいけれど、使えそうな馬車があります。馬さえ買えれば、馬車で行くことが出来ます」

「本当ですか?」

 

助かった!

でも、

 

「どうしてお医者さんは自分と一緒に行かれようとしてるんですか?」

「それが……少し事情がありまして…」

 

そう言いながら、お医者の人はかぶっていたマントから顔を出した。

そしたら…

 

「あ」

「……こんなもので……」

「……綺麗ですね」

「え?」

 

あ!?そうじゃくて!!

しっかりしろ、僕!お前は雛里ちゃん居るだろうが!

 

「その目が…」

「はい」

 

その人は目を閉じていた。恐らく、見えないのだろう。

だから、一緒に連れて行ってくれる人が必要なのか。

 

「分かりました。寿春まで一緒に行きましょう。しかし、大丈夫なのですか?自分と一緒に行って」

「そうですね。実はわたくし、目は見えないですが、その人を触ってみれば、その人がどんな心を持った人かわかるのです。僭越ながら、あなたが倒れている間、あなたの顔を触らせていただいた時、あなたがとても良い人だと分かりました。だから、信用してお頼みしているのです」

「良い人……ですか?」

「はい、あなたはとても良い人です。良すぎて、寧ろそれが裏に出るほどに御人良しです」

「うぐっ」

 

そこまで言われるとほめ言葉じゃないよな。

 

「気を障らせてしまったのなら謝ります。でも、私の触診は大体当たります」

「……まぁ、分かりました。一緒に行きましょう」

「はい。あ、そう言えば、患者であった時、あなたの名前をお尋ねできてませんでした」

「あ、はい、自分は北郷一刀って言います」

「!!」

 

?……なんか少し様子がおかしかった気が……

 

「……どうかしましたか?」

「…いえ、大丈夫です」

「お医者さんの名前はなんでしょうか」

「私……ですか?私の名前は『セツ』です。姓は訳あってお伝えできませんが、『セツ』って呼んでください」

「分かりました。じゃあ、自分は馬を手配してみますので、セツさんはここで少しまっていてください」

「ええ、お願いいたします」

 

なんか、とても不思議な感じがする人だな……

まぁ、この世界だと大体そういう感じだろうが、

それにしても、思いの外凄く綺麗な人だったな。ココに出る英雄たちは大体美人だが、それを遙かに越えてる。目が見えてたらもっとすごかっただろうな。

 

……ああ、この考えやめっ!

ってかそんな場合かよ。今州一つが滅びるか否かする状況なんだぞ、僕!

 

 

 

雛里SIDE

 

ポキッ!

 

「!?」

「ど、どうしたのですか、鳳統さん」

「指の力だけで筆を折るとは、すごい握力ね」

「あわわ、ごめんなさい」

 

………良く分かりませんが、帰ってきたら殴らせてください、一刀さん。

 

「張勲さん、この手紙たちを、私が言った人たちに届けてください」

「それは良いですけど……本当に大丈夫なのですか?こんなのあの二人に送った所で彼らが美羽さまを助けてくださるとは思えませんが…」

「大丈夫です。それについてはちゃんと手紙に書いてありますし、私が知っている限りの情報だと、袁術さんに害を成すようなことはないと思います」

「………」

「七乃、鳳統ちゃんに頼ると言ったのはあなたの意見よ」

「…そうでしたね。既に私たちだけではどうすることもできませんし、鳳統さんの言う通りにしましょう。でも、もし美羽さまに何か悪いことが起きるとしたら……」

「………分かっています、安心してください」

 

ここまでが恐らく、私に出来ることの全てです。

後は全部他人任せとなるでしょう。

…一刀さんが居てくれたらもっと楽なのに……

 

一刀さんのバカ。

 

 

 

 

 

 

 


 
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