No.344831

First Contact -Patchouli-

初音軍さん

過去作より(コメも大分前)。アリスとパチュリーの恋愛
として、という意味での最初。
出発が地霊殿から、というのが遅すぎる感がすごいのですがw
この時はまだ地霊殿やれてませんでしたね~。
今はプレイできてます。ただ・・・いつノーマルでクリア

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2011-12-08 17:32:13 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1600   閲覧ユーザー数:394

まさか、この私がアリスとここまでの関係になるとは思っていなかったわ・・・。

始まりとしては魔理沙が呼びつけるものだから、地底の探索に協力するのも興味があった

からやむなしだったのに、同時に呼びつけた河童にその役目を取られてしまい。

持病を押してでも来たことに損を感じて疲れていた所だった。

 仕方なく残された私とアリスはゆっくりと飛びながら帰っていく途中でアリスが

盛大に溜息をついて言葉を吐き出していた。

 

「まったく、魔理沙にも困ったものよ。せっかく色々用意しておいたのに」

「本当にね」

 

 興味はあったが、その道が絶たれればどうしようもない。ふと、私の視界に大量の人形

を抱えている中に以前にも見た、ロックされている魔導書を見つけた。

 私の知る世界では見たことのない魔導書で、先ほどまで魔理沙が探索する場所への興味

よりも、彼女が持つ本の方に興味が湧いてきた。

 話しかけようにも、以前の異変の時にもあまり会話したことがなかったせいか

どういう風に話を始めればいいかわからなかった。諦めるのは容易いが本への執着が強く、

私は思い切ってアリスに問いかけていた。

 

「ねぇ、そういう本ってまだあるのかしら?」

 

 

 全てはそこから始まった。数日後、本への気持ちが強い私は普段、図書館から出ずに

篭っていても本に関して何も不自由がなかったから何の問題もなかった・・・だけど、

異世界の本と聞くと蒐集することも叶わなく、かといって咲夜など使って強奪するほど

非紳士的なことはしたくなかった。

 

「少し埃っぽいけど」

「構わないわ」

 

 私は魔法の森の中に存在していたアリスの家の中へ入れてくれた。確かに少々埃っぽい

が書物のとは違う匂いを感じることができた。日があまり入らない玄関に手探りでランプ

を取り出して火を点す。良い油を使っているのか、灯りの範囲が思ったより広い。

 リビングらしい場所につくと、部屋中に異様な視線を感じて周囲を見渡すと、うっすら

とした灯りでいい感じに迫力の出てきた人形達を見つけることができた。

 

「可愛いでしょう。私の人形」

「え、ええ・・・」

「今、紅茶を入れるから待っていて」

 

 リビングのカーテン越しに光が漏れているのがわかる。ここを開けると幾分マシに

なるか。だが、この雰囲気の中での読書は慣れているから、私は指定された席に座り

アリスが来るのを待った。

 ほどなくして、出された紅茶は綺麗な色合いから湯気が出ていて美味しそうだった。

その後、角砂糖の入った瓶を出され、私は4つか5つほど入れると少し驚いた顔を

アリスはしていた。

 

「甘くない?」

「私にはちょうどいいわ」

 

 体力がひどく衰えているために、頭脳だけでカロリーを消費しているために、糖分を

その辺の人間や妖怪より摂取したところで何の問題もない。

 アリスはあまりダラダラするのが好きではないのか、はたまた、人形以外にはあまり

興味を示さないのか、さっそくいくつかの魔導書を人形に運ばせてきていた。

 どれも、見たことがあるようで、根本の魔法の基礎の部分が幻想郷のとは違っていて

面白かった。私の集中力にアリスは苦笑しながらも、何も言わずに読んでいる私を

眺めていたのを感じる。

 

「そうだわ、私のも貴女に見せてあげる」

「え、いいの?」

「私だけ読ませてもらっては悪いわ・・・」

 

 言って、何か役に立つかもと持ってきた。新しいスペルに関わりそうな魔法の元素の

組み合わせなどを記した、私が直接書き下ろした魔導書だ。その辺には盗品でもなければ

存在もしない本である。アリスはすごく目を輝かせて私の渡した本を開いて読みふける。

 これでお互い何も気にしないで目的の本を読めるっていうものだ。書物の最後に

魔界出版と、幼稚な名前が書かれていて、私は含み笑いをしていた。魔界・・・こことは

違う、世界か。魔界自体にあまり興味のない私は、一つ深く息を吐いてアリスを見た。

 すると、アリスの方もほぼ同時に私がいる方向へと視線を移した。

 

「すごいわね、ここまで高度なのはあまり見たことないわ」

「貴女のも魔術の基礎が幻想郷と違って興味深いわ」

 

 お互い、軽く感想を言い合って、あまりに気が合うように感じて笑っていた。

魔理沙と違って持ってきてくれた書物は全て綺麗に保存されていた。それも、魔力が

かかったような。彼女の趣味に対する丁寧さに私は関心していた。

 

 

 それからというもの、私はことあるごとにアリスと出かけては新鮮に感じるような

本を紹介してもらったりした。店の名前は香霖堂とか言っていたかしら。月へ行くための

方法を記したのを含め、外の世界から漏れてきた本など私の図書館以外での興味は

尽きなかった。

 ある日、私はレミィに呼ばれて、レミィの部屋に訪れた。お嬢様らしいフリフリな

装飾を施されたベッドのシーツや目に染みそうな赤いワインなどが目に付いた。

開いているカーテンから色白の光がレミィと照らしていてとても幻想的である。

 

「パチェ、最近楽しそうにしているわね」

「えぇ、そうね」

「妬けるなぁ・・・。そんなにあの人形遣いのことが気に入っているの?」

「どうしてそんなことを私に聞くのかしら?」

 

 振り返らず、私に質問するレミィに逆に質問を返すと、ややゆっくりながらも振り返る

その姿はどこか寂しそうでもあった。今までに私がこれまで食いついたことがないから

驚いているのだろうか。

 

「どうしてって・・・」

「そのことでレミィが何か困ることがあるの?」

「まぁ・・・座って」

 

 言われたとおりに月が見える方の椅子に座るとレミィは私と向かいになるほうに

ゆっくり座ると、肘を突きながら俯きながら黙っていると、私は何となくレミィの考えて

いることがわかった気がした。

 

「親友が取られそうで怖かった・・・とか」

 

 カマをかけるとドキッと一瞬動揺していたのが見て取れた。図星か・・・。

少し顔を赤らめて困ったような顔をしながらレミィは口を噤んでいた。他にも理由が

あるのだろうか。

 

「とにかく、パチェは体が弱いから気になって」

「アリスはいい子よ。私の体に気を遣ってもくれるし・・・なに、レミィ。まるで

ヤキモチみたいね」

 

 私がからかうように笑うとレミィは顔を真っ赤にして怒るように言葉を吐き捨てる。

 

「そ、そんなんじゃないわよ!べ、別にパチェと話す機会が減ったから寂しくなった

とかじゃないんだからね・・・!」

「ふむ・・・その言葉の傾向は以前に香霖堂に行った際に見た「ツンデレ」という性格の

に似ているわね」

「もう・・・パチェったら・・・」

 

 いつもの余裕さが見受けられず、少し慌てる仕草が珍しくてついからかってしまった。

この館にお呼ばれされた私は親友であるレミィには感謝している。それまで他人と

関わったことなどほとんどなかったのだから。

 

「ありがとう、レミィ」

「ん・・・まぁ・・・」

 

 複雑そうな表情をしながら照れくさそうにしているレミィは少し嬉しそうだった。

 

 

 それからも、アリスが紅魔館の大図書館にお邪魔しにきて二人で本を読んでいたり、

スペルの研究をしたりした。一人では考えられない組み合わせや発想などが二人だと

上手くいったりして楽しかった。でも、それとは別に何か一つの感情が生まれようと

していたのを、私は心の隅で感じ取っていたのかもしれない。

 ただ、その時はやっていることに夢中で気付かなかったか、気付かないことにしようと

していただけなのか。

 

 

 ある日、アリスと待ち合わせをして香霖堂に立ち寄る。相変わらず少々埃っぽくて

薄暗く、湿っぽい店内だったが、売り物らしい品物はきちんと管理しているのか、

すごく状態がいい。

 

「パチュリー、奥に行くわよ」

「ええ」

 

 あらかじめ、店主には言っているのか。アリスと私が中に入ろうとしても何も

言わなかった。中に入ると、整理しきれていない商品が多数、ごちゃごちゃに

置かれていた。見たこともない小型の機械類などもあった。開閉式になって数字が

羅列したボタンと、上には透明なガラス。上下の端には小さな開いていた。

 

 私が物珍しげに見ていると、傍でゴソゴソ何かを探していたアリスが私に声を

かけてきた。

 

「パチュリー、貴女。こういうのは持ってないでしょう」

 

 少し埃を被ったアリスは自信持って腰に手を当てて開いた手でその本を持って

どうだ、と言いたげなすごく良い笑顔を私に向けている。

 ドキッとその時、胸が少し弾んだような気がした。少し頭の回転が鈍りながらも

その本をじっくりと眺める。確かにうちの図書館にはないような本の種類である。

何かの文献だろうか、魔術書だろうか。どちらにせよ、綺麗な施工をされている

カバーを見ていると心が躍りだしそうだ。

 

 その時だった。外から騒がしい声が聞こえてきた。おそらく魔理沙だろうか。

ズカズカと音を立てて店主に声をかけているように聞こえる。私が本から目を

逸らそうとしたときに、アリスの手が私の口元に手が伸びて、

強い力で引き寄せられた。

 その力でバランスが崩れて商品の山にアリスの上に乗るように倒れこんだ。

幸い、山は崩れることはなかったが私の全体重がアリスに乗っかっていることに

なる。私が動こうとすると、アリスは小さな声でしっと私の動きを制止させる。

 続けてアリスはこう呟いていた。

 

「これを魔理沙に見られたらどうなる・・・?」

「奪われることは・・・必死ね」

「でしょう? だからしばらくはこうしていましょう」

 

 気配を殺して息を潜めて、しばらく外のやりとりを意識していたが、それとは

別に背中からアリスの温もりや柔らかさを感じて、胸の高鳴りが収まらない。

私は、音を立てずにアリスの方へと視線を向けると。

 

「あっ・・・」

 

 アリスが熱を帯びたような少し赤い顔をしていた。切なくも熱い息を漏らした音が

すごく色っぽい。それを見た私も心の隅においておいた意識が強く感じられたのか

顔が熱くなって、やや手が汗ばんでいた。

 

「パチュリー・・・」

 

 今までと違い、私を求める声の色合いが少し変わったような気がした。私も、友人とは

別の感情を彼女に見ている自分に気付いてしまった。よりにもよってこんな状況で。

すっかり、周りの音は静けさに満ちていたが。私たちの鼓動が収まることがなく、動く

ことが非常に難しく思えた。

 

「アリス・・・。私、貴女のことが好きみたい・・・」

 

 普段の生活からの様子で好きなものに対する丁寧さに楽しそうにしている笑顔。

あまり感情を表に出さない彼女の素顔が少しずつ増えていくのを見て、いつからか

私はこんな感情を覚えていたのかもしれない。その心に秘めていた言葉を自然に

口から零れていた。

 もしかしたら、これで友人としての関係も終わってしまうかもしれないと思ったのは

口から発した後だから、もう後はアリス次第であった。私は軽く目を瞑っていると

額から汗が滲んで一筋流れていく感覚があった。珍しく緊張しているようだった。

 しばらくの沈黙を置いて、私はダメだったか。と、数百年ぶりの新しい友人を

失うかもしれない、そう思っていた矢先に。額に汗とは違う温度を感じた。

柔らかくて、幸せを感じさせそうな暖かい感覚。

 

「アリ・・・ス?」

 

 恐る恐る目を開けて下にいるアリスに視線を向けると、アリスは変わらず赤らめて

とろけそうで、それでも少し余裕を含めた微笑を浮かべて私を見つめていた。

 

「パチュリーの汗も甘いかなって思ってたけど。やっぱりしょっぱいね」

「アリス・・・」

「私も・・・貴女のこと。ずっと気になっていたの・・・」

 

 信じられない言葉が聞こえてきたが、アリスの表情と比べても聞き間違えではない

と思えた。すぐにアリスは口を開いて、微笑みながら少し眉間に皴を寄せていた。

 

「こんな・・・根暗で独りよがりな私を・・・。そんな風に想ってくれて・・・」

「アリス・・・」

 

 根暗で独りよがりなのは私も同じだ。私より喋るし、社交的に見えたアリスが

そう思っていたのは予想外で、そして、目に涙を浮かべて赤くしているアリスが

とても愛しく感じていた。そして、口元を軽く震わしながらアリスも私に言葉を

届けてくれた。

 

「私も・・・パチュリーのことが好き」

「アリス・・・」

 

 私は今までにあまり感じたことのなかった感情が胸全体に広がるような感覚に

しびれるみたいに、全身の力が抜けて再びアリスの胸元に倒れた。

 

「だ、大丈夫・・・?」

「えぇ・・・。なんだか力が抜けちゃったみたい」

 

 まるで緊張の糸が緩んだみたいに、私は体を動かしにくくなっていた。そんな

私にアリスは優しく包み込んでくれて、再び私は目蓋を閉じて視界をシャットアウト

する。なんだろう、この気持ちよさは。なんだろう、このスッキリとした気分は。

薄暗闇にいる中で、私はまるで晴天の下にいるような晴れやかな気分でいられた。

 

 

「パチュリー、そこはそうじゃないって!」

「何を言っているの。私の理論は完璧よ・・・!」

 

 それからというもの、大図書館に遊びに来て二人で調べ物をしたり本を読んだりする

時間が増えて、楽しい日々を送っているが。時折、研究のときにこうやってアリスと

口げんかのように言い合うことも増えていた。

 少しイラッとはするが、それと同じくらい、自分の中で充実しているのを感じることが

できた。アリスもそう思ってくれているだろうか。思っているはずだ。

 嫌なら、ここへ来ることはないだろうし。いつも、最終的には何事もなかったかの

ようにお互いの意見を交換しているのだから。

 

「こ、こらー!パチュリー様!いつもの侵入者が・・・!」

 

 小悪魔が遠くで叫んでいるのを聞いて、私とアリスは騒がしい音が聞こえる方向へ

視線を向けると、魔理沙が勝手に本を漁っているのを発見した。

 

「いくわよ、アリス」

「えぇ、今度こそ魔理沙にギャフンと言わせてやるんだから」

 

 二人で殺気むき出しにして魔理沙に向かって飛んでいくと、ギョッと反応した魔理沙が

私とアリスの牽制弾幕に驚いて軽く悲鳴を上げていた。

 

「ひっ、ふ、二人でかかってくるなんてズルイぞ!?」

『問答無用!』

 

 こうやって、新たな楽しみを幻想郷で見出せた私の人生はアリスという七色の色彩を

加えて充実したものとなった。この、一時がずっと、色褪せずに続けばいいと思った。

 


 
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