No.342283

人類には早すぎた御使いが恋姫入り 十二話

TAPEtさん

啓示を受けました。
これは……天から受けた啓示でした。

2011-12-02 13:19:15 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:5053   閲覧ユーザー数:4078

「こんなもの作る暇があったら勉強しなさい!」

 

それは、俺が初めて作った料理だった。

インスタントではなく、ちゃんと自分の手で野菜を斬り、フライパーンに炒めて、ご飯を混ぜた炒飯だった。

その日は母の誕生日で、父が家に帰って来ないことを知った俺は、家で独りで過ごすことになる母のためにと、初めて自分の力で料理の仕方を学んだ。

そして、その俺の熱心の結晶体は、目標とした母の口ではなくゴミ箱に入ることになった。

 

「一刀、ママのいうことを聞きなさい」

 

その日まだ俺は父が家に帰って来ないという意味を的確に理解していなかった。

その以来、父を見た覚えはない。

最も、

 

「あなたは特別な子よ。あなたはこんなことに時間を無駄にしていてはいけない子なの」

 

その原因となったのが俺だったことは間違いない。

俺は特別な人間だった。

母は俺をその才に相応しく育てようとしたが、父はそれに反対した。

二人の間の喧嘩は俺の頭の中では、二人が俺の記憶からなくなるまで絶えることを知らなかった。

 

「だから、あなたはもっとあなたのためになることをしなさい。あなたが興味を持つことをしなさい。心からやりたいと思うこと。こんな誰にでも出来ることではなくて、あなたにしか出来ない、誰も出来ない、あなたしか出来ない、そんな興味のあるものだけを探しなさい」

 

「……イエス、マミー(Yes, mommy)」

 

 

・・・

 

・・

 

 

 

「Mr.北郷」

「………」

「病院からの電話だ。君のははの臨終が近いらしい」

「……ドクター、来月にサイエンス誌に投稿予定だった論文、下ろした方が良い。誤謬が見つかった。こんなの発表したら笑いものにされるぞ」

「私の話を聞いているのか、Mr.北郷。君の母が君を探しているらしい。最後に君に会いたいと」

「興味ない」

「何?」

「人の死なんていつか訪れる至極当然の現象。俺の母の死は既に半年前から決定されていたことだ。今更何の興味もない」

「興味がどうとかの問題ではないだろ!君の母が亡くなられるのだ。行って臨終の場を守らなければならないのではないのか!」

 

 

「……彼女が望んだことだ。俺は『興味ない』」

 

 

 

 

桂花SIDE

 

春蘭たちが城の制圧を終えて、一度報告をしに戻ってきた。

 

「華琳さまは大丈夫か?」

「分からないわ。確認したくても入れてもらえないし……」

「まったく!これも全部アイツが悪いのだ!!せっかくあの黄巾党の連中も蹴散らして、華琳さまの名を天下に広げることが出来るというのに、アイツのせいで台なしだ!」

 

これから敗戦処理のために本陣の部隊を城内に移動させて残ったものたちを片付けなければならない。

朝廷には既に文を送っている。黄巾党の本城を落とした。張角は炎の中で自殺、形体を見分けられないぐらいに焼けて、来ていた服の残材と投降した賊たちの証言によって彼を張角を確定した、と書いておいた。

結局頸は取れなかったけど、本城を落とし、黄巾党の動きを一気に消滅できた大手柄よ。朝廷からも何かしら返事があるはず。

でも、華琳さまはあの様子だし、本当に春蘭の言うとおりアイツのせいで台なしよ。

 

「そもそも、何故北郷はまた華琳さまの気に障るようなことをしたんだ」

「あ、そうよ。秋蘭、あなたもしかして西に部隊動かしたの?」

「?いや、そんなことはしていないが…もしかしてそれが原因なのか?」

「ええ、実は……」

 

私はアイツが張角たちを逃してそれを華琳さまに報告していた際に、アイツの後ろに待ち伏せていた部隊があって、彼らが逃がした張角たちを捕まえたという報告を聞いてアイツがキレたという話を二人にした。

最も、見えるようにキレたわけではないけど、逆に私があんな立場だったら、相手が華琳さまでなければその場で軍師なんてやめてあげられる。

君臣の関係といっても、最小限の礼儀というものはあるし、信頼関係というものがあるわ。

華琳さまがそんなことをなさるわけがないけど、もしも君主にすべてを捧げている臣下が裏切ることを心配して根回しなんてしたら、あった信頼でも失うには十分というものよ。

 

だけど、華琳さまでもなく、秋蘭でもなければ一体誰が…?

 

「その部隊の長はなんと言っていた」

「それが…居ないのよ」

「……何?」

「そんな馬鹿なことがあるか!」

「本当だから仕方ないでしょ!?部隊の者に聞いてもいつの間にか居なくなったというし、誰がそんな命令を下したのかも全然分からなくなったのよ」

「……桂花、少し怪しくはないか?」

 

言われてみれば………何かがおかしいわね。

誰の命令を聞いたのかもしれない部隊がアイツを警戒した華琳さまが根回しをしたかのように配置された。

もしかして、アイツが…一刀が華琳さまの側に居ることを妬んだ者の陰謀……?

…兎も角、今はアイツと話をしてみたほうが良さそうね。

 

「華琳さまの所には私が行ってみることにしよう。桂花は北郷の所に行ってくれ」

「ええ、わかったわ」

「姉者は戻って流琉と凪たちと一緒に戦後処理を……」

「秋蘭、私が華琳さまの所に行ったら駄目か?」

「姉者が………ふむ、それも悪くないかもしれないな。それじゃ、頼むとしよう」

「うむ!私が華琳さまをいつもの元気な姿にさせる!そしたらあの鼠みたいな奴も少しは自分の身分を弁えるだろう!」

 

そう言って、春蘭は華琳さまの天幕の方へ向かった。

 

「……」

 

いや、それはないでしょう。何を考えているの、私は。

春蘭がこんな小賢しいこと出来るわけないし。

 

・・・

 

・・

 

 

「ちょっと、アンタ、いつまで凹んでいて……あれ?」

 

…居ない……?

確か帰ると言っていたから自分の天幕に戻ったのかと思ったけど……どこに行ったの?アイツ。

 

まさか、以前のように一人で陳留まで帰ってしまったんじゃないでしょうね……アイツのことだからそうしてもおかしくはないわね。

まぁ……早めに誰かを送って戻ってくるようにした方が良さそうね。こんな状況でアイツの居場所が掴めないのはちょっと不安だわ。

 

「……別にアイツが見えないのが不安になるとかそういう意味じゃないんだからっ!!」

 

と、誰に叫んでるのかしら、私は…

 

 

 

 

春蘭SIDE

 

 

「華琳さm……あっ!」

 

華琳さまの部屋に入った途端、私は(幾ら頭の悪い私でも)私が考えたよりも華琳さまがご乱心ということが分かった。

部屋にある指令書や机に置いてあったはず筆が折られて地面に転がっていて、飾ってあった武具たちも散らばって、花瓶などはバラバラになった欠片が危なっかしく地面に散らばっていた。

そしてその奥に、華琳さまが一人で何も見えない寝床の天井を見あげながら無言で横になられていた。

 

「一人にさせて欲しいと桂花に言ったつもり……春蘭」

 

起きておられる。

 

「も、申し訳ありません。華琳さまのことが心配でして…」

 

取り敢えず、正直にものを言う。それが私に出来る全てだ。心を隠すことなく華琳さまに伝えること。私に出来る唯一のことで、私にしか出来ないこと。

華琳さまはいつもそんな正直な私に『春蘭はいつも真っ直ぐでかわいいわね』と言って下さった。

 

「春蘭…私はね、今まで欲しいものは何もかも手に入れてきたの。それがものでも人でも…なんでも……私が得ようと思ったら得られないものなんてないと思っていたわ」

「当然です!華琳さまが天下を望まれたからこそ、今の私もあるのですから。華琳さまが望むものなら何でも、何があっても、この夏侯元譲が華琳さまの元をお届けします」

「……春蘭はいつも元気ね。貴女のそんな所、嫌いじゃないわ」

 

華琳さまは軽く微笑まれたが、直ぐにまたため息をつかれた。

 

「でも、今回ばかりは私も駄目」

「そんなことありません!」

「一刀は私を信用していたわ、春蘭。それが貴女達のように心から私を支えようとする忠義ではなかったとしてもね。私たちが思っているような形ではなかったとしても、彼は彼なりの方法で私に尽くしていたし、彼は私に自分が持っているすべてを見せようとしていたの。でも、私が彼のそんな気持ちを無駄にしたの。まるでそんな思いなんてものともしないかのように踏み躙って、駄目にしてしまった」

「華琳さまのせいでは……」

「少なくとも彼はそう思ったでしょうね。……私には分かるわ、春蘭。彼は私に言い訳をする時間すら与えてくれないわ………彼が私に求めていたもの。私が彼に求めていたもの……もうどっちも得られなくなってしまった……」

「華琳さま……」

 

私は華琳さまがおっしゃっていることがちゃんと理解できなかった。

秋蘭がここに居たなら、もっと華琳さまを励ませる言葉を考えられたかもしれない。

でも、今の私には、何も出来なかった。

 

 

華琳さまは独りでいらっしゃった。

私が居て、秋蘭が居て、他の多くの家臣たちがいたが、華琳さまは常に独りで居られた。

そんな華琳さまにとって、北郷はこの時期唯一華琳さまと並んで居られる存在だった。

そして、そんな『アイツを失った』華琳さまの当時の悲しみがどれだけ深いものだったのか、

 

私がそれを知るのはもっと先……大分先のことになる。

 

 

 

 

一刀SIDE

 

そこは凄く冷たかった。

心まで凍りつくかのように冷たい何かが私を包むかのような、そんな世界。

とても慣れていた世界。とてもつまらない世界、興味なんてない世界。

 

世界はとても複雑な形をしていた。それは誰もが知っていること。

だが俺にとって複雑という単語と難しいという単語は同位置に立つ言葉ではなかった。

 

それだけ複雑な道でも、俺にはその先が見えて、

人にとってどれほど難しいことでも、俺はその後のことまでも気づいてしまう。

だからこそ世界がつまらなかった。何も俺の予想からはずれることなく進む世界。

俺は……ただ、この世界に生きる『興味』が欲しかった。

俺に生きる楽しみを与えてくれる何かが……

 

でも、世界は俺の望みを叶えるにはその『複雑』さが『簡単』すぎたのだ。

 

 

 

 

「ぷはーっ!!はぁ……!」

 

冷たいのは当たり前だ。冬の黄河に流れていては心が凍るかのように冷たいのも当然のこと。

 

「はぁ…はぁ……」

 

体が思うように動かない。

石膏の包帯が水をすって重い。

両脚と片腕も、まだ残った痛みと水の冷たさで動きがままならない。

 

「ちっ」

 

陸までが遠い。

この体じゃ無理だ。

 

 

 

 

「あの!!これ、掴まえてくださーーい!!!」

 

 

ガーン!!

 

ガッ!?

 

「はっ!?ごめんなさい!大丈夫ですか?!」

 

……ぁぁ…

跳んできた縄が結ばれてる剣を掴もうとしたら、丁度てっぺんに落ちた。

危うく救助なじゃく確認射殺になるところだった。誰だか知らんが、助かったら一言や二言言わせろ。

 

「引っ張りますよ、えいっ!!」

 

と言いながら女の声が聞こえたが、縄から伝わる感覚といえば、黄河に流される感覚だけで、縄が引っ張られているとは全く思えない。

普通の村娘がこんな剣を持っていたとは思えないし、武人ならいくら何でも力がなさすぎる所が、どうも状況が噛み合わない。水が冷たいせいか、頭もちゃんと動かない。

とにかく、あっちで力不足なら、後はこっちが生きるためにあがくしかない。

そう思った俺は、縄を背中にして、剣を包帯を巻いたい右腕の脇に挟んだままぐるっと回った。

剣が縄と俺の体をちゃんと固定させたのを確認して俺は片腕縄を掴み、縄を引っ張り始めた。

 

 

 

 

??SIDE

 

ふと振り帰って見ました。

私は、皆を助けてあげたいと思って、旅を初めて、沢山仲間たちを得て、そして今まで私たちがやっていることが、人を助けることだ、幸せに出来る道だ、そう思いながらここまで来ました。

 

でも、ふと振り返ってみれば、

私たちがやっていることは、本当に人を助けることなのでしょうか。

何故か皆はそれを疑いません。私がやっていることがそうじゃないわけがないと言ってくれる娘も居ます。

でも、振り返ってみたら、私たちがやってきたことって、なんでしょうか。

賊の討伐?賊も人じゃないわけではないです。私は…人を殺す以外に何もしていないわけなんです。

私たちが歩いてきた道は本当に私たちが望んで居た道なのでしょうか。

 

それだけならまだ良いです。私は……私はふと気付いたら、何もできていなかったのです。

強くもなくて、頭が良くもなくて、ただ心だけ先走ってここまで来たのです。

気付けば私は、仲間たちを引っ張るだけの存在でしかないのではないかって思ったのです。

 

皆に会う以前の私はどうだったのかな。

私は弱いけれど、皆の力を合わせれば、きっと頑張れる。そう思っていた自分も居ました。

でも、皆がどんどん、そんな私を頼りにしてくれてる姿を見ながら、私には皆からそんな風に見られるほどのことをしたことがないと気付きました。そんな能力がないことに気付きました。

 

だから思ったんです。

私に出来ることが何か探そう。

何か…私でもちゃんと出来ることを考えて、それから皆の元へ戻ろう。

そうやって、自分のちょっとした荷物だけを持って、黄河の近くまで来ました。

 

そしたら、

 

「はっ!?」

 

人が一人、河に流されて来ているのを見かけました。

まだ生きているみたいでしたけど、昨日まで降った大雨に、黄河の水の流れは凄く早くなってます。

早く助けないと、溺れ死になってしまいます。

 

そう思った私は、持っていた剣(これ、水に入ったら錆びないかな。こう見えても家宝なのに。ちゃんと振ってみたことはないけど)に縄を結んで、縄の片方は岩に結んで固定させてから、剣をその人に向かって投げました。

……幾ら私でも、人を助けるために自分も河に跳び込むなんて間抜けなことはしません!そもそも泳げませんし!(キリッ

 

ガーン!

 

「はぁっ!?大丈夫ですか!?」

 

当たりました!

投げた剣が丁度その人の頭のてっぺんに命中しました。

私、こういうのに才能あったのかなぁ…じゃなくて!?

 

「はぁ……はぁ…」

 

なんとかまだ大丈夫みたいです。

溺れた人が縄を掴んだのを確認して、私はその縄を引っ張りました。

 

「うーっ!うーーーっ!!」

 

何故かちっとも引っ張っている気がしません。

というか、河の動きに逆らうほどの力がありません!

でも、諦めるわけにはいきません!このままだと、あの人が力尽きてしまいます!

 

頑張れ、私!私にも、私にも何か出来ることがあるって見せて!

 

 

 

「……うっしょ!よいっしょ…!」

「…おい、何やってる」

 

…えっ?

 

「……早く上げろ」

 

溺れた人が自分の力だけで縄を掴んでココまで来てます!

 

「あ、はいっ!」

 

私はその人を河から引っ張り上げようと腰を下ろしました。

 

「はわっ!」

「なっ」

 

でも、一瞬その人が急に引っ張る力が強くて、逆に私が引っ張られちゃいました。

そしてそのまま

 

ちゃばーっ!

 

「きゃー!冷たい!」

「………はぁ…」

 

冷たいです!氷みたいに冷たい水が体に染み込みます!

 

「何をやってる!掴まえろ!」

「はぶっ!」

 

な、流され……

 

「ちっ!」

 

ると思ったら、溺れていた人が縄を掴んでいた腕で私の手を握りました。

 

「うぐぅぅっ!!」

 

その腕に引っ張られて、私はその人の前にまで来ました。

 

「上に昇れ!俺が下で支える!」

「あ、あなたから…」

「お前みたいなのを残して上がって居られるか!さっさと上がれ!」

 

はぅぅ……

私って、やっぱり頼りにされません!

 

 

 

 

・・・

 

・・

 

 

 

 

 

 

えー、ニジファンでは恐る恐るあげましたが、ここではっちゃけましょう。

 

ネタならまだまだあったのです。

あったのですが……

 

他の所の皆を書きたくなってきたのです。急に、何故か。

先日ではついに上の場面を夢に見まして、これは書くしかねえと思って書いたのがこれです。

 

何故いきなり一刀が黄河に落ちていたのかはオイオイ話をしようと思いますが、

ここだからネタバレします。

 

 

あのマッチョです。

 

自分の作品では稀にしか出てこないあのマッチョ野郎の仕業、と思ってください。

 

知らない方のために言っておきますと、自分の作品でメイン管理者といったら、オリキャラの左慈です。管理者の世界で貂蝉は左慈の政敵となっています。

互いに外史を見る目が違って、ある時は互いの意見の差で喧嘩が始まります。(虚々・が言い例)

 

今回もそういう類の裏話があるかもしれません。

問題はニジファンではその設定を使うには無理があるということですが……ぶっちゃけ自分はオリキャラの左慈が気に入ってますので、あのマッチョを一々登場させるつもりは全くありません。

 

 

雛里√が進まねーどうしよう……アレ止めたらもう何も書かないって言ったしね。

がんばりますか……

 

 

前週、自分の会計士試験の残り日数がついに100日を切りました。頑張ります。これから更新が遅くなるかもしれません。ご了承ください。

 

では

ノシノシ


 
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