No.341069

IMMORTAL MAN(不老不死の男の独白)

うちのサイトにあるIMMORTALの番外的作品。
テキスポ800字バトルに投稿しましたー。
IMMORTALで青年が手に入れられんかったものを、たわむれに食べたら不老不死になってしまった男。

お題・手袋、これで最後、商店街

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2011-11-29 11:19:35 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:555   閲覧ユーザー数:555

人々が言う、私は「イモータルマン」だと。

ある国の言葉で不老不死の男。

 

ああ何百回目かの冬が来る。

これで最後だと言い続けて、疲れて自分の心臓にナイフを突き立てた。

無駄なことだと気付き、旅をすることにしている。

世界は回り、戦争がおこり、国はいくつも別れて合併を繰り返す。

 

「イモータルマン」になる条件は意外に簡単だった。

今はもう存在しないけれど、昔は存在していた、人魚。

その心臓を食べるだけ。

戯れに食べた心臓は生臭い、としか覚えていない。

いつだったかな、「イモータルマン」になったのは。

記憶の彼方、思いだそうとしても無理というもの。

生まれたのもいつだったかな。

 

そういえば、ある青年がいた。人魚の心臓を探して人魚に食われた。

青年よ、死の無い生活は案外疲れるぞ。

 

木枯らしが吹く、人々の衣装も変わり、賑わうのは城下町。

このローブも、さすがに三十年使ってはぼろぼろだ。

当時新品の毛織物も三十年でぼろ布に変わった。

そろそろ、新しいローブと手袋がほしい。

この国に来たのは百回、周っていない国などないが、ここが一番豊かで盛んに商店が出ている。

気に入った、これを買おう。

 

ああ何百回目かの冬が来る。

世界が変わって人が何千何万何億死んでも私は変わらない。

 

病に侵された国王に呼ばれた。

お前は「イモータルマン」かと。

「条件は何か」と震える手で聞いてくる。

死を恐れる哀れな老人を私はみつめた。

「人魚の心臓を食べるべし」と告げれば、たちまち老人は激怒。

「童話の話をしろとはいっておらん!」

城を追い出された。

 

童話の時代から生きているのか。

「イモータルマン」も中々疲れる。

 

ああ何百回目かの冬が来る。

新調したローブもいつかやぶれるけれど、手袋は今は暖かい。

 

ああ何百回目かの冬が来る。


 
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