No.339745

恋姫夢想 ~至高の鍛冶師?の物語~ 第九話

第九話です。
相変わらずの独自設定&ご都合主義です。

ではどうぞ。

2011-11-26 17:42:40 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:5760   閲覧ユーザー数:4830

獅子が俺の店に居候をしてから数日。俺は穏やかと言える日常を過ごしていた。

もちろん今までと変わった事もあったが。

まず朝の鍛錬に獅子も加わった。と言っても身体と気の鍛錬が主で手合わせ等を

する訳では無い。本人曰く

 

「病魔と闘う為にも身体と気は鍛え続けなければならない」

 

との事。……本当に、医者じゃなくて格闘家みたいだな。

あと俺も気の鍛錬を凪の補助付きで行っている。少しずつではあるが、気の持続時間が

伸びている。が、自力で使えるのはまだ先の話、というのが凪の見解だ。

次が店主だ。獅子と会ってわずか数秒で言葉も交わさずに握手した。擬音が聞こえそうな

位の物を。……熱い者同士で通じる物があったのかもしれない。正直分からん。

で、店主が「出会いの記念だ!」と言って俺・凪・獅子の三人に飯を作ってくれた。

俺が教えた牛肉を使った丼物三種をわざわざ小丼にして。

ちなみに教えたのは薄切り肉をタレで焼いて白飯の上に乗せた「焼肉丼」、

醤油ベースの汁で煮た牛肉を白飯の上に乗せた「牛丼」、

焼いた厚切り肉をガーリックライスに乗せ、タレをかけた「牛肉丼」だ。

獅子は牛丼が気に入ったらしい。おかわりまでしていた。反対に凪は焼肉丼が

気に入ったらしい。他の二つと違ってアクセント程度に辛味を加えてあるからな。

凪はトウガラシ…というより辛いのが好物だ。

一度、凪のリクエストで激辛の麻婆豆腐を作ってみた事がある。ちなみに四川風。

ついでに使った豆腐の半分は少量の砂糖を加えて作った特製。

見ただけで汗が出る様な代物を、凪は無言で食べ続けていた。不味かったって訳じゃない。

むしろ美味しそうに食べていた。……恋とはまた違った癒しがある食事風景だった。

その後に

 

「もっと辛くても大丈夫です」

 

って言われた時は驚愕したが。

そしてこれが一番変わった事かもしれない。この街で…というより街の男の子達の間で

ある遊びが流行り出した。

それが

 

「わがみ、わがはりとひとつとなり!いっしんどうたい!ぜんりょくぜんかい!

 ………たいしょうのおにいちゃん。つぎはなんだっけ?」

「必察必治癒。病魔覆滅。元気になれ」

「ひっさつひっちゅう!びょうまふくめつ!げんきになれえ!!」

「ぐわあああ!」

 

獅子の真似をする遊びだ。

 

 

 

いつの時代、どこの世界でもああいうのは男の子には

人気らしい。

まあ、遊びの方はヒーローごっこみたいに病魔が怪物になってるけど。

で、そうなると女の子が手持ち無沙汰になってしまう訳だが

 

「ねえねえ、次は猫彫って!猫!」

「ええ~~、私は犬がいい!」

「鳥さん!鳥さん彫って!」

「順番に待ってなさい。ちゃんと彫ってあげるから」

 

俺が木の彫り物で相手してる。

珍しい事に、俺は急な仕事も無く、暇だった。が、店の外でお茶飲んでたら

子供達に広場へ拉致られた。それで現在の状況に至る。

ちなみに凪と非番だった華雄も一緒にお茶してたんだが

 

「…ぐわああ」

「駄目だよ楽進の姉ちゃん。もっと、ぐわあああ!って感じに叫ばないと」

「ぐ…ぐわああ」

「もっと大きく!華雄様みたいに!」

 

 

「その程度でこの私が倒せると思ったか!」

「負けるか!華雄様…の姿をした病魔め!」

 

男の子達の遊びに巻き込まれてたりする。華雄に至ってはすごい乗り気で相手してる。

どういう訳か華雄も凪も男の子達に人気がある。

街中でも良く声をかけられるそうだ。

後、獅子はこの場にはいない。朝から別の場所で患者を治療している。

 

 

 

 

 

「そろそろ夕飯時だな。皆もう家に帰りな」

「うん。じゃあまたね、華雄様、大将のお兄ちゃん、楽進のお姉ちゃん」

「また明日な!華雄様、兄ちゃん、姉ちゃん!」

「じゃあね~~」

 

子供達はそれぞれの家に帰って行った。

 

「…ふう」

「あれくらいでだらしないぞ、楽進」

「いや華雄。見てた俺でもかなり大変だと思うぞ」

 

むしろ今の凪が普通じゃないかって思う。

 

「子供ってどうして遊びになるとあんなに元気なんでしょう」

「子供だから…としか言えんな」

「同じく」

 

そして俺達も帰路に就く。その道中、複数の視線をビシバシ感じたが。

途中で華雄と別れ、凪と二人で店に戻ったんだが

 

「真也!」

「獅子?わざわざ店の前で待っててどうした」

 

何故か獅子が店の中でなく店の前で待っていた。

 

「すまん!こいつを鍛え直してくれないか!」

 

そう言う獅子の手には、ポッキリと折れた鍼数本があった。

 

 

 

 

 

 

後日、獅子の鍼を鍛え直したので、獅子本人に確認してもらっている。

普通の鍼としてならともかく、獅子は鍼に気を通して使う。

今まで俺は気が使えなかった為、その辺りが全く分からないからだ。

 

「どうだ?」

「大丈夫だ。むしろ今までより気の通りがいい」

「そうか。それは良かった」

 

鍛え直して前より悪くなったなんて事になっても、今の俺にはどうにもできないからな。

 

「……真也、作ってもらってから言うのもなんだが、代金は…」

「気にしなくていい。今回は無料だ。次回からは代金をもらうが、それ程じゃないから

 心配するな」

「……お前の料金はかなりの物と聞いたが」

「まあ、そうなんだが、そうなったのが俺自身も不本意な理由でな。

 俺が認めた相手、というか友人とかにはいわゆる身内料金って奴で通してる。

 ついでに言うと、多大な恩を受けた相手には最初は金は取らない様にしてるのさ」

「あそこにあるのも、そんな人間の為に作った物か?」

「ああ」

 

獅子の視線の先には俺の作品の一つがあった。

 

「それはそうと真也、不本意な理由とは何だ?」

「……話すのも馬鹿らしい事だ」

「俺は医者だ。患者の秘密は絶対に喋らない。俺の真名に誓ってもいい」

「………そんなに知りたいか」

 

けど俺だけの事じゃないしな。

 

「……詠…賈駆に許可を取ってこい。そうしたら話す」

「誰だ?」

「董卓軍の軍師」

「そうか……よし!」

 

すると獅子は一目散に店を出て、城に向かった。

 

「……詠が許可を出すとは思えないし、そうすれば諦めるだろ」

 

と、思ってたのに。

 

 

 

 

 

 

「許可を取ってきたぞ!」

「……詠」

「……ごめん、暑苦しくて無理」

 

許可を取ってきやがった。何故か詠本人も連れて。

というかよく連れ出せたな。いや、獅子が俺の店に居るのは周知の事実だから

信用されてるのか?

 

「という訳で話してくれ、真也」

「…分かった」

 

…観念するか。

 

 

 

 

 

 

「は?値を上げろ?」

「そう」

 

俺が「羽丸印」を作る少し前、店を訪れた詠がいきなりそう告げてきた。

 

「いや、いきなり過ぎて訳がわからないぞ」

「この店以外に鍛冶屋があるのはあんたも知ってるでしょう?」

「それは勿論」

 

俺が店を正式に持った時、この辺りの店や民家の他に、街にある鍛冶屋には

一通り挨拶したからな。

 

「けど最近、どこの鍛冶屋も経営が思わしくないの」

「おい、まさかそれが俺のせいとか言うんじゃないだろうな」

「残念だけどその通りよ」

 

はっきり断言されたから結構衝撃だった。

 

「……理由は?」

「あんたの作品、武具関係を除いたらどれも他の鍛冶屋とあまり値段変わらないでしょ?」

「普通の人間でも簡単に買えるようにしてるから、自然そうなる」

「で、あんたの作品は他の鍛冶場のとは一線を画す」

「……なんか予想がついた」

「でも続けるわ。同じ値段なら品質の良い方を選ぶのは当然。で、お客が皆あんたの

 所に流れてる訳」

「……一軒二軒ならともかく、街全体の事だから動かない訳にはいかない、か」

「そいうことよ。で、どう?」

「……今までは材料も他の所と変わらない物を使ってるから、その質を上げれば可能だ。

 さすがに前と同じ質で値上げはしたくない」

「それでいいわ」

「だが詠、特注の方はどうする。あっちはお客によって注文が

 様々だから値段もそれに応じて変わるぞ」

「そっちはちゃんと考えてきたわ」

「具体的には?」

「まずあんたが一つ特注の物を作る。最安値になるような物をね。それを

 商人達の間で競売にかけるの。あとはそれで決まった値段をそのまま基準に

 してしまえばいいわ」

「なるほど」

 

この時は確かに良い方法だと思ったんだ。

 

「なら観賞用を一つ作るか。それと競売の時には街の人間も見られるようにすれば、

 手間が省ける」

「そうね。それじゃあ、競売用の物ができたら伝えて。それから細かい打ち合わせを」

「わかった」

 

で、剣を一つ作った。実用もできるが、ほとんど観賞用の物を。

それで、競売にかけられたんだが…

 

 

「……詠、どうやら俺の目と耳はおかしくなってしまったらしい…」

「現実逃避しないで、真也。ボクも予想外なんだから…」

 

目の前でぐんぐん値段が上がってくんだよ。作った俺が信じられない位に。

それから少しして値段が決まったんだが、それがそのまま俺の武具の相場と街の人間に

認識された。商人だけだったら誤魔化しもできたんだが、街の人間もいたから

それも不可能。知ってもらおうとしたのが完全に裏目に出てしまった訳だ。

これで下手に値段を下げると俺の作品に問題が出たんじゃないかって噂が

立ちかねないから論外。

 

 

結果、俺の特注品は超高級品として認識された。

 

 

 

 

 

「それから『羽丸印』を作ったんだ。こいつは俺の作品の証と同時にそれまでの作品との

 区別も兼ねている。将達の武具には入れたが、今あいつらが使ってる武具は

 元々のあいつらの武具を鍛え直す、又は作り変えた物だから、今の俺が

 作っても変わらないからな」

「……すまない、何て言えばいいのか分からない」

「気持ちは分かる」

「ボクも」

 

俺も詠もあんな事になるとは予想できなかったからな。

実はこの事を知った華雄と霞が代金は大丈夫なのかって顔を青くして駆け込んで

来たりもした。必要無いって説明したら安心したのか、その場で腰抜かしたが。

 

「まあそんな訳だから、代金は気にするな。なんなら追加注文するか?今なら

 それも含めて初回注文って事にするぞ」

「………真也ならもしかして」

「獅子?」

「…真也。これを使って一つ作って欲しい物がある」

 

そう言って獅子は俺に一つの鉄塊を渡してきた。

 

 

 

 

獅子の追加注文の品物を作り、確認してもらって渡したんだが……一体何に

使うんだ?あれ。鍼はまだ分かるが、あれは明らかに医療道具じゃないぞ。

まあ、五斗米道に詳しくない俺が考えても答えが出る訳もないが。

とにかく、今はこの日常を謳歌するとしよう……いつ終わるか分からないしな。

 

 

 

おまけ

 

「元気になれえええ!!!」

 

「……真也さん」

「何だ」

「光ってますよね?あれ」

「光ってるな」

「真也さんの時は光ってませんでしたよね?」

「そうだな」

「真也さんが鍼を鍛え直してからですよね?」

「たぶんな」

「……」

「……」

「本当にただの鍼ですか?」

「……その筈だ」

 

 

 

 

 

~後書き~

真也の特注がずば抜けて高い理由が発覚!

ついでに真也が鍛え直した鍼は本当にただの鍼です。

ただし、獅子が長年気を流し込んで使い込んだ物が真也の手で新生して

凄まじい事になってます。

 

 

 


 
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