5月1日
『姉妹制』の導入を三国事務官会議で提案してみたところ、好感触であった。
一刀様の御寵愛を賜る日について複数の者―――仮想的な『姉妹』で一日占有する制度だ。
『姉妹』はその日全員で御寵愛を賜っても良いし、『姉妹』内の話し合いで『姉妹』のうちの誰か一人としても良い。
一人当たりの時間は減ってしまうが、枠の確保さえ出来なくなる恐れを考慮すれば妥協出来る条件となったようだ。
これでかなり回転を速める事が出来る。
士季が『一刀様死んじゃいませんか』等と言ってきたが、一刀様は三名程度であれば同時に御寵愛下さることは既に調査済みだ。
しかも、
『一人なら一人、三人なら三人なりに密度を薄めずにいてこますのがたいちょの恐ろしい所や』
『月と一緒でも好き放題やられてるのに、あいつが本気になったらボク一人じゃ死んじゃうわよ(赤面)』
と李典殿や買駆殿が仰っている、問題は無いだろう。
御優しい一刀様が寵姫たる買駆様を害することは無い筈と思ったが確認の為、買駆様に『死んじゃう』というのは死ぬと思えてしまうほどの快楽を賜っているということですねと聞いたところ、顔を紅くし良く聞き取れない言葉を怒鳴って去られてしまった。
何がいけなかったのだろうか。
5月10日
伯達姉様が半日枠を確保なさった。姉様も寵姫の一人なのでそれ自体は良いのだが、『司馬姉妹枠』として登録していたのが気になる。
妹の叔達、季達は一刀様にお目通りしただけのはずだったが、妹たちに聞いてみたところいずれは(御寵愛賜りたい)と言う。
姉様に叔達達は美貌、才気とも優れてはおりますがまだ時期尚早ではと申し上げたら何も仰らずに溜息をつかれた。
更に下の妹の顕達、恵達たちの事まで考えよということだろう。
思いやり深い姉様に比べ、私は駄目な姉だ。妹達よ、すまない。
5月16日
地方の文官達から地方枠の確保、一刀様巡幸、中央と地方の交代勤務の嘆願書が届けられた。
各々の国王に出せばよいものを魏の事務方でしかない私に提出するあたり目的がはっきりしている。
代表して提出に来た張松殿は噂の通り醜女を装ってやって来た。
彼女の帰り際に、なぜその美貌を偽るのですかと問うたら、
『…一刀様だけに知って頂ければよいですから。それに司馬懿さん、貴女ほどじゃありませんよ』
と返された。
忠なる心は何一つ偽っては無いつもりだ。士季が
『チューしたい心を偽ってるからじゃありませんかぁ?あっ今私上手い事言いましたよ!』
などと言うので元常様に士季の一日指導をお願いした。
元常様の御指導の後はガタガタ震えながら私の部屋に飛び込んできて、一週間くらいは従順になるので有難い。やはり親の躾というものは必要だ。
5月29日
一刀様から筆を授かった。私の事務量が多いと聞いたとの事で、しかも御手ずから私の真名をお彫り頂いた、大陸に一つしかない筆だ。
感動の余り言葉が出ず、お礼を申し上げるはずが一刀様を困らせてしまった。
家宝にしますと申し上げるととんでもない使ってくれ、駄目になったらまたあげるからと
仰られて喜びを突き抜けてその後どうやって御部屋を辞したか記憶が無い。
5月30日
拝領の筆について一刀様の『使うように』との御言葉と勿体無いとの思いに挟まれ自室で呻吟していると、士季が
『一刀様はどう使えとは仰らなかったんですよね、ならひとりえっちに使』
書くのも馬鹿らしい。
士季を屋敷の高台に『私は下品な娘なので反省中です』と札をつけて吊るしておいたら元常様が通りがかられ、事情をお尋ねになったのでかくかくしかじかで反省を促していると申し上げた。
すると元常様はあらあらうふふちょっと入らせてもらっていいかしら、と仰って高台に上ったかと思うとお帰りになった。
高台を見てみると士季が今度は逆さに吊るされ、反省札の文言が日記に書くにしても憚られる内容に修正されていた。
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その後の、とある文官の日記です。