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サテライトウィッチーズ 第七話

三振王さん

第七話です、今回はミーナさんがメインです。

少しまたキャラ崩壊気味です。

2011-11-25 20:38:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2118   閲覧ユーザー数:2071

第七話「忘れたりなんかしない」

 

 

ある日の朝、芳佳は格納庫にいる整備兵達にお茶と扶桑のお菓子を差し入れにやってきた。

 

「あの……コレ扶桑のお菓子なんですけど、よかったらみなさんで食べてください」

「……」

 

しかし整備兵達は何も言わず、ストライカーの整備を続けていた。

 

「あの……」

「すみません、ミーナ隊長から必要最低限はウィッチ隊との会話を禁じられていますので……」

「え?」

「おーい芳佳、何してんだー?」

 

するとそこに、ガロードがDXの整備にやってきた。

 

「あ、ガロード君……私扶桑のお菓子持って来たんだけど……」

「マジで!? うっはー超うまそうじゃん! 一個もらい!」

「あ……」

 

ガロードは芳佳が持っていたかりんとうをそのまま口に運ぶ。

 

「おーなんだこれ? 甘いんだなー!」

「ふふふ……よかったら後で沢山あげるよ、実家から沢山送られてきたんだ」

「マジで! やっほーい!」

 

そして芳佳はそのまま格納庫の外へ去っていった。

 

「さーって、DXの整備を始めるかなーっと……あん?」

「「「「「…………」」」」」

 

その時ガロードは、格納庫にいた整備兵全員が自分を見ている事に気付く。

 

「え、ちょ? 何あんたら? 俺の顔に何か付いてる?」

 

すると一番近くにいた整備兵が急に立ち上がり、つかつかとガロードの前に立った。

 

「な、なんだ!? やんのかコラ!? 俺の中の人は元暴走族の高校教師の役をやってた事があるんだぞ!?」

 

訳が判らない事を言って身構えるガロード、すると整備兵はガロードの両肩に自分の両手をバンッと置くと……。

 

「お願いします! ウィッチの子達の事……教えてください!」

 

血涙を流してガロードに懇願していた。そしてよく見ると後ろにいた他の整備兵達は皆ガロードに向かって土下座していた。

 

「へ?」

 

 

 

数分後、ガロードは整備兵達に囲まれながら彼らの事情を聴いていた。

 

「成程ね、ミーナ中佐がウィッチと男の交流を禁止していると……」

「はい、おかげで我々は彼女達と話すどころか、さっきのように芳佳さんの好意を受け取る事が出来ないのです!」

 

そう言って整備兵Aは流れる涙を豪快に腕で拭きとった。

 

「何? アンタ達芳佳達と話したいの?」

「それどころかもう……彼女にしたいぐらいですよ!」

 

整備兵Bがガロードにグイッと顔を近づけ、後ろでは他の整備兵達がウンウンと頷いていた。

 

 

「ガロードさん……ウィッチはその魔力を扱う影響で自然と美人になるんです、男としてそりゃあ……気にならない訳ないでしょう!? ああ、俺も芳佳さんの手作りの料理食べたいなあ」

「俺はリネットさんに膝枕してもらいたい!」

「ペリーヌさんツンツンしてるけど、デレたらきっと可愛いんだろうなあ!」

「シャーリーさんの豊満な胸……一度でいいから顔を埋めたい! いや! 頭に乗せたい!」

「ルッキーニちゃんは最高だぜ! 12歳的な意味で!」

「バルクホルンさんをお姉ちゃんと呼びたい……」

「エーリカちゃんはマジ天使!」

「一度でいい……一度でいいからサーニャさんの歌を間近で聴きたい!」

「エイラさんに占いしてもらいながらキャッキャウフフなんていいなあ」

 

 

整備兵達がそれぞれ自分の溢れそうな欲望をガロードにさらけ出す、ガロードはそんな彼らを見て圧倒されていた。

 

(ていうか俺、こいつらの願いの殆どを達成しているな……言ったら殺されそう……ん?)

 

その時ガロードはある事に気がつく、それは今までの自分に対するミーナの態度だ。

 

「そう言えば俺、あんまりミーナ中佐にくっつきすぎるな~とか言われた事ないなあ、基本的芳佳達の周りをブラブラしてても何も言われないし……」

「それに関しては自分! 噂で聞いた事があります!」

 

すると整備兵Jが元気よく手を上げてガロードに説明する。

 

「ミーナ中佐が貴方を注意しないのは上層部の命令だと噂されています、あのDXの技術を何が何でも手に入れるため、ウィッチ達を使って貴方を取り込むつもりだとか……」

「使う? どういうこった?」

「その……解りやすく言えばハニートラップみたいなもので……」

「ああ、成程……俺のご機嫌取りってわけか」

 

つまり上層部はウィッチを犠牲にしてでも色香で自分を籠絡し、DXの技術を得ようとしているんだとガロードは考えた。

 

「まあ無駄だと思うけどな、俺の心はとっくにティファの虜にされているぜ」

「とにかく俺達、このままじゃいやなんですよぉ……女ッ気が無いままいつ死ぬかもわからない戦場に駆り出されて、野郎どもと抱き合ったまま天に召されると思うと……」

 

辺りに整備兵達のすすりなく声が響く、ガロードはそんな彼らのうち一人の肩に手をポンと置いた。

 

「泣くんじゃねえよ、まあ皆の気持ちは分かった。俺もミーナ中佐とそれなりに話してみるよ」

「おお! ありがとうございますガロードさん!」

「この御恩は一生忘れませんっ!!」

 

ガロードは整備兵全員から感謝と称賛の言葉を浴び続けた……。

 

 

 

 

 

数時間後、DXの整備を終えて格納庫から出たガロードは、暇つぶしに散歩でもしようと兼定と一緒に基地の外に出ていた。

 

「今日は天気がいいなあ、兼定」

「ワン!」

 

拾われてから兼定は特に芳佳と、自分と同じ雄に分類されているガロードになついていた。

そして兼定は尻尾を振りながらガロードの先を走って行った。

 

「あ、おい待てよ兼定―……ん?」

「え? うわ!? なんだこの犬!?」

 

その時、兼定は何か手紙のような物を持って俯いている扶桑の軍服を着た少年を発見する。

 

「ようアンタ、扶桑の人か?」

「あ、貴方はもしかして……ガロード・ラン?」

「おろ? 俺の名前を知っているのか?」

「俺、貴方が助けてくれた赤城って戦艦に乗っていたんです、あの時はその……助けてくれてありがとうございました」

「赤城? ああ! あの時の……」

 

ガロードはこの基地に初めて来た時に初めて遭遇した戦闘で、扶桑海軍の艦隊を助けた事を思い出した。

 

「なあに、俺はただ当然のことをしたまでさ、それにしてもどうしたんだ? 元気無さそうだったけど……」

「じ、実はその……この手紙を宮藤さんに渡したかったのですが、ミーナ中佐に付き返されて……」

そう言って少年兵は手元から、自分が書いた芳佳へのラブレターを取り出した。

「あちゃー、またあの人か……それラブレター?」

「え、ええまあ……」

 

するとガロードは顔を赤くする少年兵から手紙を奪い取った。

 

「え? ちょ!?」

「なんなら俺が芳佳に渡しておいてやるよ! 俺ならウィッチに近付いても平気だしさ!」

「い、いいんですか!?」

 

ガロードの提案に少年兵の顔がぱあっと明るくなる。

 

「あんたみたいな人放っておけねえんだよ、鏡見ているみたいでさ……まあ任せてくれって!」

「ワン!」

 

兼定も“任せておけ!”と言わんばかりにワンと吠えた。

 

「あ、ありがとうございますガロードさん!」

 

そう言って少年兵は去って行くガロードと兼定に何度もお礼を言った……。

 

 

 

 

 

その日の夜、ガロードと兼定は芳佳の部屋に赴き、先ほど少年兵から預かった手紙を渡した。

 

「おーい芳佳、郵便だぜー」

「あ! これさっきの……ありがとうガロード君!」

 

手紙を受け取ってガロードに礼を言う芳佳、ふと、ガロードは芳佳の傍らにあるウィッチの人形に気付く。

 

「おろ? どうしたんだその人形? 可愛いじゃん」

「扶桑人形だよ、赤城の人がくれたんだ」

「へぇー、よく出来てるな」

「ちゃんとお礼が言いたいんだけど……ミーナ中佐にダメだって言われちゃった」

「うーん、あの人もなんでそこまで禁止するのかなー? ちょっと気になってきた……よし、芳佳よー、さっきのお菓子まだ残ってんのか?」

「うん残ってるよ? どうするの?」

「へへへ、まあ見てなって」

 

 

 

数分後、ガロード芳佳から貰ったお菓子を持ってエーリカの部屋にやってきた。

 

「相変わらず汚いなこの部屋……」

「んで? 態々お菓子持ってきてまで私に聞きたい事って何?」

 

そう言ってエーリカは芳佳のお菓子をぼりぼりと食べる。

 

「ミーナ中佐について聞きたいんだ、あの人ウィッチと男の関わりを極端に禁止しているだろ? なんでかなって思って」

「ああ、成程……別にうちの部隊に限った話じゃないけどね、面白くない話するけどいい?」

 

エーリカの問いに、無言でコクコクと頷き了承するガロード。

 

するとエーリカはポツリポツリと昔話を始めた。

 

「ミーナってさ……昔恋人がいたんだよね、クルトっていう音楽の道に進もうとしてた時に仲良くなった人でさ……でもネウロイと戦うため二人とも軍人になって、そのままネウロイとの戦争で……」

 

「……そっか、やっぱりそう言う訳か」

「あらま、意外な反応だね」

 

ガロードの予想外で素っ気ないリアクションにエーリカは意外そうな顔をする。

 

「俺の仲間にはそんな思いしている奴が結構いたから、ミーナ中佐もそんな感じかなーって思っててさ……」

 

むしろ大切な人を失ったことが無い奴なんていなかったんじゃないか……と言いかけて言葉を飲み込むガロード。

 

「へえ、で……これからどうすんの?」

「話す機会があれば話してみるさ、あの人にはあの人なりの考えがあるんだろうけど、俺の考えも知ってほしいかなって……」

「そっか、まあ頑張りなよ」

 

 

 

 

 

次の日、基地にネウロイ襲撃を告げるサイレンが鳴り響き、ガロードとストライクウィッチーズはネウロイが出現したカールスラント付近の海域に出撃した。(シャーリー、ルッキーニ、サーニャ、エイラは待機)

 

『アレか!』

 

目的の海域に着いたガロード達は四角い箱状のネウロイを発見する。

 

「300m級か……いつものフォーメーションか?」

「そうね」

「よし、突撃!」

 

美緒の相図と共に、まずバルクホルンとエーリカが先行し、その後ろからリーネとペリーヌが続いていく。

 

「え!?」

 

するとネウロイは突然いくつもの小さな個体となって分裂し、ガロード達に襲いかかってきた。

 

「分裂しただと……!?」

「右下方80、中央100、左30」

「総勢210機分か、勲章の大盤振る舞いになるな」

「美緒はコアを探して、バルクホルン隊は中央、ペリーヌ隊は右を迎撃、宮藤さんは坂本少佐の直衛に入りなさい」

「「「了解!」」」

『ミーナさーん、俺は?』

「ガロード君も宮藤さんと一緒に坂本少佐のフォローに入って、コアを探している坂本少佐に敵を近づけさせないで」

『よっしゃ! 頑張ろうぜ芳佳!』

「うん!」

 

そしてウィッチ達は襲いかかるネウロイに対し迎撃を開始した。

 

 

「これで10機!」

「こっちは12機だ!」

 

 

「いいこと! 貴女の銃では速射は無理だわ、退いて狙いなさい」

「はい!」

「わたくしの背中は任せましたわよ!」

 

 

それぞれ迫ってくるネウロイを次々落としていく、それを少し離れた場所で見ていた芳佳とガロードは感嘆の声を上げる。

 

「皆……すごい……!」

『おっと! 感心している場合じゃないな! こっちにきた!』

 

すると約10機程のネウロイが芳佳達の方に向かってきた。

 

「くっ……!」

『当たれぇ!』

 

二人はその向かってくるネウロイをすべて銃弾で落としていく。

 

「いいわその調子よ!」

『まだコアは見つからないのか!?』

「ダメだ……見つからん」

「……! もしかしてまた陽動!?」

 

ミーナは以前戦ったネウロイ(二話に出てきたもの)の事を思い出す。しかし美緒はその意見を否定した。

 

「いや、コアの反応はする、しかしあの群れの中にはいないようだ」

『どっかに逃げちまったのか?』

「戦場は移動しつつあるわね」

 

その時、芳佳はふと上から何かが襲ってくる気配を感じ取った。

 

「……! 上です!」

 

そこには太陽を背に襲いかかる数体のネウロイがいた。

 

「くそ! 見えない……!」

『任せろ!』

 

ガロードはビームライフルの標準をネウロイの集団に合わせ引き金を引く、するとネウロイは一つを残して破壊された。

 

「! 見つけた!」

 

美緒はその最後の一個にコアがある事を見抜く。

 

「全隊員に通告、敵コアを発見、私達が叩くから他を近づけさせないで!」

「「「「了解!」」」」

 

ミーナはすぐさま他の隊員達に指示を出し、自分は美緒、芳佳、ガロードと共に雲の中に逃げていったコアを持つネウロイを追いかけていった。

 

 

「いた!」

 

そして雲を抜けてネウロイを発見したミーナ達は、そのまま一斉に銃撃を開始する。すると放たれた銃弾はネウロイに数発当たった。

 

「宮藤逃がすな!」

「はい!」

 

美緒に言われ芳佳はネウロイにトドメの一発をお見舞いする。その一発は見事コアに命中し、ネウロイはガラス片となって芳佳達に振りそそいだ。

 

「くっ……!」

「美緒!」

『ん?』

 

芳佳達は魔力シールドで、ガロードはDXのシールドでガラス片を凌いだ、そしてガロードは魔力シールドを張っている筈の美緒の顔にガラス片が掠ったのを目撃する。

 

『もっさん大丈夫か? 今……』

「大丈夫だ、心配するな」

「美緒……」

 

心配して声を掛けてくるガロードをするとそこに、別の場所で戦っていたリーネ達が合流してきた。

 

「芳佳ちゃんすっごーい!」

「ふん! あんなのまぐれですわよ」

「いや、不規則な軌道の敵機に命中させるのは中々難しいんだ」

「宮藤やるじゃ~ん!」

「えへへへ……そうかな?」

 

皆に褒められて照れる芳佳、そして皆は戦火で廃墟になったカールスラントの街に降り注ぐネウロイの破片を感慨深く見つめる。

 

「綺麗……」

「ああ、こうなってしまえばな」

「綺麗な花には棘が……とはよくいいますわね」

「自分の事か~?」

「な!? 失礼ですわね! ま、まあ綺麗なところは認めて差し上げてもよくってよ」

 

戦闘が終わり芳佳達の間に和やかな空気が流れる。

 

「……」

 

その時、ミーナは何かを見つけたのか近くの海岸に降りていった。

 

「あ、あれミーナ?」

「そうか。ここはカレー基地か……」

『……』

 

するとガロードもミーナの後を追う様にDXを海岸の方へ向かわせた。

 

「おいガロード?」

「少佐、ここはガロードに行かせてあげて」

「ハルトマン……?」

 

美緒はガロードを引きとめようとするが、エーリカにその必要はないと言われ、とりあえず様子を見ることにした……。

 

 

 

 

 

地上に降りたミーナは一台のボロボロの車に近付き、運転席のドアを開ける。

 

「あ……!」

 

そして助手席に赤いリボンで梱包された布袋を発見し、目を見開いた。

 

「ミーナさん」

 

するとそこにガロードが現れ、ミーナは布袋を持って彼の方を向く。

 

「……どうしたのガロード君?」

「うん、少し気になって……その車知り合いのか?」

「ええ、恋人の……この基地は彼が死んだ場所だから……」

「……そっか」

 

そしてガロードはボンネットに座り、ミーナに話しかける。

 

「皆に聞いたよ、規律の事とか、ミーナさんの昔の事とか……」

「そう……貴方もおかしいと思う? 軍の規律の事……」

「どうかなあ? 俺はここの軍人じゃないからよくわからない、ミーナさんはどう思うんだ?」

 

ガロードの問いかけに、ミーナはまっすぐな瞳で即答する。

 

「もちろん正しい事よ、いつ死ぬかも判らない戦場で、恋愛なんて……辛い想いしかしないわ」

「辛い、ねえ……」

 

ガロードはボンネットから降り、お尻の汚れをパンパンと払った後、ミーナの瞳をじっと見つめて問いかけた。

 

「その人との楽しかった思い出を思い出すのも……辛いのか? 好きになった事を後悔しているのか?」

「え……?」

 

ガロードの問いかけにハッと顔を上げるミーナ。

 

「俺だって嫌だぜ、大切な子と死に別れるのは……でも大切な人がいるからこそ、人は守る為に戦えるんじゃないのか? それにいつ死ぬかも判らないって……それじゃ死ぬつもりで戦っているみたいじゃん」

「そ、そんな事……!」

 

ガロードの意見に、ミーナは思わず声を荒げて否定する、対してガロードは怯むことなく言葉を続ける。

 

「俺はこの世界の人間じゃないから、ちょっと離れた場所で様子を見ることが出来るからさ、なんかミーナさんの事がそういう風に見えちゃうんだよね」

 

そしてガロードはどこまでも広がる青空を見上げる、まるで遠く離れた想い人を想う様に。

 

「俺は生きるために戦うぜ、大切な子と一緒に未来を掴む為に……それが俺の信念だ」

「生きるために……信念……」

「ミーナさんもさ、あんまり後悔ばかりしないでスカッと忘れてもっと楽に考えたらどう? そんなツンツンしていると天国の元彼も心配しちゃうぜ」

 

すると、ミーナは目からぽろぽろと涙を流し自分の想いをさらけ出した。

 

「後悔なんか……! 忘れたりなんかしない! クルトとの大切な思い出を忘れたりなんか……! 失った事がない貴方には何も判らないわ!」

 

ガロードはそれに対し、臆することなく自分の考えをぶつけた。

 

「ああ、判らないし、できれば一生判らないでいたい、そうならないように俺は強くなるんだ、ここの人達にだってきっとそれが出来るよ」

「……! 本当にできると思う? 皆に……一度大切な物を失った私なんかに?」

「できるじゃなくてやるんだよ、あんまり重く考えないほうがいいんじゃねえの?」

 

 

するとそこに、様子を見に来た美緒が降りてきた。

 

「話は終わったか……ん? ミーナお前……まさか泣いて……」

「え、えっとその……」

「なんでもないさ、早く帰ろうぜもっさん」

「お、おい……」

 

そう言ってガロードは美緒の背中を押し、ミーナの元を去って行った。

 

「ガロード君……」

 

 

 

 

 

次の日、501の基地の中を歩いていた整備兵AとBは、サーニャとエイラとすれ違った。

 

「あ、おはようございます」

「おはようさーん、毎日ご苦労さん」

「え!?」

 

そしてすれ違いざまにサーニャとエイラに挨拶され、整備兵Aは目をパチクリさせる。

 

「お、おい! 俺ウィッチに話しかけられちまったよ! 一体どうなってんの!?」

「ああお前知らなかったんだよな、規則が改定されてウィッチとあいさつとちょっとのコミュニケーションぐらいはしてもいいって事になったんだ」

「まままままマジで!!? ねえマジで!?」

 

 

 

 

 

同時刻、ウィッチ基地から赤城が出港し、その船上にガロードに芳佳への手紙を渡した少年兵が、少しずつ遠くなっていく501の基地を見続けていた。

 

「宮藤さん……やっぱり結局来てくれなかったなあ」

 

その時、彼の周りにいた扶桑兵達が空を見て騒ぎ出した。

 

「お、おいアレ見ろ! ウィッチだ!」

「え?」

 

すると彼らの元に、ストライカーを履いた芳佳、美緒、リーネが編隊を組んで飛んできた。

 

「みんなありがとー! 頑張ってねー! 私も頑張るからー!」

「芳佳ちゃん、よかったね」

「うん、ちゃんとお礼言えた……!」

「世話になったからな」

「はい!」

 

そう言ってリーネと美緒に向かって嬉しそうにほほ笑む芳佳、そして船上の扶桑兵達も手を振りながら、精一杯の笑顔で芳佳達にお礼の言葉を送った。

 

 

 

一方赤城の艦橋では、通信兵が501基地からの通信を傍受していた。

 

「艦長、基地から通信が入っています」

「繋げ」

 

すると通信機から美しい歌声が流れてくる、曲はリリーマルレーンだ。

 

「これは……全艦に繋げ」

 

美しい歌声が、赤城に乗る乗員全員の耳に癒しを運んだ。

 

 

 

その歌声の主はミーナだった、彼女はあの車の中に入っていた袋の中に入っていたドレスを着て、基地の広間でサーニャのピアノ伴奏に合わせてマイクに向かってリリーマルレーンを唄っていたのだ。

そして彼女の周りではバルクホルンら他のウィッチ達が心地よさそうに彼女の歌を聞いていた。しかしその場に……ガロードはいなかった。

 

 

 

 

 

「ミーナさんの歌……綺麗だな」

 

ガロードはミーナの歌を、DXのコックピットの中で一人のんびりと聞いていた。

 

(それにしても……そろそろここに留まるのもヤバいかもな)

 

ガロードは軍の上層部の最近の動きを見て、少なからず自身の身の危険を感じていた。

 

(このDXを渡すわけににもいかないし、芳佳達に迷惑は掛けられない……そろそろここから出る必要があるな、でも……)

 

ガロードには一つ気になる事があった、それは先日、サーニャやエイラ、芳佳と一緒の任務に就いた時に遭遇した仮面のウィッチの事だった。

 

(あのウィッチがどうしてニュータイプ能力を持っていたのか、少し調べないとな……)

 

そうしてガロードは今後の方針について一人であれこれ思案する。

 

「くぅーん……」

 

そんなガロードが乗っているDXを、兼定は一匹で見つめ続けていた……。

 

 

 

 


 
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