「嘘です!」
日本が張り上げた大声に、ハンガリーと台湾は耳を塞いで「きゃあ」と悲鳴をあげた。
障子がガタガタと揺れた。
そんなレベルの大声である。
「日本さん、どうかなさったんですか?」
台湾とハンガリーは今迄にあったことを心中で反駁した。
なんとか入稿を済ませ、修羅場から抜けた日本に日付を聞かれ、それに答えただけ、のはずだ。
「嘘です! もう四月一日だなんて、嘘ですっ!」
台湾とハンガリーの目が、点になる。
「嘘だって言ってください、お二人とも! エイプリルフールの嘘だとっ!」
「いや、エイプリルフールの嘘だったら、今日が四月一日だって認めることになりますから、辻褄が合いませんよ」
日本は顔を覆っていた手を外し、ハッとした顔で台湾を見た。
「日本さんの、貴重なボケ……!」
ハンガリーは、もう現状を整えるよりも先に萌え発掘に心が向かっている。
「日本さん、どうして四月だからってそんなに……」
台湾が言葉を止めたのは、理由の検討がついたからだ。
しかし、その予想を打ち消すように、期待を込めた笑顔で日本を見つめ続けた。
「だって……もうすぐ新学期じゃないですかぁ!」
期待は、簡単に打ち砕かれた。
「嘘だって言ってくださいっ!」
日本の叫びに、台湾は顔を逸らすことで応えた。
ハンガリーが顔を輝かせて、ショックで俯いてしまった日本の顔を覗き込む。
「日本さーん。今日、まだ三月二十八日ですよ?」
日本の顔が輝くと同時に、ハンガリーは「なんて」と続けた。
「こっちが本当のエイプリルフールです!」
硬直し、倒れ込みそうな日本の背中を支えた台湾が「ハンガリーさん!」と咎める口調で言うと、ハンガリーは「ごめんなさい。つい、楽しそうで……」と返して、両手を顔の前で合わせた。
エイプリルフールに口から出した言葉が、すべて嘘になってしまえばいい。
むしろ、エイプリルフール爆発しろ!
日本は心の底から思ったが、その日が四月一日だという事実は覆しようがなかった。
日本の視界の隅には、お国柄なのか、きちんとクリーニングに出して壁にかけられている制服があった。
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日本+台湾+ハンガリー