「一刀さん、泳ぐのは好きですか?」
「…うん?」
ソファで横になってスキー雑誌を読みながら「今回の恋姫同人祭りは雛里ちゃんとどこに行こうかな」とか思っていたら、雛里ちゃんがそんなことを聞いてきた。
「それは出来るけど…雛里ちゃん、今冬だぞ?」
「それは分かっているんですけど……あの……実は……」
「……?」
今は秋の終盤。もう冬が訪れたと言ってもいい次期である。
夏には何も言わなかった雛里ちゃんが突然どうしたものだろうか。
「実はですね。今日街でこんなの配ってたのですよ」
「うん?」
雛里ちゃんが差し出したチケットを見ると、今夏にできた街のプール割引券だ。
何考えているんだ、こいつら。冬に割引券つかって客呼び寄せるとか……
「経営状況が凄まじく悪いか、それとも……何か裏があるな。というか冬を前にしてプールなんて行くか」
「でも、ここ見てください。温水プールと書いてますよ?」
「むっ、確かにそうだけど……でも、いくら温水プールって言っても初秋とかじゃなく冬目前においたこんな時期に室外プールなんて行ったら風邪をひくぞ」
「大丈夫でしゅ!最近異常気象で暖かいでしゅから!」
「………」
「………」
「…裏があるのは雛里ちゃんの方だな」
「あわわ!」
何でそこまで必死に冬にプール行こうとする。
「……」
「…あ、…あわ、な、何も、やましいことは……ありません?」
「聞かれちゃったよ」
「あわわ!」
帽子のツバを引っ張って顔を隠す雛里ちゃんだったけど、ソファで下から目線である僕には雛里ちゃんの赤い顔がまんまと見えている。
…まぁ、何か裏があることは確かだが、雛里ちゃんがすることだし、何も僕に悪いことではないはずだ。
「良いよ、行こう」
「ほ、ほんとでしゅか!」
「でも、雛里ちゃん、水着あったっけ。今になって水着なんて売ってないはずだけど」
「はい!大丈夫です!夏買って見せるのが恥ずかしくてそのまま箪笥にしまっておいたのがありますから……」
「つまり冷えてきて夏服を整理している時、その一度も着なかった水着を見てもったいないと思ったわけだな」
「あわわ!な、何でバレてるんですか!?」
そりゃ……分かるよ。雛里ちゃんの思考ラインなんて。
というわけで、雛里ちゃんと例の室外温水プールに来ることになった。
「って、割りと人多いな」
狙ったわけじゃないんだが、来た日が運良く異常気候で暑い日だった。出る前にネットで調べたら昼には27℃までも行くとのことを見た時は、何これこわいと思った。
それはそうと、雛里ちゃんはまだだろうか。
水着は…僕は見てないけど、何か見せるのを拒んでいたので敢えて見ようとはしなかった。
まさか雛里ちゃんビキニとか買ったわけじゃないだろうな。無茶しやがって……
「あわわ、ものすごく酷い侮辱をされた気がしましゅ」
「うん?」
振り向くと、そこに雛里ちゃんが立ってい……
※背景が学校のプールなのは仕様です。それとも皆さんの妄想が混ざってます。現実(?)に戻ってきてください。学校のプールで白スク着たら一刀が本当に学校で埋蔵されてしまいます。
「犯罪!」
「ひゃっ!」
「ひ、雛里ちゃん、何それ!」
スク水!
いや、それはいい。寧ろ良い
でも、何で白!?
実在するものだったの、白スク!?
「ど、どうですか、一刀さん?」
「どうも何も……いや、似合ってるけどさ……」
雛里ちゃんの白いスク水の胸のところでは『ひなり』と平仮名で文字が入っていて、更に雛里ちゃんのトレードマークの魔女っ子帽子も被ったまま現れると、流石に僕も色々とやばくなりそうだけど、それは頭の中の妄想の時であって、リアルでこれを見られると僕捕まるかもしれないじゃない!
「どこでそれを手に入れた」
「こ、これ…実は、夏時にぽんしろさんが…『一刀さんと一緒に海行く時コレ着て行ってみて。見られた途端襲われるから』…と言われて」
何してんだ、あの人!僕を犯罪者にするつもりか!?
「………<<もじもじ>>」
「……」
「……襲いませんか?」
「何で期待してるのさ!」
襲わないよ!
彼女と純粋に水浴びしようと思った僕の純情を返してよ!
「…やっぱり、そうですよね。幾らこんなの着たところで、私の貧相な体、一刀さんが好きなわけが……」
「何故そうなるんだ」
ってか雛里ちゃん、今雛里ちゃんは知らないと思うけど、僕は周りの視線がすごく痛いんだ。
だから、そこに座り込まないで欲しいよ。あと一歩で僕通報されるかもしれないよ。僕何もしてないのにひどくない?
「だって一刀さん最近全然構ってくれないじゃないですか!」
「わっ!」
雛里ちゃん(白スク装備)が咄嗟に私の前に近づいて来て僕は後ろに下がった。
「ハロウィンの時だって、私は一人に置いて他の友達を呑みに行くし、夏だって私も海行きたかったのに山に行くって勝手に決めちゃうし」
「いや、山に行ったのは雛里ちゃんが海は嫌って言ったから」
「それはこんな恥ずかしい水着なんて人の前で着たの見せたくなかったからに決まってるじゃないですか!なんでわかってくれないんですか」
「知らないだろ、普通!彼女が白スクが恥ずかしくて海にいきたがらないとか思うとかどこの変態だよ!」
というか彼女に白スク着せるという発想が既に変態だよ!
白スクがヤバいとか、それを着て私営プールに出るとかそういうTPOを弁える以前の問題だよ!
「しかも、今日はせっかく勇気出して着て出たのに、一刀さん呆れるばかりで全然褒めてくれないし……私は何のために勇気を出したんですか……ひぐっ…」
「あぁ…」
泣いちゃうし……
一度雛里ちゃんがはっちゃけたら極端に走るから怖い。
「ば、ばか、誰が似合ってないとか言ったよ。似合ってるよ、可愛いし」
「……ほんとですか?」
「ほんと、ほんと。だからほら、もう泣かない」
「ぐすん…はい……」
まぁ、白スク(透けない)なのを除いてはいつも通りに可愛い雛里ちゃんだということで許そう。
何気に雛里ちゃんだったら白スク(透けない)でもいけるし……。
その後プール管理の人に騒がしいと怒られたのは別の話である。
とまぁ、何だかんだ言ってせっかく来たプールを楽しまないということはないので、取り敢えずは泳いで行きましょうか。
「はい、そうですね」
「………」
「……あわわ、あんまいジロジロみないでください」
うん、取り敢えず白スクだけだというのは流石に周りの目が痛かったので、プールの店で水色のパレオを買って腰に巻いた。
でも、僕が見取れていたのはそこじゃなく……
「ビート板?」
その水着を隠すかのように雛里ちゃんが抱えているピンク色のビート板………
「雛里ちゃん…泳げないの?」
「……はい」
いや、でも、雛里ちゃんって荊州出身だろ。泳ぎなんて……
「塾では泳ぐ方法なんて習いませんでしたから……山にあったんですよ?」
いや、それは分かってるけど…なんというか、ちょっと以外だったかな。
何気にプールの中を人魚姫のように泳ぐ雛里ちゃんの姿を期待していた僕だったので、ビート板つきの雛里ちゃんの姿はちょっと以外だった。
・・・
・・
・
まぁ、でも……何だ。
ちゃばちゃばちゃば
「えいっ、えいっ」
ビート板の上で一生懸命足で水を蹴る雛里ちゃんもアリだなと思った。
「あ、あわわー!!」
「!?どうした、雛里ちゃん!」
「あ、足…攣って……きゃー!」
「雛里ちゃん!?」
ビート板から落ちた雛里ちゃんを助けてその後丁寧に足を揉んで休ませておいた。
「あわわ…ごめんなさい、一刀さん」
「いや、僕が悪いんだ、ビート板の上だからいつでもそうなる可能性はあったのだし、やっぱ最初から僕が手をつないでいるべきだったんだ」
「あわわ、それはそれで恥ずかしいです。それにそうしたら幼児に泳ぎ方を教えるお兄ちゃんの図になっちゃうじゃないですか」
「自分のことを幼児だと表現する以外には何の戸惑いもないかな、僕は」
「あわわ…」
「それにいくら何でも雛里ちゃんが幼児だというのはちょっと違うだろ。せめて幼女だろ」
「違うんですか?」
「
「あわわ……じゃあ、もしこんなことになったら、一刀さんどうしますか?」
「どんな?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「それじゃあ、僕何か飲むもの買ってくるよ。雛里ちゃんはこの椅子で休んでいて」
「はい」
「おう、お嬢ちゃん一人か?」
「……へっ?」
「良かったら、俺たちと一緒に遊ばない?」
「あわわ…あの、私はあんまり…」
「そうと言わずにさ、せっかくプールに来たんだからこんなところで寝ているだけじゃもったいないだろ。『新しい出会い』があってこそのプールだろ」
「そう、そう。お嬢さんこんな綺麗なのに一人でこんなところなんて勿体無いよ」
「あ、あわわ……」
「おい、何ナンパしてんだ?」
「うん?」
「誰だ、お前は…」
「もう秋だというのにキチガイにもこんなところでナンパしやがって…夏に何やってたんだよ」
「おい、今喧嘩売ってんのか?」
「喧嘩は人の女にナンパやってる時点でお前らがやってたんだよ!」
「ひぃっ!」
「は、速い!拳が見えなかった」
「……プールで騒ぎ起こして退場されたら困るしな。顔ぶち抜かれなくなかったらこの辺で下がったら?」
「ちっ……おい、行くぞ」
「あわわ、一刀さん」
「……お前何やってん?」
「はい?」
「何でちゃんと言わないんだよ」
「へっ?」
ガシッ
「お前がちゃんと言わないからあんなのが付くんだろ!私は一緒に来た彼氏が居ますって。その人はあの人よりずっとかっこいくて良い人ですって何で言わない!」
「あわわ……だ、だって…突然のことで…怖かったんですもん……」
「僕がいつまでもお前のこと一人するわけないだろ。直ぐに助けに来るだろ。なんで僕のこと信用してくれないんだ」
「…あわわ……ごめんなさい、一刀さん」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「…みたいな感じになりませんか?」
「雛里ちゃんは最近韓国のドラマ見過ぎだよ」
なんだよあれ。僕あんな恥ずかしいセリフ言わないといけないのか?
「でも!もし私がナンパされたら、一刀さん助けてくれますよね」
「そりゃ…まぁ……確かに」
「…一刀さん、私ちょっと喉乾いたんですけど……」
………
「何か買ってきてくださったら……」
「図々しい、な!」
「痛っ!」
デコピン一発入れてちょっと涙目になった雛里ちゃんを置いておいて僕は言うとおり飲み物を買いに言った。
雛里SIDE
うぅぅ…おでこが痛いですぅ……
でも、これで待ってて、もし本当にナンパさんが来たら、昨日ドラマで見たような展開に……
十分後
「………」
十五分後
「……あわわ、やっぱ来ないです」
自分でやっぱというのもあれですけど…
二十分後
「……あわわ?そろそろ一刀さんは来てもいい時期なんじゃ……」
おかしいです。
ちょっと不安になったので探しに行ってきます。
・・・
・・
・
「ねー♡、そう言わずに、お姉ちゃんと一緒にあそぼ♡」
「いや、だから、自分は……」
「もうまだそんなこと言って……♡」
むにゅっ
「っ…ちょっと、当たってますが…」
「当ててるの♡」
……ナンデスカ、アノオッパイ星人ハ……
「一刀さん!」
「ん?あ!雛里ちゃん」
「あら、妹と一緒に来たの?♡ごめんね、今からお兄ちゃんはお姉ちゃんとちょっと大人の遊びをしに行くの♡」
ブチッ
「一刀さん、来てください」
「あ、ああ」
「早く来てください!」
「あぁん♡駄目♡」
「一刀さんから手を離してくださいこのBBA野郎!」
「ば…!」
「語尾に一々♡つけやて、気持ち悪いんだよ、この垂れ乳が!」
「た…なんですってー!!」
「まぁ、否定はできんな」<<一刀
「な、なんですって!」
「はい、はい、雛里ちゃん行こうか…」
「こ、このロリコンどもがー!!」
一刀SIDE
「はぁ…助かったよ、ありが…」
「何で早く来ないんですか!」
「………ごめん」
「何で私みたいな娘を置いておいて、あんなBBAに掴まってるんですか!」
「いや、ほら、何か…ね?」
「知りません!」
あ、これはかなり機嫌損ねたな………
「それで、僕が居ない間ナンパされた?」
「……いいえ、どうせ私みたいな娘が好みな変態なんて、一刀さんぐらいしかありません」
「そうか。ナンパされなかったんだ。それは良かった」
「何が良かったですか!一刀さんは女に逆ナンパされて胸に挟まれてニヤニヤしてる間、私は一人で寂しかったんですから……」
「でも、僕的には嬉しいかな。彼女がナンパされて嬉しいわけないじゃないか」
「………」
雛里ちゃんは黙り込んだ。
「雛里ちゃん、はい、コレ。これ飲んで取り敢えず機嫌直して」
僕は持ってきた飲み物を雛里ちゃんに差し出した。
それをもらった雛里ちゃんはストローを吸った。
でも、
「…あれ?」
飲み物が上がってこない。
「すーーーー、けほ!けほ!あわわ、なんでか、これ?」
「実は、そのストロー二人で同時に吸わないと飲み物が上がって来ない構図なんだ」
「そうなんですか?」
「うん、だからこうして…」
僕は雛里ちゃんが含んだストローの向こうのもう一つのストローを含んだ。
もちろん、そうなると雛里ちゃんの視線を真正面で感じることになる。
それは雛里ちゃんも同じだ。
「あわわ」
僕が近づいたのを見て、雛里ちゃんはストローから離れた。
「どうしたの?同時にしないと飲めないよ?」
「で、でも…一刀さんの顔が近くて…」
「そんなのいつもも近くに居るだろ?」
「い、意識すると恥ずかしいんでしゅ」
「……じゃあ、これ飲めないかな……あ、もしかして、ストローでじゃなくて、直接僕が口で移して飲ませてあげるのが好み?」
「行きましゅ!ストローで飲みますからそれはやめてくだちゃい!死んでしまいましゅ!」
もう顔が飲みものの色みたいに赤く染まってきた雛里ちゃんが再びストローを含むと僕の目と目の間が約10cm。すごく近い。
「ひうぅ……」
「じゃ、いくよ」
僕もストローを含んだ。
「「すっ」」
二人同時に吸い上げると、それでやっと飲み物があがってくる。
「……うん、美味しいね」
「あわわ、何の味か全然わかりません……」
赤い飲み物を吸って更に顔が赤く染まった雛里ちゃんを見ながら僕は微笑んだ。
「雛里ちゃん」
「…はい?」
「ありがとう、さっき、助けに来てくれて…」
「……あわわ、…それ、おかしいです。何か私が考えたのと逆です」
「ふっ、そうだね。でも、雛里ちゃんがしたかったことは分かったかな。僕雛里ちゃんが怒ってくれてすごく嬉しかったし」
「あわわ……」
「もうちょっと休んだら、またプールで遊ぼうか。今度はビート板無しで泳ぐ方法おしえてあげるから…」
「………はい」
それから、かなり遊んだ。
プールを出た時は日が暮れていて、僕たは夕食の材料を買って家に向かった。
「雛里ちゃん、今日楽しかった?」
「はい、楽しかったです」
「そう、良かったね」
「でも……やっぱり一刀さん、私を見て興奮したりしなかったのはもったいないです」
あー、この娘まだそんなこと言ってる。
「雛里ちゃんは僕を幼女体格だったら誰にでも欲情する変態にしたいのか?」
「そういうわけでは…ないのですけど」
「僕は雛里ちゃんが好きで付き合ってるんだよ。別に雛里ちゃんがプールで会った女のようにグラマラスでも今のようにちっちゃくても、雛里ちゃんならどっちでも好き」
「…そういうものなのですか?」
「そういうものだよ。別に白スクじゃなくても、どんな水着の姿でも、雛里ちゃんが着たら綺麗だし、雛里ちゃんがするのだったら、どんな仕草でも可愛らしくて愛おしい。僕はそう思うよ」
「………一刀さん…」
雛里ちゃんは、
世界の誰もが頷くような美人ではないのかもしれない。
でも、少なくとも僕にとって、雛里ちゃんはこの世界のどんな女の人よりも綺麗で、可愛らしい。
「あ、そう、そう。雛里ちゃん、実は実家から、今年の年末には彼女を連れて来なさいと言われたんだけど、今年は行く?」
「あわわ!またですか?!一刀さん大丈夫なんですか?」
「僕の心配はご無用。どうせ一度は爺ちゃんと戦わないと雛里ちゃんと結婚できそうにないし」
「け、けけ、けけけ?!」
「うん?…あ、そうか。雛里ちゃんで僕と結婚しないんだね。僕とはただ心だけの関係で、そこまでは考えてないんだ」
「あわわ!違います!結婚した……何言わせるんですかー!」
「チッ」
「うぅ……お巡りさん、こっちですー!」
「ちょっ、それは勘弁してよ!」
こんな感じで、今日も日が沈んでいきます。
・・・
・・
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ぽんしろさんの『白』にインスパイアされた作品ですが、
基本的な自分の脳内設定が多分入ってます。
・雛里ちゃんと一刀は現代で同棲中です。(恋人同士)
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