華琳√ 題名:休みの日
一刀SIDE
「兄様!お風呂に入ってください!」
「………」
いつものように、起きて直ぐに仕事が詰まった机に向かおうとした俺は、また丁度良く俺を起こしにきた典韋にその行動を阻止された。
「風呂……典韋。今は朝だ。風呂など沸いていないぞ」
「大丈夫です!私が沸かしておきました!」
なんてことをしてくれるんだ、典韋。
「典韋、確かに今日は風呂を沸かす日だ。それは知っている。だが、だからと言って朝から風呂を沸かすなどと贅沢を孟徳が許すはずが……」
「華琳さまに許可を得ています」
孟徳、お前は何をしているんだ。
「そもそも何故俺をこんな朝から風呂に入らせようとするんだ」
「今の兄様の生活を見てそんな言葉が言えるのですか!部屋はいつも書類が散らばっているし、壁はすべて黒板に埋めて窓からは光も風も通らなくて部屋は暗いし通風ができなくて何か『この世に生きていてはいけない生物』が住んでいそうですし、そしてなによりも!
兄様自身がちゃんと洗っていません!」
…………
「目を逸らさないでください!」
今日の典韋はいつも以上にしつこい。
「そうは言うがだ、典韋。俺は今腕がこうで、お湯に浸かることはできない」
俺は石膏の包帯を巻いた右腕を見せながら言った。
これは言い訳ではなく事実だ。
俺が最近ちゃんと洗ってないのは片手が不自由なせいだ。
決して普段から面倒臭がったりするわけではない。
「そもそも兄様って城に来て風呂に浸かったことってあるのですか?」
「…典韋、いくら何でもそれは酷すぎやしないか?俺は一応日本人だ。あの国は毎日のごとく風呂に入るのだぞ。ここだと風呂を沸かすのはせいぜい週に一回ぐらい。こっちも色々と大変なんだ」
「だったら今直ぐ風呂に入ってください。私は今から、兄様の部屋を掃除しますから」
何故かは知らないが、典韋が今日は心を決めて来ているようだ。
……………
「分かった。風呂には入ろう。ただし条件がある」
「……何ですか?」
「見ての通り俺は腕が一本不自由だ。風呂を入るとしても、体を洗うには助ける人は必要だ」
「…それは…そうですね」
「…お前が来い」
「………ええええーー!!」
計画通り、典韋が取り乱し始めた。
「ええ、わ、私が、兄様と一緒に入れと!?そうおっしゃるのですか?」
「他に頼む奴も居ないわけだ。お前ぐらいしか居ないだろ。こんな時間に」
「そ、それは確かにそうですけど…で、でも、兄様と一緒にお風呂に入るとなると……///////」
このまま行くと、典韋も恥ずかしくてなかったことにするはず。
「で、でも、今日という今日は兄様の部屋を片付けようと思い込んでいたのですが……そ、そうです!凪さんにお願いすればいいんです!」
「文謙なら昨日妙才と賊討伐に出かけた」
「はっ!そうでした……うぅぅ…………////////わ、わかりました。私が…その……」
むっ、何か俺が予想した反応とは違う?
「……まぁ、俺の肌だけではなくその奥まで見切った典韋のことだ。別に俺の裸を見たところで恥ずかしくもなんともないだろ」
「は、裸!?」
典韋が更に慌てる。
「な、何でそうなるんですか!男女一緒に入るのですから、せめて下の方は隠してください!」
「つまり上半身は裸でも何の問題もないと」
「!!//////」
「しかし、典韋も変わったな。会って最初の時は、俺が熱くて上衣を脱いだまま寝たのを見ただけで部屋を半壊させていたのが…今じゃ一緒に風呂に入ってもなんともないほどになってしまうとは……」
「や、やめてください!私をそんな汚れた女みたいに言わないでー!」
典韋がいつになくその顔をトマトのように赤く染めながら耳を塞いだ。
あと一押しか。
「でも、そうだな。俺も典韋には見せれるところも
「…へっ?」
俺は典韋の肩を掴んで目線を合わせながら言った。
「俺にも典韋の『人に見せられない』ところ、見せてくれるのか?」
「うわああああああん、兄様の大馬鹿ーーーー!!!!」
典韋が精神崩壊して逃げ出した。
少しやりすぎた感じがしなくもない。
「…あなた、趣味悪いわよ?」
………。
カポーン
「結局入るんじゃない。典韋を虐める必要なかったんじゃないの?」
「あのまま放っておくと俺の部屋が掃除されるだろ。いくら典韋でも、俺の部屋を勝手に掃除するのは黙って見ない」
……というより、孟徳がそこに現れて俺に『絶』を差し出しながら「幼女趣味で捕まりたくなければ黙って風呂に入りなさい」と言われてなければここにも居ない。
「まったく、流琉が昨日突然朝から湯を沸かすようにして欲しいと言って大体予想はしていたけど、助けに来るのが一歩遅かったわ」
「それよりも、孟徳。何故お前がここに居る」
「だって助っ人は必要なのでしょ?流琉も逃げちゃったし、じゃあ私がするしかないでしょう」
まぁ、それはいいとしよう。
だが、
「お前は少し『隠したら』どうだ?」
「あら、あなたは私の『裸』を見て興奮するのかしら」
「俺が興味があるのは孟徳の理想だ。体になど興味ない」
「…………」
右腕の包帯は水が入らないように更に藁を巻いて水が入るのを最大限妨げた。
こうしても、結局包帯を変えなければいけなくなるとは思うが……
「にしても、良い風呂だな」
「あら、あなたここ初めてだったの?」
「使うのは将や城で生活する使用人だけなのに、それも男は俺以外は皆無。どこにこんな風呂を使う時間がある」
「そう。今までそこまで考えが回らなかったわね。今度からはあなた専用の時間帯も作ってあげるわ。じゃあ、その間は川とかで洗ってたの?」
「そうなるな……」
それも季節が寒くなってくると無理になって来て最近は控えていたわけだが……
「言ってくれたら直ぐになんとかしておいたのに」
「こっちは別に風呂が使えなくても困ることはない。興味のない話に気を使っても無駄だ」
「いえ、あなたと居る私たちのことも考えなさいよ。そうじゃなくてもあなたの部屋はなんか臭うのよ?」
「なら毎日のようにサボりに来るな」
華琳SIDE
「なら毎日のようにサボりに来るな」
「………」
何よ。誰は暇で毎日のようにあなたの部屋を訪ねているのかと思ってるの?
しかも、さっきの何?遠回しで私のような体じゃそういう気にならないと言ってるの?
「……」
「それより孟徳、お前はこんな時間に悠長に風呂など入っていて大丈夫なのか?」
「私は今日一日休みよ」
「丸一日休み?」
「君主だって有給休暇ぐらいあるわよ」
「…ふん、俺には関係ない」
そう言いながら一刀は湯から立ち上がった。
湯から上がった一刀の体は傷を負った右腕以外は全裸だったけど、その姿が恥ずかしくないほど、いい体をしていたわ。
……別に私だって彼の体に興味があるというわけではないから別にいいけど。
そういえば、初めて会った時会った時一刀はこう言ってたわね。
自分の思い通りに動けるような体に鍛えたって。
戦場に立つとどう動くかと頭では考えていても、体がそれに追いつけないということは多い。
考えだけだと光のように動いていても、人の体は自分の想像に追いつくほど丈夫ではないのよ。
だけど、初めて会った時、一刀は春蘭と秋蘭の攻撃を同時に避けていた。
頭で判断したことを、体はしっかり受け止めて反応する。一刀が武人だとしたらきっと西涼辺りで一人で黄巾党3万を一人で殺したという呂布奉先にも匹敵してなかったかしら
……考え過ぎかしら。
でも、彼の頭の良さが体にそのまま伝わるとしたら、どうしても最強の存在が思い浮かぶ。
「洗うのを手伝ってくれるのではなかったのか?」
「…え?」
ふと気づけば、一刀がこっちを見ながらそう言っていた。
「背中、流してくれないか」
「え?ええ、わかったわ」
あいつ、本当に私を見て興奮したりしないのね。
逆に無礼なんじゃないの?
・・・
・・
・
「洗ったら結構マシになったわね」
風呂から出て、服も洗濯するように言ったので代わりの服を用意させたものを着たら、いつもは少し気持ち悪くて不細工に見えた一刀も、少しはマシな姿に見えた。
ぐちゃぐちゃだった髪も綺麗になって目元の隈もお湯に浸かったいたせいで疲れが解けたのか薄くなっていて、高腰を曲げて妙にこっちに視線を合わせてくる姿勢の代わりにびしっとした立ち上がって来て……それでも見てあげられる程度にはなったわ。
というか普段でもそうしなさいよ。
「で、これからどうするの?」
「……そうだな。孟徳は今日休暇だと言ったし…それなら今日は俺も仕事はしないで他のことに当たることにしよう」
「へ?」
「当面の仕事は俺が個人的に推進しているものばかりだ。別に一日ぐらい作業が遅れたぐらいで大きな被害にはならない」
「……そう」
とはいっても、一刀がここに来て『休み』なんてとったことあったのかしら。
私も私よりは公務の方を気にする方だし、その辺においては人のことは言えないのだけれど、一刀は本当に仕事も、食べるのも寝るのも、本当に必要なこと以外には全部部屋の中で済ませていたわね。いつも何かをしている一刀を見ると、『休む』という概念があるかが疑われるほどだから。
「孟徳、お前が言うな」
「勝手に人の考えを読まないでくれるかしら」
「俺やお前のような人類はそういうのは基本的に出来るというものだろ」
あら、やだ。
あなたと同類扱いされなければいけないの?
「それもだ」
「チッ」
人の考えを読むのは楽しいけど、読まれるのは流石に気持ち悪いわね。
それほど、私が彼の前では気を抜けているということかしら。
「で、休みと言っても、あなたは何をするの?」
「……そうだな」
トドドドドドドドドン
板の上で凄まじい速さで野菜を切る音が厨房に響き渡った。
「………」
ト、トドドドドドドドドドドドドン
やっているのは私ではなく、まさかの一刀。
料理って、できたんだね。
しかも、包丁の使い方が尋常じゃないわ。
しかもいつも使っている手の方は包帯を巻いてる方なのだから、尚更驚く限りよ。
「で、何を作るのかしら」
「…中国料理ように手間かかるものは面倒くさくて作らない。言っても無駄だ。見ればわかる」
私が食卓に座って一刀の背中を見ながら効くと、一刀は人参を細切れにしながらそう答えた。
となると、一刀の世界の料理ということになるわね。
「それにしても、あなたが料理ができたなんて以外ね」
「……」
一刀の包丁が一瞬止まった。
でも、一刀は何かを言おうともせずまた次はニンニクを切り始めた。
きのせいかしら。それともただ単に、ニンジンを切り終えたからそうなったのかしら。
「孟徳は何故料理がうまいんだ?」
「私に出来ないことなんてないわ」
「…それは理由になるのか?」
「私は何でもやりこなそうとしていた。だから料理もしてみた。それだけの話よ」
「……愛情がないな」
「?」
チーー
切った野菜たちを炒めながら一刀が言った。
手伝おうかも思ったけど、左手だけでも十分にやりこなせていたので黙って見ていた。
おそらく、あの料理は流琉にあげるつもりだろうし、私が手伝ったら作る意味が薄れるでしょう。
「他になかったのか?初めて料理をした時、誰かに食べさせてあげたかったとか、誰かに褒められて見たかったとか」
「…………」
そんなものは…なかった。
初めて料理を作る時は秋蘭が一緒にいた。
食べたのは春蘭と秋蘭と一緒だった。
でも、二人に食べさせてあげたくて料理をしたとかでもなく、春蘭は食べながらすごく喜んでいたが、それを見るために作ったわけでもなかった。
ただ、なんでも出来る私でありたかったから、料理も一流になろうとしていただけ。
「あなたはあったの?」
「………母に……たべてもらえなかったがな」
「どうして?」
「そんなことやってる暇があったら勉強をしなさいと怒られてたな。俺の初めて作った料理は、そのままゴミ箱の餌になった」
「っ…そう…嫌なことを聞いてごめんなさい」
「俺が先に聞いたことだ。謝られる筋合いはない」
炒めた野菜にご飯を入れて一緒に炒めた。ただの炒飯?
と思ったら、炒めた炒飯を側で、一刀は卵を割って混ぜたのを他の鍋に平たく広げた。
そのあっという間に出来た紙のようになった卵を皿に置いて、その上に炒飯を置いて、炒飯を載せてない卵焼きの部分をあげて炒飯を包んだ。
「それはなんて料理なの?」
「……オムライス」
「おむらいす?」
「…のはずだったのだが…さて、この時代だとトマトがない……」
そうつぶやいた一刀は、他に炒めておいた青豆を箸で一つずつ取って卵の上に乗せ始めた。
「…あれ?華琳さま?」
「うん?…あら」
一刀の様子を見ていたら、厨房の門前に流琉がいた。
「流琉こそどうしたの?」
「え?あ…えっと…つい、癖になっちゃいまして…」
「へ?」
「典韋はこの時間だといつも俺の昼食を作るために厨房に来る。朝怒ったのも忘れて無意識にここに来たのだろ」
「って、兄様!?」
流琉が驚いた顔で一刀を見た。
「で、残念ながら今日お前の料理は要らん。そこに座れ」
「はい?」
あなたはもう少しちゃんとした言葉はないの?
と思いつつ、私とは斜めの方に座った流琉に向かって、一刀はさっきから熱心に青豆を積んでいたおむらいすという料理を渡した。
そして、その卵の上に乗せた青豆で出来ている文字がまた傑作。
『ルル大好き』
「……」
「………/////////」
あ、まずい。ツボに入った。
内容が可愛すぎて死にそう。
前の二文字は分からないけど『大好』というところがもうアウトよ。アウトがどういう意味かは知らないけど。
「…え、えっとですね…に、にいさま。これって」
「黙って食え」
しかも顔はいつもと何一つ変わらないっっ!
「ちょっと……あの、食べられません」
「…………」
「こんなの食べるなんて勿体無いです」
「料理が勿体無くて食べられないってことはない。誰かに食われてからこその料理だ。そして、コレは流琉、お前のために作ったんだ」
あなた言うことがむちゃくちゃすぎるでしょ!?
「わ、わかりました…じゃ、じゃあ」
顔を真っ赤に染めた流琉は蓮華を手にとった。
なにこれ、何ておしおきなの?天の世界の料理、侮れないわね。今度桂花に試してみようかしら。
ボタ、ボタ
「…うん?」
ふとおむらいすの卵の上に『赤い何か』が落ちてるのを見て視線をあげると、流琉の鼻から『赤い血』が流れていた。
「あ、あうぅ……アゥゥ…ニィサマが…が……私ノタメニ……」
「一刀、流琉が壊れてるわよ!どうするつもり!」
私は突っ込まずにはいられなくて一刀に叫んだけど、
「コレはお前のだ、孟徳」
…へ?
『カリン元気出せ』
……///////
「孟徳、最近随分疲れてるようだな。妙才とかが心配していたぞ。たまにはサボりに来ても良いから部下たちを心配させるのも程々にしろ」
「………え?あ、ええ……」
「それじゃあ、お前の分を作って丁度材料が切れたので、俺は他の所で食べるとしよう。その後は…まぁ、荀彧と象棋でも打つことにしよう」
そう言いながら、一刀は部屋を出たけど、私はそんなこと気にする場合じゃなかったわ。
何これ、どうしたら良いの?
食べる?馬鹿な!これを食べるですって!
だって、食べたら文字が崩れるじゃない!
待って!慌てちゃダメよ。これは一刀の罠よ!
そうか!卵で中身を包んだのは、炒飯をこの文字で守って食べられなくするための罠だったのよ!
でも食べないと、私はいつまでもこの文字を見ていなければいけない!もしこんな場面を他の誰かに見られたら……!
「か、カリンさま……」
「ルル……」
いえ、逆に考えるのよ!中身を食べられなくする理由ってなんなの?つまり人に食べさせるものにならないからそれを隠すためにこんな罠をしかけたのよ!そうそうに違いないわ。こんなので私の舌を煩わせるほどでも……
「美味しいです……兄様が作ったおむらいす…すごく美味しいです」
流琉!!あなた食べたの?それ食べたの?
文字の『ル』の左の部分が崩れてる!しかも卵が流琉の血で赤く染まってるわよ!
「炒飯も、一級料理店の料理長が作った並に美味しくて、それを卵が包む食感が、すごく美味しいです」
涙と鼻血を流しながらもやっぱ料理人なのか、ちゃんと評価をしているわね、流琉。すごくみっともないけれど。
「でも…ちょっと味がしょっぱいです」
それはきっとあなたの鼻血のせいよ。というか、あなたはいつまで鼻血を流してるの?もう食べた分より流した鼻血の量が多そうよ?!
「華琳さまは…食べないのですか?」
「た、食べるわよ」
流琉が食べた以上、言い訳も聞かないし私も食べないわけにはいかない……
でも……
『カリン元気出せ』
何コレ。分かる文字なんてたかが三文字なのに、この心が癒されるような感覚は何?!
この形を崩したら、作った人の心を崩すようで手が出せない。
でも、逆に食べなかったら、それはそれで作った人への冒涜!
くぅっ!この曹孟徳がこんな料理一品でこれほど悩まなければいけないなんて、どういうことなの?
「ふ……ふふふっ」
流石よ、一刀。私が興味を持っただけはあるわ。
でも、一刀、あなたは大きな間違いを犯したわ。
それは、卵の上に青豆を載せて文字を作ったことよ!
つまり、上の卵だけ斬ってそのまま他のところに移せば、下の炒飯は無防備の状態!
何の迷いもなく食べられるわけよ。
そうと分かれば、さっさとこの卵を外して
「熱っ!」
なっ!相当時間が経ったのにまだこんなに熱いなんて……そうか!卵に包まれた炒飯はそのまま熱気を保っていられるのよ!だからこの完璧たるまで卵に包囲された炒飯はいつまでもその熱さを維持できる!
これだと卵を千切ることもできないじゃない!謀ったわね、一刀!
「兄様……もう…私…兄様のことしか考えられません<<もぐもぐ>>」
って流琉がどこかに旅立とうとしてる!なにこの料理、食べれるものなの?!
帰って来なさい、流琉!
くぅっ!呪うわよ、一刀!!
桂花SIDE
「……ねぇ、アンタ」
「どうしたんだ、荀彧」
「…何を企んでるの?」
「象棋を打ってる時自分の戦略をバラす者がいるか」
「いや、あの……それはそうなのだけど……いつもの打ち方と違うんじゃない?」
「………」
「何これ、こんなに綺麗な打ち方されると逆に怖いんだけれど…いつもは奇策、妙策使ってくるくせに……」
タッ
「あっ!(しまった!気が逸れて思ったのと違うところに打っちゃった。くぅっ、また散々言われちゃうじゃない!)」
「……今のやり直し」
「…は?」
「今のは誰が見ても悪手だ。戻してもう一度ちゃんと考え直せ」
「し、勝負には取り消しなんてないわ!打ったらお終いよ!」
「今日の俺と打つ時は例外だ。中盤で打った悪手のせいで終盤まで俺にジリジリと引っ張られる打ち方はしたくないだろ。俺も今日はもっとさっぱりした勝負がしたい。だから今のは見逃す」
「……アンタ、今日ちょっとおかしいわよ?外見もヤケに綺麗だし、やってるのも不気味度下がってるし」
「風呂入ったせいだ。数日経てば治る」
「は?どういうこと?」
「あ、そう。これ終わったら昼食べに行こう。負けたほうが奢るということで」
「なっ!何で私がアンタなんかとお昼食べなければいけないのよ!」
・・・
・・
・
華琳の知らない話
その次の風呂の沸く日
ガタン!
「兄様、一緒に風呂に入りましょう!」
「…………帰って寝ろ、典韋。お前疲れているんだ」
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皆さんはほんとに稀に良く自分の期待を外してくれるから困りますよ(笑)
途中までは桂花が圧倒してて、安心して桂花の書いていたら、いつの間にか華琳さまが抜いているじゃないですか。
おかげですごくカオスな話になっちゃいましたけど、これは決して私のせいではありませんからね