No.335660

恋姫無双 ~決別と誓い~ 第11話

コックさん

遅れて申し訳ありません。

相変わらず暗いです。
誤字脱字の指摘お願いします。

2011-11-17 11:20:36 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:4034   閲覧ユーザー数:3433

「孫権様。北郷様を連れてまいりました」

 

 

「ええ。入っていいわ」

 

侍女の言葉に若干胸を踊らしている自分を、悟られないように気を配りながら、私は応答する。

 

彼とは、姉さまが死んでから一度も会っていない。

 

計算すると大体一年と少し、彼の顔を見ていないことになる。

 

彼が天の御使いを辞め、軍に志願した結果、身分に大きな差が出来てしまい話すことはおろか、顔を見ることさえ困難を極めた。

 

 

その彼とようやく会える。

 

 

この事実にどれほど喜んだことか。

 

いつもはこの執務室に山のように積み重なる書簡を、通常の速さの五割増しの速さですべて処理し(穏曰く、『鬼神じみていた』と苦笑していた)、彼が来るのを今か今かと待ちわびていたのだった。

 

彼が・・・・・部屋に入ってきた。

 

「第一六独立部隊に配属が決まりました北郷です。今回会食のお誘い、たいへん光栄に思う次第であります」

 

とどこか他人行儀で固苦しい言葉を発し、敬礼を私にする。

 

体は以前よりも引き締まり、筋骨隆々の体格となっており、また立っていても隙がない。

 

姉のような強く鋭い目つきを見ると、彼が一人前の軍人へと変わったのだと嫌でも思い知らされた。

 

その鋭い目が、私のそれと合う。

 

 

 

・・・・その彼の目が一瞬揺れるのを、私は見逃さなかった。

 

怒り、悲しみ、自制、同情、懐かしさ。

 

そういった感情が目に表れていたのだ。

 

(ああ・・・・。彼はこころは、ここにはいないんだ。姉様の所にいる)

 

そうしてさっきのやけに固苦しい態度。

 

彼は階級が高い冥琳とは公私を分けてだが自然に話せているにも関わらずだ。

 

 

(私が王だから?それとも姉さまを思い出してしまうから?だからそんな態度を取るの?一刀)

 

彼に非が無いのは重々承知している。

 

しかし、私は心中で理屈を並べ立て怒りを押さえ込もうとするが律し切れる自信が無かった。

 

彼は私を姉と重ねて見ていることが腹立たしかったからだ。

 

(どうして私を見てくれないの?)

 

私は妹の孫仲謀であって、姉の孫伯符ではないのに。

 

なんとも形容し難い感情が私を支配し、胸が鷲掴みされたかのように痛む。

 

気がつくと、ひどく無機質で何処か冷淡な底冷えする声を彼に発していた。

 

「・・・・貴官が北郷だな?」

 

「はい」

 

「この国の訓練生で一番の成績を収めたとか。その力、是非とも国民の為に、使うよう日々精進せよ」

 

「・・・・・はっ。ありがたき御言葉」

 

彼との会話で何を話そうかと昨日、一晩中悩んだ自分が滑稽だった。

 

彼はここに来るのは早すぎた。いや、来るべきではなかったのかのしれない。

 

ここには楽しい思い出、悲しい思いでまでもが彼の中にある。

 

 

・・・・それをほじくり回す結果となっていた。

 

そう思うと、彼が来る今迄、胸を踊らして待っていた自分が滑稽だったし、また彼の心にまだ自分の姉が居続けることに嫉妬を覚える自分の器の小ささに辟易する。

 

私はいつも姉と比べられていた。

 

常に優秀な姉を目標にせよと耳にタコが出来るぐらい子供の頃から教えられていたし、また戦や私生活での取る行動でさえ姉との比較の対象となった。

 

母孫堅の志を受け継いだ姉孫策は極めて優秀だが、それに比べ、妹の孫権は自ら表に立とうとしない軟弱者だと批判を受けたことも多々あった。

 

ゆえに、期待に応えられるように必死に努力をした。誰よりも鍛錬をし、また誰よりも勉学に勤しもうと努めた。

 

しかし私が必死に努力して出来るようになった事を姉は、いとも簡単に出来てしまう。

 

その事実が私を醜い劣等感の塊へと変えていった。

 

姉の性格が最悪ならまだ憎めたかもしれないが、天真爛漫で人を包み込んでしまう魅力的な性格の姉はそれさえも許してはくれなかった。

 

そんな姉の不運な死に、どこか喜んでいる私がいることに自己嫌悪を激しく感じていた。

 

こんな自分が嫌いだった。家族の死を素直に悲しめない最低な自分が王になる資格があるのかと自責の念に駆られるのもしばしばあった。

 

 

 

 

姉への劣等感はまだ残っている。

 

私が立案した政策や外交政策の基本方針は姉の採ったそれとは相反するものであるのが何よりの証拠だ。

 

内地拡充、富国強兵、専守防衛、そして敵であった劉備との同盟。

 

これらの行為が姉への劣等感によるものとはあまりにも皮肉だし、また滑稽だった。

 

しかし、私の姉が死んでも尚、私は負け続けている。

 

北郷一刀がいい例だ。

 

姉が死んでも、彼はまだ姉を愛し続けている。

 

(好きな男性さえ振り向かせること出来ない)

その事実が私をより一層打ちのめしていた。

 

 

私は姉の呪縛が何時までも解けることはないと思うと気が気ではない思いであった。

 

そして彼とは、何処か冷めた雰囲気の中社交辞令的な会話が行われた後、昼食を一緒にすることとなった。

 

出された昼食は質素なもので、兵が口にするものとそれほど変わらない。

 

「国民が必死で生活を営んでいるのに、王族が贅沢を極めるのは間違っているというのが私の考えで、どうか許して欲しい」

 

「いえ、素晴らしいお考えでございます。・・・・王様」

 

お互い、よそよそしい態度のまま会食が終わり、彼は一言も会話を交わすことなく部屋をあとにした。

 

彼との再会は最悪な形となった。

彼が執務室を出て暫く経つと悲しみだけが胸の中を満たしていた。

 

「!!」

 

頬に温かい水滴が伝うのがわかると私は自分が泣いていることを知覚した。

 

もう止まらなかった。体が震え、様々な感情があふれ出てくる。

 

 

(あっ。壊れる)

 

何が壊れるか分からないがそう感じると同時に私はうずくまって泣いていた。

 

これ子供の頃や国葬でもこれほど泣いたことはない、それほど大きな声で泣いていた。

 

侍女が何事ことかと部屋に慌ただしく来るのも構わずただただ泣いた。まるで迷子になって離ればなれになった子供が母親を求めて泣くように。

 

 

この涙と共に劣等感や悲しみといった全ての負の感情が流れ出てしまえばいいとそう願いながら私は泣きじゃくるしかなかった。

 

 

 

どうも、コックです。

 

見てくださっている方には投稿が遅くなり申し訳ありません。

 

しかし、相変わらず暗いですねこの作品。

 

しかも蓮華がちょっとキャラ崩壊入っているかもしれませんがご了承下さい(-_-;)

 

でもよくよく考えると無印でも冥琳に五月蝿く雪蓮と比較されていたり、ケチを付けられていたりしていたので、コンプレックスになってもおかしくないかなぁ~と思いまして。

 

歴史でも武田信玄の息子である勝頼やナポレオン三世なんかも親や祖父のコンプレックスから信長に戦争を仕掛けたと言われていますしね。

 

ハイスペックな人が家族になると苦労するのは世界共通ですよねっていう話です。はい。

 

次からちょっと戦闘シーンをいよいよ入れたいと思っています。

 

ほんといよいよですよね。群雄割拠の時代なのにね・・・・・(^^ゞ

 

朱然君が何処に行くのかも注目してくれた嬉しいかなと存じます。どうかこれからも宜しくお願いします。

 

では再見!

 

PS:前回の指摘にはものすごく感謝しています。皆様の意見にできる限りお応えできるよう、率直な感想、意見を書いてくださると有難いです。


 
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