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真・恋姫無双アナザーストーリー 蜀√ 桜咲く時季に 第28話 [詠・雛里・星拠点]

葉月さん

お待たせしました。
本日と次回は投票上位5名による拠点になります。
本日はその一回目です!
今回の主役は、雛里、星、詠の三名となっております。

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2011-11-13 23:19:25 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:8574   閲覧ユーザー数:5650

真・恋姫無双 ifストーリー

蜀√ 桜咲く時季に 第28話 拠点一回目

 

(一刻=1時間)、(一里=4km)

 

 

【感謝の気持ちを】

 

 

 

《詠視点》

 

「まったく……どうしてボクがこんなことを……」

 

ブツブツと文句を言いながら山積みになった洗濯物を持ちながら廊下を歩く。

 

「これじゃ前が見えないじゃないのよ!」

 

文句を言ってもこの洗濯物の山が無くなる訳じゃないけど言わずにはいられない。

 

「はぁ、こんなことならあの時、素直に月にも手伝ってもらえばよかったわ」

 

今更ながら自分の浅はかな考えに後悔してしまった。

 

………………

 

…………

 

……

 

「はぁ、侍女ってこんなことまでしなくちゃいけないの?」

 

「いつも私達がさせてたことだよ詠ちゃん」

 

「それはそうだけど……」

 

掃除に洗濯、買出しに食事の配膳。

 

侍女の仕事の多さに目眩が出てくる。

 

「でも私達の仕事の量はこれでも少ないんだよ?」

 

「それはわかってわよ」

 

そう。本物の侍女ならこんなものじゃない。

 

ボクと月はあくまであいつの……北郷一刀の侍女。

 

だからある程度、免除されているところがある。

 

でも、月は気にしているのかよく他の侍女と話をして仕事を手伝っている。

 

もちろんボクだって月だけにそんなことをさせるわけにはいかないから手伝っているけど。

 

「それじゃこの洗濯物を洗ってくるね」

 

「ならボクが持っていくわ。月は先に行っていていいわよ」

 

「えっ。でも凄い量だよ?」

 

「大丈夫よ。月と違ってボクは軍師として走りまわてたんだから体力は月よりあるんだから」

 

「でも……」

 

「いいから月は先に行って場所を確保しておいて」

 

「……うん、わかった。先に行ってるね」

 

月は暫く黙っていたけど最後は笑顔で頷いてくれた。

 

「それじゃ、待ってるね詠ちゃん」

 

月はそう行って先に洗い場へと向かっていった。

 

………………

 

…………

 

……

 

「あぁもう!広すぎなのよこの城は!」

 

洛陽と比べ、比較する必要が無いほど規模は小さい。

 

だけど軍師としての行動範囲と侍女としての行動範囲を考えるとそれは逆転する。

 

軍師として行動する範囲はそう多くない。それに比べ侍女になれば大袈裟な話、城全体をくまなく移動しなくてはならない。

 

それだけで洛陽での移動範囲を大幅に超える。そして、それ以外にも……

 

「覚える場所が多すぎるのよ!まったく迷路だわ!」

 

厨房、洗い場を始め各武官の部屋も把握しておかないといけない。

 

「はぁ……愚痴しか出てこないわ……」

 

だけど愚痴をいった所でこの洗濯物が少なくなるわけもなく、城が小さくなるわけでもないが言わずにはいられなかった。

 

「っ!わっとと!もう!前が見えないから足元も全然見えないわよ!」

 

足元が見えずこけそうになった時だった。

 

(ドンッ!)

 

「わとと!ご、ごめん!平気だっ……なんだあんたか」

 

前が見えずぶつかった相手に謝ろうと向きを変えるとそこに居たのはこの状況を作った元凶の北郷一刀だった。

 

「随分と頑張ってるね」

 

「ええ。あんたのおかげでね。てんやわんやよ」

 

「そっか」

 

嫌味を籠めて言ってもあいつは笑っているだけだった。

 

「ボク、急いでるからそこ退いてくれないかしら」

 

「随分と洗濯物が多いね……よっと」

 

「ちょ!何してるのよあんた!」

 

あいつを避けて洗い場へ行こうとした時だった。あいつはあろうことかボクから洗濯物の山を取り上げてきた。

 

「洗い場に持って行けばいいんだろ?」

 

「……ま、待ちなさいよあんた!ボクの仕事を取るつもり!?」

 

「いいからいいから。俺今暇だしさ」

 

「そう言う問題じゃないわよ!」

 

文句を言うボクを無視してあいつは洗い場へと歩いていってしまった。

 

「……」

 

何も言わずにボクはあいつの後を付いて行く。そこでボクはあることに気がついた。

 

「あ、主様(ぬしさま)。今日もお散歩ですか?」

 

「ああ。今日は午後から仕事だからね」

 

侍女は挨拶をしながら通り過ぎる。

 

「あら、またわたくしたちの仕事をお取りになったのですか主様は」

 

「まいったな。別に取ってるわけじゃないんだけどな」

 

また通りすがりの侍女に冗談交じりに会話を交わす。

 

「主様!美味しいお菓子が手に入りましたけどお食べになりませんか?」

 

「おっ!ならあとで顔を見せに行くよ。ちゃんと俺の分も取っていてくれよ?」

 

「は~い。でも、早く来てくださいね?そうしないと全部食べちゃいますよ」

 

仕舞いには侍女からお茶のお誘いを受ける始末だった。

 

本当こいつが太守なのか疑問に思えてくる。

 

「……ねえ。なんであの子達、普通にあんたに話しかけてるの?仮にもあんた太守でしょ?」

 

「え?ん~……なんでだろうな。でも、堅苦しくなくて俺は良いけどね」

 

こいつは本当に分からないのか首を傾げたあと微笑んでいた。

 

「はぁ。こんな太守初めて見るわよ。あんた本当に太守?」

 

「それを言われちゃうとなんとも言えないな。ただ、普通に接してるだけなんだけどな」

 

そこが問題なんじゃないかとボクは言いたかった。

 

こんな奴だから侍女からも太守だと思われてないんじゃないの?

 

そして仕舞いには……

 

「あっ!ご主人様!お暇なようでしたらあとで買出しに行っていただけませんか?」

 

「ああ。それじゃこれを置いたら行ってくるよ」

 

「……」

 

もう何がなんだか分からない状態だわ。

 

ボクは頭が痛くなり思わず額を押さえた。

 

「ん?頭でも痛いのか?だったら休んでてもいいぞ」

 

「っ!あ・ん・た・のせいでしょうがーーーーーっ!!」

 

ボクはあいつの鼻先に指を何度も押し付けた。

 

「あんた太守でしょ!なんで侍女に良い様にこき使われてるのよ!」

 

「別に使われてるなんて思ったこと無いよ。ただ大変そうなだけだから手伝ってるだけさ」

 

「……」

 

もう呆れて何も言えなかった。

 

大変そうだから?有りえない。そんなことで侍女の手伝いをする太守が何処に居るって言うのよ。

 

こいつは異例すぎる。天の国がどんなところかは知らないけど。こんな奴が何人も居るとはボクには思えなかった。

 

相手を蔑む気持ち、嫉む気持ち、支配しようとする気持ち。その気持ちがあるから人は争いを起こし相手の領土を奪おうとする。

 

だけどこいつからはそんなものを感じない。いつも相手の事を想い、どうしたら相手にとって良いかを考えて行動している。

 

こいつみたいな人間が宮廷内に多ければ月もあんなことにはならなかっただろう。

 

「あっ。詠ちゃん、遅かったね。?誰かに洗濯物持ってもらったの?」

 

月はボクが近づいてくることに気がついて小走りで近づいてきた。

 

「やあ。月」

 

「ええ!?ご、ご主人様、何をしていらっしゃるのですか?」

 

月は洗濯物を持っている人物が分かると目を丸くして驚いていた。

 

「さっきそこで詠とぶつかってね。暇だったからこうして荷物もちをね」

 

「そうだったんですか。やっぱり詠ちゃん、一人で持ってこれなかったんだね。二人で持って行こうって言ったのに」

 

「違うわよ!こいつが勝手にボクの手から取り上げたのよ!ボク一人でだってもって来れたわよ」

 

「でも、ご主人様にぶつかったんでしょ?」

 

「うぐっ!……そ、それは、そうだけど……」

 

「すみませんご主人様。詠ちゃんがぶつかってしまい。それに荷物運びまで……」

 

「気にしなくていいよ。さっきも言ったけど暇だからね。暇つぶしにもなったし。それに流石にこの量は女の子一人じゃ重いだろうしね」

 

笑顔で答える北郷に苛立ちがつのる。

 

なんなのよこいつは!用も無いのに現れてボクの仕事を取るわ。仕舞いにはボクの月に馴れ馴れしく話し出すし!

 

「ちょっと。もうここまで来れば平気よ。さっさと渡しなさいよ」

 

「え?ああ。わかったよ」

 

「ふんっ!月、行くわよ」

 

「えっ。でも……」

 

「いいのよこいつは。それに侍女にお使いも頼まれてるみたいだし。さっさとそっちの手伝いに行っちゃいなさいよ」

 

「もう、そんな言い方したらダメだよ詠ちゃん。すみませんご主人様」

 

「気にしてないからいいよ。それにお使いを頼まれたのは事実だしね。そうだ、何か買ってくるものはある?ついでに買ってくるよ」

 

「そんな!ご主人様のお手を煩わせるわけには!」

 

「ついでだから。それとも俺じゃ役不足かな?」

 

「そんなことはありません!」

 

こいつ……そんなこと言ったら月が断れるわけ無いじゃないの。

 

「そ、それではお言葉に甘えて……」

 

月はすまなそうにあいつに買ってきて欲しいものを口頭で伝えていた。

 

「了解。買ったら厨房に置いておけばいいかな?」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

「詠はなにかあるか?」

 

ボクに向き直り買ってきて欲しいものは無いかと聞いてくる。

 

「特に無いわ」

 

「わかった。それじゃ、また後でね月、詠」

 

「はい。行ってらっしゃいませご主人様」

 

月は離れていくあいつに微笑みながらお辞儀をしていた。

 

「詠ちゃん?なんでそんなにご主人様に厳しく当たるの?ご主人様が可哀想だよ」

 

「ふん。それくらいでへこたれる奴じゃないわよ。それにボクはあいつの事、まだ認めてないんだから」

 

ボクは洗濯物を持って歩き出す。

 

「……詠ちゃんには黙ってようと思ったんだけど」

 

「?何の話?」

 

「……実はね。こんな話を先輩侍女の人から聞いたの」

 

歩き出すボクに月は話しを始めた。

 

「私達がご主人様の侍女として雇われた時、ここに居た侍女の人たちからすごく反対されてたんだって」

 

それはそうでしょうね。ぽっと出たボクたちが太守であるあいつの専属侍女だものね。

 

「そこでね。ご主人様はなんて言ったと思う?」

 

「どうせ命令でもさせて黙らせたんじゃないの?」

 

「ううん。違うよ。ご主人様はこう言ったんだって『彼女達は信頼できる。だからもし彼女達が俺に危害を加えたり、粗相をするようならそれは俺の目が悪かったことだから。責めるなら俺を責めてくれ』って」

 

「なっ!」

 

あいつの懐はどこまで深いのよ!侍女たちを責めるわけでも、命令で黙らせるわけでもなく、逆に自分を責めろだなんて。

 

「その話をね聞いた時。私はご主人様の侍女で良かったって思ったんだよ」

 

「月……」

 

確かに、あいつには感謝してもしきれないほど助けてもらった。月を助けてくれただけじゃなく、こうして仕事も手配してくれてるんだから。

 

「……詠ちゃん。ご主人様にお礼を言わないと」

 

「な、なんであいつに言わないといけないのよ。そ、そうよ!これはあいつだけが決めたことじゃないでしょ!桃香や愛紗だって手伝ってるんだから!」

 

ボクの話を月は微笑みながら聞いていた。

 

「もうこの話はお終い!ほら、早く洗濯物を洗っちゃうわよ!」

 

ボクは話を無理矢理切り上げて洗濯物を洗い出した。

 

………………

 

…………

 

……

 

はぁ、何やってるんだろボクは……

 

夜、所々に明かりが灯る廊下を歩きながらある場所へ向かっていた。

 

「まったく。昼からは休みじゃなかったの?」

 

寝る前に厠へ向かって部屋に戻る途中の事だった。通りの途中で一箇所だけ火が灯っている部屋を見つけ不思議に思い覗いてみるとそこはあいつの執務室だった。

 

そして、今一番聞いてはいけない言葉を来てしまった。

 

………………

 

…………

 

……

 

『まったく、ご主人様には困ったものですね。今日は一日政務の仕事があるとお伝えしたではありませんか』

 

え?

 

『はははっ。面目ないど忘れしちゃっててさ』

 

『とにかく。この書簡を朝までにお願いします。残りはまだ猶予がありますので朝までに目を通していただかなくても構いません』

 

『了解。朝までには終わらせるよ。愛紗は先に寝てくれ』

 

『よろしいのですか?』

 

『ああ。もともと俺の不注意だったわけだし。そこまで愛紗に付き合ってもらうのは悪いからね』

 

『わかりました。では、お先に失礼しますご主人様』

 

……なんなのよ。あいつ、昼からは休みだって言ってたじゃない。そんな嘘をつく必要が……っ!

 

そこであることに気がついた。あいつはボクとぶつかった。でもボクが向かっていた先には洗い場しかないはず。

 

そう、あいつが態々行く場所じゃないってことだ。じゃあ、なんでそっちから着たのか?

 

「……ああ、もう!」

 

ボクは声を上げてある場所に向かった。

 

………………

 

…………

 

……

 

(コンコン)

 

『ん?こんな時間にだれだ?』

 

「さっさと開けなさいよこのボケ」

 

ボクは名も告げずただ開けろと言い放った。

 

『詠?ちょっと待ってくれ……どうしたんだ、こんな夜遅くに』

 

「……はい」

 

扉を開けて質問してくるあいつに何も答えずにお盆に載せた湯飲みと軽食を渡す。

 

「ん?これは?」

 

「勘違いしないでよね。たまたま、小腹が空いて厨房に向かってる時にこの部屋に明かりが灯ってたから持ってきただけなんだからね」

 

「そっか。態々ありがとうな詠」

 

笑顔で答えるあいつは本当に嬉しそうにしていた。

 

「そ、それで後どれくらいで終わるのよ」

 

「そうだな。あと書簡三つだからそれほど掛からないと思うけど」

 

「そ、そう……ま、まあいいわ。ボクはもう寝るから」

 

「うんお休み。明日もよろしくな」

 

「ふん!…………あ、ありがとう北郷」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「っ!何も言ってないわよ!さっさと食べて仕事しろって行ったのよ!」

 

ボクはあいつに怒鳴りつけて執務室から離れた。

 

「……ありがとう、か……」

 

なんでこの言葉が出たのかボク自身もわからなかった。だけど……悪い気はしなかった。

 

「北郷一刀……少しは主として認めてあげてもいいかな?……っ!で、でも少しだけなんだから!太守としてならまだまだ月には及ばないんだからね!」

 

誰も居ない廊下で一人声を上げるボクを空に浮かぶ月だけが優しく照らし見下ろしていた。

 

《End...》

【不思議の国の雛里】

 

 

 

《雛里視点》

 

「んん~。も、もう少し……」

 

背を伸ばして上段にある本に手を伸ばす。

 

「うう~っ!」

 

(ひょい)

 

「あわわっ!?」

 

私が取ろうとしていた本を背後から誰かに取られてしまいました。

 

「はい雛里。これで合ってるかな?」

 

「ご、ご主人様!あ、ありがとうございまふ!あぅ、また噛んじゃった」

 

本を取ってくれたのはご主人様でした。私は突然だったので思わず噛んでしまいました。

 

でも、なんで書庫にご主人様が居るのでしょうか?

 

「ご主人様はなんで書庫に?」

 

「暇な時に本を読もうかと思ってね。何か無いかなって来て見たんだけど、そういう雛里は?」

 

「過去の帳簿が必要だったので取りに来たんです」

 

「そっか。その一冊だけでいいのか?」

 

「いいえ。今の列から一列分です」

 

「えっ……こ、これ全部?」

 

ご主人様は顔を引きつらせて指を刺していました。

 

「はい」

 

「……雛里、これ全部どうやって持って行くつもりだったんだ?」

 

「え?……っ!あわわ。考えていませんでした」

 

ご主人様に言われるまでどう持って行こうかなんて考えていなかったです。

 

どうしよう。こんなに沢山の資料を一人で一度に持っていけないよね。

 

ここは何回かに分けて持っていかないと……

 

「よし。それじゃ俺が少し持って行ってあげるよ」

 

「そ、そんな。ご主人様にご迷惑は……」

 

私がどう持って行こうかを考えているとご主人様は行き成りとんでもない事を言い出してきました。

 

「そんなの気にしなくていいよ。それに女の子にこんな重たいのを一人で持たせたら爺ちゃんに殴り飛ばされちゃうからね。

 

「で、ですが……」

 

「それじゃ。代わりに俺が読めそうな本を選んでくれるかな?それならお互い様だろ?」

 

あぅ、それでもまだ私のほうがいっぱい、いっぱい迷惑をかけていると思うのです。

 

でも、ご主人様はそんなことを気にしたそぶりも無くただ、微笑んでいました。

 

「はぅ~……はい、わかりました」

 

私は帽子を深く被りただ頷く事しか出来ませんでした。

 

あわわ。ズルイですご主人様、そんな笑顔を見せられたら嫌だなんて言えません。

 

「よし!それじゃ俺はここの資料書を全部取り出しておくから雛里は俺が読めそうな本を選んでくれるかな?

 

「わかりました」

 

私はご主人様の読めそうな本を探しに別の棚へと向かいました。

 

………………

 

…………

 

……

 

「ご主人様はどんな本がいいのかな?」

 

本棚の背表紙を見ながらどんなお話がいいのかを考える。

 

冒険物がいいのかな?それとも恋愛物?……~~っ!

 

あわわ。しょ、しょんなご主人しゃま!だ、だめでしゅ!こんなところで!

 

「はぅ~。恋愛……」

 

その言葉に思わず顔を赤くしてしまいました。

 

「や、やっぱり、ご主人様には冒険物がいいよね!男の方だし!」

 

私は首を振り、考えていたことを頭の中から追い出しました。

 

「は、早くご主人様にこのご本を届けないと」

 

私は一冊の本を手にご主人様が待っているであろう書庫の入り口へ急いだ。

 

「お待たせしましたご主人様!」

 

入り口に戻ると既にご主人様は必要な資料書を机の上に置いて待っていました。

 

「そんなに待ってないから大丈夫だよ」

 

よかった。ご主人様をお待たせさせないで。

 

「それで雛里はどんな本を選んでくれたんだ?」

 

「はい。ご主人様は殿方ですので、冒険物が良いかと思いましてこれをお持ちしました」

 

私はご主人様に本をお手渡しました。

 

「どれどれ……うん。これなら俺でも読めそうだ。ありがとう雛里」

 

「あわわ」

 

ご主人様は微笑みながら私の頭を撫でてくれました。

 

「あわ、あわわ。はふぅ~~~」

 

「え!?ちょ!ひ、雛里!?行き成りどうしたんだ!?雛里!」

 

目の前にいるのに遠くから慌てるご主人様の声が聞こえてくる。

 

あれ?段々とご主人様が霞ん、で……

 

そこでは私は意識を落としてしまいました。

 

「う、う~ん……あれ?ここはどこでしょうか?」

 

目を覚ますとそこは私の知らない場所でした。

 

確かご主人様と書庫に居て、ご主人様に褒められて……そうだ!そこで気を失っちゃったんだ。

 

私は一体どうして気を失っていたかを思い出し改めて周りを見回す。

 

「それにしても、ここはどこなのかな?」

 

見たことも無い建造物に樹木。ここが私の住んでいた所じゃないのは確かだよね。

 

「あわわ。どうしよう……」

 

「あら?何か困っているみたいねどうかしたの?」

 

「え?」

 

誰かに背後から声を掛けられて振り向く。

 

「あわわっ!し、雪蓮さん!?」

 

なんと目の前に居たのは雪蓮さんでした。でも、なんだか雰囲気が違うような……服のせいかな?

 

「え?確かに私は雪蓮だけど、あなた誰だったかしら?初めて会うわよね?」

 

「え?」

 

あれ?連合軍の時も何度か会ってるのにそんなことないよね?。

 

「まあいいわ。それにしても変わった服着てるわね。今はそれがはやりなの?」

 

「は、はやり?い、いえ。これは私の私服ですけど……」

 

「ふ~ん。まあ、可愛いからいいんじゃない?それで?なにを困っていたの?」

 

「えっと……ここはどこでしょうか?」

 

私は雪蓮さんにここが何処なのかを聞きました。

 

「え?ここは……聖フランチェスカ学園の校内だけど」

 

「聖ふら?」

 

「フランチェスカね。う~ん。立ち話もなんだしカフェに行きましょ。そこで詳しく話を聞いてあげるわ」

 

「あわわっ!」

 

雪蓮さんは私の手を取り歩き出しました。

 

あわわ。何処に連れて行かれるのでしょうか。それにかふえとはなんですかぁ~

 

………………

 

…………

 

……

 

「はい。到着。アップルジュースでいいかしら?」

 

「え?え?あ、はい」

 

意味も分からず頷く。あぷるじゆすって何?

 

暫くすると雪蓮さんが戻ってきて二つの筒を持ってきました。

 

「はい。どうぞ」

 

「あ、ありあとうございます」

 

「いえいえ。それで?あなたは何処から来たの?」

 

「えっと平原の」

 

私は自分が住んで居た場所の説明をしました。

 

「う~ん。……そこ、どこ?」

 

「あわわっ!?」

 

「ごめんね~。私、地理苦手なのよね。運動なら得意なんだけど」

 

肩を竦めて冗談ぽく言う雪蓮さん。あわわ、それにしても困りましたここは本当に何処なんでしょうか。

 

「あーっ!やっと見つけたよ雪蓮!」

 

雪蓮さんとお話をしているとまた聞き覚えのある声が聞こえてきました。

 

こ、この声って……

 

恐る恐る声のするほうを見る。

 

「もう!一緒に行こうって言ったのになんで待っててくれないのかな~」

 

あわわ。ゆ、優未さんです。

 

私は反董卓連合軍のことを思い出して顔を引き攣らせた。

 

「ごめんごめん。いいじゃないのどうせすぐ来る場所は同じだったんだし」

 

「そう言う問題じゃ!……ん?誰この子?」

 

優未さんは私に気がついたらしく雪蓮さんに聞いていました。

 

優未さんも私のことを覚えていない?

 

一体どういうことなのでしょうか?

 

「私の隠し子♪」

 

「あわわっ!?」

 

え、えええ!?わ、私って雪蓮さんの隠し子だったんでしゅか!?

 

「はぁぁあああっ!?え、そ、それ本当!?だれ?誰が父親なの!?」

 

「冗談に決まってるでしょ。それに私はまだバージンよ」

 

はふぅ~、で、ですよね。あまりにも自然に言っていたので本当だと思っちゃいました。そんなことあるはずが無いのに。

 

「だ、だよね。びっくりした~。それで、誰なのこの子?」

 

「さあ。私もさっきそこであったばかりだし」

 

「あ、あったばかりって……まあ、雪蓮らしいから別にいいけどさ……ん~」

 

「あ、あわわ」

 

優未さんは私の体を上から下へと全身を見ていました。

 

恥ずかしくなった私は帽子を深く被り体を縮こまらせました。

 

「っ!くは~~~~!た、たまらないよ!その仕草!う~ん!お持ち帰り決定だーーーっ!!」

 

「あわわっ!や、やめてくだしゃ~~~い!」

 

私は嫌な予感がして席から立とうとしましたが一足遅く、優未さんは私を抱き上げて頬をスリスリしてきました。

 

「う~ん!何このモチモチ肌!赤ちゃんのほっぺ見たい!あ~、モチモチでプニプニでスベスベでもう私の心はゴートゥヘブンだよ!」

 

「……ならさっさと天国に行ってきなさい!」

 

「痛っ!な、何するのさ雪蓮!人がいい気分になってる時に!」

 

「あんたがいい気分になっててもこの子が怯えてるじゃない。まったく、可愛い物には見境が無いんだから」

 

「ぶーぶー!可愛いものは正義、ジャスティスだよ!これは誰にも曲げることの出来ない事象だよ!」

 

「はいはい、そうね。ごめんね、悪い奴じゃないんだけど。可愛い物を見ると壊れちゃうのよ」

 

「い、痛い!し、雪蓮!頭鷲掴みにしないでよぉ~!」

 

雪蓮さんは謝りながら優未さんの頭を抑えて無理矢理に謝らせていました。

 

「い、いえ。私も突然の事で驚いたしただけですから」

 

「そう言って貰えると助かるわ」

 

「それじゃ~。今から抱きつくからよろしっ」

 

「だから、やめなさいって言ってるで、しょ!」

 

(ごつんっ!)

 

「いった~~い!ぐーで殴った!ぐーで!」

 

「はぁ~。ホント、友達はちゃんと選ばないとダメね。あなたも友達を選ぶ時は気をつけなさい」

 

「は、はぁ~」

 

「ちぇ~。転校して一人だった雪蓮に声を掛けたのは私なのに」

 

「もう一発殴られたいかしら?」

 

「結構で~す!」

 

「おっ!珍しいな。二人でカフェに居るなんて」

 

「え?」

 

この声は……

 

暫く、雪蓮さんと優未さんの話を聞いていると、聞き間違えるはずの無い声が聞こえてきました。

 

ご主人様!?

 

急ぎ振り返るとそこには、あの白く輝く服を着たご主人様がこちらへ向かって歩いてきていました。

 

「あら、かず」

 

「ご主人様っ!」

 

「「え?」」

 

私は椅子から降りてご主人様に駆け寄りました。

 

(ボフンッ!)

 

「おっと……」

 

「ご主人様、ご主人様、ご主人様~~」

 

ご主人様を何度も呼ぶ。

 

心細かったです。怖かったです。会えてよかったです。ご主人様~~!

 

「えっと……」

 

?なんだかご主人様が困っているように見えます。

 

「あ、あのご」

 

ご主人様が何かを言いだそうとした時でした、後ろから急に殺気立った物を感じました。

 

「か~ず~~と~~~~……ちょ~~っとこっちに来なさい。聞きたいことがあるから」

 

「えっ……で、でも」

 

「いいからさっさと来る!」

 

「は、はい!ちょ、ちょとごめんね」

 

「あ、はい……」

 

凄いにこやかな雪蓮さんにご主人様は戸惑っていましたが、有無も言わさぬ目線と言葉にご主人様は行ってしまいました。

 

「……ところで~。なんてお名前なのかな~?このお姉さんに教えてくれるかな~」

 

「あわわ。ゆ、優未さん止めてください~」

 

ぼーっと眺めていると後ろから急に優未さんが抱き着いてきました。

 

「あれ?何で私の名前知ってるの?そっか、雪蓮から聞いたんだね。それで名前は?」

 

「わぷっ!ひ、雛里でひゃぁあああっ!?」

 

「雛里ちゃんって言うんだ~。可愛いね~、スベスベだね~、プニプニだね~」

 

「わぷ、や、やめてくださ」

 

「どわっ!?」

 

優未さんに抱きしめられて弄られている時でした、行き成りご主人様の叫び声が聞こえてきました。

 

「ふえ?」

 

「ああ、まあ、いつものことだから気にしないで」

 

「ちょっとどういうことかしら一刀。あんな小さい子にご主人様って呼ばせるなんて」

 

「ご、誤解だって!初めて会ったんだからあの子とは!」

 

えっ……そんな。

 

ご主人様の言葉に意識が遠のきそうになりました。

 

「ひ、酷いですご主人様」

 

「えっ?」

 

「うぅ~、ぐすん」

 

「ちょ!え、ええ!?し、雪蓮!」

 

「私、知~らない。一刀のバカ!一刀なんか愛紗に刺し殺されちゃえ!」

 

雪蓮さんはそう言うとご主人様を放り投げて何処かへ行ってしまいました。

 

「あ~あ。雪蓮怒らせちゃった。知らないよ?まあ、そう言う私もちょっと怒ってるけどね。だから……えい!」

 

「ぐへっ!」

 

優未さんも笑顔でご主人様の鳩尾に一発拳で殴っていました。

 

「ふぅ。今はこれで我慢してあげるから。こんな可愛い子泣かして!いくら一刀君の事が好きでも許さないんだよ!ちゃんとこの子を慰めるんだよ。わかった一刀君!」

 

「は、はい……」

 

雪蓮さんと優未さんは私とご主人様を置いて何処かへ行ってしまいました。

 

「ひぐっ……ひぐっ……」

 

二人になっても私は泣き続けていた。

 

「えっと……」

 

ご主人様は泣く私を見ながら困り果てていました。

 

「ごめんね。行き成り酷いこと言ったみたいで」

 

「ぐすっ……い、え……わ、私こそ泣いて……ぐすっ」

 

「と、取り合えず移動しよう。ここだと人目につきすぎるからね」

 

「ぐすっ、は、はぃ!?」

 

泣きながらも返事をしようとした時でした。急に体がふわりと持ち上がりました。

 

「よっと……それじゃ、移動するよ」

 

「あわ、あわ、あわわわわっ!」

 

え?え?ご、ご主人様の顔が近くに……え?ええぇぇええ!?

 

今さっきまで泣いていた私はご主人様の顔が目の前にあることに驚き、目を見開いて泣くのを忘れてしまいました。

 

「可愛い帽子だね」

 

「あぅ……あ、ありがとうございましゅ」

 

ご主人様に帽子を褒められたことよりもその笑顔に思わず言葉を噛んでしまいました。

 

「あ、あの……その……」

 

「ん?顔が赤いね。熱でもあるのかな?」

 

(コスンッ)

 

「~~~~~~~~~~っ!?!?!?!?」

 

ご主人様は行き成り顔を近づけてきて私のおでことにご主人様はご自身のおでこをあてがってきました。

 

「あ、ああ、あわ、あわわわわわっ!(ボフンッ!)はきゅ~~~~」

 

「ちょ!え、えええ!?だ、大丈夫!?」

 

なんだか同じ事があったような……

 

ああ、またご主人様のお声が遠くに……

 

そして私は意識を落としてしまいました。

 

『ひ、り……ひな……』

 

誰でしょう。私を呼ぶ声が聞こえます。

 

「う、ん……」

 

段々と意識がはっきりしてくると目の前にはご主人様のお顔があり……え?。

 

「ひゃわーーーーーっ!」

 

「うわ!ど、どうしたんだ雛里。目を覚ましたと思ったら行き成り大声を上げて」

 

「え?ご、ご主人様。私の事が分かるんですか?」

 

「?何分けのわからないこと言ってるんだ?分かるに決まってるじゃないか」

 

「あ、あれ?ここ……書庫?」

 

辺りを見回すとそこは書庫でした。

 

「?夢でも見てたのか?」

 

「……夢?」

 

でも、どんな夢だったのかな?思い出したいような、思い出したくないような。

 

「まあ取り合えず雛里が目を覚ましてよかったよ。このままだと俺が雛里と資料を背負って行かないといけないところだったからね」

 

「あわわ。申し訳ありません。ご迷惑をおかけしました」

 

「ははは。別に気にしてないよ。それより立てる?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「よかった。それじゃ」

 

「何が、よかったのですかご主人様」

 

「……え?」

 

振り向くとそこには眉を引く着かせた愛紗さんが腕を組んで立ちをしていました。

 

「雛里の悲鳴が聞こえて来て見れば……ご主人様……あなたと言う人は!」

 

「ち、違うん!愛紗、誤解だ!俺は別にまだなにも!」

 

「まだ!?まだと仰いましたか!?もう、我慢なりません!ご主人様、今日はじっくりとお話をさせていただきます!さあ、行きますよご主人様!」

 

「えっ……で、でも」

 

「いいから行きますよ!」

 

「は、はい!」

 

ご主人様は愛紗さんの大声に背筋を伸ばして返事をしていました。

 

あれ?どこかで同じようなことがあったような……気のせいかな?

 

「雛里よ。すまんがご主人様を借りていくぞ」

 

「あ、はい……」

 

愛紗さんはご主人様の襟首を掴んで書庫から居なくなりました。

 

「……あっ。早く、資料書を朱里ちゃんのところに持って行かないと!」

 

私は山積みになった資料書を持とうとしました。

 

「あっ……これご主人様の……」

 

資料書の横にご主人様にお渡しするはずだった本が置いてありました。

 

「……」

 

私はその本を資料書の一番上に置きました。

 

「あとでご主人様のお部屋にお届けに行こう」

 

「あれ?雛里先生?ここでどうしたんですか?」

 

「あ、雪華さん。うん、これを執務室に持っていくところだよ」

 

「ふぇ!?こ、この量をですか!?一人じゃ無理ですよ。私も手伝いますね!」

 

「ありがとうございます雪華さん。それではこちらをお願いします」

 

「え?こっちの方が量が少ないので雛里先生の方が」

 

「あわわ。い、いいんです。これで!は、早く持って行きましょう」

 

「?はい」

 

首を傾げながら頷く雪華さん。だって私が持て居る一番上にはご主人様にお渡しする本があるから。これだけは私が持っていたいんです。

 

私は重たい資料を持ちながらも頬を染めて執務室へと向かった。

 

《End...》

【町を護る者】

 

 

 

《一刀視点》

 

「主よ。暇ですぞ」

 

「……出会い頭にそう言うことを言うか?」

 

廊下を歩き角を曲がりきった時、星と出くわし第一声がそれだった。

 

気配で星だとは分かってたけどまさかそんな事を言われるとは思ってもいなかった。

 

「仕方ないではありませぬか。反董卓連合軍から早一月。政務も大分落ち着き暇が出てきた今日この頃。何をすればよいかと考えている次第ですぞ……んっんっ」

 

「……酒を飲みながらそれを言うか。にしても禁酒令が解除されたと思ったら直ぐに飲みだすのかよ」

 

反董卓連合の時、無茶な攻城を行い星は一ヶ月の禁酒令を言い渡していた。そしてそれが切れたのが丁度昨日だったのだ。

 

「はっはっは!酒は人生の伴侶!そう止められる物ではございませぬぞ……んっんっ……ぷはぁ」

 

「まあ。一ヶ月我慢したことには素直に褒めるよ。良くがんばったな」

 

「う、うむ。まあ、私も少々無茶なことをしたと反省はしていましたからな。素直に罰を受けたまでですぞ。それにもし怪我をしていたら主に悲しい思いをさせていたのかもしれませんからな」

 

お酒のせいなのか星の頬は少し赤くなっていた。

 

「それよりも主。暇ですぞぉ~。何か面白いことは無いのですかな?」

 

「ちょ!せ、星!酔ってるだろ!」

 

星は行き成り目を細めて俺の背中にもたれ掛かってきた。

 

うっ!せ、星の胸が俺の背中に!

 

「主~。なぜ顔が赤いのですかな?主も酒を飲んでおいでか?くっくっく」

 

くっ!せ、星のやつ、俺の事をからかってるな!

 

だからといって女の子である星を乱暴に振り払うわけにも行かず、星のされるがままになってしまっていた。

 

「……何をしておいでなのですか、ご主人様」

 

「っ!あ、愛紗!」

 

後ろから愛紗の低い声が聞こえ恐る恐る振り返る。

 

最近分かったことだが、桃香や星たちに抱きつかれていたり、雪華や朱里たちの頭を撫でていると目に見えて愛紗の機嫌が悪いことに。

 

「星、ご主人様はまだ仕事があるのだ。暇だからと言ってご主人様を巻き込むな」

 

「おや。焼いているのか愛紗よ」

 

「ち、違う!断じて違うぞ!」

 

「素直になればよいものを……」

 

「……っ!」

 

「ちょ!あ、愛紗!む、無言で得物を向けないでくれ!」

 

愛紗は俺があげた天龍偃月刀を手に取り刃先を俺達に向けてきた。

 

「暇なのだろ?私が稽古をつけてやるぞ星」

 

「今は止めておこう。今の愛紗と稽古をしたらただでは済まなそうなのでな」

 

そう言うと星は俺の背中からようやく離れてくれた。

 

「まったく。ご主人様もしっかりとしてください。これでは星を付け上がらせるだけです!」

 

「それは聞き捨てならないな愛紗よ。私は主をからかっていた訳ではないぞ」

 

「だったらなんだというのだ」

 

「ふっ。好いた男にちょっかいを出すのは当たり前の事ではないか」

 

「なっ!」

 

星の言葉に愛紗は目を見開いて動かなくなってしまった。

 

「はぁ、星。あまり愛紗をからかわないでくれ。ただでさえ愛紗は信じやすいんだから」

 

「な、なんだと!?」

 

「おや。ばれてしまいましたか。折角愛紗をからかっていたというのに……んっんっ」

 

「くっ!星、もう一度禁酒にしてもらいたいか!」

 

「それを決めるのは愛紗ではあるまい。主か桃香様であろう?」

 

「ご主人様!星にもう一月禁酒令をだしてください!」

 

「まあまあ、愛紗落ち着いて」

 

俺は何とか愛紗を落ち着かせようとした。

 

「ご主人様は甘すぎです!……はぁ、とにかくだ。ご主人様は今から政務なのだ。暇なら他を当たれ星。では行きますぞご主人様」

 

「ああ。それじゃ、星。悪いけど俺は行くな」

 

「仕事なら仕方ありませんな。ですが、その内、ちゃんと聞かせてもらいますぞ」

 

「?あ、ああわかったよ。そのうちな」

 

何を聞かせてほしいのか分からないけど、とにかく今は頷くことにした。

 

「ご主人様!」

 

「い、今行くよ!」

 

少し先で愛紗の苛立った呼び声が聞こえ俺は直ぐに行くと愛紗に向かって伝えた。

 

「それじゃな星!」

 

星に一言、別れを告げて愛紗の元へと向かった。

 

《星視点》

 

「それじゃな星!」

 

主はそう言うと慌てて愛紗の元へと走ってしまわれた。

 

「まったく、騒がしいお人だ」

 

まあ、私がその原因の発端なのだがな。

 

「……」

 

主は愛紗に追いつくと頭を下げて謝っていた。

 

「あれではどちらが主か分かったものではないな」

 

だがそこが主の良いところでもある。だから私は主に真名を教え臣下になったのだからな。

 

歩きだす主と愛紗。すると愛紗は周りを確認しだし、少し恥ずかしそうにして主の服の端を握り締めた。

 

「愛紗も乙女になったものよ。これも主に思いを伝えたからなのかもしれないな」

 

愛紗は先の連合軍の時、ドサクサに紛れて主に思いを伝えていた。

 

「確かに良い傾向なのだが……少し主をからかっているだけで刃を向けられるのはなんとかならないものか」

 

私は苦笑いを浮かべて先ほどの光景を思い出した。

 

あれでは『私のご主人様に手を出すな』と言っている様なものではないか。

 

「それにしてもだ。主はやはり女子(おなご)の気持ちをまだまだ理解しておいでではないようですな」

 

折角私の気持ちをお伝えしたというのにあの態度は無いではありませぬか?

 

『はぁ、星。あまり愛紗をからかわないでくれ。ただでさえ愛紗は信じやすいんだから』

 

まあ確かに私もふざけていた時にあのようなことを言われても信じるとは思えませんが。

 

「ですが主よこの気持ちは本物ですぞ。私は主の事を……」

 

すでに角を曲がり見えなくなってしまった主。しかし、私には主の背中がしっかりと見えていた。

 

「さて、ただここで立っているのも不審に思われてしまうな」

 

私は当初の予定通り町へ向かうため歩き出した。

 

………………

 

…………

 

……

 

「随分と賑わっているな」

 

町は買い物に来ている住民と露店を出している商人で賑わっていた。

 

「これだけ人が多くなったのもこの町の治安が良くなったからであろうな」

 

これも主の政策のお陰だと思うとやはり天の知識は凄いのだと認識する。

 

(カーンカーンカーン!)

 

「ん?何の音だ?」

 

歩いていると行き成り甲高い音が聞こえてきた。

 

「すみません!道を開けてください!」

 

辺りを見回しその音の出何処を探す。

 

「お?なんだ?」

 

すると行き成り住民達は道の真ん中を開け始めた。

 

(ドタドタドタッ!)

 

そこを数人の警備兵が走って通り過ぎていった。

 

「おお、あれが主の言っていたものか。確かに、これなら現場にも直ぐに向かえそうだな」

 

流石は主だ。こんなことを思いつくとは、いやはや天の国は面白いところのようだな。

 

朱里たちの知らない知識。それはこの乱世では大いに役立つだろう。しかし、私達は忘れてはいけないことがある。

 

それは天の知識を扱うと言う危険性だ。

 

確かに今回の提案は上手く行っているだろう。しかし、主の提案が全て危険が無いとは誰も言えないのだ。

 

そうであろう?我々は主が居た天の世界に言った事が無いのだから。主の提案が危険か危険では無いかなど誰も分からないのだ。

 

「まあ。主が危険の及ぶ提案をすることは無いであろうが。だが所詮、道具は道具。使い方を誤れば危険なものにもあるのだからな」

 

得物もその一つだ。領民を守る為の物でも道を踏み外せば、領民を死に追いやるものにも変わるのだからな。

 

「……全ては人次第ということか」

 

(ドンッ!)

 

歩きながら考えていたせいか人にぶつかってしまった。

 

「おっと!これはすまない。怪我は無かった、……か」

 

「あぁん。大丈夫よん。何処も怪我は……あらん?」

 

な、なんだこの巨漢の男は!それになんて不埒な恰好を!

 

そこに立っていたのは民家の屋根に届きそうな半裸の大男だった。

 

「私こそよそ見しててごめんなさいねん。せっ……えっとお名前は?」

 

何かを言いかけて私の名前を聞いてきた。

 

「あ、ああ。私の名前は趙雲だ」

 

「そうそう。趙雲ちゃんね。私は貂蝉っていうのよん。見ての通りしがない旅の踊り子よ。よろしくね、うっふん♪」

 

「そ、そうか……お、覚えておこう」

 

貂蝉は体をくねらせながら挨拶してきた。

 

しかし、どう見ても踊り子とは見えない体つきなのだが……

 

「ところで、一つ聞きたいことがあるんだけどぉー。いいかしらん?」

 

「か、構わぬぞ」

 

「そんな難しい話じゃないのよ。ここの太守様って誰なのかしら?と思っただけなのん。旅をしているから全然知らないのよねん」

 

「この平原を治めているのは二人の太守だ。一人は劉元徳様。そしてもう一人は天の御遣いである北郷一刀様だ」

 

「あら~ん!やっぱりここに居たのねご主人様!」

 

「なに?主を知っているのか?」

 

「どぅふ♪ええ。知ってるわよん。もちろん趙雲ちゃんもね」

 

私も知っている?このような強烈な人物を私は忘れるわけが無いと思うが……

 

「ああ。ここの趙雲ちゃんたちは覚えていないでしょうけどね」

 

「私がもう一人居るような口ぶりだな」

 

「それは漢女(おとめ)のひ・み・つ♪」

 

「そ、そうか……」

 

「どぅふ。この町は気に入ったわ。しばらくここに居ようかしら。あ、これは色々教えてくれたお礼よ。受け取って頂戴」

 

貂蝉は紙袋をどこからとも無く取り出して手渡してきた。

 

「い、いや。気持ちだけで結構」

 

「うんもう。遠慮なんてしなくていいのよ。私とあなたの仲なんだからん♪」

 

貂蝉は無理やり私の手に紙袋を押し付けてきた。

 

「それじゃあねん。また会いましょ♪」

 

「……」

 

貂蝉はそういうと人ごみに消えていってしまった。

 

「……なんだったのだ一体……」

 

私の手には貂蝉から受け取った紙袋が一つ。

 

「とりあえず中身だけでも確認してみるか」

 

(ガサガサ)

 

紙袋に入っていたものを取り出す。

 

「っ!こ、これはっ!」

 

なんと美しい仮面だ。この形状に色彩。どれを取っても一級品!

 

「特にこの曲線。匠の拘りが伺える……それに何より蝶というところが気に入った!」

 

すばらしい……貂蝉はこれをどこで手に入れたのだ?

 

いや、それよりも……

 

私は辺りを見回した。

 

ここではまずいか……どこか人気の無い所へ移動しよう。

 

私は仮面を袖に隠し路地裏へと移動した。

 

「……よし。ここなら大丈夫だろう……でゅわっ!」

 

私は仮面を手に取り、顔に付けた。

 

「っ!フォォォォォオオオオッ!!!」

 

《一刀視点》

 

「んーーーっ!!今日は少なくて早く済んだ」

 

俺は体を解す様に伸びをする。

 

午後の仕事はそんなに書簡の量が多くなくいつもより早く終わった。

 

おかげで夕方の報告書が来るまでは自由時間と言う訳だ。

 

「おっ!あそこに居るのは愛紗じゃないか。おーーい!愛紗ーーーっ!」

 

大声を出して手を振る。

 

「?……っ!」

 

手を振る俺に気がついたようで愛紗が歩いてきた。

 

「ご主人様。ここで何をしておいでなのですか?」

 

「午後の仕事が速く終わってね。夕方の報告書が来るまで暇だからブラブラしてたんだ。愛紗はこれから町の巡回か?」

 

「はい。ついでに各詰め所の報告書も回収して欲しいと雛里に言われましたので」

 

「そっか……そうだ、俺も一緒に行ってもいいかな?」

 

「な、なんですと!?」

 

「いやさ。ただ考えも無しにブラブラするよりはいいかなって思って駄目かな?」

 

「め、滅相もありません!こちらからお願いしたいくらいです!」

 

愛紗はよほど嬉しかったのか笑顔で了承してくれた。

 

………………

 

…………

 

……

 

「…………」

 

「…………」

 

う~む……なんでこんなに距離があるんだ?

 

城を出たから、愛紗はなぜか俺から距離を開けて歩いていた。

 

「あのさ愛紗」

 

「は、はい!なんでしょうか!」

 

「なんでそんなに離れてるんだ?」

 

「そ、そうでしょうか?いつもと変わらないと思いますが」

 

「……」

 

一歩愛紗に近づく。

 

「っ!」

 

すると愛紗は一歩俺から離れる。

 

「あのさ。そんなに緊張しなくてもいいと思うんだけど」

 

「き、緊張などしていません!」

 

いや、かなりしてるだろ……誰が見たって緊張してるとしか見えない。

 

『はーっはっはっはっはっ!』

 

そんな時だった。どこからとも無く笑い声が聞こえてきた。

 

「誰だ!」

 

愛紗は空に響く笑い声に辺りを見回していた。

 

『そんな腑抜けた状態で警邏をしているとは笑止千万!民に代わり罰を与えてやろう!』

 

ん?この声、どっかで聞いたことがあるような……

 

「隠れている卑怯者に何が出来ると言うのだ!姿を見せろ!」

 

『いいだろう。ならばしかと見るがいい!華麗に舞う蝶の姿を!』

 

すると屋根の天辺。しかも、ここいらで一番高い建物の上に現れた。

 

……あれって星だよな?何してんだあいつ。しかも変な仮面なんて付けて。

 

「可憐な花に誘われて、美々しき蝶が今、舞い降りる!我が名は華蝶仮面!混乱の都に美と愛をもたらす、正義の化身なり!」

 

まさに後ろで爆発が起きてもよさそうな登場シーンを演じたのは蝶の仮面をつけた星だった。

 

「ここを天の御遣いの守護する町と知っての狼藉か!」

 

「え?あ、あの愛紗?」

 

「ご主人様、危険です!私の後ろに下がっていてください!」

 

愛紗は俺の話を無視し、星から庇うようにして立った。

 

え?え?まさか、愛紗分かってないのか?あれはどう見ても星だろ?

 

「ふん。天の御遣いの守護する町だと?そのような腑抜けた警邏で町が安全になるとは到底思えないがな」

 

「言わせておけば!その首、叩ききってくれる!」

 

「ふっ。出来るものならしてみるがいい!」

 

「言われなくても!はぁぁあああっ!」

 

「ちょ!あ、愛紗!街中で得物を振り回すのはまずいって!」

 

しかし、愛紗は既に頭に血が上っているらしく俺の話を聞いては居ないようだった。

 

「と、とにかくみんなはここに人を入れさせないようにしてくれ!」

 

「わ、わかりました!」

 

連れてきた兵に指示を出し、とりあえず人を来させないようにした。

 

「ふっ!貴様の力はこの程度か?それでは蝶も殺せはしないぞ!」

 

「くっ!ちょこまかと!これならどうだ!はぁぁああああっ!」

 

「……普段の星と違うな」

 

正直なところ、普段の星は愛紗より力は下だ。だけど、今の星は明らかに愛紗と互角かそれ以上の力だ。

 

「あの仮面のせいか?」

 

考えられるとすればあの仮面を付けることによって自己暗示をかけている。ってことなんだけど。

 

「愛紗!戻ってくるんだ!」

 

「しかしご主人様!」

 

「いいから!このままだと住民に被害が及ぶ!」

 

「くっ!わかりました」

 

愛紗は悔しそうにしながらも俺の言うことを聞いてくれた。

 

「これで終わりか?」

 

「ご主人様さえ止めなければ貴様なぞ!」

 

「まあまあ、落ち着いて愛紗。まずは君の名前を聞こうか」

 

俺は確認の為に名前を聞いてみることにした。

 

「名を知りたければまずは自ら名乗ったらどうですかな?」

 

「貴様!ご主人様に向かってなんて口の利き方を!」

 

「ほらほら、どうどう、落ち着いて。俺の名前は北郷一刀。この町の太守を勤めている」

 

「ほう。太守を……私のは華蝶仮面!悪と戦い続ける正義の使者!」

 

やっぱりあれが名前だったのか……それにしても、どこの戦隊ものですか?そのうち合体ロボとか出てこないよな?

 

「なんてふざけた名前を!そのふざけた仮面を取って大人しく正体を見せろ!」

 

「ふっ。この美しき仮面を奪おうなどと、この都には美を解す輩はおらぬ見える!もし、正体を暴きたければ私を打ち負かしてみるのだな!まあ、貴様のような腑抜けた武将では無理だろうがな!」

 

「なんだと!」

 

「……華蝶仮面。これ以上俺の大事な仲間を侮辱するなら今度は俺が相手をしよう」

 

俺は愛紗を制して華蝶仮面に向かい睨みつけた。いくら星でも少し言いすぎな気がしたからだ。

 

「ご、ご主人様!?」

 

「ほう……太守自らがお相手か……」

 

「どうする?華蝶仮面」

 

「いや。やめて置こう。先ほどの無礼は詫びよう。少々言い過ぎたようだ。すまない」

 

星、いや。華蝶仮面は素直に謝ってきた。

 

「では、何れまた会おう!さらばだ!」

 

「ま、待て!」

 

華蝶仮面は飛び上がると屋根伝いに飛び跳ねながら行ってしまった。

 

「くっ!お前たち。奴を追いかけるんだ!決して逃がすなよ!」

 

「ぎょ、御意!」

 

愛紗の鬼気迫る勢いについてきた兵は一目散に華蝶仮面が消えた方へ走っていった。

 

「まったく……あのような不埒な者が居ようとは、朱里と話し対策を考えねば」

 

「愛紗。本当に分かってないのか?」

 

「?何がですかご主人様?」

 

「いや。分かってないならいいんだ。気にしないでくれ」

 

「は、はあ」

 

「おや。主たちよ。こんなところで何をしておいでなのですかな?」

 

「星!貴様こそこんなところで何をしている!」

 

立ち話をしていると。そ知らぬ顔で星が戻ってきた。

 

「いやなに。酒の肴を探しに市へ行っていたのだ。それよりも主と二人で逢引きですかな?どうやら私はお邪魔だったようですな」

 

「なっ!ち、違う!警邏だ!」

 

星の言葉に顔を赤くして否定する愛紗。

 

「そんなことより!仮面を付けた不審者を見なかったか?」

 

「ほう。仮面とな?その者が一体どうしたというのだ?」

 

「どうしたもこうしたもない!思い出しただけで腹が立つ!」

 

「まあ、良く分からないが私は見ていないぞ」

 

「そうか……ご主人様。私は急ぎ城に戻り桃香様たちにこの事を報告をしてまいります」

 

「了解。俺も直ぐに戻るよ」

 

「分かりました。星、行くぞ」

 

「なに?今日は私は非番なんだが」

 

「緊急事態だ。そんなことはどうでもいい行くぞ!」

 

「なっ!あ、主よ!愛紗をとめてくだされ!」

 

「うん。無理。がんばって対策を立ててくれ」

 

「主よ~~~~~~っ!!」

 

星の悲痛な叫びを聞きながら俺は思った。

 

「うん。自業自得だよね」

 

そして華蝶仮面は華麗に平原の都に参上したのだった……

 

《End...》

葉月「はい!28話拠点第一弾如何だったでしょうか!」

 

詠「ちょっと!なんで私があいつに夜食を持っていかないといけないのよ!」

 

葉月「だって、それくらいしないとデレないかなと」

 

詠「別にあんな奴にデレる必要なんて無いでしょ!ボクは月一筋なんだから!」

 

葉月「はいはい。雛里はどうでしたか?」

 

雛里「あわわ……あの私のお話の場所はどこなんですか?」

 

葉月「鋭い質問ですね!あそこは、一つ前に書いた雪蓮√の話をちょろっと出しています」

 

雛里「だから優未さんが居たんですね。それであんなに愛でられて……ぐすん」

 

詠「ちょっと!雛里を泣かしてるんじゃないわよ。このヘボ作者!」

 

葉月「ぐはっ!し、仕方ないじゃないですか。優未と雛里のスリスリシーンを書いてほしいってコメントがちらほらあったから!」

 

優未「呼ばれた気がして私参上!雛里ちゅわ~~~ん!もう一度スリスリさせて~~~♪」

 

雛里「ひっ!た、助けてくださいご主人様~~~~~っ!!」

 

優未「あ!待ってよ。雛里ちゃ~~ん!じゃなかった雛里~~~~んっ!!」

 

詠「ちょっと。主役が居なくなっちゃったじゃないどうするのよ」

 

葉月「ま、まあ。ここにまだ居ますし取りあえずは放置で!」

 

詠「ちょ!ボクは嫌よ!これ以上何を話せって言うのよ!」

 

葉月「そりゃ~。一刀の事を心の奥底ではどう思っているのかと根掘り葉掘り聞こうかと」

 

詠「この変態!これ以上近づいたら許さないんだからね!」

 

葉月「え~」

 

詠「え~、じゃ無いわよ!話が無いならさっさと終わりにしなさいよ!」

 

葉月「はぁ、仕方ないですねそれじゃ……」

 

??「あいや、ちょっとまたれい!」

 

葉月「誰だっ!」

 

星「私を無視するとはどういう了見ですかな葉月よ」

 

葉月「えっと……その場のノリ?」

 

星「ほほう。そのようなことで私の見せ場を奪うおつもりか。なら致し方あるまい。ここは正義の使者、華蝶仮面を呼んで葉月を成敗」

 

葉月「ちょっと待った!」

 

星「なんですかな?」

 

葉月「呼んでもいいですけど。星はここにいてくださいね」

 

星「なに!?」

 

葉月「だって、そうしないと二人から話が聞けないじゃないですか」

 

星「い、いや。しかしだな……」

 

詠「諦めたら?」

 

星「な、何のことを言っているかわからないな!はははははっ!そ、そんなことより、なぜ私の話にあの貂蝉をだしてきたのだ!」

 

詠「話を逸らしてきたわね」

 

葉月「ですね」

 

星「ええい!いいから理由を話せ!」

 

葉月「一言で言ってしまえば」

 

星「言ってしまえば?」

 

葉月「たんなる思い付きです!」

 

詠「……」

 

星「……」

 

葉月「なんですか二人して黙り込んじゃって」

 

詠「星……んっ」

 

星「ああ、わかっている」

 

葉月「ちょ!え、詠!?なぜ親指を首物で横に引くんですか!?そして星さん?なぜ私に龍牙を向けてるんですか!?」

 

星「葉月よ。少し頭を冷やそうか」

 

葉月「ひーーーーっ!き、今日はここまでです!」

 

星「はっ!」

 

葉月「おわっ!じ、次回は雪華と愛紗とおまけの予定です!」

 

星「はいはい、はいぃぃいいっ!」

 

葉月「のわああっ!で、では皆さん次回、お会いしましょう!」

 

星「では、また会おうぞ!待て葉月!」

 

詠「はぁ、疲れるわ……ん?挨拶なんてしないわよめんどくさい……まあ、次回も見に来なさいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優未「雛里~~~~んっ!我正愛你~~~っ!!」

 

雛里「ひゃ~~~~~っ!助けてくださいご主人様~~~~っ!!」

 

詠「あんたたち、まだやってたの……」


 
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