「生まれてこなければよかった」
小学生にこの言葉はきついよねと、僕は自虐的な笑みを浮かべ、それでいてやや得意げな顔をして彼女に言った。
「別に・・・」
そっけない彼女の返事に少し腹が立つ。
いいよね。幸せな家庭に生まれた人は。
些細な反抗のつもりだった。
「藤原君さ。家族の人とエッチできる?」
突然のことで言葉がでなかった。
「私ね、8歳から13歳までお父さんにずっと強要されてたの。今は別居中でいないけどね。」
淡々と語る彼女の表情はゾットするくらい無表情で、まるで独り言のように
遠くを見て喋っていた。
「終った後にね。いつもお父さんは言うのよ。あぁ本当にお前は可愛いなぁ。生まれてきてくれてよかった。って。」
「・・・・」
「別にいいんだけどね。徐々に慣れていったし。ただ、口が臭かったのは嫌だったなぁ。ごめんね。藤原君にはキツかったね。」
腹が立ったが僕は何も言えなかった。
「まぁ、お互い生きてるだけ幸せなんじゃないの?毎日ご飯は食べられるし学校にも来られる。それに君はこんな可愛らしい女の子とおしゃべりできるんだよ?最高じゃない。」
彼女の笑顔が胸に刺さる。
「なんで僕にそんなこと言ったの?」
「別に?ただ自慢話されるとね、こっちも対抗したくなるのよね。」
「自慢話?」
「え?不幸自慢じゃないのさっきのって?」
「そんなつもりじゃ・・」
「そんなつもりがないなら、あんな話しない方がいいよ。つまらないもの。
」
彼女はスッと立って手を差し伸べた。
「授業行こう!」
女の子ってのは分からないなと思いながら、僕は彼女と一緒に教室へ向かった。
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