No.332057

人それぞれの事情

siaさん

ぴくしぶ投稿作品

2011-11-09 19:10:00 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:437   閲覧ユーザー数:437

「生まれてこなければよかった」

 

小学生にこの言葉はきついよねと、僕は自虐的な笑みを浮かべ、それでいてやや得意げな顔をして彼女に言った。

 

「別に・・・」

 

そっけない彼女の返事に少し腹が立つ。

 

いいよね。幸せな家庭に生まれた人は。

 

些細な反抗のつもりだった。

 

「藤原君さ。家族の人とエッチできる?」

 

突然のことで言葉がでなかった。

 

「私ね、8歳から13歳までお父さんにずっと強要されてたの。今は別居中でいないけどね。」

 

淡々と語る彼女の表情はゾットするくらい無表情で、まるで独り言のように

遠くを見て喋っていた。

 

「終った後にね。いつもお父さんは言うのよ。あぁ本当にお前は可愛いなぁ。生まれてきてくれてよかった。って。」

 

「・・・・」

 

「別にいいんだけどね。徐々に慣れていったし。ただ、口が臭かったのは嫌だったなぁ。ごめんね。藤原君にはキツかったね。」

 

腹が立ったが僕は何も言えなかった。

 

「まぁ、お互い生きてるだけ幸せなんじゃないの?毎日ご飯は食べられるし学校にも来られる。それに君はこんな可愛らしい女の子とおしゃべりできるんだよ?最高じゃない。」

 

彼女の笑顔が胸に刺さる。

 

「なんで僕にそんなこと言ったの?」

 

「別に?ただ自慢話されるとね、こっちも対抗したくなるのよね。」

 

「自慢話?」

 

「え?不幸自慢じゃないのさっきのって?」

 

「そんなつもりじゃ・・」

 

「そんなつもりがないなら、あんな話しない方がいいよ。つまらないもの。

 

彼女はスッと立って手を差し伸べた。

 

「授業行こう!」

 

女の子ってのは分からないなと思いながら、僕は彼女と一緒に教室へ向かった。


 
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