――あいつと並んで歩きたかった。
実力が数字になって現れる世界だから、それはもう叶わぬ夢かもしれない。
焦る心に、思い通りにならない結果。今までに何度眠れない夜を過ごしたのだろう。
信頼や期待なんて儚いものだ。積み上げるのは時間がかかるのに、壊すのは一瞬。まるで積み木のよう。
環境はどんどん変化する。いらないものは容赦なく切り捨てられる社会で、ずっとギリギリの綱渡り。
俺がもたもたしているうちに、お前は手が届かない存在になってしまった。
手を伸ばしたら拒まないのを知っていて、声をかけた。
汚い魂胆でもいい。
ただお前の視線の先に、いつも写っていたかった。天才と呼ばれるその人の。
歴史の一部分に、少しでも俺の切れ端を絡ませたかった。
また笑う。
純粋なその笑顔が眩しくて、俺はそっと下を向く。
強く引かれた腕と心の奥がほんの少し、キリキリと痛んだ。
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オリジナルBLのSS。シリアスめ。