はじめに
この作品はオリジナルキャラが主役の恋姫もどきな作品です
原作重視、歴史改変反対な方、ご注意ください。
-半刻と経たずに準備は整いますよ-
「…ああ」
-士気は上々、まあ兵力差はやはり如何ともしがたいのも事実ですが-
「…知っている」
-…疲れませんか?-
「…何がだ?」
-この大一番を前にしてですよ-
「…どうかな?俺が望んだんだ」
-のんきなものですねえ-
「そうでもないさ…必死なんだ…生きるのに」
-それはちょっと違うでしょ?-
「…どういう意味だ?」
-今生きていることを知らしめたいんでしょう?…自分自身にー
「…かもしれん」
-付き合わされる俺の身にもなってくださいよ、死んでまで親友の情事を覗かされるなんて-
「ということはやはりこれは幻か?」
-貴方の妄想…ということにしておきましょう…貴方の下で喘いでいる彼女は本物ですが-
「だとすれば俺の中のお前は趣味の悪い男ということになるな」
-つくづくに酷い人ですね比呂は-
「怒ってもいいぞ」
-高覧に言われたことが効いたんでしょう?-
「…それもある…それに」
-それに?-
「いつかお前には謝らねばならないと思っていた」
-それは…-
「お前が麗羽を姫と呼ぶ意味だ」
-…『様』が抜けていますよ-
「俺が出た後でどうにでもできただろうに」
-穴兄弟は御免ですよ-
「その程度の女か、彼女は」
-身分相応の振る舞いというやつですよ-
「俺に対するあてつけか?」
-彼女は貴方を選んだ…これで満足ですか?-
「…傲慢だな」
-それは比呂のことでしょう?-
「そうさ…これは俺の独り言だ」
-傲慢ですね-
「月に言われたんだ…強くなれと…大切なものを守れるようにと…それは…傲慢になれということだろう?」
-さて…俺はもう比呂にとやかく言える存在ではないので-
「そうだ…お前は悠じゃない…俺が見ている幻だ…お前は死んだ」
-やけに饒舌じゃないか…それでお前はどうしたいんだ?-
「どう…とは?」
-彼女を抱いている最中にあいつなんか呼び出してお前は何をしたいのかと聞いている-
「それは先ほどに自分で口にしたはずだもう一人の俺」
-大切なものを守るか…お前一人がどれほどのことが出来ると?-
「…知らん」
-考えるのを放棄するなよ…お前を支えてくれた悠はもういない…そしてもう出てこんぞ…お前に愛想が尽きたからな-
「お前は何が言いたい?」
-迷っているなら引き返すなら今のうちに…だ-
「俺は迷ってなどいない」
-そんな奴がこんなときにまであいつを呼び出すものなのか?-
「幻だ…所詮は」
-あいつに何を讒言するつもりだった?あいつが惚れた女を抱いたことか?あいつから一度逃げ出したことか?あいつを死なせたことか?-
「…悠との約束を違えることだ」
-くだらん…おまえもしかしてこれから先ずっと何かある度にあいつの幻に詫びるつもりか?-
「貴様こそいい加減に強がるのをやめろ…俺はそこまで強くない」
-よおく知っているさ…俺もお前だ-
「ならば俺を揺さぶるのをやめろ…」
-お前こそ事の前にいちいち後悔するのをやめろ…ものは何事もなるようにしかならん-
「たとえそうだとしてもだ…俺は俺の意思で抗う」
-思春期の餓鬼だな…自分の思い描く世界はさぞ居心地がいいだろうよ-
「貴様もその産物だろうに」
-そうだな…だがそれがどうした?…底が見えたな、所詮お前は女を抱くときですら相手を直視できん臆病者だというわけだ-
「言ってろ…そして見てろ…俺は俺のやり方で彼女を救う」
-悠との約束を反故するのだな?-
「袁家はすでに沈みかかった船だ…彼女を降ろすなら今の他ない」
-彼女がそれを望むと?-
「お前には関係ない」
-それは彼女に問うべきだろう?-
「ああ…解っている」
「誰の事を…考えていましたの?」
「……」
艶々しく濡れた唇を尖らせて抗議してくる彼女を見つめながら比呂は静かに微笑んでいた
雫で潤んだ睫も、下がった目じりも、その視線も
彼女のすべてが真っ直ぐに比呂を捕え、離さない…放さない
「さて…自分自身にも検討が付きませんでして」
上気した頬の上をゆっくりと、何度も親指の腹でなぞっては彼女を宥めんと微笑む
彼女に気づかれた事よりも、彼女が自分だけを見ている事に顔の肉が緩んで止まない
「何分久方なもので」
「…卑しい人」
つられるように微笑んだ麗羽の瞳がふと曇る
「時々…貴方の中に入りたくなりますわ」
「…は?」
「貴方の中に入って貴方が何を見ているのか…私をどう見ているのか知りたくなりますわ」
「……」
そう言って微笑む彼女の瞳の色を嫉妬のそれだとすれば
それは何と綺麗なのだろうと
なおかつ湧き上がる情欲に思わず噴出しそうになってしまう
「貴方には私は…どう映ってますの?」
自尊心の塊のような彼女が
こんなにも色変わりさせられるのは
自分だけだと自負するが故に
「…ご想像にお任せします」
「…酷い人」
頬に突き立てられた彼女の指先から紅い雫が伝い落ちた
「わたくしは…こんなにも…あなたを想っているのに」
麗羽の指先に舌を這わした後に彼女の口を塞ぎ
「ふっ…んっ」
視界も思考にも白い靄がかかり始めたその時
「比呂さ~ん、準備整いましたよ~…そろそろ軍議…って」
天幕の入り口から顔を覗かせた斗詩が言葉を詰まらせ…見る見るうちにその顔を赤く染めていった
「…今行く」
「しっしししい失礼しました!」
バタバタと物音を立てて出て行くその姿に苦笑いを浮かべ、寝台から立ち上がると不満そうに見上げてくる麗羽へと向き直り彼女に引っかかれた頬を撫でながら再びに微笑を浮かべた
「軍議の間、湯浴みでもなさっててください…桶を準備させますので」
「総大将たる私なしに勝手に進めるつもりでして?」
「ええ…必要ないでしょう」
寝台の周りに散乱していた上着を受け取りながら彼女はさも不思議そうに首を傾げた
「名家が誇る精鋭が戦の真髄…袁家が『前進』、彼奴等に見せてくれましょう」
拳を胸に深々と一礼する比呂に麗羽がようやく納得したように微笑み頷いた
袁家の終わりは刻一刻と近づいていた
あとがき
ここまでお読みいただきありがとうございます
ねこじゃらしです
さる14日、念願の4sをゲットしました!
…現在単なるユーチューブ再生機と化してますが
さてさて本題もいよいよ転換期
とはいえ更新は相変わらずの不定期&亀展開
気長にお付き合いくだせえ
それでは次回の講釈で
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第75話です
iPhone買っても持て余している今日この頃