No.326032

恋姫✝無双~狂人戦記・一~

この作品は北郷一刀ではない人物を主人公とした二次創作です。また、主人公が基本的にまともじゃなくなっていく上に、チートです。
それらが嫌な方はさよならされてください。

とりあえずストック分くらいは上げます

2011-10-29 22:35:25 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:949   閲覧ユーザー数:906

 

 

恋姫✝無双・狂人戦記

 

『出会い』

 

 

目を覚ますと、そこは荒野だった。

……二十六年生きてきたが、某ポル○レフな雰囲気を味わったの初めてだ。いや、普通は味あわないと思うが。

とりあえずコートの埃を払い、すっきりには程遠い頭で周囲を見る。

見渡す限りの荒野荒野荒野……少なくとも日本ではない。

「……不思議なこともあるものですね」

ふと、近くに落ちているカバンを見つけておもむろに拾い中を確かめる。

どうやら銀髪の少年と遣り合ったのは夢ではなかったらしく、人工革のカバンの中はぐしゃぐしゃだった。

まあ、パソコンは持ち歩かない主義なので入っていないが、剣道部の合宿計画書などが皺だらけになっている。

「不動さんにどう言い訳したものか……」

長い黒髪の剣道部主将の姿を思い出し、苦笑いがこぼれた。

ここでふと、もう一度自分の周囲を見回しあることに気付く。

「北郷君がいない……」

というか教師としては先にそちらを心配すべきだった。不覚である。

あの光から抜け出せたなら良いが……もしそうでないなら北郷君もこの辺りにいるかもしれない。

「探してみますか……」

ゆっくりと歩を進めようとして、ふと私はもう一つ忘れていたことがあったと気づく。

「そこの岩陰にいらっしゃる方々、怖がらなくていいですから出てらっしゃい」

しばし沈黙。大体三十秒±二秒の誤差くらい。

五メートル先にある岩陰から、おもむろに三つの影が姿を現す。

その三つは小柄な男に肥満体の男、そして中肉中背の妙に髭だけが立派な男の三人だった。

それよりも私の興味を引いたのは彼らの格好だ。いかにも時代掛かった格好に頭には黄色の頭巾。腰には剣まで帯びている。

なんだろう…映画の撮影だろうか?それにしては聊か剣呑すぎるが。

「あの……」

「俺達に気付いていながら逃げ出さねぇとは…馬鹿な野郎だぜ!」

私が口を開くよりも早く小柄な男がそう言ってきた。

「おい兄ちゃん。珍しい恰好してるな」

今度は髭の男が口を開く。

私からすると貴方達のほうが珍しい恰好なんだが。

「わ、悪いことは言わないんだな、大人しくしてくれれば命まではとらないんだな……」

最後に肥満体の男。

ああなるほど、そうか、追剥か……。

しかし何故私はこうも冷静なのだろう。あの平和な日本から突如泥棒追いかけ気付けば明らかに異国の地。

しかも現れたのは時代錯誤な追剥集団。

充分、パニックになる要素はあった。しかし不思議と私は目の前で居丈高にしゃべる男達(一名はやや違うが)を冷静に見ている。

しばらく考えて、ふと男達の頭の頭巾を見て納得した。

ああ、私は期待しているんだ。あの黄色い頭巾を見て、ひょっとしたらここが三国時代の中国ではないかと。

何だかんだ言いながら夢にまで見たあの三国志の世界ではないかと………。

 

 

「「「ずびばぜんでじだ~~~~!!!」」」

数分後、恥も外聞もなく私の足元で地に額をこすり付ける三人の男達。

あの後私は彼等と肉体言語を通じて仲良くなれた。

まあ、剣を奪って首の周囲に薄く切れ目を入れたのはやりすぎたかな。

「別に謝らなくてもいいですから…それよりも、少々伺いたいことがあるのですが?」

「は、はい!何でしょうか!?」

髭面の男が跳び上がる。どうやら彼がこの三人の中ではリーダー格のようだ。

「そうですね。色々聞きたいのですがまずは……」

 

グゥ~~~~

 

「………」

 

「………」×3

 

「食事ができる場所とお金の有無を教えてください」

 

 

 

三人組に近くの町まで案内してもらいそこでようやく私は一息ついた。

宿場町…というには商家が少なく農民が多い。恐らくは普段は農業をしながら偶に訪れる商人を相手に宿を貸している村なのだろうと何となく推測する。

さて、実はここで私は今後の事を考えるにおいて実に重要な体験をすることとなる。同時にこれは、村への道すがらあの三人組から今がAC184年のまさに黄巾の乱が勃発した年であるという証拠を見つけたという事実を疑ってしまうほどのものであった。

「ラーメン……だと?」

三人組と入った店で御品書きに書かれていたその文字に、私はしばし絶句した。

それはそうだ。そもそもラーメンと中華麺は似ているが違うものであり、ましてや豚骨ラーメンが千八百年前の中国にあるはずがない。

さすがに醤油ラーメンや味噌ラーメンはなかったが、あったら間違いなく今のこの状況はドッキリだと確信していただろう。

そのほかにも、三人組が頼んだ料理が明らかに自分の知る千八百年前の中国の庶民の食生活にありえないものであったことに私は頭を抱えた。

何だろう…これはあれか?パラレルワールドというやつだろうか。

まあひとまず、逆の意味でのカルチャーショックを受けながらも、履歴書の趣味特技欄に料理と書いた身としては嬉しい事でもある。

自慢じゃないが、気分で調理師免許を取得した身としては今まで作ってきた料理が作れなくなるなど拷問である。

そんなことを、ラーメンに付いてきたメンマを齧りながら思っていると、先ほどに比べれば幾分かフレンドリーになってきた三人組のリーダー格である髭の男(確か厳政と言ったかな)がおずおずと聞いてきた。

「それで……俺達はこれからどうなるんでしょうか?」

ふむ。正直そんなことを言われても困る。仮にも自分を襲ってきた輩に情をかける必要もないが、こうして情報提供と一食の恩義ができた以上、我関せずというのもいささか不義理な話だ。

それに聞いたところこの三人、黄巾党に入りたいらしい。正直、今後の黄巾の乱の行く末を知る身としては多少とはいえ縁のあったものを放ってはおけない。

まあ、厳政に限ればもしあの三国志演義の厳政ならば張宝を裏切って生き残るだろうが、問題は残りの二人だ。

聞いた名前は程縁志(小さい方)に鄧茂(大きい方)……死亡フラグしかない。

それにそのことを差し引いても、自分自身今後の展望などまったくないのだ。結果論ではあるが、この三人に出会わなければ荒野で野垂れ死んでいた可能性も高い。

どうしたものか……。押し黙ってしまった私を見て何を勘違いしたのか竦みあがってしまった三人を尻目に何となく店内を見回す。

その時ふと、目に留まるものがあった。

「……貴方達」

「は、はい!!」×3

「宜しければ一緒に一旗揚げませんか?」

 

 

どうも、厳政だ。周りからはヒゲとか兄貴とか呼ばれてる。真名っつーのは生憎俺の生れた村では男にはつけないもんで、無い。

俺は今、とある飯屋で給仕の仕事をしている。

つーのも、蓮さんと会ったあの日、この店に書かれていた『料理人求む!!』の広告に目を付けた蓮さんが俺等含めてこの店に雇ってもらったからだ。

正直、最初は良い顔しなかった店主だが、蓮さんの料理の腕を見て喜んで迎えてくれた。

おかげで今では舎弟ともども温かい三食と布団にありつけている。

あの日、俺の人生は終わったと思ったのだが、どうやらツキが残っていたようだ。いや残っていたどころじゃねぇな、巡ってきたんだ。

 

蓮さんと出会ったことで。

 

「蓮さん!兄貴!買い出し行ってきやしたぜ!!」

「ま、薪割りも終わったんだな!!」

程の字も鄧の字もすっかり飯屋での仕事が板についたようだ。へっ、夜盗に身を落としかけてたのが嘘のようだぜ。

「お疲れ様です二人とも。お昼用意しておきましたから、少し休まれてください。厳さんもどうぞ」

調理場から蓮さんが顔を出す。蓮さんの言葉に、二人は「やりぃ」というかのような顔でテーブルに座る。

現金な奴らだ…まあ、確かに蓮さんの飯は美味い。懐かしさを感じるような素朴な味から厳かな複雑な味まで見事に演出してみせる。

どこでそんな腕を身に付けたのか訊いた時は、高校時代は調理研究部でしたからという答えが返ってきた。どういうことだろう。

そんなことを考えながら椅子に座ると、特徴的な大きな帽子を被った女の子が飯を運んできた。

「あわわ…お待たせしました……」

彼女は鳳統ちゃんといって、一月前からここで働いている。隣町まで買い出しに行った蓮さんが拾ってきた。

何でも、幽州の劉玄徳とかって奴の所に友達と行く途中にはぐれてしまったらしい。

とりあえず、路銀を稼ぐためにここで働いている。人見知りな性格なのか接客は全然駄目だが、料理が出来たので蓮さんの補佐に丁度良かった。

あと、どういうわけか凄まじく学がある。蓮さんと偶に話しているのを見るが、正直俺には話の内容はさっぱり解らない。

俺でも字が読める程度には学があるんだが……世の中は広えなぁ。

「おう、お前等しっかり食えや、もう少ししたら腹を空かせた奴等がぞろぞろやってくるぜ!!」

豪快な笑いと共に店主のおやっさんが現れた。

蓮さんがこの店の厨房に入ってから、売り上げは鰻上りだ。この間来た行商人は、ここに並ぶ店は陳留の近くにある村の一軒だけだと言っていた。何でも、水色の髪小柄な女の子が厨房を任されているらしい。

「皆花君に鳳統ちゃんも頑張れよ!!期待してるからな」

「ふふ、ありがとうございます」

「あわわ、頑張りましゅっ!」

鳳統ちゃんが噛んで、皆が笑った。ただでさえ目深に被った帽子を更に深く被り顔を真っ赤にする鳳統ちゃんの頭を、帽子越しに蓮さんが撫でる。

「「「「「皆花せんせー遊びに来たよーー!!」」」」」」

店の入り口から近所の餓鬼んちょどもの声がした。

「おやおや…これから仕事だというのに。お手伝いしてくれたら遊んであげますよ~~」

「はは、相変わらず蓮さんは餓鬼どもに人気だな」

「ちげぇねぇや」

「で、でも…子供は可愛いんだな」

突入してきた餓鬼にもみくちゃにされながら、蓮さんがおやおやと困った顔をしている。

ガハハ。と店長が笑った。

平和だった。

そして幸せだった。

 

あの日までは。

 

 

まあ、ストック分くらいは上げときたかった。

次回があるとしたら。

蓮さんがぶっ壊れて雛里ちゃんが可愛いです。

 

 

兄貴たちの名前はいろいろ考えたうえで無難なところにしてみました。

賛否はあるかと思いますが勘弁くだせぇ

 

 

 
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