No.325267

On your mark

深野晶さん

2011 Sparkで出したガンダムUC本バナージ受けです。
リディ×バナージ、フルフロンタル×バナージ、ミネバ(少年化)×
バナージで、リディバナ多めです。学園パロでフルフロンタル学園長、リディ教育実習生、ミネバとバナージが学生設定です。
本の冒頭のみUPしました。書店委託有り。冬コミ持参予定です。

2011-10-28 20:30:03 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3284   閲覧ユーザー数:3278

 
 

バナージ・リンクスが通っているのは工業コロニーの中にあるアナハイム学園だ。

将来メカニックを目指してこの学校に通っている。バンクロフト先生の歴史の授業は

今日も面白くなくて、バナージはついあくびをしてしまった。

 

「こら!」

「すいません」

「ちゃんと聞いていないと、就職率100%といえども後で苦労するぞ」

「はい」

 

いい先生なのだが、説明が少々くどい。また湧き出るあくびを噛み殺して

眠らないよう努力する。昨日のアルバイトの疲れが残っているのかもしれない。

アルバイトはスペースデブリを回収するごく簡単な単純作業だ、昨日は少し時間が長かった。

ランチの時間がもう少しなので、それをニンジンだと思って頑張ることにする。

今日は天気も良く、中庭でのランチが最適だ。ランチパックと

紙パックのカフェオレを持つとバナージは少し木陰の場所を探して移動した。

 

 

「ここ、いい?」

「あ、うん」

 

ミネバがそこに座った。金髪に碧の目の美しい少年だ。

どうして彼がこの学園にいるのかは少々謎だった。立振舞いといい、仕草といい

どう見ても良家の子女にしか見えないからだ。

身につけているものも、ブラウスに黒パンツと

あまりカジュアルな雰囲気ではない。突然の転校でまだ制服が出来上がって

いないため、私服で通っているのだった。それにしても普段はデニムとパーカーのバナージとは大違いだ。

 

だが、何故かミネバはよくバナージと一緒にいる。昼飯時のいまもそうだ。

移動教室や体育の授業の時なども気がつくと隣にいた。

 

アナハイム工専は就職率ほぼ100%の学校なので、卒業したらそのままメカニックとなる。

「あの」

「なに?」

 

その碧の瞳を見ているとバナージはそれ以上何も聞けなかった。

どうして、ここに来たの?と訊ねてみたいのだが、それを逆に訊かれても自分も答えにくい質問だ。

おいそれと訊いていいものではないだろう。幾度となくその問いを飲みこんで、

バナージは紙パックのカフェオレを手にした。

 

ミネバは顔を近づけて、バナージを覗き込んでいる。

「わ、なに?」

「いや、ちょっと元気ないかなって思って」

そう言うとサラリとバナージの髪をかきあげた。

「わ、わ」

ふわりと触られてびっくりした。

「バナージ、バナージ」

ハロがベンチの回りをは跳ねた。ミネバは品良くホットドッグを食べている。

ハンカチで口の周りを拭くと、それをパンツのポケットにしまった。

「少し眠いだけ」

「ならいいけど」

「お、先約か」

「あっフロンタル学園長」

「先を越されてしまったな」

「もう食べ終わりましたから」

 

ベンチから立ち上がろうとしたら、フロンタルはそれを押しとどめるようなジェスチャーをした。

「でも……」

「いいんだ。それより今度園長室にでも来ないかね」

「え?」

「私はまだこの学校に来て日が浅い。生徒とこの学校の理解を深めたいんだ」

「はあ」

「バナージ君だったね」

「はい」

「お茶を御馳走するから今度ぜひ遊びに来てくれたまえ」

「は、はい。わかりました」

「そちらの君も」

「……はい」

ミネバの名前は覚えていないのか、フロンタル学園長はそう言うと中庭から踵を返した。

なぜ園長に名前を覚えられていたのかはよくわからない。

 

 

「驚いた」

「うん」

「園長なんで俺の名前覚えてるんだろう?」

「さあ……」

ミネバと二人顔を見合わせる。

「今度園長室に行く?」

「……」

「きっと美味しい紅茶でも飲ませてくれそうだよね」

「……うん」

ミネバはあまり乗り気がしないようだ。

「そろそろ休み時間が終わるよ」

「じゃあ戻ろうか」

 

二人で教室に戻るとちょうど休み時間が終わった。今日の昼は教育実習生の先生が来ることになっていた。

「こちらリディ・マーセナス先生だ」

「よろしく」

とても爽やかな金髪の青年が挨拶をする。

「1週間だけど、何でもわからないことは、聞いて欲しい」

そう言ってにっこり笑ったのを見た女子生徒はキャーッとざわめいた。それを見て男子生徒は少し白けた様子を見せた。

そのリディは目の端でバナージを捉えると薄く笑った。

「えっ?」

気のせいだろうか。周囲をつい見回してしまう。

ふと見るとミネバと視線が合う。だが、一度目が合うと、ふと逸らされてしまった。

「えっ」

今までそんなことをされたことがなかったので少し驚いた。気付くとリディ先生は授業を始めている。慌ててバナージはノートパソコンを開いた。足元でハロが跳ね飛んで行きそうなのを押さえる。

「こら、じっとして」

「バナージ、 バナージ」

幸いバナージが座っている席は後ろのほうなので、リディ先生には気付かれなかったようだ。

「静かにね」

ハロを撫でるとバナージはノーパソに授業の内容をメモした。

リディ先生の人気は高く、最初に白けていた男子生徒までが、彼にまとわりついている。

「先生、質問」

勉強の質問だか、プライベートの質問だかわからない疑問を投げかけては先生を困らせている。

だが、その困っているところまでもがいいと、女子生徒には受けているようだった。  

「恋人はいますか」

「そんなの答えらえないよ」

爽やかに交わしながら、リディ先生はテキストを仕舞い教室を出る。

まだついてくる生徒をかわしながら彼は足早に職員室に向かったようだ。

 

 
 

 
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