No.320240

外史異聞譚~黄巾の乱・幕ノ七~

拙作の作風が知りたい方は
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2011-10-18 13:04:06 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2831   閲覧ユーザー数:1740

≪冀州・劉備軍陣内/諸葛孔明視点≫

 

あの漢中軍との会談から、私達はまだ立ち直れないでいます

 

翌朝には漢中軍の人達はさっさと陣を引き払い、斥候の人達の話によると私達とは別の方角に陣取っていた衝地から出たであろう反乱軍をほぼ無傷で平らげて、青州方面へと向かったようです

 

その報を聞いた後は私も含めてみんなが消沈していました

その後の落ち込み具合は特に桃香さまと愛紗さんが酷く、鈴々ちゃんもふたりを元気づけようと頑張ってはいるのですが上手くいってはいないようです

 

とはいえ、もうすぐ反乱軍との決戦場に着くことになります

どうしてもおふたりには立ち直っていただかねばなりません

 

「あわわ~…

 朱里ちゃん…」

 

私の同門で大事な友人でもある雛里ちゃんが、心配そうに私を見ています

 

昨夜二人で話し合い、ここで荒療治となり私達が憎まれようとも立ち直っていただく、その覚悟を決めたからです

 

「が、がんばりゅ!」

 

「うん、一緒にがんばりょうね!」

 

私達はふたりとも、緊張すると舌を噛んでしまう癖があります

はわわ~…

恥ずかしいから治したいんだけどなぁ…

 

見ると一緒に噛んでしまった雛里ちゃんも、恥ずかしかったのか照れくさそうに笑っています

 

………よし!

 

私達はお互い頷きあって、桃香さまの天幕に乗り込みました

 

「お、お話がありましゅ!」

 

「聞いてくだしゃい!」

 

桃香さまは突然飛び込んできた私達にびっくりしたのかきょとーんとしてます

見ると愛紗さんと鈴々ちゃんもいて、ふたりともびっくりしてました

 

「ど、どしたのいきなり?

 何かあった?」

 

慌てなくていいよ、と空気で伝えてくれる桃香さまに、私は深呼吸して答えます

 

「今日は大事なお話があって参りました」

 

私達の決意を察してくれたのか、みんなが居住いを正して向き直ってくれます

 

「それでお話って何かな?」

 

私はぐっとおなかに力を入れて、しっかりと話します

 

「今日はみなさんに“ないものねだり”をするのをやめていただくためのお話をしにきました」

 

私の言葉に桃香さまと愛紗さんの顔が目に見えて引き攣ります

でも、ここでお話をやめるわけにはいきません

 

「桃香さまや愛紗さんが“助けたい人々”がいるのは解ります

 そして、その範疇に反乱軍の人達を入れていた漢中軍の方々に引け目を感じているのも解ります」

 

私の言葉を継いでくれるのは雛里ちゃんです

 

「でも、今は後悔や羨望をするべき時ではないんです

 はっきりいって今の桃香さまと愛紗さんは間違っています」

 

その言葉に気色ばむ愛紗さん

 

「なんだと!?

 私達の一体なにが間違っているというのだ!!」

 

私達は思わず肩を竦めます

ですが、ここで引く訳にはいかないんです

ここで引いたら、全てが終わってしまいます

 

「全部です」

 

「なに!?」

 

「だから、全部です!

 桃香さまの掲げる理想、それ以外の全てを今のみなさんは間違っているんです!!」

 

「なん…だ、と……!?」

 

私の言葉に気圧されるように呆然とする愛紗さんですが、今の私にはそれを気遣う余裕はありません

 

胸の中にあるものが言葉にできないかのように戦慄く愛紗さんと、こういう事柄を言葉や知識ではなく天性の感で理解する鈴々ちゃん

そんなふたりを気遣うようにしながら、それでもゆっくりと桃香さまは尋ねてくれます

 

「……今の私に何が足りなくて何がダメなのか、教えてくれるかな…?」

 

そんな桃香さまに愛紗さんは何かを言おうとしますが、その眼差しを見て言葉を発するのをやめました

私もそんな桃香さまの真摯な瞳に、しっかりと頷いて応えます

 

「まず、何が駄目なのかというと、これは比較する相手を間違えている、この時点で既に間違っているんです」

 

「今の私達には、桃香さまが掲げる理想がありますが、その他には何もありません」

 

雛里ちゃんの言葉に、さすがに黙っていられなくなったのか、愛紗さんが反応します

 

「何もないとはどういう事だ!

 私達にはこの通り…」

 

「愛紗ちゃん、ちょっと黙って」

 

思わず出てしまった言葉だと思いますが、そんな愛紗さんの声を桃香さまが遮ります

 

「しかし桃香さま…」

 

「お願い愛紗ちゃん、最後まで朱里ちゃんと雛里ちゃんの話を聞こう

 反論はそれからだってできるから

 ね?」

 

そうして愛紗さんを落ち着かせてから、桃香さまが私達に向き直ります

 

「ごめんねふたりとも

 続きをお願い」

 

私達はそれに頷いて説明を続けます

 

「まず、どうして漢中軍の方々と比べるのが間違っているかというと、私達にはまず“地”がありません」

 

「この場合の“地”とは我々がよって立つための“拠点”です」

 

「私達が彼らと並ぶには“拠点”を得てそこを“法”で統治し、人民や経済、産業を含めた全てを目的の為に組み込み統一できる状態でなくてはなりません

 つまり…」

 

桃香さまは真剣な顔でそれに頷いてくれます

 

「うん

 今の私達にはそんな拠点どころか明日のごはんすら確かなものじゃないもんね

 まずその点であの人達とは比較にならない、それはわかったよ

 他には?」

 

これには雛里ちゃんが先に答えてくれました

 

「次に、私達には“人”がいません

 もちろん愛紗さんや鈴々ちゃんに不足があるとか、私達が何もできないとか、これはそういう事ではないんです」

 

「私達も愛紗さんや鈴々ちゃんも、自画自賛かも知れませんが十分以上に有能だと思います

 ですから、これが郡太守程度であれば何の問題もないんです」

 

「しかし、より守る土地が大きくなり、守る人々が増えるとこれでは絶対に足りないんです

 私や朱里ちゃんがいくら頑張っても大陸全ての政を行うのは無理ですし、愛紗さんや鈴々ちゃんがどれだけ頑張ってもたった二人では100万の軍を鍛えて指揮することはできません」

 

「義勇兵の人達は確かに頑張ってくれていますし大事にしなければいけません

 ですが…」

 

これにも桃香さまはしっかりと頷いてくれます

 

「うん

 そういう事なら私達には確かに人もいない

 朱里ちゃんと雛里ちゃんの二人で全部は無理だし、いくら愛紗ちゃんや鈴々ちゃんがすごくてもそれだけの兵は扱えない

 義勇兵の人達も私達には大事な人達だけど、軍として考えたら孟徳さんのところとも漢中軍の人達とも比較にならない

 そういうことだよね?」

 

続けて、と呟く桃香さまに、再び頷いて私は説明します

 

「そしてなにより、未だ私達は“時”を得られていません

 私達はまだ、まだ何もはじまってはいないんです!」

 

「こういうと浅ましく聞こえるかも知れませんが、今の私達は反乱に苦しむ人々を戦って守る事で、それで少しでも多くの人を救うことで、世評を得て動き出すために今を戦っています

 ですが…」

 

「今の桃香さま達は、それらを忘れて“今全てを持っている人”に一気に追いつけない事を悔やみ、前を向こうとしないでいます

 それではいけないんです!」

 

「桃香さまはおっしゃいましたよね、みんなが笑顔で毎日が過ごせるような、そんな世界にしたいって

 私達もそうです。だったら今ここで後ろを向くべきではないんです。少なくともあの人達を羨んだり助けられなかった人がいた事を悔やんで歩みを止めてはいけないんです」

 

「私達だって悔しいです

 情けないです

 叫びたいです

 でも、今はその前に歯を食いしばってでも歩かなくちゃいけないんです!」

 

どうしても涙が滲んでくるのを止められません

雛里ちゃんも涙を浮かべています

 

どうかわかってください

桃香さま!

みんな!!

 

私は昂ってきた感情を振り払うように首を振ります

 

そして再び桃香さまの顔を見ると

 

 

桃香さまは泣いていました

 

 

溢れる涙を拭いもせずに、ただただ泣いていました

 

 

そして、私達のところまでくると、そっと抱き寄せてくれます

 

「ごめんね…

 ふたりともごめんねぇ…

 みんな悔しかったはずなのに、ふたりにだけこんなに苦しい想いをさせちゃって、ごめんねえ………」

 

滲んでいる視界の中で、愛紗さんも泣いています

 

「………すまぬ

 私が不甲斐ないばかりに、お前達にこのような想いをさせていたとは…」

 

鈴々ちゃんも泣いています

 

「ひっく…

 えぐっ…

 鈴々ももっと頑張るのだ…

 みんながこんな想いをしなくてすむようにもっともっと頑張るのだ!」

 

隣の雛里ちゃんももう泣いています

 

「朱里ちゃあん…

 桃香さまぁ…

 愛紗さぁん…

 鈴々ちゃぁん…」

 

ごめんねと繰り返す桃香さまの声を耳元に、どんどん滲んで見えなくなっていく視界を自覚しながら、私も胸の中から溢れ出てくるものを抑えられませんでした

 

 

 

こうして………

 

みんなで大泣きした夜の翌日の朝

 

なんとなく照れくさいような誇らしいような、そんな感じでみんなが顔を合わせたその時

 

私達はようやく一歩を踏み出せた

 

そんな風に思うのです

≪冀州・曹操軍陣内/曹孟徳視点≫

 

あれから私は不機嫌だった

 

この不機嫌は漢中軍の陣から戻ってすぐに開いた会議から続いている

 

非常に面白くない

 

まず何が面白くないかというと、私より先を見据えてそれを実行できている男がいるという現実、これが気に入らない

当然私とても神ではないし、全ての事ができるなどとは思ってもいない

けれど、手に入るものは全て手に入れるしそれが私の手からこぼれ落ちるなんて事は天が認めても私は認めない

被害妄想という自覚はあるけれど、漢中太守とやらはそんな私がこれから掴む予定だったものを横から攫っていった、そんな錯覚に囚われるのだ

 

次に漢中太守が抱えている人材が私の手にない事が気に入らない

仲達のみならず、私が見逃していたであろう人材を持っているというのがどうにも度し難い

至急集めさせた情報によれば、その人材の数は両手で余るというのだから機嫌も悪くなろうというものだ

うちの子達に不満があるわけではないけれど、これからの覇業を考えれば人材など何人いたところで足りはしない

特に現在は内政に関する負担が桂花ひとりにかかっているのもあり、軍師は喉から手が出る程欲しい

漢中の情報をざっとさらっただけで、それだけの人材を擁しているという事実が解るだけに、腹が立つことこの上ない

 

他にもあげていけばきりがないのだけれど、自分がいまだ刺史でしかないという現実が一番面白くない

せめて軍政を十全に切り回せる身分であるなら、ここまでの腹立たしさは感じていなかっただろうと思う

 

認めたくはないが認めよう

 

私は悔しいのだ

 

そんな私の苛立ちが伝わっているのか、今日の軍議もどことなく沈んだものとなっている

 

切り替えなくちゃいけないんだけど、私もまだまだ未熟ってことかしらね…

 

「華琳さま、まだ漢中軍の事を考えておいでですか?」

 

秋蘭が私を気遣うようにそっと耳打ちしてくる

いけないいけない、気付かれていないつもりだったけど、溜息が漏れていたみたいね

 

「………やっぱりわかるかしら」

 

「は、他ならぬ華琳さまの事ですので」

 

本当に私にはもったいないくらい

 

「まあね…

 ないものねだりだと判ってはいるんだけどね…」

 

「あれは我々にもいささか衝撃的ではありましたし、無理もないかと」

 

秋蘭はそういって真桜に視線を向ける

 

「真桜、例の件についてはどうなっている?」

 

「ああ、アレですか

 ちょっとまっとってください」

 

一体どうしたのかしら

 

「桂花たんが頑張ってくれまして、漢中軍の武装をなんとか盗んできてもろたんですが、いやあびっくりしましたわぁ」

 

「真桜、どういうこと?」

 

私の質問に嬉々として、机上に壊れた鎚を置く

 

「これなんですけど、どうも連中、剣は装備してないみたいですわ

 で、この金属部分なんですけど、悔しいかな今のウチらじゃ作れません」

 

「まて、それは一体どういう意味だ!」

 

真桜の言葉に春蘭が身を乗り出す

 

「どういう意味もなにも、設備がないんですわ

 多分これ、相当高温の炉が必要だと思います」

 

真桜の言葉に首を傾げる春蘭に、彼女は説明を続ける

 

「簡単にいうと、高温で生成した方が鉄は固くて丈夫になるんですわ

 で、この鎚なんですけど…」

 

金属部分を軽く叩きながら真桜は話す

 

「色々な金属を混ぜて“殴るのに適した状態”を作り出してるみたいですわ

 戻ったらゆっくり研究してみたいわあ…」

 

彼女は暢気にそういっているが、それが本当なら冗談では済まない

私は思わず血相を変えて彼女に詰め寄る

 

「ちょっと!

 それは本当なの!?」

 

「大将に向かって嘘なんか言いまへん

 そない怖いことできるかいな…」

 

事態を理解したのか、桂花と秋蘭も顔を青ざめさせる

 

「ちょっと!

 もしそれが本当なら冗談にもならないわよ!

 解ってるの真桜!!」

 

「そない言うたかて…」

 

私の芯にある部分が次第に冷めていく

 

「そう…

 そういう事…」

 

「華琳さま?」

 

季衣がひょこっと私の顔を覗き込む

 

私はそれに笑ってみせると、全員の顔を見渡す

 

どうにも今までの私は、漢中軍と会ってから本調子ではなかったみたいだ

それが証拠に、内から気力が湧き上がってくるのが実感できる

 

「うふふ…

 ふふふ……

 あははははははははは!」

 

急に笑い出した私に皆が一瞬引くのがわかる

 

でも、これは抑えられない

 

私は今、この沸き上がる歓びに心底から震えているのだから

 

それが理解できたのだろう、春蘭と秋蘭は私に笑顔を見せることでそれに応えてくれる

 

「華琳さま、ようやくいつもの華琳さまにお戻りになられたようで」

 

そう秋蘭が微笑んで

 

「私は信じておりました、華琳さま!」

 

そう春蘭が満開の笑顔を見せてくれる

 

「ええ!

 今までの私はどうかしていたわ

 皆許してちょうだい

 あまりにもらしくなかったわね」

 

私の言葉に全員の顔に理解と笑顔が広がっていく

 

そう、私は曹孟徳

常に挑戦し前進し覇道を歩む者

そんな私が後ろを向き他人を羨んでいたのだ

それじゃあ当然調子なんて出るわけがないじゃない

 

「今こそ私は感謝しましょう

 この大陸とこれから来るであろう乱世に、これほどの強大な敵を用意してくれた運命にね!」

 

そして、この言葉に呼応するように直立する全員に向かって令を発する

 

「荀彧!」

 

「はっ!」

 

「これより漢中を最大の仮想敵とし、それを元に戦略を組みなさい!

 必要なものは貴女の裁量に任せるわ!」

 

「御意!」

 

「夏侯惇!

 夏侯淵!」

 

『はっ!』

 

「貴女達は新しく組まれる軍略を元に兵馬を鍛え直すこと!

 一分の遅れも許さないわよ!」

 

『御意!』

 

「李典!」

 

「はいな!」

 

「貴女は戻り次第新素材の研究と活用方法の模索を!」

 

「了解!」

 

「楽進!

 于禁!」

 

「はい!」

「はいなの!」

 

「貴女達は李典の補佐を!

 新兵の調練と警備は任せるから全力で当たりなさい!」

 

「承知!」

「了解なの!」

 

「許褚!」

 

「はいっ!」

 

「貴女は親衛隊として私の警護を!

 しばらくは動き回るから覚悟しなさい!」

 

「わかりましたっ!」

 

「皆の力を私にちょうだい

 これは命令よ、いいわね!!」

 

『御意!!』

 

 

さあ、私は“私”を取り戻したわよ

 

今の私に、恐れるものなどもうなにもない

 

見ていなさい、いずれ貴方達も大陸の全てと共に私の足元に跪かせてあげる

 

 

この曹孟徳を本気にさせた事を必ず後悔させてあげるんだから!!

≪冀州某所/魯子敬視点≫

 

ある意味貧乏籤とも言えなくもないんですけど、まあ他に人もいないですし、仕方ないですね

くきゃきゃきゃきゃきゃきゃ!

 

私は今、冀州に潜伏しています

 

具体的にはこれから反乱軍と諸侯連合軍の決戦がはじまるであろう、古城の付近なんですけどね

 

本当は仲達姉様か元直さんが来るはずだったんですが、どうにも洛陽がキナ臭くてお二人は離れられないんだとか

 

まあ、私らとしては諸侯には勝って貰わなきゃいけないわけで、最後の仕込みを確実にするために、こうしてひっそりと待機するのを強いられているって訳ですが

 

諸侯にばれないように斥候の穴を作るってのもこれはこれで骨が折れる仕事で、正直私は参ってます

 

でもまあ、こんなのは令則さんや仲業さんや忠英さんにゃ向いてないのも判りますんで、我慢するしかないっていうのがつらいところです

 

「で、諸侯の集まり具合はどんな感じだい?

 くきゃきゃっ」

 

「およそ八割というところかと

 腰が重かった袁公路も動きましたので、もう3日もすれば陣容は整うかと思われます」

 

ご苦労さま、と返しておいて、私は“仕込み”について確認する

 

「反乱軍の内部はどうなってるか確認してるかい?」

 

それには別の兵が答える

 

「かなり危険な状況ですが“鶯”の安全は確保できております」

 

なら結構

 

「“杭”を打ち込む“間”だけは間違えないよう、埋伏には念を押しとくようにね

 くきゃきゃきゃきゃ!」

 

「それは重々に

 むしろ内部で暴徒化している連中から“鶯”を守るのに一苦労だと言っているくらいですから」

 

「くきゃきゃきゃっ

 それなら“杭”を打ち込むのはむしろ楽そうだね」

 

他に確認しておくことは…

 

「そうそう、諸侯の斥候は潰しすぎないように気をつけるように

 今更言う事でもないけどね、くきゃっ」

 

「一番気を使っているのはむしろそれですね

 特に曹孟徳が厄介です」

 

その名前に私は少しだけ記憶を探る

 

「ああ…

 “治世の能臣、乱世の奸雄”とか言われてた人だっけ?」

 

「そのような評を得ていた人物だと聞いております」

 

「なるほどね

 さすが世間に名前が通る人物は違うってことかね

 くきゃきゃきゃきゃ!」

 

まあ、楽観はしてられないんで、そこだけは気を使わなくちゃならない

それが“仕込み”の胆だしね

 

「あと、少し気になる軍が…」

 

「おやおや、他にどこかあるのかい?

 くきゃっ」

 

「曹孟徳と同じに布陣している、劉玄徳という義勇兵の軍ですが、その規模では考えられない規模の斥候を出しています」

 

ふーん…

劉玄徳ね…

ちょっと気に留めておくとしようかな

 

「ま、私達はこそこそしつつ、諸侯が血で血を洗うのを見学させてもらうとしようか

 くきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃ!!」

 

 

うちの腐れ太守と仲達姉様の策に穴があるはずもないし、私は下手を打たないようにじっくり構えさせてもらうとしましょうか

 

 

あ~あ…なんか諸侯が憐れだよねー

くきゃきゃきゃきゃきゃきゃっ!!


 
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