No.318773

真・恋姫†無双-白き旅人-七章

月千一夜さん

皆さん、こんばんわです
月千一夜と申します

今回はいよいよ、建業編クライマックスw

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2011-10-15 18:23:06 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:12859   閲覧ユーザー数:9053

城壁の上

私の視線の先に広がるのは・・・信じられない光景だった

 

突然、厳白虎の前に現れた男

白い外衣を身に纏った男

その男を、私は知っていた

 

“司馬懿仲達”

 

昨日、一緒に街を歩いた

昨日、退屈だったはずの毎日が少しだけ変わった

昨日・・・私に、あの首飾りをくれた

 

まだ記憶に新しい、出会ったばかりの男

 

そんな彼が、急に現れたかと思ったら・・・

 

 

 

 

『まずは、“自己紹介”から・・・かな』

 

 

 

 

あの厳白虎を殴り飛ばした後

その身に纏っていた外衣を、脱ぎ捨てたのだ

 

そして、現れたのは・・・“見覚えのある青年”

日の光を浴び、白く輝く衣服を身に纏う男

 

彼は・・・

 

 

 

 

『俺の名前は北郷一刀

もっとも・・・』

 

 

 

 

 

~人によっては俺のことを・・・“天の御遣い”って呼ぶ人もいるけどね~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪真・恋姫†無双-白き旅人-≫

第七章 建業決着!!~よしわかった、尻を貸そう~

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「て、天の御遣いじゃとっ!?」

 

 

信じられない、という風に声をあげる小太りの男

“自称・天の御遣い”こと、“厳白虎”

彼はあまりの驚きに、その場から一気に後退していったのだ

まさか本物が来ていたなど、夢にも思わなかったのだろう

そんな彼をやや冷めた目で見つめるのは、北郷一刀こと“本物の天の御遣い”だ

彼はというと、怒気を孕んだ瞳を隠そうともせずゆっくりと・・・深く溜め息を吐き出した

 

 

「はい、そうです

魏の種馬こと、天の御遣いですよ~」

 

「ぷっ・・・くく」

 

 

一刀の言葉

霞は一瞬噴き出しそうになるのを何とか堪える

そんな霞のことを、一刀はジト目で睨み付けた

 

 

「おい、霞・・・笑い事じゃないぞ?

霞だってあのままだったら、このオッサンの愛人だったんだからな」

 

「くく、ああそうやったね

それだけは勘弁や」

 

 

“ったく”と、一刀

彼はそれから、その視線を未だ驚く厳白虎へと向けた

 

 

「さってと・・・この俺、天の御遣いと」

 

「ウチ、張遼文遠の前でええ加減なこと言った罪」

 

 

 

 

「「きっちり、落とし前つけてもらうぞ?」」

 

 

 

 

「ひっ、な・・・ちょちょちょ張文遠じゃとっ!!!???」

 

 

男は、さらに二人から距離をとる

天の御遣いだけじゃなく、まさかあの“神速”と謳われた張遼までいるとは想像することすらできなかった

このことに、呉の兵や山越からも驚きの声があがる

 

 

 

「おい、あの白い服って・・・」

 

「ああ、間違いない!

確かに戦場で見たことがある・・・!」

 

「それに、あの張遼将軍までいるなんて・・・」

 

 

 

“天の御遣い”

“張文遠”

 

この二つの名によって、戦局は大きく動き出したのだ

 

 

“このままではマズイ”

そう思ったのは、勿論厳白虎である

想定外のことばかりおき、その表情には明らかに焦りが見える

 

 

「くそ、聞いていないぞ・・・儂は、このようなことになるなど・・・・・・」

 

「お~い、一人でトリップしてないでさ

こっちでお話でもしようよ~」

 

「ひ、ひぃ!?」

 

 

ユラリと、男に歩みよる一刀

その姿に、男は恐怖を覚えた

 

故に、彼はさらに後ろへとさがると・・・大声をあげ、一刀を指さしたのだ

 

 

 

「そそそそ、そうじゃ!

た、太史慈!!

その御遣いは偽物じゃ!!

早う、早う始末せいっ!!!!」

 

「・・・御意」

 

 

男の言葉

太史慈はゆっくりと、手に持っていた双鞭を構えた

その姿に、霞はニヤリと嬉しそうに笑みを浮かべる

 

 

「へ~、アンタ・・・中々の、使い手みたいやねぇ

おもろいやんけ

太史慈、っちゅうんか?」

 

「太史慈、字は子義

それが、某の名前だ」

 

 

言って、構えた双鞭を握る手に力を込める

その瞬間、凄まじい程の重圧が空気を“揺らした”

 

“強い”

 

思うのと同時に、彼女は笑う

乱世が終わって以来、出会うことのなかった“強敵”

その登場に、彼女は“喜び”を隠すことが出来なかったのだ

 

しかし、だ

 

 

 

 

「待って、霞」

 

「ん?」

 

 

その笑みも、次いで聞こえてきた彼の声

一刀の声により、消えてしまうことになる

 

 

 

「なんや、一刀

今、ええところなんやけど?」

 

 

不満そうに、一刀に言う霞

その彼女の肩をポンと叩き、彼はニッと笑う

それから持っていた杖の先を太史慈へと向け、こう言ったのだ

 

 

 

「俺が・・・戦うよ」

 

「なっ・・・!?」

 

 

 

この一言に霞は、いや霞だけではなく

其の場にいる者は皆、一斉に驚きに表情を変えた

彼の目の前で双鞭を構える、太史慈でさえもだ

 

 

「おい、一刀!?

あの太史慈っちゅう奴、かなり強いんやで!!?

一刀じゃ・・・」

 

「大丈夫だよ・・・」

 

 

霞の言葉

彼は歩みを止めることなく、そう答えた

それから、杖を握り締め言ったのだ

 

 

「もう・・・大丈夫だから」

 

「一刀・・・」

 

 

“大丈夫”

温かな笑みと共に放たれた、その言葉に

彼女は、しばし悩むような表情を浮かべ

 

其の自身の肩に、ゆっくりと偃月刀を担いだのだった

 

 

 

「わかった・・・そのかわり、絶対に勝つんやで」

 

「ありがとう・・・霞」

 

 

 

言って、向き直った先

太史慈は、少し意外そうな表情を浮かべていた

 

 

「話では・・・確か、御遣い殿は戦場で矛を振るったとは聞いていなかったのだが」

 

「まあ、ね

いっつも皆の後ろで、じっと・・・戦場を眺めてたよ

って、いいの?

俺のこと、御遣いって呼んでさ?

あのオジサンが言うには、俺の方が偽物らしいよ」

 

「いや・・・一目見れば、某にはわかり申す

貴殿が身に纏う空気は、まさに万人の心を照らし温める太陽が如く

貴殿こそ、天の御遣い様であるのでしょう」

 

「けど・・・」

 

「いかにも・・・それでも尚、某は戦いましょう

あのような輩でも、某には受けた恩があります故」

 

 

“なるほど”と、一刀は苦笑する

史実においても、太史慈はとても義に厚い武人だったという

それは、この世界においても変わらないようだ

故に、彼はその瞳を真っ直ぐと見据えた

 

 

 

「始めに、言っておくけどさ

俺は“武人じゃない”、俺は“俺として戦う”

それで、いいかな?」

 

「問題ありませぬ

どのような相手だろうとも、某の双鞭は等しく砕いてみせましょう」

 

「なら、そろそろ始めよっか」

 

「御意・・・さぁ、かかって参られよ!!

この太史子義!!

全力をもって打ち砕かん!!!!」

 

 

 

 

それが・・・“合図”となった

太史慈の声と共に、一気に駆け出したのは一刀だった

彼は素早く太史慈との距離を詰めると、その杖の先を太史慈へと向けたのだ

 

 

「燃えろっ!!」

 

 

瞬間、勢いよく飛び出していく炎

辺りには、驚きの声があふれかえる

厳白虎にいたっては、“ん゛ん゛~~~~”と叫びながら尻餅をついている

そんな中でも、太史慈は至って冷静であった

彼は襲いくる炎に怯むことなく、ジッと睨み続ける

やがて、その炎が自身に当たろうかという時・・・

 

 

「むん!!!!!」

 

 

その双鞭を振るうことによって、掻き消してしまったのだ

これにまた、周りの者達は驚きの声をあげた

そんな中、彼は炎により見失った一刀の姿を捕えるべく駆け出す

同時に・・・

 

 

 

「さっすが、太史慈

けど・・・これは、どうかな?」

 

 

 

彼の耳に、このような言葉が聴こえたのだ

と、同時に聴こえる・・・“シュー”という、何かおかしな音

それが自身の周りから聴こえることに気付くのとほぼ同時のことだった

 

 

 

 

「“ぼくのかんがえたかっこいい武具シリーズNo.21”

良い子は絶対に真似しちゃダメな、危険な花火・・・その名も“ジバクくん”だ」

 

 

 

 

 

彼の周りから一斉に、凄まじい量の火花が音をたて散ったのは・・・

 

 

 

 

「む、むぅっ!!?」

 

 

突然のことに、今度こそ驚きの声をあげる太史慈

それだけでなく、自身の周りで破裂する“ジバクくん”の火花の熱に表情を歪めていた

“しかし、これさえ耐えれば・・・”と、ブンと双鞭を振るう太史慈

 

 

「もしかして、これで終わりと思った?ww」

 

「っ!!?」

 

 

その刹那、響いた声

同時に、背筋に嫌な汗が伝う

“マズイ”と、そう思った時には遅かった

 

 

 

 

「そ~れ、モンスターボールww」

 

「あふんっ!!?」

 

 

 

彼の股間めがけ、思い切り投げられた“モンスターボール”

それは彼の股間に衝突し、凄まじい衝撃と共に弾けたのだ

そして・・・辺りに溢れるのは、一刀特製の“胡椒”やら“唐辛子”やら“ウコン”やら“ジャスミン”やらが含まれた煙

胡椒や唐辛子で相手の視界や嗅覚を奪うだけでなく、ウコンやジャスミンで健康や香りにも気を使った至高の一品である

もっとも、現在進行形で火花を浴び続け股間に打撃を負った彼にそれらを楽しむ余裕などなく

唯々、それらの中心で悶絶するばかりである

 

 

「ちょ、ま、ゴホッ・・・待って、ゲぼ・・・」

 

「あっはっはっは!!

見たか、御遣いの“正義”の力を!!」

 

 

言って、上機嫌に笑う一刀

周りは皆、“何処が正義だ”とツッコんでいる

霞にいたっては、爆笑しその場を転がり回っていた

 

 

 

「さってと、太史慈さん

もう、降伏してくれないかな?」

 

「ぐ、断る・・・ゲほ、って、ちょ、お主、何を・・・!?」

 

「いや、そろそろ切れそうだったからジバクくんの補充を

あと、モンスターボールも五個くらい投げとくか」

 

「な、なんだと!!!?

ちょ、ま、あっつ!!?

熱い熱い鼻が痛いでもなんか良い香りゲゲゴボウェ・・・!!!!???」

 

 

“よ、容赦ねぇ”と、皆が思ったのも無理はない

この状況下で、さらに追い打ちをかけたのである

しかし、それでも尚太史慈は降伏しようとしなかった

 

 

「太史慈さん、もういいだろ?」

 

「ぐ、ぬぬぬぬ・・・某は、まだ恩を返せておらん!!

あのときに受けた恩は、まだ返しきれておらぁあふんっ!!?

ちょ、こら!!?

はははは話してる最中に、股間を狙う奴が何処に・・・」

 

「此処にいるが?

それよりもさ、聞かせてくれないか?

君が、どのような恩を・・・あのくそじじいに受けたのか」

 

「ひっ!!?

あっつ・・・わかった!

わかったから、“その手に持ったモノで某のモノを狙うのを止めろ”!!!!」

 

 

“仕方ないなぁ”と、一刀

その姿にホッと胸を撫で下ろしつつ、彼はその口を開いたのだ

因みに・・・現在進行形で、彼の周りには未だにジバクくん達が勢いよく破裂している

 

 

 

「某は長い間ずっと・・・ただひたすら、自身の武を高めるべく生きてきた

それこそ、他のものを全て後回しにして

毎日のように、ただ鍛錬をかしてきたのだ」

 

 

この話に、“太史慈さんらしい”と一刀は苦笑する

彼の実直なまでの性格は、昔からだったらしい

 

 

「そのせいか・・・某は、大切なものを捨てることができなかったのだ」

 

「大切な、もの?」

 

 

その言葉に、一刀は首を傾げてしまう

一方の太史慈はというと、“御遣い殿ならば、簡単にわかることだ”と悲しげに笑う

因みに・・・彼は未だ股間が痛いのか、大きく前屈みになったままである

 

 

 

 

 

 

 

 

「某は・・・未だに、“女子を知らぬのだ”」

 

「っ!!!??」

 

 

一言

太史慈が放った一言に、一刀は驚愕に表情を歪める

微かに、その体は震えていた

 

“女子を知らない”

それが表すものは、つまり・・・

 

 

 

 

 

「ど、“童貞”・・・だと?」

 

 

一刀の言葉

太史慈は、悲しげな表情を浮かべたまま頷く・・・

その姿に、一刀は自身の胸が痛むのを感じた

 

 

 

「た、太史慈さんは今・・・何歳、なのかな?」

 

「齢29・・・今年で、30だ」

 

「っ・・・!」

 

 

瞬間、一刀は口元をおさえ涙を流した

なんという、ことだろう

もしこの世界に“魔法使い”という存在があったのならば

 

彼は、今年で・・・

 

 

 

 

「某は、毎晩のように涙した

失った時は、もう2度と戻ってこないのだ・・・と

そんな時だったのだ・・・厳白虎殿が、某に手を差し伸べてくれたのだ」

 

 

 

 

『儂が・・・お主を、助けてやろう』

 

 

 

 

「例えそれが、某の武を利用しようと考えたものであっても

例え、それが悪の行いだったとしても

それでも、某は嬉しかったのだ

こんな某に、手を差し伸べてくれたことが・・・ただ、嬉しかったのだ」

 

「た、太史慈さん・・・アンタって、奴は」

 

 

涙を拭い、一刀はグッと拳を強く握りしめる

太史慈の想いに、応える為に・・・

 

 

「わかった・・・わかったよ、太史慈さん」

 

「御遣い殿・・・かたじけない」

 

「けど、さ

やっぱり、間違ってるよ」

 

「御遣い殿・・・」

 

 

呟き、彼はキッと太史慈を見つめる

その手は、未だ強く握りしめられたままである

 

 

「俺たちの人生を・・・例えば、“戦”に例えたとしよう

その場合、さ

どうなってしまったら、戦は終わっちゃうと思う?」

 

「それは・・・己が死したならば、終了ではないのか?」

 

「違うよ、太史慈さん

それは、間違いだ・・・」

 

「だったら、いったい・・・」

 

 

言い掛けて、彼は言葉を止めた

見たのだ

彼を見つめる、一刀の・・・その、優しい瞳が

彼に、こう語ってきたのだ

 

 

 

 

 

 

~諦めたらそこで・・・戦は、終了だよ?~

 

 

 

 

 

 

「・・・あぁ、そうか」

 

 

その言葉に、その温かな言葉に

彼は、知らず涙を流す

それから、グッと双鞭を強く握りしめた

 

 

「そういう、こと、だったのか」

 

 

言って、彼はそれを・・・振るう

その姿に笑みを浮かべ、一刀は自身の懐からあるものを取り出した

 

 

「やっと、気付いたみたいだね・・・」

 

 

言いながら、彼が構えるのは・・・太史慈が持つ双鞭のように

二本一対の武具

ただ、双鞭と違うのは・・・その、圧倒的なフォルム

 

 

「だったら、決着をつけよう」

 

 

長く白い柄

そして・・・黒いゴムで出来たお椀型の先端部分

摩訶不思議な、その武具に

辺りは、驚きのあまり言葉が出ないようだった

 

しかし・・・もし仮に、この場に一刀と同じ世界の人間がいたのならば

まったく別の意味で、言葉が出なかっただろう

 

一刀が構える、それは・・・

 

 

 

「“ぼくのかんがえたかっこいい武具シリーズNo.9”“崙義弩主(ロンギヌス)”」

 

 

 

 

トイレが詰まった時に使うあの、“キュッポン”こと・・・正式名称を、“ラバーカップ”だったのだから

 

 

 

 

 

「さぁ・・・いくよ、太史慈さん」

 

「うむ・・・いざぁ!!」

 

 

叫び、同時に駆け出す2人

 

かたや、二振りの双鞭を持ちながらも・・・片手は、股間をおさえ前屈みになったまま走る

一人の、孤高の武人

 

かたや、二振りのキュッポンもとい崙義弩主(ロンギヌス)を構え駆ける

天の御遣い

 

その二人の距離は瞬く間に縮まり

そして・・・

 

 

決着は・・・一瞬にしてついた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キュポン♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「某の負けだ・・・御遣い殿」

 

 

ゴトリと双鞭を落とし、呟く太史慈

その顔には、なぜか笑顔が浮かんでいた

 

その懐で、崙義弩主(ロンギヌス)を強く握りしめ

その切っ先にて、太史慈の股間をキュポン♪したまま・・・一刀は、同じように笑い呟く

 

 

「ああ、そして・・・俺の勝ちだ、太史子義」

 

 

グッと力を込め、キュポン♪と音をたて引き抜かれる崙義弩主(ロンギヌス)

“あふんっ”と、太史慈は悶え膝をついた

やがて彼は、苦笑を浮かべ呟く

 

 

 

「はは・・・某は所詮、この程度の男でござったか」

 

「太史慈さん・・・」

 

 

その姿を見つめ、一刀は一度深く息を吐き出した

それから、彼を見つめ笑ったのだ

 

 

「さっき、言ったよね?

諦めなければ、おれ達は終わらない・・・いや、終わるはずなんてないんだ

諦めなければ、おれ達は何処へだって行けるんだよ?」

 

「御遣い、殿・・・」

 

「だからさ、聞かせてほしい

今の太史慈さんの、本当の気持ちを・・・」

 

「某の、本当の・・・気持ち」

 

 

言われ、彼は自身の胸に手をあてる

そして・・・気付いたのだ

 

己の・・・本当の、気持ちに

 

 

「御遣い殿・・・某は、某は・・・・・・」

 

 

故に、彼は吐き出したのだ

 

溢れ出る涙が

零れ出る想いが

 

 

 

 

 

「御遣い殿(センセイ)・・・女の子と、イチャイチャ、したいです」

 

 

 

 

 

彼の本当の想いを

長い間、一人で抱え込んでいた闇を

 

ようやく、曝け出すことが出来たのだ

 

 

 

「太史慈さん・・・それで、いいんだ

俺たち男は、それでいいんだよ」

 

 

ポンと、優しく肩を叩く

それから一刀は、自身が持っていた“崙義弩主(ロンギヌス)”を彼の手へと握らせた

そして、ニッと微笑を浮かべたのだ

 

 

「これを・・・受け取ってくれないかな?

男として、ようやく一歩踏み出した貴方への・・・敬意を表して」

 

「御遣い、殿・・・くっ、忝い!」

 

 

グッと、強く崙義弩主(ロンギヌス)を握り締め

彼は、その場から立ち上がった

 

そして、受け取った崙義弩主(ロンギヌス)を・・・天高く掲げてみせたのだ

 

 

 

 

「某・・・太史子義は、御遣い殿に生涯の忠誠を誓いましょうっ!!!!

そして、歩もう!!

真の、男を目指してっ!!!!!」

 

 

 

 

その姿に

唯一人の、ひたむきなまでの真っ直ぐな想いに

 

呉国の民は・・・山越の兵たちは

皆大粒の涙を流し、皆で大きな拍手を送っていたのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・続く

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

(・・・って、なんじゃこの茶番ーーーーーーーーーーーーー!!!!???)

 

 

“いやいやいや、長すぎるだろ!?”と、一人心の中ツッコんだのは冴えない中年のオッサン

厳白虎である

彼は長かった戦いの結末を見つめ、声を大にしてツッコみたい衝動を必至に堪える

それから、自身のおかれた状況を理解した

 

 

太史慈はもう、自分には従わないだろう

山越の民も、恐らくは自身の命令には従わない

 

 

つまり・・・彼は負けたのだ

 

 

(くそ・・・このままでは、“あの方”に面目がたたん!!

いやそれ以前に、儂の命が危ないっ!!)

 

 

思い立ったが吉日、とは少し違うのだが

彼はそのことに思い至るのと同時に、その場から駆け出そうとする

幸い、今皆の視線は太史慈と御遣いに集まっている

故に、今ならばなんとか・・・

 

 

 

「あっれぇ~?

どっこに行くのかしら~?」

 

「ひっ・・・!?」

 

 

・・・などと、そう思っていた時期もあったのだが

 

 

「貴様、そそそそそそ孫策!!!??」

 

「は~い、お久しぶり♪」

 

 

逃げようとした彼の前

そこに、いつの間にか孫策が立っていたのだ

 

 

「い、いつの間に!!?」

 

「まぁ、勘ってやつかしら?

ようやく、調子が良くなってきたみたい」

 

 

言って、彼女は思う

“いや、違うか”と、そう呟きながら

 

 

一年前

あの時の勘だって、ハズレじゃなかったのだから

今ならば、彼女はわかった

あの時、感じた勘は

あの時に見た、あの白い光りは

 

きっと・・・

 

 

 

「“彼と会う為だった”・・・なんて、ね」

 

 

言いながら、微笑む孫策

そんな彼女の様子に戸惑いながらも、厳白虎は今がチャンスとばかりに駆け出す

だが・・・

 

 

 

「おっと・・・悪いがここから先は、立ち入り禁止だ」

 

 

やはり、彼に待つのはこのような結末であった

彼が逃げようとした方向には、二つの人影があったのだ

 

華雄と、そしていつの間にか目を覚ましていた雛里である

 

 

「きょきょきゃらしゃきにぃわ、いきゃしぇましぇんよ!!!!」

 

 

まだ、完全には回復していないようだが

さらに・・・

 

 

「ど~こ行くん?

まだまだ話は終わってへんやろうが」

 

「ひっ!!!!??」

 

 

その背後から、彼の首筋に偃月刀の刃をあてがう霞

まさに、四面楚歌・・・絶体絶命である

加えて、だ

 

 

 

「さってと、覚悟はいいかな?」

 

 

このタイミングでの彼の登場は、もはやトドメをさしたに等しかっただろう

 

 

 

「アンタは、この“天の御遣い”の名を使って・・・罪のない、山越の民を巻き込んだ

アンタはどす黒い欲望を満たす為、太史慈の純な心を弄んだ

そして、アンタは・・・俺の前で、“彼女の名を穢そうとした”

その報いを、アンタは受けるべきだ」

 

「ひっ・・・ひぃ!!?」

 

 

迫りくる、一人の青年

天の御遣い

白い外衣を身に纏い、その手に杖を携えて

少しずつ歩み寄る彼に、男は恐怖した

 

 

「く、お前さえ!!

お前さえいなければ、全て上手くいったのだ!!!」

 

 

この期に及んで、皆はそう思い溜め息を吐き出す

しかしそんな中、唯一人だけ

一刀だけは、ニヤリと意味深な笑みを浮かべ呟く

 

 

「ああ、そうだよ・・・この場に俺がいなければ、アンタの企みは上手くいっていただろうね」

 

「・・・!?」

 

 

突然の言葉

厳白虎は、驚き目を見開いた

 

 

「けど・・・それは“有り得ないんだよ”」

 

 

“残念ながらね”と

それでも、彼は言葉を続ける

やがて彼は、驚きのあまり身動きのとれない厳白虎の耳元で・・・小さく何かを囁いた

 

 

 

「・・・だっけ?

アンタに、このことを教えたのってさ」

 

「な、ななななな!!!?

何故だ!?

何故貴様が、“その名”をしってぶげるぁぁああああ!!!!!????」

 

 

 

言い掛けて、その場から吹き飛んでいく厳白虎

その顔面に思い切りぶち込まれた、一刀の拳によってである

一刀はその手を強く握りしめたまま、吐き出すように・・・再び、小さく呟いたのだ

 

 

 

 

「なんたって、俺は・・・天の御遣いだからね」

 

 

 

 

やがて、深く溜め息を吐き出す彼

それから、その場にいる皆を見回した後・・・スッと手をあげ言ったのだ

 

 

「面倒はひとまず押し付けちゃえ♪

てことで、華琳のとこに送るに一票」

 

 

この一言に、皆はクスリと笑いを零す

 

 

「はいはいは~い

じゃぁ私は、“衣服は道中邪魔になりそうだから着せない”に一票♪」

 

 

これに続いたのは、孫策だった

それに対し、他の三人もそれぞれ手をあげる

 

 

「ほんならウチはそれに、“曹操は儂の女”って腹に書いとくに一票ww」

 

「ふむ・・・ここはやはり、“せめて男らしく兜だけは被っていく”に一票だ」

 

「あわわ・・・私は、“護衛や護送する人はみんなガチでムチなイイ男”に一票です」

 

「ひ、雛りん?

何気に、ある意味一番ひどいこと言ってない?」

 

 

 

 

・・・哀れ、厳白虎

彼は自分が気絶している間に

“全裸に兜だけ装着しお腹には『曹操は儂の女』と書かれた状態で、ウホッでガチムチなイイ男達の手によって魏国にまで送られる”ことになってしまったのだった

 

 

 

『な~に、男は度胸・・・なんでも試してみるものさ』

 

 

 

等と、とある青ツナギのイイ男の声が聞こえた気がした

 

ともあれ、これにて一件落着

山越の民も恐らくは、厳白虎の口車により騙されていたのだろう

今はもう、敵意はないとばかりに武器を捨てこちらの判断を待っているようだった

 

 

「疲れたぁ・・・」

 

 

そんな中、一刀は溜め息と共に吐き出す

それから見上げた空

未だ太陽が昇る青々とした空を見上げ、彼は誰にも聴こえない様小さく呟く

 

 

 

「やっと・・・“一つ目”か」

 

 

 

その呟きは風に掻き消され

やがて、その場から溶けるよう消えていったのだった

 

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「まずは・・・ありがとう

呉国を代表し礼を言うわ」

 

 

場所を移し、ここは建業城内の玉座の間

その玉座に腰をかけそう言ったのは孫策だった

その彼女の視線の先

一刀をはじめとし、華雄・雛里・霞・・・そして、太史慈の姿があった

 

 

「だけどまさか仲達の正体が、天の御遣いだったなんてね」

 

 

言って、彼女は笑う

それに対し、彼は申し訳なさそうに苦笑した

 

 

「ごめん、孫策さん

けど、俺にもその、事情があってさ・・・」

 

「わかってるわよ

別に、怒ってなんかいないわ」

 

 

“その代わり”と、彼女は微笑む

 

 

「私のことは雪蓮って、そう呼んで」

 

「って、はぁ!?

それって、真名だろ?」

 

「いいのよ

貴方がいなかったら、今頃建業は大変なことになっていたわ

本当に感謝してるの

それにね、今回のことで山越の民から“交流”を持ちたいって言ってきたのよ?

良いことずくしだわ♪

だから、そのお礼に・・・ね♪」

 

「はぁ・・・わかったよ、雪蓮

だったら俺のことも一刀って呼んでくれよ

こっちでいう、真名みたいなもんだからさ」

 

「わかったわ一刀」

 

 

それから、2人は小さく笑いあう

そんな光景を、霞は何とも不機嫌そうな表情で見つめていたのだが

残念ながら、一刀はそれに気付けないでいた

 

 

「ところで、太史慈はこれからどうするんだ?」

 

 

ふと、思い出したのか一刀は自身の後ろに控える太史慈に声をかける

彼はそれに対し、スッと頭をさげ言葉を紡いだ

 

 

「某は、真の男になるべく一人で大陸を旅して周ろうかと思います

そしてこの“崙義弩主(ロンギヌス)”に相応しい男となり、御遣い殿のもとへ馳せ参じましょうぞ」

 

「ああ・・・待ってるよ」

 

「必ずや!」

 

 

言って、彼は背負っていた崙義弩主(ロンギヌス)を掲げた

此処まで来たらもう、“深夜のテンションで作ってしまったモノ”だとは言えない

そもそも、こっちの世界での使い道を探す方が難しい

本来は、トイレでキュポンキュポンするものだし

 

一刀は、ただ頷くことしかできなかったのだった

 

 

 

 

「さってと、それじゃ・・・そろそろ宿に帰ろうかな」

 

「え?

ちょっと待ってよ

折角だから、お城に泊まっていけばいいじゃない」

 

「いや、遠慮しとく

明日にはもう、建業から出ていこうと思ってたから」

 

「明日ぁ!?」

 

 

一刀の言葉

雪蓮は、驚きのあまり玉座から立ち上がった

そんな彼女にビックリしつつも、彼は苦笑いを浮かべたまま話を続ける

 

 

「俺の正体がばれちゃったからね

残念ながら、長居は出来ないよ」

 

「そっか・・・残念だわ」

 

 

“ごめんね”と、一刀

そんな彼の言葉とはよそに、彼女はしばし何かを考え込む

すると、段々とその表情は明るくなっていき・・・

 

 

 

「そっか・・・“この手”があったじゃない」

 

 

 

誰に聞かせるでもなく

一人・・・小さく呟いたのだ

 

背筋が凍るような、不気味な笑みを浮かべながら・・・

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「よかったのかい?

ホイホイ、運ばれちまって

俺は・・・ノンケだって構わないで喰っちまうような人間なんだぜ?」

 

「よ、よくない!!

わ、儂は女が好きな普通の男・・・」

 

「あぁん!!?

だらしねぇな!!?」

 

「ひ、ひぃ!!?」

 

「それじゃ、とことん悦ばせてやるからな」

 

「お、おい!!?

何を、おま、やめ、あ、ああ、あぁぁああ、あ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、賑やかに魏国に送られていく厳白虎を見送り

一刀達は今、建業を少し離れた位置を歩いている

 

 

「はぁ・・・結局、観光は無理だったな」

 

「ウチら、酔い潰れとっただけやもんねぇ」

 

「あわわ、次の街でゆっくりすればいいんですよ!」

 

 

“だから、元気だしてくだしゃい・・・あぅ、また噛んじゃいました”と、雛里の励ましに癒されつつ

四人は、“宿を出る前に決めた行き先”へ向け歩を進めていく

 

 

「一刀?

どないしたん、さっきから・・・なんや、妙にソワソワして」

 

 

そんな中、霞は自身の前を歩く一刀の異変に気付く

彼は先ほどから、なぜかソワソワとしていたのだ

 

 

「いや、その・・・上手くいえないんだけどさ

こう、嫌な予感がするんだよね」

 

「嫌な予感?

気のせいちゃうか~?」

 

「だと、いいんだけどさ」

 

 

言いながら、見あげた空

昨日に引き続き、今日もまた快晴である

 

 

「ま、そうだよな」

 

 

“きっと、気のせいだ”

そう言い聞かせ、彼はその足を早めた

目指すは・・・

 

 

 

 

「行こう、皆

目指すは・・・」

 

「ちょっとぉ!!

遅かったじゃない、一刀!!!!」

 

「めざす、は・・・え?」

 

 

 

“ギギギ”と、なんとも古典的な効果音と共に四人が見つめた先

自分達がこれから向かおうとした道のりの真ん前

 

そこに、“彼女”はいた

 

桃色の髪を靡かせ、すっかりと旅支度を済ませた女性・・・

 

 

 

「雪蓮!!!??」

 

「やっほ~、一刀♪」

 

 

 

孫策こと、雪蓮が

彼らの前に、立っていたのである

 

 

 

「な、なんでここに!?」

 

 

焦る、一刀達

そんな彼のすがたに笑みを浮かべつつ、彼女はガバッと一刀に抱き着きこう言ったのだ

 

 

「そんなの・・・一刀と一緒にいたいからに、決まってるじゃない♪」

 

「へぇ~、そっかぁってうええぇぇぇええええええええええええええええええええ!!!!!????」

 

 

驚き、叫んだのは一刀

そんな彼を見つめ、三人は極めて冷めた目をしたままこう言ったのだ

 

 

 

 

 

「「「この、種馬」」」

 

「ご、ごめんなさい!!!!

そして、助けてくださいっ!!!!」

 

「にゅふふ~、一刀ってば温か~~い♪」

 

「は、離してよ雪蓮!!

てか、お城どうすんだよ!!?」

 

「だいじょうぶよ、ちゃんと置手紙は残してあるし

それに、魯粛ちゃんは優秀だからね~

だから、一刀の旅について行っても問題なしよ♪」

 

「“問題なし”っちゅうんはわかったから、早う一刀から離れぇ!!!

一刀はウチのもんやで!!!??」

 

「ぐっは!!?

霞ざん、締まってる!!!

俺の首に、がっちり決まっちゃってる!!!!!??」

 

「やれやれ・・・賑やかなことだ」

 

「あわわ、あわ!!

皆さん、喧嘩しないでくだちゃいっ!!!??」

 

「「「「あ、いま噛んだ」」」」

 

「あわわ!!?

そして、こんな時だけ息ピッタリでしゅ!!!???」

 

 

 

 

 

晴天の下

ワイワイと騒ぐ、五人の姿

その姿を天は・・・空は、優しく見守っているのだった

 

 

 

 

 

 

 

・・・続く

 

 

 

☆あとがき☆

 

さて、いかがだったでしょうか?

 

ついにopeningのメンバーが揃いましたw

今後はさらに、賑やかに姦しく

彼らの旅は進んでいくことでしょうww

 

 

太史慈の登場は、今後の伏線です(ぇ

 

さて、次回は閑話休題

ちょっとした小話から始まります

 

その後は、怒涛の新章突入ですww

 

それでは、またお会いしましょう♪

 


 
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