センドウ
つい先刻まで雲一つなかった青空には影が差し、穏やかであった波は荒波へと変わり果てていく。
その煽りを受けるのは一隻の船。
まるで強風に弄ばれる木の葉のように、波に踊らされる様子では転覆するのも時間の問題だ。
船の状況が芳しくないからこそ、船上の喧騒もまた度を超えている。
揺れに耐え切れず船から投げ出される者、自ら海へと飛び込む者、手近な備品にしがみ付く者など甲板はいつも以上に落ち着きがない。
そんな乗組員たちの中に、一人の少女の姿が見て取れた。
暗く澱んだ海の中、水を吸った衣服は重く、少女の身体を海底へと引きずり込んでいく。
そこではあれほど騒々しかった海上の荒波や強風も、一切感じられない。
底の見えない闇の中で徐々に、徐々に、そして緩やかに、少女は意識を閉ざしていった。
やがて嵐は収束し、何事もなかったかのように海は凪ぐ。
辺りは元の静けさを取り戻し、船の一隻も見当たらない。
※改行は調整済み、画像は表紙と裏表紙
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紅楼夢7で無料配布予定のコピー本、その1ページ目です
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サークル「ICE TEA」
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