2012.3.26
「本当にロボットなの?」
駅の構内で
道に迷っているロボットを見つけた
見た目は人間と変わりない
でも私には分かる
彼女はきっとロボットだって
今じゃ駅の中でもコンビニでも
気軽にロボットが買える時代になった
好きなパーツを組み合わせて
貴方好みのパートナーを生み出せる
迷子のロボットは
見た目は人間と変わりない
でも私には分かる
彼女はきっとロボットだって
どうも大勢の人の流れに従って
降りちゃいけない駅で降り
そのまま人の流れに従って
明後日の方向にまで来てしまったのね
…ロボットなのに
自分の行き先も検索出来ず
自分の居場所も検索出来ない
そのロボットは欠陥品?
それとも始めから
そう行動するように生み出されていたの?
完璧じゃないロボット…
ロボットなのに 完璧じゃないなんて…
迷子のロボットは
見た目は人間と変わりない
でも私には分かる
彼女はきっとロボットだって
2012.3.23
「二次元展望タワー」
出来たばかりの
真新しい筈の展望タワーに登ってみたの
新しいと聞いていたけれど
中は薄暗くて禍々しくて
そして何より
厚み が無かった
入った瞬間
私も貴方も圧縮されて
平面の塔の平面の住民になったの
タワーにはエレベーターも階段も無くて
壁に張り巡らされた金網を
はしごの代わりにして
登るより他になかった
頂上にたどり着くと
やはり平面なお土産屋さんの前に
平面の窓があり
平面の世界が見渡せるようになってた
緑はある でも平面
町も見える でも平面
お土産屋さんのご主人も
他のお客さんも みんな平面
外の景色は奇麗だった
お土産屋さんも 気になるものは沢山あった
けれども それらはどこか嘘っぽかった
…嘘っぽかったの…
2012.3.12
「NOISE」
その名はNOISE
圧倒的なNOISE
聞く者を包み込み 飲み込み 圧倒し
そうして最後に壊してしまう
攻撃的なSOUND
音楽の体を成していないそれは
ただの騒音にしか聞こえない
耳を覆い尽くさんばかりの大音量に
はち切れんばかりの金属音
圧倒的なSPEEDでかき鳴らしながら
脇目も振らずに駆け抜けて行く
私はやり過ごす術を知らず
ただひたすら 圧倒されるより他にない
そうして繰り返される騒音を前に
私は 諦めたように 耳を塞ぐのを やめた
音と言う音が私の中に入ってくる
その中で 一つだけ気付いたリズム
リズムと言う名の鼓動
耳を塞いでいた時には分からなかった
でたらめな騒音の中に存在していた
鼓動と言う名のリズム
……あなたは生きているのね……?
私は気付いた
その心臓の鼓動
そう あなたは生きている
生きているから そうやって叫んでいるの?
声にならない声で
言葉にならない言葉で
ただの騒音と成り果てても あなたは叫び続けてる
涙はとっくに枯れ果てた
言葉はとっくに失った
存在もなくした状態で
それでも心に溜まっていた 沈んでいたそれを吐き出すには
あなた自身がNOISEと成り果てるしか無かった
涙はとっくに枯れ果てた(それでもまだ足りないの)
言葉はとっくに失った(それでもまだ叫びたいの)
存在もなくした状態で(でもまだわたしはここにいるの)
“ねぇ お願い お願い 聞いて
聞いて 聞いて 聞いて 聞いて!!
どうしてこうなってしまったのか
どうしてこうなってしまったのか
分からない 分からない 分からない 分からない!!
お願い どうして どうすればいいの 分からない
酷い そんな事 どうしようも無い わたしのせいじゃない!!
どうして分かってくれないの?どうして分かってもらえないの?
どうしてわたしはここにいるの!?
ねぇ 答えてよ 答えてよ 答えてよ 答えてよ!!”
重苦しいSOUND
血反吐を吐きそうな位に重苦しいSOUND
私には ただ 聞いてあげる事しか出来ない
…いや…
立ち去る術を失ったと言った方が正しいか
その名はNOISE
圧倒的なNOISE
聞く者を包み込み 飲み込み 圧倒し
そうして最後に壊してしまう
2012.1.27
「マリンブルーの浴槽」
海辺の砂丘
ちょっと小高くなった所に
崩れかけたモルタルの壁と
ピカピカの浴槽が1つ
水色の浴槽の中には
なみなみと水が注がれ
覗き込むと
眼下に広がるのはマリンブルーの風景
どこまでも続く深い海峡
その崖にはびっしりとサンゴが生え
熱帯魚たちが謳歌して
まるで海底を泳いでいるかのよう
けれど 家主と名乗る男は言う
これは直してもらう 全て撤去してもらうって
どうして?こんなに綺麗なのに?
そう素直に感想を述べると
男は一言こう返した
だって これじゃ風呂として使えないだろ?
2011.12.07
「廃棄処分」
くしゃくしゃに丸められた
紙ゴミいっぱいのゴミ箱の中
どこかで見た事あるような
茶色の小瓶も捨てられている
“あら嫌だ
どうして捨ててしまったの?
これは私がいつも飲んでる薬の小瓶
この中にある小さな錠剤
これが無いと
私は生きて行く事が出来ないの”
でも
大丈夫?
その茶色の小瓶は
しっかり蓋が閉まってて
中身も出ていないのに
その周囲には
どす黒く妖艶で
物々しいオーラが滲み出ている
霊感が無い貴女にも
その様子は見て取れるでしょう?
その小瓶は捨てられていた
その小瓶には
捨てられるだけの要因があった
“嫌よ嫌
私はこれが無いと
生きて行く事が出来ないの”
駄目だよ駄目だよ
その薬を飲んでも
貴女はもう生きて行けない
捨てられていた薬に そんな効能ある訳無いじゃないか
“嫌よ嫌
私はこれが無いと
生きて行く事が出来ないの”
駄目だよ駄目だよ
それを口にしたら
捨てるのは
薬だけじゃ済まなくなる
“私は
これが無いと
生きて行く事が出来ないの!!”
“…生きて行く事が出来ないの…”
2011.06.06
「人間牧場」
母と牧場に行ってきた
寒い雪空の下 沢山の人が牧場にやって来ていた
動物を見ようと訪れた場所なのに
行き交う通路は人だらけ
柵の中に見えるのは人だかり
お目当ての動物に触れ合う為に
沢山の人が列をなし その動物を取り囲んでいるのだ
よって どこを見ても どこに立ち寄っても
見えるのは人間の姿だけ
あの柵の中には貧そなロバがいた筈
そう思って立ち寄るも
そのロバの姿さえ 沢山の人に阻まれて姿を見る事が出来ない
雪深い空の下
舞い散る雪は全ての音をかき消し 静かに降り積もる
その牡丹雪の間から垣間見える人間たちを見ながら
私たちはどうしたものか考えもつかず
結局 沢山の人間だけを見て帰路についた
2011.06.06
「待合室図書館」
薄暗く 黄昏時と言うのにぴったりな雰囲気
実際の時間はどうなのか
外が薄暗いだけなのかは分からない
空から降り注ぐ黄土色の光の中
私が入って行くのは
有名らしいお医者さんの待合室
お世辞にも広いと言えない
小さな立て屋の中に
沢山の人と 沢山の書物が見て取れる
人々は皆 疲れ果てたように生気がなく
椅子に座って寝込む人 床にへたり込む人
本を延々と立ち読みする人…
そのどれもこれも
生きている人間って感じがしない
強いて言えば 彼らは“影”
そしてその待合室の大半を占める
大きな図書館顔負けの書斎達
私が手を伸ばしても
一番奥の 一番高い所の本が手に取れない
そうして私はただひたすら
沢山の影と沢山の本に囲まれたまま
待合室の中をウロウロとしていた
外には これ以外の建物が無く
だだっ広い 原っぱですらない 本当に何も無い 灰色の平地だけが続く
そして誰一人患者さんの名前を呼ばれる事無く
皆 そこで待ちぼうけを食っている
私は待ちきれなくなって扉から外に出た時
沢山の患者さんを乗せた一台のバスが止まっていた
ここのお医者さんは とても評判が良くて手が回らないから
別のお医者さんの所に行くんだって言ってた
私も そのバスに乗ろうと思えば乗れたんだ
でも私は乗らなかった
何故だろう?
バスを見送りながら私は思った
多分 移った先も同じような所なのだろうなと
2010.11.9
「敗者にすらなれなかった」
受け付けは終わってしまったの
3分前には終了してしまった
誠に残念だけれど
あなたは
勝者所か
敗者にすらなれなかった
道に迷ったとか
同情すべき点はあるかも知れない
けれど
2階の階段付近で遊んでいて
5階に来るのが遅れたのは
それはもう
仕方ないとしか
言いようが無いじゃない
鉄筋ビルの5階
殺風景な空間
性別不明の灰色の人たちが並ぶ中
貴方達の居場所は どこにも無いの
誠に残念だけれど
あなたは
勝者所か
敗者にすらなれなかった
2010.11.5
「学校オブジェ」
暗がりの廊下に虹色の光が瞬く
あのね 数年前に
ここで事故があったんだ
教え子に乱暴しようとした教師が
車でその子を跳ね飛ばそうとした時
側を通っていた50代の母親と1歳の娘が巻き添えになってね
みんな亡くなってしまった
だからほら あの立体駐車場の上にある ひっくり返った車のオブジェ
あれはこの事を忘れないようにと 残されたものなんだよ
みんなはこの事を忘れないように
この学校の中でもオブジェを残す事になったんだ
暗がりにポツンと立つ校舎はあの世の象徴で
廊下を流れる冷たく早い水の流れは あの世へと繋がる三途の川
トイレの前で売られている画集は 現世への憧れで
教室で光っているのは 天国から届いた光
渡り廊下を歩いていると
そこに設置された7つのライトが 空に向かってきらめいて
ありもしない 青い空と 輝く校舎が映し出される
不思議と 懐かしいとも 綺麗とも思わず
私は ただ 平然と その光景を眺めていた
2010.09.14
「閉鎖空間の空港ビル」
ここに真新しいビルが立ち上がった
大きな大きな箱モノ事業
その両サイドに 真っ直ぐ伸びる 二つの塔
中は大きな空洞で
中には大きな螺旋階段が
目がチカチカするほどの勢いで
空と言う名の屋上目掛けて伸びている
外に見えるのは
飛ばされた沢山の風船と
ヤジ馬と言う名の 沢山の人達
でもね
どこかおかしいの
だってね
この町は
この場所は
空港が立つ程 広い空間じゃないもの
何も無いもの
空も 地面も
何も無いもの
空と思しき場所には 灰色の空間が広がるだけ
地面と思しき場所にも 灰色の空間が広がるだけ
灰色の中にぽっかりと浮かんだ空港ビル
放たれた風船は行き場を失い
人々は歩き回るまでもなく ただ そこに立ち尽くすだけ
ここにある喧騒は まるでどこかで作られた 合成音声のよう
とても大きく豪華な空港
でも どこか嘘っぱちな空港
そして 私はこのビルから出る術もなく
ただ当てもなく ただ彷徨い続けるだけなの
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Pixivから丸々持ってきました。夢で見た事を書いている詩集…と言うより散文集です。
11.12.07更新、新しい詩をトップに、以下、下に行くにつれて古い詩になるように並べ替えました
◇超短編集のみ、ブログにて展開しています→ http://blog.livedoor.jp/gaeni/archives/cat_1213008.html
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