<その1>
夢を見た…。
この世界とよく似た世界で、あの方をご主人様と呼び、共に乱世を駆け抜け三国を統一する夢を…。
夢を見た…。
三国平定後、謎の道士達と戦い、あの方と共に光に消えた夢を…。
夢を見た…。
あの方と共に天と呼ばれる世界で過ごした夢を…。
夢を見た…。
この世界で、あの方と共に歩んだ夢を…。
………ご主人様。
……。
だが…。
夢は夢。
所詮は幻。
偽物だ。
しかし…
我が胸に宿ったこの想いは…
どうやら本物のようだ。
あの方と過ごしたこの数日も。
紛れもない真実だ。
たった数日だが、不思議なことに多くの日々を共に過ごした気さえする。
…もう私は夢だろうが現だろうが構わない。
好きです、一刀様。
いえ、ご主人様。
<その2>
虚しい…。
その頃、かねてからの宿願を果たしたにも関わらず、私の心はからっぽだった。
無論、目標を失い張り合いがなくなったなどということはありえない。
むしろ、これからの方がやることは山積みだ。
しかし、空虚だった。
原因は分かっている。
あの男だ。
突然目の前に現れたあの男。
珍しい服を着て、異世界から来たというあの男。
私たちにはない発想と知識を持ちながらも、読み書きすらできず甘い考えを持ったあの男。
最初は興味本位だった。
でも…。
共に過ごすうちにあの男は、男のくせに私たちの中にすんなりと入りこんでいた。
どうしようもないくらい甘ちゃんで、助平で、女たらしで、抜けてて、流されやすくて…。
でも、優しくて、人懐こくて、決めるとこは決めて、意外と努力家で、たまに驚かされるようなことをやり……大事なことは譲らない。
そんな馬鹿に知らず知らず私は、いや、私たちは惹かれていった。
そして、あの馬鹿はいつのまにか私を縛っていた呪縛まで解いた。
…私を助けた。
このころから私は、私の中に一人の少女を見つけた。
さらに、私だけじゃない。
私の右腕ともいえる存在も助けた。
………その身を賭して。
あの馬鹿はその身が消えることを理解しながらもそれを選択した。
…ただ一人で。
本当に馬鹿…。
私の宿願が叶ったあの日。
あの馬鹿は、己の天命を全うし………消えた。
蒼く輝く月の下。
この私に涙を流させて。
私らしくないみっともない台詞を吐かせて。
…消えた。
…消えた。
最後に一言だけ残して
消えた。
それからの数日はあまり覚えていない。
だが、私のことだ。
ぶざまな姿をさらさぬように精一杯虚勢を張っていただろう。
…馬鹿はどっちかしらね。
そして、空虚な日々がつづいた。
しばらくして…。
それでも自分の物語を胸を張って過ごしていこうと決めた。
彼とまた会えた時、胸を張れるように。
彼がここに居なかったことを悔しがるように。
…だけど、私の心は満たされないままだった。
そんな時、彼を見つけたという情報が届いた。
今までにも似たような情報はあったが全て誤りだった。
しかし、今回は信憑性が段違いだった。
私の胸は高鳴った。
でも、そのすぐ後に伝わった情報に私の体は震えた。
彼が…この世界のことを…私たちを……私を…忘れてる?
………
………でも、
………それでも私は、
会いたい。
逢いたい。
一刀に逢いたい!!
私は己の心に従い、即座に行動を開始した。
逸る気持ちを抑えながら、ただひたすら一刀の下を目指した。
そして、今、もうすぐそこに一刀はいる……らしい。
待ちきれずに私は歩を進める。
そこに…
一刀はいた。
いた、
いた、
いた。
少し大人っぽくなっていたが見間違うはずもない。
間違いなく、北郷一刀がそこにいた。
…なぜか正座で。
幾度となく見た夢…ではない。
私は我を忘れて飛びついた。
その後、やはり彼に記憶がないことが判明した。
……悲しくないと言ったら嘘になる。
だけど、
それ以上に、
彼は彼だった。
それが、うれしくて。
うれしくて、恋しくて。
私の虚しさは消えた。
綺麗に消えた。
ふふっ。
もう逃がさないわよ。一刀。
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つなぐ想い16でオマケとして付けようかなって思ったんだけどあんまりアレでしたから。
でもせっかく書いて、もったいないから悩んだ挙句うp
なんか前にも似たの書いた気がするし、ネタも才能もないな~。
とりあえず非閲覧推奨!マジで!
なら載せるなよって感じだけど、そこは自己満ですから。