自分には暗闇烏を使役する力はない ────
本家にて。
後継ぎ。次期頭首を決める話し合いの最中、彼は静かに口火を切った。
「………」
緩りと瞼を開いた彼。
まだ夜も明けぬ寒い朝であった。
2日前。
マサムネが正式に十八代目を継ぎ、自身は彼の影武者として彼と家と支える事を責務とした。
実際は・・・
格の高い霊力を持ち、暗闇烏を従える事など造作もない程の技量をも兼ね備えていた。
だが、しかし・・・
同時に『それでは名を継げない』事も、物心付いた頃から認識していたのも事実であった。
従う、従えるのではなく、あくまで『対等』。
適性を確認する為に初めてそれを『装備』した時のマサムネの姿。頭では理解していた筈なのに、それを目の当たりにして・・・痛感した。
主の羽根となり天を翔る姿 ────
自分には・・・それが、出来なかったのだ。
「………」
『また‥あの夢か』
天井をぼんやりと見つめながら、同じ映像を夢の中で反芻した事を思い出す。
幾度目だろう・・・3回目から数える事を止めてしまったけれど。
理解していたつもりでいた。
しかし自らが手放した筈のそれは、産まれながらにして弟のマサムネに総て与えられていたものだったのだ。
そして自分も、自分の力も総て・・・マサムネを護る為にあるものだと。
十八代目を支え護る為にあるものだと。
自分は『自分』として護られる事など決してないのだと ―――――
「………」
うっすらと開かれていた瞼が再び閉じられる。
微睡みに逃げることしか、今は・・・出来ず・・・
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2Pマサムネが何故18代目になれなかったか…という短文/私製設定:2Pマサムネは1Pマサムネの兄